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平成12年(ワ)第7209号 製造販売差止等本訴請求事件
同年(ワ)第14053号 同反訴請求事件
口頭弁論終結日 平成13年10月18日
         判        決
      原告(反訴被告)     株式会社呉商
      原告(反訴被告)     株式会社サミット
原告(反訴被告)ら訴訟代理人弁護士
                   辻         公    雄
同            平    野    惠    稔
      同            若    杉    洋    一
      同            重    冨    貴    光
      同            嶋    寺         基
     原告(反訴被告)ら補佐人弁理士
                   河    野    登    夫
      同            鮫    島    武    信
      被告(反訴原告)     アサヒ電機株式会社
訴訟代理人弁護士     藤    山    利    行
      補佐人弁理士     古    川    泰    通
同            中    嶋    隆    宣
主        文
1 原告(反訴被告)らの本訴請求をいずれも棄却する。
2 原告(反訴被告)らは、被告(反訴原告)が製造販売する別紙物件目録1ない
し5記載のパチンコ台の表示装置が、原告(反訴被告)らの別紙特許権目録記載の
特許権を侵害するという事実を、文書又は口頭で、告知し又は流布してはならな
い。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じて原告(反訴被告)らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 1 本訴
(1) 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は、別紙物件目録1ないし5記
載の製品を製造販売してはならない。
(2) 被告は、別紙物件目録1ないし5記載の製品を破棄せよ。
(3) 被告は、原告(反訴被告。以下「原告」という。)らに対し、金1000
万円及びこれに対する平成12年7月27日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
2 反訴
   主文第2項同旨
第2 事案の概要
1 本件の本訴は、別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい、
その特許発明を「本件発明」という。)を共有する原告らが、被告による別紙物件
目録1ないし5記載のパチンコ台の表示装置(以下、別紙物件目録1記載のパチン
コ台の表示装置を「イ号物件」、別紙物件目録2記載のパチンコ台の表示装置を
「ロ号物件」、別紙物件目録3記載のパチンコ台の表示装置を「ハ号物件」、別紙
物件目録4記載のパチンコ台の表示装置を「ニ号物件」、別紙物件目録5記載のパ
チンコ台の表示装置を「ホ号物件」といい、これらをまとめて「被告製品」とい
う。)の製造販売が、本件特許権の侵害に当たるとして、被告製品の製造販売の差
止め、廃棄及び不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
反訴は、被告が、原告らに対し、原告らが、被告の取引先に、被告製品の販
売が本件特許権を侵害するという事実を通知したことは、原告らと競争関係にある
被告の営業上の信用を害する虚偽事実の告知に当たるとして、不正競争防止法3条
1項、2条1項14号(平成13年法律第81号による改正後。以下同じ。)に基
づき、その告知又は流布の差止めを求めた事案である。
 2 基礎となる事実((6)以外は、当事者間に争いがない。)
  (1) 原告らは、本件特許権を共有している。
(2) 本件発明の特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」とい
う。)の特許請求の範囲第1項の記載は、別紙特許権目録記載の「特許請求の範
囲」記載のとおりである。
(3) 本件発明の構成要件を分説すれば、次のとおりである。
A パチンコ台毎に取付けられその台の作動状況等を表示するパチンコ台の
表示装置において、
B 文字・図形を表示する表示板と、ランプと、呼出しスイッチと、制御装
置とを一つの筐体に装着する一方、
C 前記制御装置は複数の表示内容を記憶するメモリと、CPUとを備え、
D 前記CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況
を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリ
から読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の
表示装置。
(4) 被告は、被告製品を製造販売している。
  (5) 被告製品の構成を分説すると、次のとおりである。
ア イ号物件
① イ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方
に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用さ
れるものである。
② 表示装置10は、上縁が円弧、下縁が弦の形を有する背板12a及び
該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12b
からなる筐体12に、表示板14、ランプ20aないし20f、呼出しスイッチ2
2及び制御装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背
板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられ
ている。表示板14の背後に位置して左右に広がるように円弧状のランプ取付板2
5bが取り付けられており、ここに赤ランプ20a及び20g(最外側)、黄ラン
プ20b及び20f(その内側)、緑ランプ20c及び20e(中央側)並びに青ラ
ンプ20d(頂部)が取り付けられている。
③ 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株
式会社製M38067ECAGP又はカスタム品ASAHI RD9806D:製
造時期によって相違する)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。ワンチッ
プマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコンピュ
ータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、呼出しス
イッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信号に
応じたランプ20aないし20g及び表示板14の点灯制御を行うものである。メ
モリ32はデータ記憶用のものである。
④ 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置2
5に連なり、制御装置25は入力インターフェース41を介してパチンコ台Aの大
当たり及びスタートなどに係る端子にリード線25cによって接続される。
⑤ パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石セ
ンサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制
御装置25へ入力される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイ
クロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤
ランプ20a及び20gを点灯させる。
⑥ 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせて
なる、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々
日の大当たり回数表示部14c、及びスタート回数表示部14dを備える。大当た
りの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップ
マイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶し
てある内容に従い、赤ランプ20a、20g及び黄ランプ20b、20fが点灯する
ように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28
へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内
容に従い、ランプ20aないし20gを、赤及び黄の組と緑及び青の組とが交互点
灯し、これに続いて青→緑→黄→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御す
る。
大当たりを報じる信号はメモリ30に記憶され、CPU28はこれを
用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
⑦ パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ
玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排
出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホ
ールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定
値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の
入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20b及び20
fを点灯させる。
イ ロ号物件
① ロ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方
に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用さ
れるものである。
② 表示装置10は、横長長方形状の背板12a及び該背板12aと同様
の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12
に、表示板14、ランプ20aないし20e、呼出しスイッチ22及び制御装置2
5などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背
