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令和3年2月18日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官
平成29年(ワ)第10716号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結の日令和2年12月7日
判決
原告株式会社サンレール5
同訴訟代理人弁護士藤川義人
同雨宮沙耶花
同野中啓孝
同補佐人弁理士正木裕士
被告井上商事株式会社10
同訴訟代理人弁護士山崎邦夫
同石川直基
同山根睦弘
同寺西慶晃
同笠井計志15
同渡邊麻衣
同訴訟代理人弁理士稗苗秀三
同補佐人弁理士藤原清隆
主文
1被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,又は20
譲渡の申出をしてはならない。
2被告は,別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。
3被告は,別紙方法目録記載の方法を使用してはならない。
4被告は,原告に対し,5481万9267円及びうち以下
の各金員につき,これに対する各記載の日から各支払済みま25
で年5分の割合による金員を支払え。
(1)957万0761円につき,平成29年11月16日
(2)1334万2478円につき,平成30年5月23日
(3)2066万1600円につき,同年12月27日
(4)1124万4428円につき,令和元年6月5日
5原告のその余の請求を棄却する。5
6訴訟費用は,これを10分し,その2を原告の負担とし,
その余を被告の負担とする。
7この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求10
1主文第1項~第3項と同旨
2被告は,原告に対し,7341万3015円及びうち1273万7186円
に対する訴状送達の日の翌日(平成29年11月16日)から,うち1772万9
552円に対する平成30年5月23日から,うち2775万9663円に対する
同年12月27日から,うち1518万6614円に対する令和元年6月5日から15
各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1本件は,発明の名称を「手摺の取付装置と取付方法」とする特許(以下「本
件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。また,本件特許
に係る特許請求の範囲請求項1記載の発明を「本件発明」という。)に係る特許権20
を有する原告が,被告の製造,販売する別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」
という。)に係る別紙方法目録記載の方法(以下「被告方法」という。)は本件発
明の技術的範囲に属し,被告による被告製品の製造,販売及び販売の申出は本件特
許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)に該当し,また,被告による被告方
法の使用は本件特許権の直接侵害に該当するとして,被告に対し,本件特許権に基25
づき被告製品の製造,譲渡,譲渡の申出及び被告方法の使用の差止(同法100条
1項)並びに被告製品の廃棄(同条2項)を求めると共に,本件特許権侵害の不法
行為に基づく損害賠償として7341万3015円及びうち1273万7186円
に対する訴状送達の日の翌日(平成29年11月16日)から,うち1772万9
552円に対する平成30年5月23日から,うち2775万9663円に対する
同年12月27日から,うち1518万6614円に対する令和元年6月5日から5
各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であ
る。
2前提事実(証拠を掲げていない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実である。)
(1)当事者10
ア原告は,アルミ製手摺の製造販売等を業とする株式会社である。
イ被告は,アルミ製手摺などアルミ製外装建材の製造販売及び施工等を業とす
る株式会社である。
(2)本件特許権
原告は,以下の特許権(本件特許権)を有する(以下,本件特許に係る明細書及15
び図面を「本件明細書」という。)。本件明細書の記載は,別紙「特許公報」のと
おりである(甲2)。
特許番号特許第5330032号
発明の名称手摺の取付装置と取付方法
出願日平成21年3月11日20
登録日平成25年8月2日
特許請求の範囲別紙「特許公報」の特許請求の範囲請求項1記載のとおり
(3)構成要件の分説
本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
AベランダのパラペットP上にその長手方向に所定間隔おきに手摺支柱1を立25
設し,これら手摺支柱1の上端部に手摺笠木2を架け渡すことによって手摺本体3
を形成してなる手摺の取付方法において,
B手摺本体3の室外側に,手摺本体3の長手方向略全域にわたってガラス上縁
部嵌合溝4が連通形成されるガラス用上枠5と,手摺本体3の長手方向略全域にわ
たって前記ガラス上縁部嵌合溝4に対応するガラス下縁部嵌合溝6が連通形成され
たガラス用下枠7と,上下枠5,7間に,ガラス側縁部嵌合溝8,9が形成されて5
なる左右側枠10,11とからなるガラス取付枠14が一体又は一体的に設けられ,
Cこのガラス取付枠14に複数のガラス板12と各ガラス板12間に目地材を取り
付けるにあたって,目地材としてアルミ製目地枠13を用い,
Dまた手摺支柱1の室外側側面には,アルミ製目地枠13を係止するための係止
爪15が突設され,10
Eアルミ製目地枠13の室内側側面には,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長
手方向の一方側から摺動させることによって前記係止爪15に係止される被係止爪
16が突設され,
Fしかして,まず最初のガラス板12を室内側からその上縁部12aをガラス上縁
部嵌合溝4に嵌合し,15
G次にその下縁部12bをガラス下縁部嵌合溝6に落し込むように嵌合する所謂
倹鈍式によってガラス板12を上下枠5,7間に嵌め込み,
H次にそのガラス板12を上下縁部嵌合溝4,6に沿って一方側から摺動させて,
該ガラス板12の側縁部12cをガラス取付枠14の他方側の側枠10のガラス側縁部
嵌合溝8に嵌合し,20
I次にアルミ製目地枠13を上下枠5,7間を一方側から摺動させて,その被係
止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に
