弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
被告人甲を懲役1年10月に,被告人乙を懲役1年6月に,被告人丙を懲
役1年6月にそれぞれ処する。
被告人乙に対し,未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人甲は,東京都西東京市a町b丁目c番d号に主たる事務所を置き,特別養
護老人ホーム及び老人デイサービスセンター等からなる老人福祉施設Aを経営する
ことを目的として設立を企図していた社会福祉法人Bの設立代表者であり,同会設
立後は同会理事長となった者,被告人乙は同会の設立準備委員であり,同会設立後
は平成11年12月まで同会の顧問であった者,被告人丙は同会の施設建設を請け
負った株式会社Cの代表取締役であるが,被告人3名は共謀の上,社会福祉法人B
が設立の認可を受けて上記施設を設置するについて,国庫補助金を財源の一部とす
る老人福祉施設等施設・設備整備費補助金(以下「間接補助金」という。)の交付
を申請するに当たり,同法人の資産として上記整備費の約4分の1に相当する自己
資金が必要であるのに,必要な資金が調達できなかったことから,あたかも必要な
自己資金があるように偽って不正に補助金の交付を受けようと企て,平成11年2
月から同年3月までの間,東京都新宿区ef丁目g番h号所在の東京都福祉局地域
福祉推進部推進指導課及び東京都高齢者施策推進室保健福祉部地域施設課の担当係
員に対し,同会の法人設立に際して被告人甲及びその養母Dの両名には同会に寄付
するだけの資力がなく,かつ,同会に寄付する意思もないのに,これあるように装
い,上記両名の預金残高が合計4億2万円ある旨内容虚偽の残高証明書及び法人設
立が認可された際には直ちに上記両名が合計3億7741万9368円を同会に寄
付する旨の内容虚偽の贈与契約書等を提出するとともに,その旨虚偽を申し向け,
上記両名が上記預金から同金員を払い戻して同会に寄付し,同会に必要な法人事務
費,運転資金,土地購入資金及び施設整備費等に関する自己資金を充実させるかの
ように偽り,次いで,東京都知事から社会福祉法人設立の認可を受けた後,上記担
当係員らから上記残高証明書が偽造であることを看破されるや,同年5月から同年
8月ころまでの間,上記地域施設課の担当係員に対し,上記両名が金員を他から借
り入れて同会に寄付した事実がないのにこれあるように装い,上記両名が同年5月
6日及び同年6月7日の2回にわたり合計3億7742万3368円を借用したと
する内容虚偽の金銭借用証書2通,Cが準備したいわゆる見せ金により上記両名か
ら同会への同金額の振込入金を仮装しその旨記帳された同会名義の貯金通帳写し等
を提出するとともに,その旨虚偽を申し向け,上記両名が同金額を借用して同会に
寄付し,同会の自己資金を充実させた旨偽り,さらに,平成12年1月7日及び同
年2月8日ころ,上記東京都高齢者施策推進室保健福祉部地域施設課の担当係員に
対し,同会の施設・設備整備についての自己資金が1億6386万0697円ある
旨の内容虚偽の事業計画書を提出するなどして上記間接補助金の交付を申請し,よ
って,同年2月9日ころ,上記東京都高齢者施策推進室長である分離前の相被告人
丁をして,同補助金の交付決定をさせ,同年3月9日及び同年5月30日,同決定
に基づき,東京都の担当係員をして,前記所在の東京都庁第一本庁舎1階にある株
式会社E銀行本店東京都庁出張所に開設した社会福祉法人B建設会計理事長甲名義
の普通預金口座(口座番号 略 )に合計6億7809万4000円を振込入金さ
せ,もって,偽りその他不正の手段により間接補助金の交付を受けた。
(証拠の標目)
 略
(量刑の理由)
 本件は,社会福祉法人を設立し,特殊養護老人ホームの運営に乗り出そうとした
被告人らが,担保の付着した土地以外に自己資金がほとんどなく,補助金の交付が
受けられる状況になかったにもかかわらず,自己資金があるかのように装うなどし
て不正に多額の補助金を取得したという事案である。
 その犯行動機は結局のところ利欲的なものであったといわざるを得ない。多額の
保証債務を負い,自己所有不動産に抵当権を付されていた被告人甲は,当初はマン
ション建設などにより負債整理を考えたがやがて断念し,次いで,Fから,金がな