板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられ
ている。プリント基板25aの周りには3つのランプ取付板25bが取り付けられ
ており、ここに赤ランプ20c及び20d(上外側)、黄ランプ20a及び20b
(下外側)並びに青ランプ20e(中央上側)が取り付けられている。
③ 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株
式会社製M38869FFA)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。ワン
チップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロコン
ピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、呼出
しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子からの信
号に応じたランプ20aないし20e及び表示板14の点灯制御を行うものであ
る。メモリ32はデータ記憶用のものである。
④ 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置2
5に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェ
ース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
⑤ パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石セ
ンサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制
御装置25へ入力されるように接続される。制御装置25は該検出信号を受ける
と、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶して
ある内容に従い、赤ランプ20c及び20dを点灯させる。
⑥ 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせて
なる、本日の大当たり回数表示部14a及びスタート回数表示部14bを備える。
表示に係る数値は前記メモリ30及び/又はメモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップ
マイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶し
てある内容に従い、赤ランプ20c及び20d並びに黄ランプ20a及び20bが
点灯するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28
へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内
容に従い、ランプ20aないし20eを、赤2灯の組と黄2灯及び青の組とが交互
点灯し、これに続いて青→赤→黄→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
大当たりを報じる信号はメモリ30及び/又はメモリ32に記憶さ
れ、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの当日の回数を表示する。
⑦ パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ
玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排
出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホ
ールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定
値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の
入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20a及び20
bを点灯させる。
ウ ハ号物件
① ハ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方
に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用さ
れるものである。
② 表示装置10は、上縁が直線、下縁が大径の円弧、左右両側縁が小径
の円弧の形を有する背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面
側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ20
aないし20g、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着
してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背
板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられ
ている。表示板14の背後に位置して上部から左右側部にかけて広がるように横長
板状のランプ取付板25bが取り付けられており、ここに赤ランプ20a及び20
g(最外側)、黄ランプ20b及び20f(その内側)、緑ランプ20c及び20
e(更にその内側)並びに青ランプ20d(中央部)が取り付けられている。
③ 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株
式会社製M38067ECAGP)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。
ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロ
コンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、
呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子から
の信号に応じたランプ20aないし20g及び表示板14の点灯制御を行うもので
ある。メモリ32はデータ記憶用のものである。
④ 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置2
5に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェ
ース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
⑤ パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石セ
ンサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制
御装置25へ入力されるように接続される。制御装置25は該検出信号を受ける
と、ワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶して
ある内容に従い、赤ランプ20a及び20gを同時点滅させる。
⑥ 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせて
なる、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々
日の大当たり回数表示部14c、及びスタート回数表示部14dと、赤緑の両色表
示灯を7灯縦配列して過去7回の確変突入(赤)/大当たり(緑)の履歴表示部1
4eとを備える。大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30及び/又は
メモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップ
マイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶し
てある内容に従い、赤ランプ20a、20g及び黄ランプ20b、20fが点灯す
るように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28
へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内
容に従い、ランプ20aないし20gを、赤及び黄の組と緑及び青の組とが交互点
灯し、これに続いて青→緑→黄→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御す
る。
⑦ パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ
玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排
出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホ
ールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定
値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の
入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20b及び20
fを点灯させる。
エ ニ号物件
① ニ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方
に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用さ
れるものである。
② 表示装置10は、下縁が直線、上縁が大径の円弧、左右両側縁が小径
の円弧の形を有する背板12a及び該背板12aと同様の正面視形状を有し、背面
側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体12に、表示板14、ランプ20
aないし20g、呼出しスイッチ22及び制御装置25などの電子回路部品を装着
してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背
板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面に表示板14が取り付けられ
ている。表示板14の背後に位置して上部から左右側部にかけて広がるように弓形
板状のランプ取付板25bが取り付けられており、ここに赤ランプ20a及び20
g(最外側)、黄ランプ20b及び20f(その内側)、緑ランプ20c及び20e
(更にその内側)並びに青ランプ20d(中央部)が取り付けられている。