係止させ,これによって該目地枠13を最初のガラス板12の側縁部12dに係合保持
させ,
Jそして次のガラス板12を同様にして室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌25
め込み,これも同様に一方側から摺動させて,該ガラス板12の側縁部12cを先の
アルミ製目地枠13に係合保持させ,
Kこのようにして複数のガラス板12とアルミ製目地枠13を交互にガラス取付
枠14に室内側から取り付けることによって,手摺本体3の室外側長手方向略全域
に複数のガラス板12が連続して手摺本体3とアルミ製目地枠13に囲繞されるよう
にして取り付けられる5
L手摺の取付方法。
(4)被告の行為等
ア被告による被告製品の製造販売
被告は,平成29年1月13日~令和元年6月5日の間,被告製品を製造,販売
したところ,その総販売数は1万8606.3mである。10
なお,被告が被告製品のみを販売した12件の工事における被告製品合計148
0.6mの売上金額(税別)は,合計997万7918円であり,1m当たりの売
上金額は6739円である。
イ被告方法の構成
被告製品は,別紙被告製品説明書のとおりの構成を有するものであるところ,被15
告方法により取り付けられるものである。
被告製品の取付けに当たり,被告は,別紙方法目録記載3の構成a~kのうち,
手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工(構成a及びb)までを行い,その後の
ガラス取付作業(構成c~k)は,別の施工業者によって施工されている。
被告方法の構成のうち,構成a~c,g,h及びlは,本件発明の構成要件A~C,20
G,H及びLをそれぞれ充足する。
3争点
(1)本件発明の技術的範囲への属否(争点1)
(2)直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)
(3)無効理由の有無(争点3)25
ア特開2004-256993号公報に基づく進歩性欠如の有無(争点3-1)
イサポート要件違反の有無(争点3-2)
(4)原告の損害額(争点4)
第3当事者の主張
1本件発明の技術的範囲への属否(争点1)
(原告の主張)5
(1)被告方法は,以下のとおり,本件発明の構成要件A~C,G,H及びLのほか,
D~F及びI~Kをも充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。
(2)「係止」(構成要件D,E,I)の意義
「係止」とは,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動さ
せるという手段を介して,アルミ製目地枠13を手摺支柱1にその室内外方向に移10
動するのを規制するように被係止爪16を係止爪15に係り止めすることであり,ア
ルミ製目地枠13を手摺本体の長手方向に移動自在とすることを条件とするもので
はない。
(3)「係合保持」(構成要件I,J)の意義
「係合保持」とは,ガラス板が風圧により,その板面と直交する方向に動かない15
程度にガラス板の側縁部がアルミ製目地枠に保持される状態を示すものである。
(4)「室内側から」(構成要件F,J,K)の意義
本件明細書によれば,本件発明においては,足場を組む必要がないという点が重
要であるから,「室内側から」とは,作業者の位置を示すものであり,手摺本体側
からガラス板を室外側の手摺表面側に持ち出し,その後の操作を全て室内側から行20
うことを意味する。
(5)構成要件の充足
ア構成d
「係止」とは,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動さ
せるという手段を介して,アルミ製目地枠13を手摺支柱1にその室内外方向に移25
動するのを規制するように被係止爪16を係止爪15に係り止めすることを意味する
ことから,被告方法の構成dは,本件発明の構成要件Dを充足する。
イ構成e
被告方法において,縦枠突起部を押縁の係合用突起部と支柱突起部との間に嵌め
入れ,この位置より縦枠突起部をスライドさせれば,押縁の係合用突起部に当たる
ことなく支柱突起部に嵌め合わすことができる。たとえ縦枠突起部を押縁の係合用5
突起部の手前からスライドさせ,その途中で縦枠突起部を押縁の係合用突起部を乗
り越えてスライドさせることがあっても,縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わすた
めには縦枠突起部を支柱突起部の方向に向かってスライドさせなければ嵌め合わす
ことができない。
また,被告方法の支柱突起部が本件発明の「係止爪15」に,縦枠突起部が「被10
係止爪16」に該当するのであって,押縁の係合用突起部は付加手段に過ぎない。
そうすると,被告方法の構成eは,本件発明の構成要件Eを充足する。
ウ構成f
「室内側から」とは,手摺本体側からガラス板を室外側の手摺表面側に持ち出し,
その後の操作を全て室内側から行うことを意味する。15
被告方法の構成fも,「室内側から室外側に持ち出して」最初のガラスの上側を
ガラス上弦材の溝に嵌合するというものであるから,「室内側から」に該当する。
したがって,被告方法の構成fは,本件発明の構成要件Fを充足する。
エ構成i
被告方法においては,構成iのうち,「次にアルミ製の縦枠S22をガラス上弦材20
Sとガラス下弦材Sとの間を一方側からスライドさせて,その縦枠突起部を支柱突
起部に嵌め合わせ」ることによって,アルミ製の縦枠S22は,支柱Sにその室内外
方向に移動するのを規制するように縦枠突起部が支柱突起部に係り止めされる。こ
のため,被告方法の縦枠突起部は本件発明の被係止爪に相当し,支柱突起部は係止
爪に相当する。被告方法においては,さらに,縦枠突起部の支柱突起部に対する係25
り止め状態を確実にするために,「さらに,押縁及び止めゴムを用いて,支柱突起
部からの縦枠突起部の外れを規制させ」ることによって,縦枠突起部の支柱突起部
に対する係り止め状態を補強するようになっているが,縦枠突起部と支柱突起部の
みでも前後方向に規制されており,十分に係止されているといえるのであって,こ
れは単なる付加手段に過ぎない。
また,「係合保持」とは,ガラス板が風圧により,その板面と直交する方向に動5
かない程度に保持される状態を示すところ,ガラスの側縁部がアルミ製目地枠に挟
持されることで足りるのであり,側縁部の端縁が接触している必要はない。しかも,
この「挟持」は目地枠や縦枠の部材そのものに直接挟持されるだけではなく,パッ
キン等を介してもよい。そもそも,ガラス板の側縁部の端縁を目地枠や縦枠に当接
