弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人中本照規、同田宮敏元、同辺見陽一連名の上告趣意第一点は、憲法三八条
三項違反をいうが、共犯者の供述を、右憲法の規定にいう「本人の自白」と同一視
し、又はこれに準ずるものとすべきでないことは、当裁判所の判例(昭和二九年(
あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決・刑集一二巻八号一七一八頁)と
するところであるばかりでなく、本件については、原判決が共犯者の供述のみによ
つて被告人の本件犯罪事実を認定したものでないことは、原判決が掲記する証拠の
標目自体によつても明らかであるから、所論は採用することができない。
 同第二点は、憲法一四条違反をいうが、その実質は、単なる法令違反の主張であ
つて、適法な上告理由にあたらない。
 同第三点は、判例違反をいうが、原判断は所論引用の各判例となんら相反するも
のではないから、論旨は理由がない。
 同第四点は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 同第五点は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 なお、所論にかんがみ、記録を調査したが、原判決の掲記する各証拠を総合すれ
ば、被告人の本件犯罪事実を認定するに十分である。
 よつて、刑訴法四〇八条により、主文のとおり判決する。
 この裁判は、裁判官下田武三の意見及び裁判官団藤重光の反対意見があるほか、
裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官下田武三の意見は、次のとおりである。
 わたくしは、自白の証明力を制限し、被告人に不利益な唯一の証拠が本人の自白
である場合には、有罪としないものと定めた憲法三八条三項の根本趣旨に徴すれば、
同条にいう「本人の自白」には、共犯者の自白も含まれると解するを相当とするも
のと考える。けだし、当局者による自白強要の対象となり、又は、当局者に対し迎
合自白をするおそれは、共犯者の場合と被告人本人の場合とで、なんら差異がない
のみか、時として、却つて共犯者について、そのおそれが一層強い場合すらありう
ると考えられるからである。わたくしは、この点に関する一般論としては、団藤裁
判官の反対意見に同調するものであり、その理由の詳細については、同裁判官の意
見を援用する。ただ、わたくしは、本件の場合については、原判決挙示の物的証拠
と証人の証言は、共犯者Aの自白を補強するに十分なものがあると認めて差支えな
いと考えるので、結論としては、本件上告を棄却すべしとする多数意見に賛成する
ものである。
 裁判官団藤重光の反対意見は、次のとおりである。
 憲法三八条三項は「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合
には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定しているが、ここにいう「本
人の自白」の中に共犯者の自白が含まれるかどうかについては、はげしい論争のあ
るところである。私見によれば、この規定が、自白の偏重を避けて誤判を防止する
趣旨である以上、本人の自白と共犯者(必要的共犯者を含む。以下、同じ。)の自
白とのあいだに区別はないはずである。自白強要のおそれという見地からみて共犯
者の全員について差異がないばかりでなく、誤判の危険という観点からすれば、共
犯者甲の自白を唯一の証拠として共犯者乙を処罰することは、本人の自白を唯一の
証拠としてこれを処罰することと比較して、むしろ、その危険はまさるともおとら
ない。共犯者は、動機はともあれ、ややもすれば当局者の意をむかえるために、自
分の相棒に不利な事実を誇張し有利な事実を隠蔽しようとする積極的意図のみとめ
られる場合がかならずしも稀ではないといわれる。共犯者の自白を唯一の証拠とし
て処罰することを許すのは、憲法三八条三項の趣旨を没却するものといわなければ
ならない。
 そればかりではない。共犯者中の一人が自白をし他の一人が否認をしていて、し
かも、他に補強証拠がないという事案を想定するときは、反対説においては、自白
をした者は自分の自白しかないから無罪となり、否認をした者は共犯者の自白があ
るから有罪となるという結果になる。自白をしたものが有罪、否認をしたものが無
罪というのならばまだしも、自白をした者が無罪、否認をした者が有罪というのは、
はなはだしく非常識な結論である。しかも、共犯者は、もともと、なるべく合一的
に法律関係が確定されるべき性質のものである。たとえば告訴不可分(刑訴法二三
八条)や公訴時効の停止(同法二五四条二項)に関する規定はこれを端的に示すも
のであるが、関連事件の管轄(同法九条一項二号)、訴訟費用の連帯負担(同法一
八二条)などに関する規定にも、その趣旨がうかがわれる。なお、共同被告人に関
する種々の規定―上告審における判決の破棄(同法四〇一条、四一四条)、死刑執
行期間(同法四七五条二項但書)など―も、間接には同様の趣旨によるものと考え
てよい。かように、法がなるべく法律関係の合一的確定をはかつているところの共
犯について、ちぐはぐな解決、しかも非常識ともいえるような形での解決をみちび
くような解釈をとることは、とうてい正当とはおもわれない。かようにして、わた
くしは、憲法三八条三項の「本人の自白」の中には、当然に共犯者の自白をも含む
ものと解するのである。「本人の」という字句に拘泥する形式的な文理解釈論は、
この際、論外といわなければならない。
 多数意見のいうとおり、当裁判所の昭和三三年五月二八日大法廷判決・刑集一二
巻八号一七一八頁の多数意見は、右のような私見とは反対の結論を採用している。
その判示するところによれば、「憲法三八条三項の規定は(中略)自由心証主義に
対する例外規定としてこれを厳格に解釈すべきであつて、共犯者の自白をいわゆる
『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない」とされて
いるが、基本的人権に関する憲法の規定が刑事訴訟法上の原則である自由心証主義
の「例外規定」だからという理由で厳格に解釈されなければならないというのは、
事柄の軽重をあやまるものというべきではあるまいか。のみならず、刑事訴訟法に
おける自由心証主義はもともと事実認定を合理的ならしめるためにみとめられてい
るものであり、これをさらに合理的なものにするために設けられたのが憲法三八条
三項(なお、刑訴法三一九条二項、三項)の規定なのである。後者を制限的に解釈
しなければならない理由は、どこにもない。この大法廷判決に真野、小谷、藤田、
小林、河村大助、奥野各裁判官の反対意見が付せられたのは当然であつて、その後、
この大法廷判決にしたがつた小法廷判決がいくつか出ているが、その中には高木裁
判官(昭和三五年五月二六日第一小法廷判決・刑集一四巻七号八九八頁)および田
中二郎裁判官(昭和四五年四月七日第三小法廷判決・刊集二四巻四号一二六頁)の
反対意見が現われている。わたくしは、これらの各裁判官の反対意見にくみするも
のであり、前記大法廷の判例は変更されるべきものと考える(なお、私見の詳細に
ついては、団藤・新刑事訴訟法綱要・七訂版・二八五頁以下、同・「共犯者の自白」
斉藤金作博士還暦祝賀・現代の共犯理論・昭和三九年・所収)。
 いま本件についてみるのに、原判決の援用する証拠のうち、主要なものは本件受
供与者として被告人の必要的共犯者であつたAの供述調書であつて、他の証拠がは
たしてAの自由を補強するに足りるものであるかどうかは、はなはだ疑わしく、前
記のような見地に立つて被告人を有罪とするためにはさらに審理を尽すことを要す
るものといわなければならない。
 よつて、わたくしは、原判決を破棄し事件を原審に差し戻すのを相当と考えるも
のである。
  昭和五一年二月一九日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    団   藤   重   光

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