③ 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株
式会社製M38869FFAHP)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。
ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロ
コンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、
呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子から
の信号に応じたランプ20aないし20g及び表示板14の点灯制御を行うもので
ある。メモリ32はデータ記憶用のものである。
④ 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置2
5に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェ
ース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
⑤ パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石セ
ンサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制
御装置25へ入力される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイ
クロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤
ランプ部20a及び20gの同時点滅をさせる。
⑥ 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせて
なる数字の表示部を備え、該表示部は、本日の大当たり回数表示部14a、前日の
大当たり回数表示部14b、前々日の大当たり回数表示部14c、スタート回数表
示部14d、過去最高の大当たり回数表示部14f及び確変突入回数表示部14g
を有する。表示板14はまた右下部分に、赤/緑/黄の選択表示をする上側の横1
列の7灯、及び連続点灯又は点滅する下側の横1列の赤の7灯からなり、過去7回
の大当たり間のスタート回数(上側 赤:500回以下~301回以上、黄:30
0回以下~101回以上、緑:100回以下など)及び単発大当たり(下側 連続
点灯)/確変大当たり(下側 点滅)の別を表示する履歴表示部14eを備える。
大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30及び/又はメモリ32に記憶
される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップ
マイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶し
てある内容に従い、赤ランプ20a、20g及び黄ランプ20b、20fが点灯する
ように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28
へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内
容に従い、ランプ20aないし20gを、赤及び黄の組と緑及び青の組とが交互点
灯し、これに続いて青→緑→黄→赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御す
る。
大当たりを報じる信号はメモリ30及び/又はメモリ32に記憶さ
れ、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
⑦ パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ
玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排
出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホ
ールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定
値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の
入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、黄ランプ20b及び20
fを点灯させる。
オ ホ号物件
① ホ号物件の表示装置10はパチンコ店のパチンコ台Aそれぞれの上方
に取り付けられ、店員の呼出し、及びパチンコ台Aの状況を表示するために使用さ
れるものである。
② 表示装置10は、略横長長方形を有する背板12a及び該背板12a
と同様の正面視形状を有し、背面側に湾曲凹部を有するカバー12bからなる筐体
12に、表示板14、ランプ部20aないし20f、呼出しスイッチ22及び制御
装置25などの電子回路部品を装着してある。
背板12aには前記電子回路部品を実装したプリント基板25aが背
板12aの中央部に平行的に取り付けられ、その前面中央に表示板14が取り付け
られている。表示板14の左右に位置してランプ取付板25b、25bが取り付け
られている。ランプ取付板25b、25bに取り付けられたランプ部20aないし
20fは光源として各4個のLEDを横配列してなるものである。ランプ部は左右
それぞれに各3列取り付けられており、左右の上側のランプ部20a及び20bは
赤、同じく中央のランプ部20c及び20dは青、同じく下側のランプ部20e及
び20fは緑の色をそれぞれ有している。
③ 制御装置25は、ワンチップマイクロコンピュータ29(三菱電機株
式会社製M38869FFAHP)及びこれに外付けされたメモリ32を備える。
ワンチップマイクロコンピュータ29が備えるCPU28は、ワンチップマイクロ
コンピュータ29内蔵のメモリ30に格納したプログラムを実行することにより、
呼出しスイッチ22及びパチンコ台Aの大当たり及びスタートなどに係る端子から
の信号に応じたランプ20aないし20f及び表示板14の点灯制御を行うもので
ある。メモリ32はデータ記憶用のものである。
④ 呼出しスイッチ22は入力インターフェース41を介して制御装置2
5に連なる。パチンコ台Aの大当たり及びスタートなどの信号も入力インターフェ
ース41を介して制御装置25へ入力されるように接続される。
⑤ パチンコ台Aには不正行為のために使用される磁石を検出する磁石セ
ンサ53が設けられており、その検出信号は入力インターフェース41を介して制
御装置25へ入力される。制御装置25は該検出信号を受けると、ワンチップマイ
クロコンピュータ29のCPU28が、メモリ30に記憶してある内容に従い、赤
ランプ20a及び20gの同時点灯をさせる。
⑥ 表示板14は、いずれも複数の7セグメント表示素子を組み合わせて
なる、本日の大当たり回数表示部14a、前日の大当たり回数表示部14b、前々
日の大当たり回数表示部14c、及びスタート回数表示部14dと、赤/黄の選択
表示灯(最下列)及び緑色表示灯をマトリックス状に配置してなり過去10日分の
大当たり回数/大当たり間の平均スタート回数をグラフ状に表示する履歴表示部1
4eとを備える。各部の表示内容はモード切替スイッチ22a、22b、22cで
切り替えられる。大当たりの履歴など表示に係る内容は前記メモリ30及び/又は
メモリ32に記憶される。
呼出しスイッチ22をオンすると制御装置25を構成するワンチップ
マイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を検出し、メモリ30に記憶し
てある内容に従い、赤ランプ部20a、20b及び緑ランプ部20e、20fが点灯
するように制御する。
また大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの前記端子からCPU28
へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記憶してある内
容に従い、全ランプ部20aないし20fの点滅をし、これに続いて赤→青→緑→
赤→青→・・・の流れ点灯を行うように制御する。
大当たりを報じる信号はメモリ30及び/又はメモリ32に記憶さ
れ、CPU28はこれを用いて表示板14に大当たりの履歴などを表示する。
⑦ パチンコ台Aの上方にはパチンコ台Aへ供給した玉を計数するセーフ
玉計数センサ51が設けられており、パチンコ台Aの下方にはパチンコ台Aから排
出した玉を計数するアウト玉計数センサ52が設けられており、これらの出力はホ
ールコンピュータと称する中央制御装置50へ入力される。
中央制御装置50はセーフ玉とアウト玉との差を算出し、これが所定
値になった場合に打ち止め信号をパチンコ台Aへ出力するとともに表示装置10の
入力インターフェース41を介して制御装置25へ打ち止め表示信号を出力する。
制御装置25は打ち止め表示信号を受けて、青ランプ部20c及び2
0dを点灯させる。
(構成の番号が同じであっても、各物件によって構成の内容に異なる部
分がある。しかし、本件発明の構成要件との対比を行う上において、各物件の構成
の内容の相違は影響せず、同じ番号の構成であれば、同じように構成要件該当性を
論じることができる。そこで、以下では、特に被告製品のうちのどの物件の構成を
指すかを断らない限り、各被告製品の同じ番号の構成をまとめて、例えば「構成
①」のように、番号をもって表す。)
(6) 構成③は構成要件Cを充足する(弁論の全趣旨)。
 3 争点
(本訴)
(1) 構成①の「パチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ」という構成は、
構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」という構成を充足するか。
(2) イ号物件及びロ号物件の構成⑥の「複数の7セグメント表示素子を組み合
わせてなる」表示部を備える表示板14、並びにハ号物件、ニ号物件及びホ号物件
の構成⑥の「複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部及び複数の
表示灯からなる履歴表示部を備える表示板14は、構成要件Bの「文字・図形を表
示する表示板」という構成を充足するか。
(3) 被告製品は、構成要件Dを充足するか。
(4) 本件発明は、特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発
明、特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に
基づいて容易に発明をすることができたか。
(5) 被告製品が本件特許権を侵害したとした場合の損害の額。
(反訴)
(6) 原告らと被告は競争関係にあるか。