させる構造や図面であっても,実際には少し隙間が空くものであるし,ガラスの破10
損を防止するためにガラス板の厚み程度のエッジクリアランスを要することは,当
業者にとって技術常識である。そうすると,被告方法においても,ガラスの側縁部
が縦枠S22の部材に挟持され,ガラス板面と直交する方向に動かない程度に保持さ
れているといえる。これは,「係合保持」に該当する。
したがって,被告方法の構成iは,本件発明の構成要件Iを充足する。15
オ構成j
「室内側から室外側に持ち出して」が「室内側から」に該当すること,隙間があ
っても「係合保持」に該当することは,前記ウ及びエのとおりである。
したがって,被告方法の構成jは,本件発明の構成要件Jを充足する。
カ構成k20
「室内側から室外側に持ち出して」が「室内側から」に該当することは,前記ウ
のとおりである。
「個別に…取り付けられる」点については,本件発明は,アルミ製目地枠の長手
方向の移動を規制しながら取り付けることを排除するものではない。また,本件明
細書の記載から,構成要件Kの「連続して」とは,外観上の問題をいうものと理解25
される。したがって,「外観上は連続するようにして取り付けられる」ものである
以上,この点でも,被告方法の構成kは,本件発明の構成要件Kに含まれる。
さらに,被告方法は,足場を設けることなくガラス板を取り付ける手摺の取付方
法である。
したがって,被告方法の構成kは,本件発明の構成要件Kを充足する。
(被告の主張)5
(1)被告方法の構成d~f及びi~kは,本件発明の構成要件D~F及びI~Kを充
足しない。
(2)「係止」(構成要件D,E,I)の意義
本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,「係止」(構成要件D,E及び
I)とは,室内側から見て前後方向の移動を規制し,かつ手摺本体3の長手方向に10
移動自在とすることを意味するものと理解される。
また,本件明細書の記載によれば,係止爪15と被係止爪16との間には隙間があ
り,係止爪15及び被係止爪16は,それ自体でアルミ製目地枠13が手摺本体3の
長手方向に移動するのを規制する構造とはなっていない。手摺本体3の長手方向に
おけるアルミ製目地枠13の移動を規制するのは,アルミ製目地枠13の連結片3015
と,ガラス板12の側縁部12dの端縁との当接である。
さらに,本件明細書には,目地枠について手摺の長手方向の移動を規制する手段
は開示されておらず,目地枠がガラス板に当接ないし接触できるように長手方向へ
の移動が自由である必要があるから,目地枠の長手方向の移動を規制する手段を付
加することはできない。20
本件特許の出願当初の請求項1は取付装置に関する発明であったところ,本件特
許出願前において,ガラス板とは独立して,それ自体が固定された左右の縦枠でガ
ラス板の長手方向の移動を規制する方法は,広く一般的に用いられていたため,当
初の請求項1については拡大先願,新規性及び進歩性の規定により拒絶理由通知を
受け,原告は,これを削除する補正を行った。このような出願経過から,本件特許25
は,縦枠について手摺の長手方向への移動を自在とする点に技術的意義を有する取
付方法として認められたものと理解される。
したがって,「係止」(構成要件D,E及びI)とは,室内側から見て前後方向
の移動を規制し,かつ手摺本体3の長手方向に移動自在とすることである。
(3)「係合保持」(構成要件I,J)の意義
本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,「係合保持」(構成要件I,J)5
とは,接触して手摺本体3の長手方向における移動を規制することを意味すると理
解される。
また,本件明細書の記載においても,アルミ製目地枠13の連結片30とガラス板
12の側縁部12dの端縁とが当接されることによって,手摺本体3の長手方向におけ
るアルミ製目地枠13及びガラス板12の摺動を規制しているといえる。10
本件発明に係る請求項において,ガラス板については,係合保持の主体とアルミ
製目地枠によって係合保持される被体のいずれにも該当する旨の記載があることか
ら,「係合保持」は,ガラス板が板面と直交する方向に動かない程度の作用のみで
はなく,接触して手摺の長手方向における移動を規制するという意義を有する。
したがって,「係合保持」(構成要件I,J)とは,接触して手摺本体3の長手方15
向における移動を規制することをいう。
(4)「室内側から」(構成要件F,J,K)の意義
「室内側から」(構成要件F,J,K)とは,その文言のとおり,ガラス板12が
室内側にある状態で取り付けることをいう。本件明細書には,作業者の位置につい
ての記載はないから,作業者が室内側にいてガラス板が室外側にある状態で取り付20
けることを含まない。
(5)構成要件の非充足
ア構成dについて
被告方法の構成dは,支柱Sの室外側側面に,縦枠S22と嵌め合わせるための支
柱突起部を設けているものの,縦枠S22を係止するための係止爪を突設したもので25
はない。このため,同構成は,本件発明の構成要件Dを充足しない。
イ構成eについて
被告方法の構成eでは,アルミ製の縦枠は,スライドさせるのみでは支柱突起部
に嵌め合わせることはできず,押縁の係合用突起部を乗り越えさせるよう回転させ
た後に縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わすことになる。このため,同構成は,縦
枠S22の室内側側面に,支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部を設けているもの5
の,支柱突起部に係止される被係止爪を突設したものではなく,本件発明の構成要
件Eを充足しない。
ウ構成fについて
被告方法の構成fでは,ガラスを上弦材の溝に嵌合するのは室外側からであり,
室内側からではない。したがって,同構成は,本件発明の構成要件Fを充足しない。10
エ構成iについて
被告方法の構成iは,縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせ,さらに,押縁S22
及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制することによっ
て,アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定するものである。このため,同構成は,縦
枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせることによってアルミ製の縦枠S22を支柱Sに15
係止させるのではなく,本件発明の構成要件Iを充足しない。