くても老人ホームを経営することができる,一気に債務を返還できるなどと言わ
れ,これに従うなどして本件犯行に及んだものであり,利欲目的以上に社会福祉に
対する情熱があったとは認め難い。また,以前に老人ホーム設立に関わった経験を
有していた被告人乙は,Fからの紹介で報酬目当てにB設立準備委員になって本件
犯行に及んだものであり,被告人丙は,被告人甲らに自己資金がないことを知りな
がら,Cが老人ホーム建設を請け負うことで利益をあげようとして本件に加わった
ものと認められる。いずれについてもその犯行動機に酌量の余地は乏しい。
 犯行態様について見るに,被告人甲,被告人乙は,当初から社会福祉法人設立に
必要な自己資金などないにもかかわらず当局をごまかして法人設立を認めてもらう
べく銀行名義の偽造文書を提出するなどしてその認可を得,その後偽造が見破られ
て補助金の交付が停止されるや,今度は被告人丙に依頼して内容虚偽の残高証明書
を作らせるなどした上,議員らに仲介を依頼したり,あらかじめCが施設建設工事
を請け負うことを前提に,建設工事費を水増しして請求するなどしており,まこと
に巧妙なものであったといえる。
 不正に受け取った補助金の額は判示のとおりの額であってこれだけでも極めて多
額といってよいが,法律の処罰対象となる間接補助金以外にも,東京都から土地購
入の助成金として平成12年2月に5億6610万8000円を取得しているほか
目黒区等からの補助金も得ている上,他の公的金融機関からも融資を受けており,
これらを含めれば被告人らが不正な方法で取得した補助金等の金額は更に多額とな
る。設立されたBの理事長になった被告人甲の得た利得は極めて大きいといえる。
被告人乙は,本件に関わったことにより1900万円という高額の報酬を得てお
り,また,被告人丙の経営するCは,本件工事を受注するなどしたことから,被告
人丙の供述しているところによれば未回収分を含めると8000万円余りの利益を
得ていることからして,被告人乙,被告人丙も多額の利得を得ているといえる。こ
れに対して,不正に受け取った補助金について全く返還等はなされていない状況に
ある。なお,被告人らは,老人ホームが支障なく運営されていることをもって,結
果的に補助金は適正に使われたかのように主張するが,そもそも補助金交付の要件
として一定の自己資金を必要とされているのは,十分な自己資金を持たない経営基
盤の弱い法人による老人ホーム運営は,結局不安定なものにならざるを得ず,ひい
ては周囲,社会に不利益をもたらしかねないからであり,たまたま現時点で支障な
く運営がなされているからといってそのことにより,被告人らのした行為の違法性
が減弱されるということにならないというべきである。
 そうすると,被告人らの刑事責任はいずれも重いというべきであり,違法行為を
見抜いていた東京都の担当者において,あくまでも厳正な態度を貫き,法律に従っ
た措置をとっていたならば,補助金の不正支給は避けることができたといえるこ
と,被告人甲については,夫が身障者であることもあって社会福祉に尽くそうとす
る意欲がなかったわけではなく,他方で,Fらに勧められるままに老人ホーム経営
を企図し,ついには本件犯行に及んだもので,その経過に同情の余地がないではな
いこと,被告人乙は報酬を得る目的で本件犯行に加わり,東京都との折衝などにお
いて中心的役割を果たしていた者であるが,B内部の立場としては従属的地位にあ
ったと評価できるのであり,その受け取った報酬額も,平成7年4月のB設立準備
委員会発足時にその委員になってから顧問を退任するまでの4年半余りの期間の地
位,活動に対する報酬自体としては不当な額とまではいえないこと,被告人丙につ
いては,会社の苦境を打開するために無理をしても仕事を取り,利潤を追求しよう
とした心情は理解し得ないではないこと,被告人らには前科はなく,あるいはあっ
てもさしたるものではなく,現在は本件犯行を反省していると認められることなど
被告人らのために酌むべき事情を十分に考慮しても,本件が刑の執行猶予を相当と
する事案とはなし難く,主文の実刑に処するのはやむを得ない。
  平成14年10月8日
     さいたま地方裁判所第一刑事部
(裁判官 大澤廣)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