(7) 原告らは、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布し
たか。
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点(1)(構成要件Aの充足性)について
(1) 原告らの主張
本件明細書には「パチンコ台の上方等」(本件特許権の特許公報(本件特
許権の特許公報を指す場合は、以下、単に「特許公報」という。)2欄6行)と記
載されており、パチンコ台の上方に取り付けられることが明示されているから、構
成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」という構成は、パチンコ台の上方に取り
付けられることを含む。したがって、構成①の「パチンコ台Aそれぞれの上方に取
り付けられ」という構成は、構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」という構
成を充足する。
(2) 被告の主張
構成要件Aの「パチンコ台毎に取付けられ」とは、パチンコ台ごとにパチ
ンコ台そのものに取り付けられることを意味する。本件明細書には「パチンコ台の
上方等」(特許公報2欄6行)と記載されており、「上方」に限られないことは明
らかである。構成①の「パチンコ台Aそれぞれの上方に取り付けられ」とは、パチ
ンコ台とは別個にパチンコ台の上方に取り付けられていることであり、パチンコ台
ごとにパチンコ台そのものに取り付けられていることではないから、構成要件Aを
充足しない。
2 争点(2)(構成要件Bの充足性)について
(1)原告らの主張
ア 構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」の「・」は、著名な国語
辞典である広辞苑によれば、「小数点や並列点などとして用いる印刷用活字」であ
り、並列とは、「並びつらなること。並びつらねること。」をいうにすぎず、並列
という語に、「及び」や「又は」のどちらかを排除する意味はない。広辞苑によれ
ば、並列助詞は並立助詞と同義とされているが、並立助詞は「国語の助詞の分類の
一。二つ以上の物事を並べていうのに用いるもの。「筆と紙とを用意する」の
「と」、「よいの悪いのと言えた義理か」の「の」、「父か母かが行く」の「か」
などの類。並列助詞。」とされており、双方を示す「と」と、どちらか一方を示す
「か」のいずれもの文例を引用している。そこで、「・」は、「又は」の意味と解
することができる。
本件発明の、パチンコ台ごとにその台に関する作動状況等の情報を表示
するという作用効果については、文字か図形のいずれかが台の作動状況等の情報を
表示すればよく、文字と図形の両方が表示されなければならないとする理由はな
い。本件明細書の実施例においても、「開放台」、「本日の優秀台」、「いらっし
ゃいませ」、「本日の終了回数○○回」、「終了までジャンジャンお取り下さ
い」、「18才未満の方の入場は固くお断りしております」、「只今係員を呼び出
しておりますので今暫くお待ち下さい」、「打止」、「フィーバ中」、「ヤッタ!
ヤッタ!おめでとうございます」、「ジャンジャンお取り下さい」、「予定終了し
たしました」(「終了いたしました」の誤記と解される。)、「景品交換中」、
「1発残らず景品交換して下さい」、「トラブル1」、「トラブル2」のようにす
べて文字だけの表示が挙げられている。
被告は、本件明細書のどこにも「表示板」が7セグメント表示素子でよ
いという記載がないこと、実施例に挙げられた表示内容がカタカナ、ひらがな、漢
字、数字であることから、構成要件Bの「表示板」には7セグメント表示を含まな
いと主張する。しかし、構成要件Bには「表示板」と記載されているだけで、液晶
板又はドットマトリックスなどと記載されているわけではないし、技術的にも、
「パチンコ台毎にその台に関する作動状況等の情報を表示でき」るという本件発明
の目的を達成することができる点では、7セグメント表示と液晶板等で異なるとこ
ろはない。また、数字は文字の一種であり、本件発明の実施例にも、数字を表示す
ることが明示されている。
したがって、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」とは、文字
又は図形のどちらかを表示する表示板であればよいということを意味する。
イ イ号物件及びロ号物件の構成⑥の「7セグメント表示素子を組み合わせ
てなる」表示部を備える表示板、並びにハ号物件、ニ号物件及びホ号物件の構成⑥
の「7セグメント素子を組み合わせてなる」表示部及び複数の表示灯からなる履歴
表示部を備える表示板は、7セグメントの表示素子によって数字を表示するもので
ある。したがって、文字又は図形を表示する表示板に該当し、構成要件Bの「文
字・図形を表示する表示板」という構成を充足する。
(2) 被告の主張
ア 構成要件Bの「文字・図形」の「・」は、新明解国語辞典によれば、
「(縦書きの場合)小数点を示したり並列する名詞などの間に使ったりする点」と
されている。
本件明細書には、「表示板」として7セグメント表示素子でもよいとは
記載されておらず、液晶板しか開示されていない。「産業上の利用分野」、「発明
の背景」、「発明の目的」の各項において、表示板に表示する事項は、当該パチン
コ台に関する作動状況等の情報であり、この作動状況は、開放台か否か、打ち止め
中か否か、呼出し中か否か、打ち止め回数、優秀台であるか否かなどであることが
記載されており、表示内容が数字、漢字、カタカナ、ひらがなで表示されることが
示唆されている。実施例には、表示内容として、具体的に、「打止」、「開放
台」、「呼出し中」、「只今係員を呼び出しておますので今暫くお待ち下さい」、
「トラブル1」、「トラブル2」、「18才未満の方の入場は固くお断りしており
ます」、「ヤッタ!ヤッタ!おめでとうございます」などが挙げられており、内容
と長さの点から、液晶板で数字、漢字、カタカナ、ひらがな等の文字により固定表
示又はスクロール表示することが開示されており、これらの表示は7セグメントの
表示板では行うことができない。
表示装置の表示板は極めて小スペースであり、パチンコ台及び呼出しス
イッチからの信号に基づいて作動状況に対応する比較的長文の表示内容を示すプロ
グラムをメモリから読み出して表示するものとしては、液晶板又はドットマトリッ
クス以外に考えられない。
したがって、構成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」とは、文字
と図形を表示することができる表示板、例えば本件明細書に記載されている液晶板
又は発光ダイオードによって数字や絵等の図柄を表すドットマトリックス等を意味
する。
イ イ号物件及びロ号物件の構成⑥の「複数の7セグメント表示素子を組み
合わせてなる」表示部を備える表示板14、並びにハ号物件、ニ号物件及びホ号物
件の構成⑥の「複数の7セグメント表示素子を組み合わせてなる」表示部及び複数
の表示灯からなる履歴表示部を備える表示板14は、7セグメント表示素子によっ
て数字を表示し得るのみであって、カタカナ、ひらがな、図形等を表示することが
できない。したがって、文字と図形を表示することができる表示板に該当せず、構
成要件Bの「文字・図形を表示する表示板」という構成を充足しない。
3 争点(3)(構成要件Dの充足性)について
(1) 原告らの主張
ア(ア) 構成要件Dの「作動状況」は、文言上、「打ち止め状態の検出、打
ち止め指令、打ち止め表示信号」に限定して解釈する余地はない。実施例にも、
「打ち止め状態の検出、打ち止め指令、打ち止め表示信号」以外に、フィーバ状態
(特許公報6欄18行以下)、不正行為状態(同6欄42行以下)という「作動状
況」の例示がある。ホールコンピュータは打ち止めのためにあるものではないこ
と、現在では打ち止めを行わないのが一般的であり、パチスロというパチンコ機の
普及により、ホールコンピュータによる打ち止めを行う余地がなくなったことか
ら、「作動状況」の一つとして打ち止めが必須であるということはできない。
「作動状況」の一つについてでも中央制御装置を不要とした場合に
は、システムが簡単かつ安価となるという本件発明の作用効果を達成することがで
きる。
被告製品は、中央制御装置専用に接続する専用の端子を備えているわ
けではなく、「打ち止め」を表示させるための信号を入力する端子を備えているだ
けであり、その端子への打ち止め信号の入力によりランプを点灯させるだけであ
る。そこで、打ち止め信号の入力には中央制御装置が必須のものではなく、別の制
御装置からの打ち止め信号、例えば、パチンコ台ごとに打ち止めを管理する制御装
置を付けて、その制御装置から被告製品へ打ち止め信号を入力しても、充分に作動
する。又は、中央制御装置からの打ち止め信号をパチンコ台に入力し、パチンコ台
から更に呼出しランプに出力するようにしても十分に作動する。そうであるから、
被告製品を使って打ち止めの操作をする場合に、中央制御装置は必須のものではな
く、被告製品は、中央制御装置なしで単独でも使用することができる。
(イ) したがって、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから
入力される作動状況を示す信号に基づいて」とは、作動状況を示す信号の少なくと
も一つがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力され、それに基づくことを意味す
る。打ち止め状態の作動状況を示す信号が中央制御装置から入力されたとしても、
それ以外の作動状況を示す信号がパチンコ台及び呼出しスイッチから入力される場
合は、構成要件Dを充足する。
(ウ)a 被告は、特開昭62-11482号公開特許公報(乙第4号
証)、実願昭57-185293号(実開昭59-93483号)の願書に添付し
た明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(乙第11号証)、雑誌「プ
レイグラフ」第22巻第2号(有限会社プレイグラフ、昭和61年2月20日発
行、乙第12号証)に基づき、従来、パチンコ遊技店では、打ち止め状態を含む作
動状況を示す信号を集中管理するため、中央制御装置(ホールコンピュータ)を必
要としていたが、本件発明は、この中央制御装置をなくすとともに、それに必要と
される配線等もなくしてシステムを簡易化し、これにより安価な表示装置を提供す
ることを解決課題としており、中央制御装置をなくすことを本質的特徴としている
が、被告製品は、基本的には乙第12号証に記載された「BIG SUPER 
Ⅱ」というパチンコ台の表示装置と機能的に同一であり、打ち止め状態の検出、打
ち止め指令、打ち止め表示信号については、本件発明の機能を有せず、中央制御装
置を必要としているから、本件特許権を侵害しないと主張する。
b しかし、乙第4号証、第11号証及び第12号証に記載された表示
装置は、コントロール室等に備えられた中央制御装置(ホールコンピュータ)で入
力された種々のデータを表示するものであり、端末の表示器としてのみ機能するも