また,同構成は,アルミ製の縦枠S22をガラスの側縁部との間に隙間を空けて位
置させるものである。このため,同構成は,アルミ製の縦枠S22をガラスの側縁部
に係合保持させるのではないという点でも,本件発明の構成要件Iを充足しない。
オ構成jについて20
被告方法の構成jでは,ガラスを上弦材に嵌め込むのは室外側からであり,室内
側からではない。したがって,同構成は,本件発明の構成要件Jを充足しない。
また,同構成は,ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間を空け
て位置させるものである。このため,同構成は,ガラスの側縁部を先のアルミ製の
縦枠S22に係合保持させるのではないという点でも,本件発明の構成要件Jを充足25
しない。
カ構成kについて
被告方法の構成kでは,ガラスを取り付けるのは室外側からであり,室内側から
ではない。したがって,同構成は,本件発明の構成要件Kを充足しない。
また,同構成は,複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞さ
れるようにして取り付けられるものである。このため,同構成は,複数のガラスが5
連続して手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるようにして取り付けられるの
ではないという点でも,本件発明の構成要件Kを充足しない。
さらに,本件発明の作用効果として足場が不要であることが挙げられていること
から,本件発明の構成要件Kは,「…室内側から取り付けることによって,足場を
設けることなく,手摺本体3の室外側長手方向略全域に…」と理解されるべきであ10
るところ,被告方法が足場を設けることなく手摺を取り付ける方法であることの立
証はない。
2直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)
(原告の主張)
ア直接侵害15
被告は,被告製品の販売に当たり,被告方法を自ら使用し,又はその下請事業者
である施工業者に指示して自らの手足として同方法を使用させている。
イ間接侵害
(ア)被告は,被告製品の販売に当たり,その施工業者等に対して,被告製品の取
付方法として被告方法を使用することを説明している。このため,被告製品は,被20
告方法の使用にのみ用いられる物といえる。
したがって,被告による被告製品の製造,販売及び販売の申出は,被告方法の使
用にのみ用いる物の生産,譲渡及び譲渡の申出をする行為として,間接侵害(特許
法101条4号)に該当する。
(イ)被告製品は,被告方法の使用に用いる物であり,本件発明による課題の解決25
に不可欠なものである。また,被告は,本件発明が特許発明であること及び被告製
品が本件発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その製造,販売及
び販売の申出をしている。
したがって,被告の行為は間接侵害(同条5号)に該当する。
(被告の主張)
ア直接侵害5
前記第2の2(4)イのとおり,被告は,ガラスの製造,販売及び販売の申出は行
っておらず,被告方法のうち,手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工までを行
っているにとどまる。
イ間接侵害
仮に,被告方法が本件発明の技術的範囲に属することがあり得るとしても,建物10
前に足場を組んで室外側から被告製品を取り付ける場合は,「室内側から」(構成
要件F,J,K)を充足しない。このため,被告製品は,本件発明の方法の使用にの
み用いられる物とはいえない。
また,被告は,被告製品は本件発明の実施に用いられるものでないことを確信し
ている。15
したがって,被告の行為は,本件特許権の間接侵害(特許法101条4号,5号)
に該当しない。
3特開2004-256993号公報に基づく進歩性欠如の有無(争点3-1)
(被告の主張)
(1)特開2004-256993号公報記載の発明の構成20
特開2004-256993号公報(乙3。以下「乙3文献」という。)の記載によれば,
同文献には,以下の発明(以下「乙3発明」という。)が記載されている。
A’複数の柱を立設し,これら柱に取り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹込
みを防止すべく使用される建築用サイドパネルの取付方法において,
B’長手方向略全域にわたって枠付きパネルを嵌め込むための溝が形成された上25
枠と,長手方向略全域にわたって枠付きパネルを嵌め込むための溝が形成された下
枠と,上下枠間に,枠付きパネルの縦枠材を嵌め込むための溝が形成されてなる端
面縦枠とからなる取付枠が一体又は一体的に設けられ,
C’この取付枠に複数の枠付きパネルと各枠付きパネル間に中間縦枠取付金具で
一対の中間縦枠を取り付けるにあたって,中間縦枠としてアルミ製中間縦枠を用い,
E’一対の中間縦枠を取り付ける中間縦枠取付金具には,止め具で上下枠に取り5
付けるための貫通孔が形成され,
F’しかして,まず最初の枠付きパネルを上下枠の他端側から上下枠の溝に嵌め
込み,
H’次にその枠付きパネルを上下枠の溝に沿ってスライドさせて,該枠付きパネ
ルの縦枠材を取付枠の端面縦枠の溝に嵌合し,10
I’次に一対の中間縦枠を取り付ける中間縦枠取付金具を上下枠に取り付け,こ
れによって該中間縦枠取付金具を最初の枠付きパネルの縦枠材の近傍に位置させ,
J’そして次の枠付きパネルを同様にして上下枠間に嵌め込み,これも同様にス
ライドさせて,該枠付きパネルの縦枠材を先の中間縦枠取付金具と当たるよう位置
させ,15
J’-2さらに,一対の中間縦枠を中間縦枠取付金具に取り付け,
K’このようにして複数の枠付きパネルと中間縦枠及び中間縦枠取付金具を交互
に取付枠に取り付けることによって,長手方向略全域に複数の枠付きパネルが連続
して取付枠と中間縦枠及び中間縦枠取付金具に囲繞されるようにして取り付けられ
る20
L’建築用サイドパネルの取付方法。
(2)他の文献記載の技術
ア特開2002-89004号公報記載の発明等
特開2002-89004号公報(乙4。以下「乙4文献」という。)には,以下の発明
(以下「乙4発明」という。)が記載されている。25
手摺本体にパネルを取り付けるパネルの取付方法において,手摺本体の複数の支
柱を立設し,パネル間に配置する支持部材を,ボルト,ビス等の固定手段を用いて,
支柱に固定するパネルの取付方法。
イ特開2005-163354号公報記載の発明
特開2005-163354号公報(乙5。以下「乙5公報」という。)には,以下の発明
(以下「乙5発明」という。)が記載されている。5
ガラス持ち出し手摺の組み立て方法において,複数の支柱を立設し,板ガラス間
