弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人伊藤利夫上告趣意第一点について。
 所論一、は原判決の認容した第一審判決の判示にかかる犯罪事実につき、被告人
は高鍋税務署庶務課徴収係雇として、徴収税金を保管する職務権限あるものとし、
これを業務上横領罪に問擬したのは刑法第二五三条の解釈を誤り、且つ高松高等裁
判所第一刑事部昭和二四年一二月二四日言渡窃盗被告事件の判決と相反するという
のであるが、原判決が是認した第一審判決によれば、被告人は高鍋税務署庶務課に
勤務し同署徴収係として徴税の業務に従事していたところ、納税者が納入した税金
を夫々業務上保管中擅に費消した旨判示して居り、右判示事案はその挙示の証拠で
十分認め得るところであるが、殊に右第一審判決が証拠として採用した被告人の第
一審公判廷に於ける供述によれば、被告人は弁護人の「納税者からお前が税金を受
取つてよいということはいわれていたか」との問に対し、被告人は「私にその権限
がありました」と述べている(記録第一四五丁裏)点に徴すれば、本件第一審判決
は被告人には納税者から税金を受領し保管する権限のあつた事実を認定したもので、
単に他人の手足として税金受領の事務を補助するに過ぎない事実を判示したもので
はないことは原判文上明らかである。してみれば被告人の行為は横領罪にあたり、
窃盗罪ではない。所論引用の判例は、犯人に独自の保管権限のない場合に関するも
ので、本件に適切ではなく、従つて原判決は判例に反する判断をしたものではない。
のみならず刑法第二五三条にいわゆる業務とは法令によると、慣例によると、将た
また契約によるとを問わず、苟も一定の事務を常務として反覆する場合を指称する
のであり、(昭和二四年(れ)第二九一〇号同二五年三月二四日第二小法廷判決参
照)たとい雇員で法令上の権限はなくても、上司の命令に基づき又は慣例によつて
一定の事務を反覆執行する場合は、これを刑法第二五三条の業務とすることが相当
である。そして被告人は高鍋税務署に勤務し徴収係として納税者から税金を受領す
る権限を認められていたこと前示のとおりであるから、被告人の所為が業務上横領
を構成すること論をまたない。よつてこれに対し原審が刑法第二五三条を適用した
ことは正当である。論旨は理由がない。
 所論二、は原判決が認容した第一審判決は判示第一乃至第七の七個の費消横領の
併合罪を認めたものと解されるが、その表現方法は判示の七回に亘つて納税者から
受取り保管した税金を「その頃」「前記高鍋町等において」「自己の遊興費、小遣
銭等に費消」したとあるのみであり、かかる判示では右七回の行為を包括一罪とし
たものとも解し得られ、その費消の日時、場所、金額、回数等が個別的に明確にさ
れていないから併合罪の判示としては理由不備であり、仙台高等裁判所秋田支部昭
和二五年七月三一日言渡詐欺業務上横領被告事件判決の判例に反すると主張するの
である。しかし原判決が認容した第一審判決の判示はいささか簡に失する嫌いはあ
るけれども右は第一乃至第七の七個の費消横領罪を認定したもので末尾に「夫々業
務上保管中其の頃擅に前記高鍋町等に於て自己の遊興費小遣銭等に費消横領したも
のである」と判示したのは第一乃至第七判示の如き経緯の下に納税者から夫々受領
保管した金員を夫々第一乃至第七記載の日時高鍋町等で或は遊興費に或は小遣銭に
費消した事実を表現するもので、第一乃至第七の各項毎に費消した旨判示する代わ
りに末尾に一括して判示したに止り右の如き判示によつても第一審判決が七個の費
消横領の事実を個別的具体的に判示したものというに足りるから第一審判決の判示
は結局論旨引用の前記仙台高等裁判所秋田支部の判決と同趣旨に帰し、両者かれこ
れ相背馳するものではないから、論旨は理由がない。
 同第二点について。
 所論は原判決の量刑の不当を主張するものであり上告適法の理由にならない。
 よつて刑訴施行法第三条の二刑訴法第四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は全裁判官一致の意見である。
  昭和二六年一〇月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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