のにすぎず、表示装置自体がCPUを有する制御装置を備えるものではない点で、
本件発明及び被告製品と根本的に相違する。
また、乙第11号証及び第12号証に記載された表示装置は、単に
ランプを点灯又は点滅させ、パチンコ台が打ち止め状態であることを遊技者に可視
表示するものにすぎず、CPUやメモリを備えたものではないから、本件発明に係
る表示装置や被告製品のように、制御装置が複数の表示内容を記憶するメモリとC
PUとを備え、CPUがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を
示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読
み出して表示板及びランプに表示させる機能を備えたものとは、根本的に相違す
る。
被告製品は、CPUにより、メモリに記憶された複数の表示内容を
読み出して表示する機能を備えたものであり、そのような機能を備えず、単にラン
プを点灯させて表示を行う、乙第12号証に記載された「BIG SUPER 
Ⅱ」というパチンコ台表示装置とは、全く異なる機能を備えたものである。
(エ) 被告は、本件明細書の実施例の記載に基づき、被告製品の表示板
は、パチンコ台の過去のデータ、履歴を数字で示しているにすぎず、これらはパチ
ンコ台の作動状況に対応する表示内容を表示しているのではないと主張する。
しかし、発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定め
られるべきであり、実施例の記載のみによって定められるべきではない。
(オ)a 被告は、被告製品では、過去のデータは表示板のみに表示されて
ランプには反映されず、また、打ち止め中か否か又は呼出し中か否かといったパチ
ンコ台の作動状況については、ランプが点灯、点滅するだけで表示板には表示され
ないから、構成要件Dの「表示板およびランプ」に表示されるものではないと主張
する。
b しかし、構成要件Dは、「CPUは、・・・前記表示板およびラン
プに表示させる」と定めているから、CPUが表示板とランプの双方を表示させる
構成を備えていれば、表示板とランプに同時に表示させなくても、構成要件Dを充
足する。実施例でも、例えばフィーバの場合には、「フィーバ中」、「ヤッタ!ヤ
ッタ!おめでとうございます」、「ジャンジャンお取り下さい」等のメッセージが
表示されるが、ランプには何も表示されない(特許公報6欄18行以下)。したが
って、構成要件Dの「表示板およびランプ」の意味は、この両者を一体としてとら
えた、「及び」と「又は」の双方を指すものとして解釈されるべきであり、表示装
置として「表示板およびランプ」が一体として存在し、その装置に表示させれば構
成要件Dを充足する。
構成要件Dは、「CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入
力される作動状況を示す信号に基づいて・・・表示させる」という構成を採るとこ
ろ、「および」という語について、被告主張のような解釈によれば、パチンコ台と
呼出しスイッチは、同時にパチンコ台の作動状況を示す信号をCPUに入力しなけ
ればならないことになる。しかし、そうすると、被告製品の構成⑥において、呼出
し中であるという作動状況を示す信号は、呼出しスイッチからしか入力されないか
ら、この点でも、構成⑥は構成要件Dを充足しないこととなってしまう。そこで、
この点でも、入力装置として、「パチンコ台および呼出しスイッチ」が一体として
存在し、その装置から入力されていれば、構成要件Dは充足すると解すべきであ
る。
(カ) 仮に構成要件Dがこのように解釈されなくても、CPUが入力信号
及び出力動作の双方を処理することができれば、構成要件Dを充足していると解す
べきである。
イ 被告製品は、構成⑥によれば、呼出しスイッチ22をオンすると制御装
置25を構成するワンチップマイクロコンピュータ29のCPU28がオン信号を
検出し、メモリ30に記憶してある内容に従い、ランプ(ホ号物件ではランプ部)
が点灯するように制御する。また、大当たりが出た場合は、パチンコ台Aの端子か
らCPU28へ大当たりを報じる信号が入力され、CPU28は、メモリ30に記
憶してある内容に従い、ランプ(ホ号物件ではランプ部)の交互点灯(ホ号物件で
は点滅)、流れ点灯を行うように制御する。大当たりを報じる信号は、メモリ30
(及び/又はメモリ32)に記憶され、CPU28はこれを用いて表示板14に大
当たりの履歴などを表示する。
したがって、被告製品においては、作動状況を示す信号がパチンコ台及
び呼出しスイッチから入力され、それに基づいて、CPUが、作動状況に対応する
表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプに表示させる
ということができ、被告製品は構成要件Dを充足する。
(2) 被告の主張
ア(ア)a 終戦後パチンコ産業が盛んになりだした当時においては、ランプ
と呼出しスイッチとからなるパチンコ台の表示装置が使用されていた。その後、こ
のような表示装置に呼出し応答表示板と補給表示板を設け、パチンコ台に補給用ス
イッチを設けるものが提案された。しかし、これらの表示装置には、打ち止め機能
(表示)は備えられていなかった。昭和48年ごろ、大型店にミニコンピュータが
導入され、昭和53年ごろにはコンピュータによる集中管理方式が採用され、昭和
55年ごろにドラム式フィーバー機が出現し、パチンコ業界において、各パチンコ
台の出玉、入玉、台売上等のデータ収集を1台のコンピュータで管理するととも
に、任意に設定した出玉、入玉の差が所定数を超えた場合に当該パチンコ台を打ち
止めにするように管理する、(ホール)コンピュータによる集中管理方式がパチン
コ店の大型化とともに主流となった。
b フィーバー機の出現後、特定の客が特定のパチンコ台を独占し、大
量の玉を受け取ることを防止するため、乙第11号証により、パチンコ台ごとに係
員呼出しスイッチ、係員呼出し告知部と打ち止め用告知部とを備え、打ち止め用告
知部を集中管理装置に電気的に接続して、遊技に供した球数と賞として排出した球
数の差が所定数を超えた場合、集中管理装置が打ち止め用告知部のランプを点灯又
は点滅させ、トラブル時には、係員呼出しスイッチのボタンを押すことによりラン
プを点灯させるようにした「パチンコ機の打止め表示装置」が提案された。
また、乙第4号証には、パチンコ機の「打止表示装置14」とし
て、「パチンコ機列2の上方に、各パチンコ機1ごとに」(乙第4号証3頁右下欄
5行ないし6行)設けられており、「少くとも打止回数を数値としてデジタルで可
視表示する打止回数表示手段15と、打止状態であることをランプなどにより可視
表示する打止表示手段16とを有し、両表示手段15、16を電気的制御手段17
により電気的に制御して所望の状態を表示させるもの」(同3頁右下欄7行ないし
13行)が開示されている。「打止表示装置14」には、「上記した各手段15、
16、17以外にも、打止状態が解放されたときに一時的に点灯表示する打止解放
表示手段18、打球がパチンコ機の遊技部内で詰った場合などにおいて遊技者が操
作する呼出操作部19、該操作部19が操作されたときに点灯表示する呼出表示手
段20などを設けてもよい」(同3頁右下欄14行ないし20行)とされている。
また、乙第4号証には、パチンコ機1が遊技に供されているときに集中的に管理す
るための管理装置10が開示されており、この管理装置は、「いわゆる制御用コン
ピューターであって、少くとも、CPU、メモリー、表示手段等を備えて各パチン
コ機1からの遊技データを収集して、記憶、演算すると共に、各パチンコ機1の制
御を行う」(同3頁右上欄9行ないし13行)ものである。そして、「各パチンコ
機の損失データと利益データの差数が予め設定されている打止め数に達すると、管
理装置10は当該パチンコ機に対して打止め指示を発して当該パチンコ機の遊技を
制御するのであるが、同時にこの検出出力を管理装置10が当該パチンコ機の打止
めデータとして記憶する」(同3頁左下欄13行ないし19行)とされている。こ
のため、「電気的制御手段17」は、パチンコ機1に設けた「賞球タンクスイッチ
7からの球不足信号と、管理装置10からの打止指令信号とにより判別して該当す
るパチンコ機の打止回数表示手段15の表示数値を一進させ、打止回数を加算表示
するとともに、打止表示手段16に打止状態を可視表示させる」(同4頁右上欄1
1行ないし18行)ものである。要するに、「打止回数表示手段15」が本件発明
の「表示板」に相当し、「打止表示手段16」、「呼出表示手段20」が本件発明
の「ランプ」に相当し、「呼出操作部19」が本件発明の「呼出しスイッチ」に相
当し、「管理装置10」及び「制御手段17」が本件発明の「制御装置」に相当す
る。したがって、乙第4号証には、表示板及びランプが制御手段を介してコンピュ
ータに接続されていること、パチンコ台がコンピュータに接続されていること、パ
チンコ台及び呼出しスイッチから入力されるいずれの作動状況でもランプが点灯す
るとともに、パチンコ台の打ち止め時に表示板に数字が表示されることが開示され
ている。このように、乙第4号証及び第11号証において、パチンコ台の表示装置
に打ち止め表示が加わり、打ち止め状態の検出、打ち止めに対する指令等を中央管
理装置によって行うものが開示された。
c 乙第12号証には、宝電機株式会社製の五つの機能を有する「BI
G SUPER Ⅱ」というパチンコ台表示装置が掲載されており、「終了・開放
の表示」の項には、「終了や打止を自動的に表示し、モーターが停止する。開放や
終了は表示ランプの点滅で知らせ、同時にモーターも復帰する。これらはすべてコ
ンピュータ(ホールコンピュータ)で制御される。」旨が記載されている。ここで
いう「コンピュータ」とは、ホールコンピュータを意味し、各パチンコ台から出玉
数、入玉数の信号がホールコンピュータに入力され、その差が所定数になったとき
に、打ち止め表示とモーター停止(打ち止め)信号を発するものである。また、磁
石不正使用、高圧パルス不正使用、特電役・電役の表示、トラブル(呼出し)等の
検出及び表示はパチンコ台又は呼出しスイッチからの信号に基づいて表示されるも
のであり、乙第4号証、第11号証に記載されたパチンコ台の表示装置に更に磁石
不正使用防止等の機能が付加されたものである。
d これらによれば、本件発明の特許出願がされた昭和62年ごろに
は、パチンコ業界においては、すでにホールコンピュータによる集中管理方式が広
く採用され、打ち止め制度が行われ、ホールコンピュータによりパチンコ台ごとに
出玉、入玉を管理してパチンコ台への打ち止め指令を出す一方、表示装置に打ち止
めであることを表示することが業界の主流であった。
(イ)本件明細書の「発明の背景」の項においては、各パチンコ台ごとに
打ち止めや打ち止め回数を表示するものとして特開昭62-11482号公開特許
公報(乙第4号証)記載のもの等が挙げられ、「この種の従来の装置は、複数のテ
レビ等の表示器をコントロール室の中央制御装置で集中管理するものであった。す