に配置する竪枠をビスで支柱に固定するガラス持ち出し手摺の組み立て方法。
ウ特開2006-316481号公報記載の発明
特開2006-316481号公報(乙6。以下「乙6公報」という。)には,以下の発明
(以下「乙6発明」という)が記載されている。10
ファブリックフェンスの設置方法において,複数の支柱を立設し,ファブリック
の端部の係止バーを支柱に係止するファブリックフェンスの設置方法。
エ特開2007-198074号公報記載の発明
特開2007-198074号公報(乙7。以下「乙7公報」という。)には,以下の発明
(以下「乙7発明」という。)が記載されている。15
スレート被覆構造において,凹溝を有する取付部材にカバー部材を倹鈍方式で取
り付けたスレート被覆構造。
オ特開2003-74212号公報記載の発明
特開2003-74212号公報(乙8。以下「乙8公報」という。)には,以下の発明
(以下「乙8発明」という。)が記載されている。20
組立式囲いにおいて,支柱間の区画部を覆う覆板の上下の端部分を倹鈍方式で上
下の条溝に挿入した組立式囲い。
カ特開平8-135054号公報記載の発明
特開平8-135054号公報(乙9。以下「乙9公報」という。)には,以下の発明
(以下「乙9発明」という。)が記載されている。25
間仕切面部において,複数の単位仕切パネルを上下ランナーに倹鈍式で取り付け
た間仕切面部。
キ特開平7-217143号公報,特開2004-332537号公報,特開2010-48023号公報
記載の各技術
特開平7-217143号公報(乙10。以下「乙10文献」という。),特開2004-
332537号公報(乙11。以下「乙11文献」という。),特開2010-48023号公報5
(乙12。以下「乙12文献」という。)の各記載によれば,単に部材を引っ掛け
て留めるという意味での「係止」は周知慣用技術であるといえる。すなわち,乙1
0文献には,手摺において,枠材2に押縁3を取り付けるのに,内向鈎条(係止爪)
21,22及び外向鈎条(被係止爪)31,32,41,42を用いている例が,乙11文献
には,手摺において,ファスナー3を介してパラペットPに手摺支柱2を取り付け10
るのに,掛止部(係止爪)11,13及び係合部(被係止爪)12,14を用いている例
が,乙12文献には,手摺において,ブラケット7及び持出し部20を介して支柱
1に竪枠(目地枠)13を取り付けるのに,被係合部(係止爪)19b及び係合部(被
係止爪)19aを用いている例が,それぞれ記載されている。
(3)本件発明と乙3発明との対比及び相違点15
ア技術分野及び解決課題
本件発明は,風雨時においても室内を開放しておくことができる手摺の取付方法
であり,乙3発明は,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される
建築用サイドパネルに関するものであるから,その技術分野は一致する。手摺であ
るか建築用サイドパネルであるかは,設置個所に合わせて名称を変えているだけで20
あり,内外を仕切るものである点で一致する。
また,本件発明と乙3発明とは,手摺又は建築用サイドパネルの取付けを容易に
するという自明の課題が共通する。
イ対比
(ア)本件発明の構成要件Aと乙3発明の構成A’25
乙3発明の「建築用サイドパネル」及び「柱」は,本件発明の「手摺」及び「手
摺支柱」に,それぞれ相当する。手摺又は建築用サイドパネルを取り付ける場所が
ベランダのパラペット上であるか,手摺支柱の上端部に手摺笠木を架け渡すか否か
は,いずれも設計的事項である。
(イ)本件発明の構成要件Bと乙3発明の構成B’
乙3発明の「枠付きパネルを嵌め込むための溝」,「上枠」,「下枠」,「枠付5
きパネルの縦枠材を嵌め込むための溝」,「端面縦枠」は,本件発明の「ガラス上
縁部嵌合溝4」又は「ガラス下縁部嵌合溝6」,「ガラス用上枠5」,「ガラス用
下枠7」,「ガラス側縁部嵌合溝8,9」,「左右側枠10,11」に,それぞれ相
当する。ガラス取付枠14を手摺本体3の室外側に設けるか否かは,設計的事項で
ある。10
(ウ)本件発明の構成要件Cと乙3発明の構成C’
乙3発明の「枠付きパネル」,「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」は,本件発明
の「ガラス板12」,「アルミ製目地枠13」に,それぞれ相当する。
(エ)本件発明の構成要件D及びEと乙3発明の構成E’
乙3発明の「貫通孔」と本件発明の「係止爪15」及び「被係止爪16」とは,15
「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」又は「アルミ製目地枠13」を留める手段であ
るという概念で共通する。
(オ)本件発明の構成要件F及びGと乙3発明の構成F’
乙3発明の構成F’と本件発明の構成要件F及びGとは,「枠付きパネル」又は
「ガラス板12」を上下枠の溝に嵌め込む工程であるという概念で共通する。20
(カ)本件発明の構成要件Hと乙3発明の構成H’
乙3発明の「枠付きパネル」,「上下枠の溝」,「枠付きパネルの縦枠材」,
「端面縦枠の溝」は,本件発明の「ガラス板12」,「上下縁部嵌合溝4,6」,
「ガラス板12の側縁部12c」,「側枠10のガラス側縁部嵌合溝8」に,それぞれ
相当する。25
(キ)本件発明の構成要件Iと乙3発明の構成I’
乙3発明の構成I’と本件発明の構成要件Iとは,「中間縦枠及び中間縦枠取付金
具」又は「アルミ製目地枠13」の少なくとも一部を留めて,最初の「枠付きパネ
ルの縦枠材」又は「ガラス板12の側縁部12d」の近傍に位置させる工程であるとい
う概念で共通する。
(ク)本件発明の構成要件Jと乙3発明の構成J’5
乙3発明の構成J’と本件発明の構成要件Jとは,「枠付きパネル」又は「ガラス
板12」を上下枠の溝に嵌め込んで摺動させて,「枠付きパネルの縦枠材」又は
「ガラス板12の側縁部12c」を先の「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」又は「アル
ミ製目地枠13」の少なくとも一部と当たるよう位置させる工程であるという概念
で共通する。10
(ケ)本件発明の構成要件Kと乙3発明の構成K’
乙3発明の「枠付きパネル」,「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」は,本件発明
の「ガラス板12」,「アルミ製目地枠13」に,それぞれ相当する。
(コ)構成要件L
乙3発明の「建築用サイドパネルの取付方法」は,本件発明の「手摺の取付方法」15
に相当する。
ウ相違点
(ア)相違点1(構成要件D,E)
