弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 本件申立てを却下する。
二 申立費用は申立人の負担とする。
       理   由
一 申立ての趣旨
 名古屋地方裁判所平成一〇年(行ウ)第六五号事件における被告Aを名古屋市立
小中学校教頭会(以下「教頭会」という。)に変更する。
二 当事者の主張
1 申立ての理由
 申立人は、被告を教頭会とすべきところ、本人訴訟であり、法律に精通していな
かったため、本件補助金が教頭会に支出されたものであることは知りつつ、右支出
の申請を教頭会の会長である被告Aが自らの責任において行ったものであるから、
同人が不当利得返還請求の相手方であると考え、被告をA個人としたものであり、
被告とすべき者を誤った。
 本件訴訟は、地方自治法二四二条の二第一項四号の規定に基づく住民訴訟である
から、行政事件訴訟法四二条の民衆訴訟に該当し、かつ、地方自治法二四二条の二
第二項に出訴期間の定めがあるので、行政事件訴訟法四三条三項、四〇条二項によ
り、同法一五条が準用される。
 本件は本人訴訟であるので、重大な過失の判断はゆるやかに解釈すべきである。
2 相手方の意見
(一) 準用規定が積み重ねられているので、行政事件訴訟法一五条の準用が認め
られるかどうかは疑問である。
(二) 行政事件訴訟法一五条の趣旨からして、本件のように、行政庁ではなく、
不当利得返還請求の相手方を誤ったときは同条の適用をすべきではない。
 申立人は、訴状において、本件補助金を教頭会が申請し、教頭会が名古屋市から
公金を支出させたものであることを記載していること、甲五の名古屋市職員措置請
求書においても、申立人の主張として、本件補助金が教頭会に対してされたもので
ある等の記載があること等からしても、申立人は、相手方を個人と権利能力なき社
団と誤ったものである。
(三) 行政事件訴訟法一五条により被告を変更することができるのは、原告に
「故意又は重大な過失」がないことが必要であるが、前記(二)のとおり、申立人
は漫然と被告とすべき者を誤ったものであり、その誤りは訴えの提起に当たり当然
払うべき些少な注意を怠ったことに起因するものであり、重大な過失がある。
 申立人は、法律に精通していないというが、申立人は、元教員であって教頭会を
始め教員組織に精通しているのみならず、多くの訴訟を提起し、平成八年以降で
も、校長等を被告とする三件の住民訴訟を提起した経験を有し、必要な法律知識は
備えているものである。
三 当裁判所の判断
1 本案事件は、名古屋市が、教頭会に対し、平成九年度に合計二九八万四〇〇〇
円の補助金を支出したこと(以下「本件支出」という。)は違法であるとして、名
古屋市の住民である原告が、支出決定者であった同市の職員ら、及び、右補助金を
支給された教頭会の会長・副会長である者を被告として、同市に代位して、損害賠
償あるいは不当利得返還を求めた住民訴訟である。被告B及び被告Cに対しては、
地方自治法二四二条の二第一項四号前段の「当該職員」に対する損害賠償として、
被告Aに対しては、同条項四号後段の「相手方」に対する不当利得の返還として、
請求するものである。
2 地方自治法二四二条の二第六項は、住民訴訟に関し、同条二項ないし五項に定
めるもののほか、行政事件訴訟法四三条の規定の適用があるものとし、行政事件訴
訟法四三条三項は、民衆訴訟又は機関訴訟で、同条一項(処分又は裁決の取消しを
求めるもの)及び二項(処分又は裁決の無効確認を求めるもの)に規定する以外の
ものについては、同法三九条及び四〇条一項の規定を除き、当事者訴訟に関する規
定が準用されるとしている。そして、同法四〇条二項は、一五条の規定を、出訴期
間の定めがある当事者訴訟に準用すると規定している。
 前記1のとおり、本案事件は、地方自治法二四二条の二第一項四号の住民訴訟で
あり、民衆訴訟として、行政事件訴訟法四三条三項の適用があり、出訴期間の定め
がある場合には、行政事件訴訟法一五条の準用が認められるところ、住民訴訟につ
いては、地方自治法二四二条の二第二項で出訴期間が定められているから、形式的
には行政事件訴訟法一五条の準用が認められるものといわなければならない。
3 しかし、行政事件訴訟法一五条により、取消訴訟において被告を誤った場合に
変更することが認められているのは、行政法規や行政組織が複雑であるために、被
告とすべき者を誤るおそれがあり、その場合に改めて正当な被告に対し訴えを提起
しようとしても、取消訴訟には出訴期間の定めがあり(同法一四条)、出訴が許さ
れなくなるという事態が生じ得るため、その救済策として設けられたものである。
その趣旨は、行政事件訴訟法四三条三項、四〇条二項で準用する場合にも異なるも
のではなく、民衆訴訟又は機関訴訟において、行政法規や行政組織が複雑であるた
めに、被告とすべき者を誤った場合に、出訴期間徒過による、出訴が許されなくな
るという事態を救済するための規定であると解すべきである。
 また、被告を誤った場合、民事訴訟によれば、別個の訴えを提起する必要がある
ところ、行政事件訴訟法一五条の変更許可は、例外として定められたものであるか
ら、住民訴訟のように、準用規定で適用させる場合には、趣旨に合致する場合に限
定する必要がある。
 したがって、住民訴訟に関して言えば、行政法規や行政組織が複雑であるために
被告を誤るおそれがないような、地方自治法二四二条の二第一項四号後段の「相手
方」に対する不当利得返還請求において、被告を誤った場合にまで、行政事件訴訟
法一五条を適用する余地はないものと解される。
4 前記1のとおり、本件の被告Aに対する請求は、地方自治法二四二条の二第一
項四号後段の相手方に対する不当利得返還請求であるから、行政事件訴訟法一五条
の準用は認められない。
 申立人は、本件補助金が教頭会の会長である被告A個人に支出されたのではな
く、教頭会に支出されたものであることを認識しつつ、右支出申請を被告Aが自ら
の責任で行ったものであるから、Aが不当利得返還請求の相手方である被告と誤っ
たと主張する。
 しかし、支給対象者が、権利能力なき社団である教頭会であるか、それとも教頭
会の会長である被告A個人かという誤りは、行政法規や行政組織が複雑であること
により誤ったものではないから、申立人の主張は理由がない。
 よって、行政事件訴訟法一五条の準用は認められない。
5 以上によれば、申立人の本件申立ては理由がないから、却下することとし、主
文のとおり決定する。
平成一一年三月八日
名古屋地方裁判所民事第九部
裁判長裁判官 野田武明
裁判官 佐藤哲治
裁判官 安永武央

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