なわち中央制御装置で種々のデータを入力して端末の表示器に表示するものであっ
た。このように中央の制御装置と端末の表示器とを設ける場合には、全体のシステ
ムが複雑になりシステムが高価になるという問題があった。また小規模のパチンコ
遊技場には導入が困難であった。」(特許公報3欄4行ないし11行)という指摘
がされ、その上で、「発明の目的」の項においては、「パチンコ台毎にその台に関
する作動状況等の情報を表示でき、この表示に際して中央制御装置などが不要でシ
ステムが非常に簡単で安価になり、小規模のパチンコ遊技場にも適するパチンコ台
の表示装置を提供することを目的とする」(特許公報3欄14行ないし18行)こ
とが記載されている。
つまり、本件発明は、打ち止め状態を含むすべてのパチンコ台及び呼
出しスイッチの作動状況等の情報を、各パチンコ台ごとに設けた表示装置で処理、
表示するようにして、パチンコ遊技場で従来から集中管理のため必要としていた中
央制御装置(ホールコンピュータ)をなくすとともに、それに必要とされる配線等
もなくしてシステムを簡易化し、これにより安価な表示装置を提供することを解決
課題とするものであり、この点が本件発明の本質的部分である。なお、本件発明の
実施例には、パチンコ台の作動状況を示す信号として、打ち止め信号、フィーバー
信号、不正信号等が記載されており、打ち止め信号は、打ち止めセンサが予定玉数
の放出を検出して打ち止め信号を出力する場合に打ち止め表示を行い、また、この
時パチンコ台の玉の供給を停止して使用不能とする(この場合、中央制御装置は設
置されていないため、表示装置内で打ち止め等の信号を出すものと考えられる。)
旨が記載されている。
このように、本件発明は、少なくとも打ち止めに関する信号をパチン
コ台及び表示装置に信号として出力していた中央制御装置を必要とせず、打ち止め
制御、打ち止め表示を含むパチンコ台に関する作動状況の情報は、すべて当該パチ
ンコ台及び呼出しスイッチからの信号に基づくようにしたものと解釈されるべきで
ある。
(ウ) したがって、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから
入力される作動状況を示す信号に基づいて」とは、少なくとも打ち止めを含む作動
状況を示す信号のすべてがパチンコ台及び呼出しスイッチから入力され、それに基
づくことを意味する。打ち止めの作動状況を示す信号が中央制御装置から入力され
る場合は、構成要件Dを充足しない。
イ 被告製品においては、構成⑦のとおり、パチンコ台からセーフ玉及びア
ウト玉の計数が中央制御装置に入力され、中央制御装置は、打ち止め信号をパチン
コ台へ出力するとともに、打ち止め表示信号を被告製品へ出力するものであって、
被告製品の制御装置25は、打ち止め状態であるか否かの検出機能を全く有さず、
単に、中央制御装置からの指令に基づき、打ち止め表示をするだけであり、本件発
明において不要とされる中央制御装置を必要とするものである。被告製品は、基本
的には乙第12号証に記載された「BIG SUPER Ⅱ」というパチンコ台の
表示装置と機能的に同一である。そこで、被告製品は、少なくとも打ち止めを含む
作動状況を示す信号のすべてがパチンコ台および呼出しスイッチから入力されると
はいえず、構成要件Dを充足しない。
ウ 本件発明の表示板は、実施例からも明らかなように、開放台か否か、打
ち止め中か否か、呼出し中か否かなどのパチンコ台の作動状況に対応する表示内容
を表示するものである。しかし、被告製品の表示板14は、構成⑥によれば、パチ
ンコ台の過去のデータ、履歴を数字で表示しているだけであり、それは開放台か否
か、打ち止め中か否か、呼出し中か否かなどのパチンコ台の作動状況に対応する表
示内容を表示しているのではない。
したがって、被告製品の表示板は、本件発明の「表示板」には当たらな
い。
エ 構成要件Dの「表示板およびランプに表示させる」とは、ある作動状況
に対応する表示内容を、表示板とランプの双方に表示することを意味する。実際問
題として、フィーバー等が生じた場合、それを他人にも知らせて玉がよく出ること
を印象付け、景気付けることが必要であり、単にメッセージを表示するだけでな
く、ランプを点灯又は点滅することは必要である。しかし、被告製品においては、
構成⑥によると、仮に被告製品の7セグメントで表示されている「過去のデータ」
である数字が何らかの意味でパチンコ台の作動状況を表示するものであると考えた
としても、その過去のデータは表示板のみに表示されるもので、ランプには反映さ
れず、「表示板およびランプ」に表示されるものではない。また、構成⑥及び⑦に
よれば、呼出し中又は打ち止めなどのパチンコ台の作動状況について、被告製品は
単にランプが点灯、点滅するだけで表示板には表示されず、「表示板およびラン
プ」に表示されるものではない。
したがって、この点でも、被告製品は、構成要件Dを充足しない。
オ 被告の主張は、構成要件Dの「作動状況」を「打ち止め状態の検出、打
ち止め指令、打ち止め表示信号」に限定するものではない。
本件明細書の作用効果の欄にも記載されているように、全体システムが
非常に簡単で安価になるのは、中央制御装置を全く不要としたためであり、ある作
動状況等のためには中央制御装置は不要であるが、ほかの作動状況等のためには中
央制御装置を必要とするという場合は、本件発明の技術的範囲に属さない。
また、被告製品は、中央制御装置(ホールコンピュータ)からの打ち止
め信号等に基づいて打ち止め状態になったことをランプで表示することを目的とし
たものであり、中央制御装置と別にパチンコ台ごとに打ち止めを管理する制御装置
を取り付けてこの制御装置から呼出しランプに打ち止め信号を入力したり、中央制
御装置からの打ち止め信号をパチンコ台にいったん入力し、このパチンコ台から更
に呼出しランプに出力するような特殊な使用方法は念頭に置いていない。
4 争点(4)(進歩性)について
(1) 被告の主張
ア 本件発明は、構成要件AないしDのとおりである。
イ 本件発明の特許出願前に頒布された刊行物の記載は次のとおりである。
(ア) 乙第1号証の1(「あすのホール経営′86」プレイグラフ臨時増
刊号、昭和61年9月25日発行)275頁下欄の広告、乙第1号証の2(月刊誌
「娯楽産業」昭和61年2月号、昭和61年2月5日発行)33頁下段の記事及び
乙第1号証の3(ステイタスカウンターのパンフレット、昭和61年1月付け、杉
本電器株式会社作成)には、「業界初マイコン搭載の押釦スイッチ」である「ステ
イタス」として、「ノーマル」、「フィーバー」、「カウンター」の3種類が開示
されている。
しかるところ、乙第1号証の1ないし3には、本件発明の構成要件A
ないしC、及び構成要件Dのうち、パチンコ台及び呼出しスイッチから入力される
作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を表示板およびランプ
に表示させる点が開示されている。
(イ) 乙第2号証(特開昭52-105038号公開特許公報)には、パ
チンコ台に用いられるマイクロコンピュータの構成が示されており、本件発明の構
成要件Cが開示されている。
(ウ) 乙第3号証(特開昭54-29230号公開特許公報)には、各パ
チンコ台の稼動状況等を各台ごとに管理できるようにした電子管理装置が開示され
ている。
しかるところ、乙第3号証には、本件発明の構成要件A、構成要件B
のうち、文字・図形を表示する表示板と制御装置とが一つの筐体に装着されている
点、構成要件Cを示唆する技術的思想、及び構成要件Dのうち、パチンコ台から入
力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を表示板に表
示させる点が記載されている。
(エ) 乙第4号証(特開昭62-11482号公開特許公報)には、本件
発明の従来例の一つであるパチンコ機の打止表示装置が開示されている。
しかるところ、乙第4号証には、本件発明の構成要件A及びCが記載
されているとともに、構成要件Bのうち、文字を表示する表示板と、ランプと、呼
出しスイッチと、制御装置とが装着されている点が記載されている。さらに、乙第
4号証には、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示
す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み
出して表示板及びランプに表示させる点、及び呼出しスイッチから入力される作動
状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容をランプに表示させる点が
記載されている。
(オ) 乙第5号証(特開昭60-114284号公開特許公報)には、C
PU及びメモリを備えた端末装置にパチンコ台の稼動状況等のデータが入力された
ときに、これらのデータがCPU及びメモリで処理されて表示部に表示されること
が開示されている。
しかるところ、乙第5号証には、本件発明の構成要件C、及び構成要
件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示す信号に基づいて作
動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板に表示
させる点が記載されている。
(カ) 乙第6号証(実願昭49-60659号(実開昭50-14918
6号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)は、
パチンコ機用表示ランプに関するものである。
しかるところ、乙第6号証には、本件発明の構成要件Aが記載されて
おり、また、構成要件Bのうち、文字・図形を表示する表示板と、ランプと、呼出
しスイッチと、制御装置(コンピュータ)とを装着している点が記載されている。
さらに、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況を示す信
号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出し
て表示板及びランプに表示させる点、及びCPUが呼出しスイッチから入力される
作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメ
モリから読み出して表示板及びランプに表示させる点が記載されている。
(キ) 乙第7号証の1(実願昭60-185906号(実開昭62-92
877号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)
には、電子回路を内蔵した呼出しランプが開示されている。また、乙第7号証の2
(「プログラム学習によるマイコン制御 応用編」松下電器産業株式会社、昭和6
0年10月28日発行)は、一般的な技術常識を示す文献である
しかるところ、乙第7号証の1には、本件発明の構成要件Aが記載さ
れ、また、構成要件Bのうち、文字を表示する表示板と、ランプと、呼出しスイッ
チと、制御装置(電子回路)とを装着している点が記載されている。そして、パチ