「アルミ製目地枠13」又は「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」を留める手段に
関して,本件発明では,手摺支柱1の室外側側面に突設された「係止爪15」と,20
アルミ製目地枠13の室内側側面に突設された「被係止爪16」とであるのに対し,
乙3発明では,止め具で上下枠に取り付けるよう中間縦枠取付金具に形成された
「貫通孔」である点。
(イ)相違点2(構成要件F,G)
「ガラス板12」又は「枠付きパネル」を上下枠の溝に嵌め込む工程に関して,25
本件発明では,倹鈍式によって嵌め込んでいるのに対し,乙3発明では,上下枠の
端から嵌め込んでいる点。
(ウ)相違点3(構成要件I)
「アルミ製目地枠13」又は「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」の少なくとも一
部を留める工程に関し,本件発明では,アルミ製目地枠13を摺動させて,その被
係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱15
に係止させるのに対し,乙3発明では,中間縦枠取付金具を上下枠に取り付ける点。
(エ)相違点4(構成要件I)
相違点3の工程により,「アルミ製目地枠13」又は「中間縦枠及び中間縦枠取
付金具」の少なくとも一部が最初の「ガラス板12の側縁部12d」又は「枠付きパネ
ルの縦枠材」の近傍に位置するという点に関し,本件発明では,目地枠13が最初10
のガラス板12の側縁部12dに係合保持されるのに対し,乙3発明では,単に,中
間縦枠取付金具が最初の枠付きパネルの縦枠材の近傍に位置する点。
(オ)相違点5(構成要件J)
「ガラス板12」又は「枠付きパネル」を上下枠の溝に嵌め込んで摺動させて,
「ガラス板12の側縁部12c」又は「枠付きパネルの縦枠材」を先の「アルミ製目地15
枠13」又は「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」の少なくとも一部と当たるよう位
置させる工程に関し,本件発明では,ガラス板12を摺動させて側縁部12cを先の
アルミ製目地枠13に係合保持させるのに対し,乙3発明では,枠付きパネルをス
ライドさせて縦枠材を先の「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」のうちの中間縦枠取
付金具と当たるよう位置させる点。20
(カ)相違点6
本件発明には,相違点5の工程の後に,一対の中間縦枠を中間縦枠取付金具に取
り付けるという工程がないのに対し,乙3発明は,そのような工程(構成J’-2)が
ある点。
(4)相違点の容易想到性25
ア相違点1及び3について
「係止」につき,仮に,単に部材を留めることを意味するものとすると,「アル
ミ製目地枠13」や「中間縦枠及び中間縦枠取付金具」のようなパネル間の目地枠
を支柱に留めることは,乙4発明~乙6発明にあるように,本件発明の属する技術
分野における周知技術といえる。
しかも,乙3発明における中間縦枠取付金具の取付けと,乙4発明~乙6発明に5
おける目地枠の固定又は係止とは,目地枠を支柱や上下枠などの固定部材に留める
という共通の解決課題を有するものであるから,乙3発明に,乙4発明~乙6発明
を適用する動機付けがあるといえる。
したがって,乙3発明において,乙4発明~乙6発明を適用することにより,相
違点1及び相違点3に係る事項を本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が10
容易に想到し得たものといえる。
また,部材を留める手段としては,いわゆる係止のほか,ねじ止めなど種々の手
段があるところ,「係止」が単に部材を引っ掛けて留めることを意味するものとす
ると,手摺支柱1の室外側側面に係止爪を突設することは,乙10文献~乙12文
献に示されているとおり,周知慣用技術の中から1つの手段を選択したに過ぎない。15
イ相違点2について
乙7発明~乙9発明にあるように,パネルを倹鈍式によって両側の溝に嵌め込む
ことは,周知技術といえる。
したがって,乙3発明において,乙7発明~乙9発明を適用することにより,相
違点2に係る事項を本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し20
得たものといえる。
ウ相違点4について
「係合保持」につき,仮に,単に係合保持される部材を近傍に位置させることを
意味するものとすると,本件発明及び乙3発明は,目地枠が最初のパネルの側縁部
の近傍に位置するという点で一致し,相違点4は相違点ではなくなる。25
エ相違点5及び相違点6について
乙3文献【0036】の記載は,あらかじめ中間縦枠及び中間縦枠取付金具を組み立
てておき,この組み立てた完成品に枠付きパネルを係合保持させてもよいことを示
唆しているといえる。
したがって,乙3発明において,乙3文献の示唆に基づき,相違点5及び相違点
6に係る事項を本件発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得た5
ものといえる。
オ以上のとおり,仮に「係止」が単に部材を留めることを,「係合保持」が
単に係合保持される部材を近傍に位置させることをそれぞれ意味するものとする
と,本件発明は,当業者が乙3発明~乙9発明に基づき容易に発明をすることが
できたものであり,特許を受けることができないものである(特許法29条210
項)。
(5)小括
したがって,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであるから
(同法123条1項2号),原告は,被告に対し,これを行使できない(同法10
4条の3第1項)。15
(原告の主張)
(1)乙3発明について
本件発明は,ベランダのパラペットに設置される手摺の取付方法を技術分野とし,
手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時においても室内を開放し
ておくことができ,かつ,手摺本体の室内側から複数のガラス板を連続して取り付20
けることができるようにした手摺の取付方法を提案することを解決課題とするもの
である。他方,乙3発明は,例えば駐車場の屋根を支持する柱等に取り付けて使用
される建築用サイドパネルに関するものであり,組み立て作業が容易で,パネル厚
の変更にもある程度対応できる汎用性のある経済的な建築用サイドパネルを提供す
ることを解決課題とする。25
このように,本件発明と乙3発明は,技術分野及び解決課題を異にする。このた
め,乙3発明は,本件発明の進歩性を否定する資格を有しない。
(2)乙3発明の構成
乙3公報記載の建築用サイドパネルの組立工程は以下のとおりである。
