弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人福島昭宏,同照井克洋の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法12条,
13条,31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反し
ないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12
日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同3
0年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第22
47号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨
に照らして明らかであるから,理由がない。同上告趣意のその余及び被告人本人の
上告趣意は,いずれも事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当た
らない。
なお,所論に鑑み,記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認
められない。
付言すると,本件は,被告人が,(1)住居又は空き家に侵入して金品を窃取し
た住居侵入,邸宅侵入,窃盗,(2)A方に2度にわたり侵入し,又は侵入しよう
とした住居侵入,同未遂,(3)強盗強姦の目的で,再度同女方に侵入し,その後
順次帰宅した同女(当時52歳)及び二女のB(当時24歳)を殺害して金品を強
取し,被害者両名を強姦しようとしたが遂げなかった住居侵入,強盗殺人,強盗強
姦未遂,(4)その後被害者両名の死体を山中に遺棄した死体遺棄の事案である。
量刑上重視すべき,(3),(4)の各犯行についてみると,被告人は,パチスロにふ
けるなどして家賃の支払や借金の返済等に窮し,窃盗の目的で(2)の犯行に及んだ
ところ,金品の窃取には至らなかったものの,A方が女性の2人暮らしであること
が分かったことから,被害者両名の留守中に同女方に侵入し,その帰宅を待って金
品を強奪し,さらに,その機会に被害者両名を強姦しようと企て,(3),(4)の各犯
行に及んだものであって,その経緯,動機に酌量の余地はない。あらかじめ目出し
帽や軍手,更には被害者らを縛るためのロープ等を用意してA方に侵入し,その場
にあった木製のすりこぎに滑り止めを施すなどして被害者両名の帰宅を待ち伏せて
おり,計画性の高い犯行である。その態様をみても,(3)の犯行において,先に帰
宅したAの頭部をすりこぎで強打したが,激しい抵抗に遭い,顔を見られたことか
ら,同女の殺害を決意し,その頭部を更にすりこぎで強打し,頸部を絞め付けるな
どして殺害し,姦淫しようとしたがその目的を遂げず,続いて,Bを強盗や強姦の
後殺害するつもりでその帰宅を待ち伏せ,帰宅した同女の頭部をすりこぎで強打し
たが,激しく抵抗されたため,同女を殺害してから強盗や強姦をしようと決意し,
その頸部を絞め付けるなどして殺害し,姦淫しようとしたがその目的を遂げず,そ
の後,被害者両名の金品を強取し,さらに,犯跡を隠蔽するために,(4)のとお
り,被害者両名の死体を山林内に投棄しているのであって,生命の尊厳や死者に対
する畏敬の念のおよそ感じられない冷酷,残虐な犯行である。被害者両名はいずれ
も,幸福な日々を過ごしていたのに,被告人によって理不尽にその生命を絶たれた
ものであって,結果は誠に重大であり,遺族らの処罰感情がしゅん烈であるのも当
然である。
以上のような諸事情に照らすと,被告人の刑事責任は極めて重大であって,(3)
の犯行は侵入当初から被害者両名の殺害を計画していたものではないこと,(1)の
窃盗及び(3)の強盗による被害品は一部発見,返還されていること,前科前歴がな
いこと,捜査段階及び第1審公判においては事実を認めて反省の態度を示していた
ことなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,原判決が維持した第1
審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得
ない。
よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官粂原研二公判出席
(裁判長裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官金築誠志裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)

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