ンコ台及び呼出しスイッチから入力信号が入ると、電子回路(コンピュータ)が作
動し、いずれかのランプが点灯すること、また、その点灯パターンでパチンコ台の
作動状況を示すことも開示されている。さらに、電子回路(コンピュータ)であれ
ば、乙第7号証の2からも明らかなように、CPU、メモリを備えていることは自
明であるから、本件発明の構成要件Cだけでなく、構成要件Dのうち、CPUがパ
チンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状
況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプ
に表示させる点も開示されている。
(ク) 乙第8号証(実願昭50-33437号(実開昭51-11607
9号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)は遊
技機の表示装置に関するものである。
しかるところ、乙第8号証には、本件発明の構成要件Aが記載されて
おり、また、構成要件Bのうち、文字を表示する表示板と、ランプ、呼出しスイッ
チが一つの筐体に装着されている点が開示されている。さらに、本件発明の構成要
件Dのうち、パチンコ台及び呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に
基づいて作動状況に対応する表示内容を表示板及びランプに表示させる点が開示さ
れている。
ウ 前記イ(ア)のとおり、乙第1号証の1ないし3には、本件発明の構成要
件A、B及びCと同一の構成が記載されている。本件発明と乙第1号証の1ないし
3に記載された構成との相違点を挙げるとすれば、構成要件Dのうち、CPUが作
動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出すという点につい
ての具体的な記載がない点のみである。
しかし、マイクロコンピュータであれば、メモリにプログラムを記憶さ
せておき、このプログラムを必要に応じてCPUが呼び出して処理することは当然
のことであり、構成要件Dのうち上記の部分は、自明であるか、当業者であれば容
易に予測し得ることである。構成要件Dが公知技術から自明であることは、乙第4
号証ないし第8号証に鑑みても明らかである。
また、構成要件Dのうち、CPUがパチンコ台から入力される作動状況
を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから
読み出して表示板及びランプに表示させる点は、乙第4、第5号証に開示されてお
り、CPUが呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状
況に対応する表示内容を示すプログラムをメモリから読み出して表示板及びランプ
に表示させる点は、乙第6号証、第7号証の1、2、第8号証に開示されている。
エ 以上によれば、本件発明は、その特許出願前に頒布された乙第1号証の
1ないし3に記載された発明に基づいて、又はその特許出願前に頒布された乙第1
号証の1ないし3、第2ないし第6号証、第7号証の1、2、第8号証に記載され
た発明に基づいて、容易に発明をすることができた(特許法29条2項)といえ
る。
オ(ア) 乙第1号証の3の右下隅には「東京通商産業局長表彰受賞」と記載
されており、被告大阪営業所a作成の平成13年2月22日付け証明書(乙第17
号証)に、昭和61年4月ごろから「ステイタスカウンター」の製造販売が行われ
ていた旨記載されていることから、これらに開示されている「ステイタス」が、本
件発明の特許出願前に市場で現実に販売され公知となっていたことは明らかであ
る。
「ステイタスカウンター」は、パチンコ遊技場の遊技機用表示ランプ
であるから、パチンコ台ごとに設置されるのは明らかであり、乙第1号証の1ない
し3に掲載された写真において、呼出しスイッチの左隣に位置する番号がパチンコ
台の台番を示す番号であることから、「ステイタスカウンター」がパチンコ台ごと
にその上方に設置されるものであることは明らかである。したがって、「ステイタ
スカウンター」には構成要件Aが開示されている。
「ステイタスカウンター」の外観図、部品配置図及び制御装置図(乙
第18号証)には、7セグメントからなる大当たり回数表示部と、ランプL1、L
2と、呼出しスイッチと、制御装置とが一つの筐体内に装着されていることが示さ
れている。原告らの主張によれば、このような7セグメントの表示板も本件発明の
表示板に含まれることになるから、「ステイタスカウンター」には、構成要件Bが
開示されている。
乙第17、第18号証によれば、「ステイタスカウンター」は、メモ
リとCPUとからなる1チップのマイクロコンピュータ(三菱電機株式会社製 品
番:M50760-915P)を装着している。マイクロコンピュータであれば、
CPUがメモリに記憶させたプログラムを必要に応じて呼び出し、処理することは
明らかであり、前記マイクロコンピュータが、大当たり回数表示部とランプL1、
L2にそれぞれ接続され、これらを作動させることから、メモリが複数の表示内容
を記憶していることは明らかである。したがって、「ステイタスカウンター」には
構成要件Cが開示されている。
構成要件Dは、構成要件B、Cの具体的動作を単に説明しているにす
ぎない。例えば、「ステイタスカウンター」の制御装置図及び回路構成図(乙第1
8号証)によれば、その制御装置には、パチンコ台の大当たり検出センサから大当
たり入力線が接続されている一方、大当たり回数表示部とランプL1、L2が接続
されているから、パチンコ台で大当たり(フィーバー)が発生した時には、その信
号がマイコンのCPUに入力され、メモリから複数の表示内容のプログラムを呼び
出し、大当たり回数表示部に大当たり回数を表示するとともに、ランプをパッシン
グさせる。このことは、「各種動作状態を示す表示内容」(乙第18号証)の写真
からも明らかである。「ステイタスカウンター」では、その呼出しスイッチがマイ
クロコンピュータに接続されていないが、これは、「ステイタスカウンター」を使
用するパチンコホールにそのような必要がなかったためであり、技術的に困難であ
ったことを意味するものではない。また、呼出しスイッチを操作することにより、
ランプを点灯し、表示板に文字を表示することは、乙第6号証、第7号証の1、
2、第8号証に開示されている。そこで、呼出しスイッチにマイクロコンピュータ
を接続して、表示板に多種多様な動作表示を行わせ、同時にランプを点滅させるこ
とは当業者にとって容易なことであった。したがって、「ステイタスカウンター」
には、構成要件Dが開示されていた。
「ステイタスカウンター」は、打ち止めに関する機能はないが、メモ
リとCPUを備えている。打ち止めに関して中央制御装置を必要とせず、表示装置
内の電子制御装置によって打ち止め及びその表示を行う表示装置が乙第3号証によ
り公知であったから、「ステイタスカウンター」のメモリ、CPUの容量を増強さ
せて打ち止めに関する電子制御を行わせることは、当業者であれば容易に想到する
ことができたといわざるを得ない。7セグメント表示板を液晶式表示板に置換する
ことは、特開昭56-75186号公開特許公報(乙第16号証)、実願昭59-
3945号(実開昭60-116394号)の願書に添付した明細書及び図面の内
容を撮影したマイクロフィルム(乙第19号証)によって開示されており、当業者
であれば容易に想到することができる。
(イ) したがって、本件発明は、その特許出願前に「ステイタスカウンタ
ー」の製造販売によって公然実施された発明に基づいて、容易に発明をすることが
できた(特許法29条2項)といえる。
(ウ) なお、構成要件Dの「作動状況を示す信号」を、「打ち止め状態を
含む作動状況を示す信号」と解釈せず、「打ち止め状態を除くその他の作動状況を
示す信号」と解釈するとすれば、「ステイタスカウンター」が、本件発明の構成要
件を充足するパチンコ台の表示装置として、本件発明の特許出願前に公然実施され
ていたこととなる。
カ このように、本件特許には無効理由(特許法123条1項2号)が存在
することが明らかである。したがって、本件特許権に基づく差止め、損害賠償等の
請求は、権利の濫用に当たり許されない。
(2) 原告らの主張
被告の主張は争う。
5 争点(5)(損害額)について
(1) 原告らの主張
被告は、パチンコ台の表示装置の専業メーカーであり、平成11年5月1
日から平成12年4月末日までの間に約39億4900万円の売上げを上げてお
り、そのうち被告製品の売上げが占める割合は5パーセントを下らないから、同期
間の被告製品の売上げは1億9745万円を下らない。
純利益率は10パーセントであるから、被告は、被告製品の製造販売によ
り、同期間に少なくとも1975万円の純利益を上げており、特許法102条2項
により、この純利益の額は、原告らが受けた損害の額と推定される。原告らは、被
告に対し、この内金1000万円を請求する。
(2) 被告の主張
原告らの主張の事実は否認し、主張は争う。
6 争点(6)(競争関係)について
(1) 被告の主張
原告らはパチンコ台の表示装置を販売しており、そうでなくてもパチンコ
台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収しており、被告はパチ
ンコ台の表示装置である被告製品を製造販売しているから、原告らと被告は競争関
係にある。
(2) 原告らの主張
被告の主張のうち、原告株式会社呉商がパチンコ台の表示装置を販売して
いること、原告らが、パチンコ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施
料を徴収していることは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。原告株式会社
サミットは、パチンコ台の表示装置を販売していない。
 7 争点(7)(虚偽事実の告知)について
(1) 被告の主張
ア 原告らは、被告の取引先十数社に対し、平成12年9月13日付け内容
証明郵便をもって、同取引先が販売している被告の製造に係るパチンコ台の表示装
置は本件特許権を侵害するものであるからその販売の中止を求めるという趣旨の通
知をした。
イ 被告が取引先に販売している被告製品は、本件特許権を侵害するもので
はないから、同取引先が販売している被告の製造に係るパチンコ台の表示装置が本
件特許権を侵害するものであるということは、虚偽の事実である。そして、これを
被告の取引先に通知することによって被告の営業上の信用が害されるから、前記ア
の通知をした行為は、不正競争防止法2条1項14号に該当する。また、このよう
な行為により被告の営業上の利益が侵害されるおそれがある。
(2) 原告らの主張
ア 被告の主張アのうち、原告らが、被告の取引先十数社に対し、平成12
年9月13日付け内容証明郵便をもって通知をしたことは認める。通知の内容につ
いては、「被告製品が、原告らの特許を侵害するものであるから、被告はその販売
を直ちに中止せよ。」という意義であることを前提として、これを認める。