まず,一方の端面縦枠2を上,下枠1a,1bの長手方向一端部にボルト22で連結
する。5
しかる後,上,下枠1a,1bの他端部から枠付きパネル4の上下周縁部の横枠体
4b,4bを上,下枠1a,1bの溝7にスライドさせて嵌め込み,その縦枠体4bを前記
端面縦枠2の溝19に嵌め込む。
この状態で,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付け操作を行い,これによっ
て枠付きパネル4の縦枠体4bは第1側板部23bとパネル受け部18で挟持されて,10
一方の端面縦枠2にしっかりと固定されることになる。
しかる後,中間縦枠取付金具30を上,下枠1a,1bに留め具35によって取り付
け,次の枠付きパネル4の上下周縁部の横枠体4bを上,下枠1a,1bの溝7に中間
縦枠取付金具30と当たる位置までスライドさせて嵌め込む。
次に中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付ける。すなわち,上,下枠15
1a,1bの溝7を横切ってその両側に相対向する一対の中間縦枠3a,3bを中間縦枠
取付金具30に取り付け用ボルト31で取り付けることによって,一対の中間縦枠3a,
3bによって枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4b,4bを挟持する。これによって,
枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4b,4bの隙間(枠付きパネル同士の目地)を両
側の中間縦枠3a,3bで視覚的に隠蔽することができ,美麗な外観を確保できるこ20
とになる。
上記の作業を繰り返し,最後の枠付きパネル4の上下の横枠体4bを上,下枠1a,
1bに嵌め込んだら,他端の端面縦枠2の溝19に嵌め込み,この状態で前記の一方
の端面縦枠2と同じように,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付操作を行い,
これによって最後の枠付きパネル4の縦枠体4bは第1側板部23bとパネル受け部25
18で挟持されて,他端の端面縦枠2にしっかりと固定されることになる。
(3)本件発明と乙3発明との対比
ア本件発明の構成要件A及びLと乙3発明の構成A’及びL’
乙3発明においては,本件発明の手摺の取付方法に関しては何らの記載も示唆も
なく,駐車場の屋根Bを支持する柱Cに,その室内側に建築用サイドパネルAを
取り付けた状態の駐車場が開示されているに過ぎない。5
また,乙3発明においては,本件発明の「ベランダのパラペットP上にその長手
方向に所定間隔おきに手摺支柱1を立設し」てなる構造,「これら手摺支柱1の上
端部に手摺笠木2を架け渡すことによって手摺本体3を形成してなる」構造及びこ
れらの構造による「手摺の取付方法」について,何らの記載も示唆もない。
イ本件発明の構成要件Bと乙3発明の構成B’10
乙3発明には,手摺本体3については何らの記載も示唆もなく,まして,手摺本
体3の室外側にガラス取付枠14が一体又は一体的に設けられる構成についても,
何らの記載も示唆もない。
ウ本件発明の構成要件Cと乙3発明の構成C’
乙3発明は、枠付きパネル4の隣り合う縦枠体4b,4bの隙間(枠付きパネル同15
士の目地)を視覚的に隠蔽する中間縦枠が,一対の中間縦枠3a,3bからなるのに
対し,本件発明のアルミ製目地枠13は室外側にのみ配設する点で,両者は相違す
る。
エ本件発明の構成要件Dと乙3発明
乙3発明には,本件発明の構成要件Dの「手摺支柱1の室外側側面には、アルミ20
製目地枠13を係止するための係止爪15が突設され」る構成について,何らの記載
も示唆もない。
オ本件発明の構成要件Eと乙3発明の構成E’
乙3発明は,中間縦枠取付金具30を上,下枠1a,1bに,上,下枠1a,1bの溝7
を横切るようにして留め具35によって取り付け,上,下枠1a,1b間の溝7を挟ん25
で,その両側に相対向する一対の中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付
け用ボルト31で取り付けることによって,一対の中間縦枠3a,3bによって枠付き
パネル4の隣り合う縦枠体4bを挟持するようになっており,「アルミ製目地枠13
の室内側側面には,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動
させることによって前記係止爪15に係止される被係止爪16が突設され」る構成に
ついては,何らの記載も示唆もない。5
カ本件発明の構成要件F,G,J及びKと乙3発明の構成F’,G’,J’及びK’
乙3発明は,上枠1aの下向きの溝7に枠付きパネル4の上部横枠体4bを,また,
下枠1bの上向きの溝7に枠付きパネル4の下部横枠体4bをそれぞれ同時に,上,
下枠1a,1bの他端部から横方向にスライドさせて嵌め込むようになっており、本
件発明のように,ガラス板12を室内側からその上縁部12aをガラス上縁部嵌合溝10
4に嵌合し,所謂倹鈍式によってガラス板12を上下枠5,7間に嵌め込むように
はなっていない。
したがって,乙3発明にあっては,本件発明の構成要件F,G,J及びKについ
て,何らの開示も示唆もない
キ本件発明の構成要件Hと乙3発明の構成H’15
本件発明にあっては,ガラス板12の側縁部12cを直接に側枠10のガラス側縁部
嵌合溝8に嵌合するようになっているが,乙3発明にあっては,枠付きパネル4の
上下周縁部及び左右周縁部に横枠体4b及び縦枠体4bを形成し,枠付きパネル4の
上下周縁部の横枠体4b,4bを上,下枠1a,1bの溝7にスライドさせて嵌め込み,
その縦枠体4bを端面縦枠2の溝19に嵌め込むようになっている点で相違する。20
ク本件発明の構成要件Iと乙3発明のI’
乙3発明では,本件発明の「アルミ製目地枠13を上下枠5,7間を一方側から
摺動させて,その被係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地
枠13を手摺支柱1に係止させ」という構成については,何らの記載も示唆もない。
ケ以上のとおり,乙3発明には,本件発明の構成要件のいずれについても,何25
らの記載ないし示唆はない。
(4)乙4発明等について
乙3発明と乙4発明~乙9発明は,いずれも技術分野を異にする。
また,乙4発明については,パネル30を上下にガイドする支持部材20に上から
差し込んだり引き抜くように支持するパネルの取付構造をそのまま乙3発明に適用
することは不可能である。5
乙5発明については,上枠15と笠木17とで板ガラス16の上端を挟持し,笠木
17を上枠15から取り外すことによって作業者が手摺の内側から板ガラスを装着及