イ 被告の主張イの事実は否認し、主張は争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点(3)(構成要件Dの充足性)について
(1) 本件発明の構成要件Dは、「前記CPUはパチンコ台および呼出しスイッ
チから入力される作動状況を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示
すプログラムを前記メモリから読出して前記表示板およびランプに表示させること
を特徴とするパチンコ台の表示装置。」というものであるが、その意味するところ
を本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて検討する。本件明細書の「産業
上の利用分野」の項には、「本発明は、パチンコ台の上方等に取付けられて、その
台の作動状況、例えば開放台か否か、打止中か否か、呼出し中か否か等の種々の情
報を表示するために用いるパチンコ台の表示装置に関するものである。」(特許公
報2欄6行ないし9行)と記載されている(甲第2号証による。以下同じ。)。
本件明細書の「発明の背景」の項には、次のとおり記載されている。「パ
チンコ遊技場において、遊技者は台を選択するに当って台毎の打止回数や、開放台
であるか否か、あるいは優秀台であるか否か等の情報を得たいと望んでいる。そこ
で複数の台につきこれらの情報をテレビ画面に一括して表示することがすでに提案
されている(例えば特開昭61-98274号、特開昭60-114284号)。
また各台毎に打止や打止回数等を表示するものも提案されている(例えば実開昭5
9-137776号、同59-93483号、同61-182781号、特開昭6
2-11482号等)。しかしこの種の従来の装置は、複数のテレビ等の表示器を
コントロール室の中央制御装置で集中管理するものであった。すなわち中央制御装
置で種々のデータを入力して端末の表示器に表示するものであった。このように中
央の制御装置と端末の表示器とを設ける場合には、全体のシステムが複雑になりシ
ステムが高価になるという問題があった。また小規模のパチンコ遊技場には導入が
困難であった。」(同2欄11行ないし3欄11行)。
本件明細書の「発明の目的」の項には、「本発明はこのような事情に鑑み
なされたものであり、パチンコ台毎にその台に関する作動状況等の情報を表示で
き、この表示に際して中央制御装置などが不要でシステムが非常に簡単で安価にな
り、小規模のパチンコ遊技場にも適するパチンコ台の表示装置を提供することを目
的とする。」(同3欄13行ないし18行)と記載されている。
本件明細書の「発明の効果」の項には、「表示装置は1つの筐体毎に独立
して作動し、取付けられるパチンコ台毎の作動状況をそれぞれ表示できる。すなわ
ち多数の表示装置を統轄する中央制御装置が不要であり、全体システムが非常に簡
単で安価になる。またパチンコ台数に対応して表示装置を設定すれば足りるので、
小規模の遊技場にも容易に導入可能である。」(同7欄17行ないし8欄4行)」
と記載されている。
(2) このような本件明細書の記載によれば、本件発明の特許出願前には、パチ
ンコ台の表示装置を中央制御装置で集中管理し、中央制御装置から種々のデータを
入力して端末の表示器に表示するものが知られていたが、本件発明は、表示装置を
独立に作動させ、パチンコ台ごとの作動状況をそれぞれ表示するように構成するこ
と、すなわち「CPUはパチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況
を示す信号に基づいて作動状況に対応する表示内容を示すプログラムを前記メモリ
から読出して前記表示板およびランプに表示させることを特徴とするパチンコ台の
表示装置」(構成要件D)という構成を採用することにより、多数の表示装置を統
轄する中央制御装置を不要とし、システム全体が非常に簡単で安価であり、小規模
の遊技場にも容易に導入可能であるという効果を奏するものということができる。
したがって、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動
状況を示す信号に基づいて」とは、文字通り、パチンコ台と呼出しスイッチから入
力される信号に基づくことを意味し、中央制御装置から送られる作動状況を示す信
号に基づくことを含まないものと解すべきである。作動状況を示す信
号のうちたとえ一部でも、中央制御装置から送られる信号に基づいて表示を行うな
らば、中央制御装置を不要とするという効果を奏することができず、システム全体
が非常に簡単で安価であり、小規模の遊技場にも容易に導入可能であるという効果
を奏することができない。
このような解釈は、構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから
入力される作動状況を示す信号に基づいて」という文言に忠実な解釈ということが
でき、構成要件の文言を殊更限定して解釈するものということはできない。
(3) 被告製品は、構成⑦によれば、中央制御装置50が、打ち止め表示信号を
表示装置10の入力インターフェース41を介して制御装置25へ出力し、制御装
置25が打ち止め表示信号を受けてランプを点灯させるものであり、中央制御装置
から送られる作動状況を示す信号に基づいて表示を行うものである。そうすると、
構成要件Dの「パチンコ台および呼出しスイッチから入力される作動状況を示す信
号に基づいて」という構成を充足しない。
したがって、被告製品は、本件発明の技術的範囲に属さない。
なお、原告は、被告製品を使って打ち止め操作をする場合に、中央制御装
置は必須のものではなく、被告製品は中央制御装置なしで単独でも使用することが
できると主張するが、構成⑦によれば、被告製品は、中央制御装置から出力される
打ち止め表示信号に基づいて表示を行うから、原告のこの点に関する主張は、被告
製品とは前提を異にするものというべきであり、採用することはできない。
(4) そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、被告製品の製造、販
売及び使用は、いずれも本件特許権を侵害しないものというべきである。
2 争点(6)(競争関係)について
原告株式会社呉商がパチンコ台の表示装置を販売していること、原告らが、
パチンコ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収していること
は、当事者間に争いがない。
不正競争防止法2条1項14号の「競争関係」にあるというためには、現実
に具体的な競争関係にあることを要せず、広く同種の商品又は役務について業務を
行い、顧客獲得のために競争関係があれば足りるものと解すべきである。前記のと
おり、原告株式会社呉商はパチンコ台の表示装置を販売しており、原告らはパチン
コ台の表示装置を製造販売している者から特許の実施料を徴収している。一方、被
告は、パチンコ台の表示装置である被告製品の製造販売を行っている(前記第2の
2基礎となる事実(4))。そうすると、原告らと被告は、パチンコ台の表示装置とい
う同種の商品について業務を行っているものであり、これらの販売業者やこれらを
導入するパチンコ遊技場などを顧客として獲得するについて競争関係にあるといえ
る。
したがって、原告らと被告は、不正競争防止法2条1項14号の「競争関
係」にあるものと認められる。
3 争点(7)(虚偽事実の告知)について
(1)乙第13号証、第14号証の1ないし15及び弁論の全趣旨によれば、原
告らは、被告の取引先であり、被告製品の販売を行っている錦商事株式会社、三栄
実業株式会社、大都販売株式会社、コア電子株式会社、有限会社北英商事、株式会
社アカミズ電機、株式会社ユムラ商事、株式会社エレコン総業、ジーピーエム株式
会社広島支店、株式会社四国宝商事、有限会社中国ニシキ、株式会社四国エース電
研、USS方式自動補球工事有限会社、原建設株式会社、有限会社ダイシンシステ
ムに対し、平成12年9月13日付けの内容証明郵便をもって、「貴社が販売され
ております呼出ランプの中には、通知会社の所有する特許権(特許第259992
1号、同2599922号、同2686497号)に抵触しているものが含まれて
います。通知会社としては、製造者に対し製造販売を取りやめるよう請求し、一部
については、訴訟提起もしておりますが、未だ製造販売を中止されないことから、
やむを得ず、販売しておられる貴社に対しても、呼出ランプの販売が当社特許権を
侵害することを警告させていただき、販売中止を申し入れる次第です。このまま販
売を続けられますと、当該呼出ランプを使用しておられるホールの方々に対して
も、使用の差止等を求めることになりかねませんので、販売を直ちに中止してくだ
さい。」という通知をしたことが認められ(原告らが被告の取引先十数社に対し、
平成12年9月13日付け内容証明郵便をもって通知したことは、当事者間に争い
がない。)、この通知の趣旨は、通知先が行う被告製品の販売が原告らの登録番号
第2599921号、第2599922号の特許権及び本件特許権を侵害するこ
と、並びに被告製品の販売の中止を要請することであると認められる。
前記1(1)ないし(4)のとおり、被告製品の製造、販売及び使用はいずれも
本件特許権を侵害しないから、前記通知のうち、被告製品の販売が本件特許権を侵
害するということは虚偽の事実であると認められる。そして、このような虚偽の事
実を被告の取引先に通知することが、被告の営業上の信用を害する行為であり、不
正競争防止法2条1項14号の「営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は
流布する行為」に該当することは、明らかである。また、被告製品が本件特許権を
侵害するとすれば、被告の取引先は、原告らからの販売差止めや損害賠償の請求を
避けるなどの理由により、被告と被告製品の取引を中止するなどに至ることから、
このような虚偽の事実の告知又は流布により、被告の営業上の利益が侵害されるお
それ(不正競争防止法3条1項)もあるものと認められる。
(2) したがって、被告は、原告らに対し、被告が製造販売する被告製品が本件
特許権を侵害するという事実を、文書又は口頭で告知し又は流布することの差止め
を求めることができる。
4 以上によれば、本訴請求は理由がないから、これを棄却し、反訴請求は理由
があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。
 大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官   小   松   一   雄
 裁判官   中   平       健
裁判官   田   中秀   幸
物件目録1(イ号物件) イ号図面
物件目録2(ロ号物件) ロ号図面
物件目録3(ハ号物件) ハ号図面
物件目録4(ニ号物件) ニ号図面
物件目録5(ホ号物件) ホ号図面
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