び交換の作業をすることができるようにした発明であり,これを乙3発明に適用す
ることは不可能である。
乙6発明については,乙3発明とはその発明の構成を全く異にすることから,そ10
の構成を乙3発明に適用することは不可能である。
乙7発明については,乙3発明とはその発明の構成を全く異にすることから,た
とえ倹鈍式でカバー部材15を取付部材23に取り付ける構造が開示されていても,
これを乙3発明に適用することは不可能である。
乙8発明については,支柱2,2間の横桟109,110の条溝140,141に覆板6を倹15
鈍式で取り付けるようにした組立式囲いの覆板支持装置が記載されているが,乙3
発明は,この間仕切り構造のものとは技術分野も解決課題も異にすることから,乙
8発明の構造を乙3発明に適用することは不可能である。
乙9発明については,複数の単位間仕切パネル10,40,50を上下のランナー80,
80間に倹鈍式で取り付ける間仕切り構造が記載されているが,乙3発明は,この20
間仕切り構造のものとは技術分野も解決課題も異にすることから,乙9発明の構造
を乙3発明に適用することは不可能である。
以上より,乙4発明~乙9発明のいずれも,乙3の発明と組み合わせることはで
きない。
4サポート要件違反の有無(争点3-2)25
(被告の主張)
本件発明の課題は,手摺本体の室外側長手方向略全域に,手摺本体の室内側から
複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにすることであるところ,
本件明細書の発明の詳細な説明の記載(【0016】,【0017】)によれば,この課題
を解決するには,本件特許の請求項2に係る発明の構成が必要である。したがって,
本件発明の構成には,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための5
手段が反映されていないため,本件発明は,発明の課題が解決できることを当業者
が認識できるように記載された範囲を超えているといえる。
また,発明の詳細な説明には,本件特許の請求項2記載の構成に代えて採用する
ことのできる構成は開示されておらず,出願時の技術常識に照らしても,本件発明
の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはい10
えない。
さらに,本件明細書には,ガラスとは独立して,目地枠について長手方向の移動
を規制する手段は開示されておらず,したがって,長手方向の移動を規制する手段
を限定する事項は開示されていない。このため,ガラスとは独立して,目地枠につ
いて長手方向の移動を規制する手段を任意に付加することができるとすると,その15
手段はあらゆる手段を含み,例えば,足場を設けて,ボルト締めや溶接を行う手段
を付加することも含まれることになる。しかし,本件発明の作用効果として足場が
不要である点が挙げられていることから,長手方向の移動を規制する手段を付加で
きるとすると,本件発明は,その課題を解決することができないことになる。
以上より,本件発明は,発明の詳細な説明に記載された発明とはいえず,本件特20
許は特許法36条6項1号に違反してされたものであり,特許無効審判により無効
にされるべきものであるから(同法123条1項4号),原告は,被告に対し,本
件特許権を行使できない。
(原告の主張)
本件発明は,手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時において25
も室内を開放しておくことができ,かつ,手摺本体の室内側から複数のガラス板を
連続して取り付けることができるようにした手摺の取付装置と取付方法を提案する
ものである。
本件発明は,その構成により,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数
のガラス板がガラス取付枠に取り付けられるようになっているため,手摺本体の室
外面である見付は,手摺本体の長手方向略全域にかけて連続して設けられたガラス5
板で覆われていることになり,上記課題を解決し,外観上の体裁が非常に良く,ま
た,ガラス板によって室内側への風雨の進入を防ぐことができ,風雨の時でも室内
を開放しておくことができる,いわゆる倹鈍方式で室内側からガラス板をガラス取
付枠に取り付けることができ,ガラス板を手摺本体の室外側に取り付けるための足
場等が不要であるから,それだけ施工費が安価になる,互いに隣り合う複数のガラ10
ス板間にアルミ製目地枠が配設されるようになっているため,従来のゴム系の目地
材を充填するのに比較して,アルミ特有の見栄えを発揮することができ,手摺本体
の見付面の体裁がこの面からも良好である,といった作用効果を発揮する。
したがって,本件発明に係る請求項1の記載は,発明の詳細な説明において,発
明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲にある。15
手摺本体の室外側長手方向略全域に連続してガラス板をガラス取付枠に取り付け
るに際し,最後のガラス板を嵌合するために側枠に可動側部材と固定側部材を用い
ること自体は本件特許の請求項2の発明ではなく,可動側部材と固定側部材を用い
た上で,一般的な取り付け方法で取り付けることは可能である。
仮に,本件発明の構成要件Kが「最後のガラス板12を左側枠11に嵌合する際20
に,左側枠11を固定側部材17と可動側部材18とからなり,最後のガラス板12を
室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌め入れる前に,可動側部材18を後退させ
て,ガラス側縁部嵌合溝9の室外側を開放しておき,この状態で最後のガラス板
12を室内側から倹鈍式で上下枠5,7間に嵌め入れ,しかる後に可動側部材18を固
定側部材17に重合し,可動側部材18を固定側部材17にビス止めする」構成に限25
定されるとしても,そのような実施形態の記載(本件明細書【0036】,【0037】)
がある以上,サポート要件を備えている。
5原告の損害額(争点4)
(原告の主張)
(1)被告の利益の額
ア被告製品1m当たりの売上金額(税別)は,6739円である。5
イ被告製品1m当たりの原価(税別)は,3451円(アルミ押出形材212
9円,部品1087円,梱包資材その他82円,生産用固定資産153円)である
から,1m当たりの利益(税別)は,3288円となる。
なお,生産用固定資産のうち,手摺門扉製作用モータープレス機は,3台のうち
1台を被告製品専用に使用しているのみであることから,被告製品以外にも転用で10
きるものであり,変動経費には当たらない。また,BL認定取得費用も,被告製品
の販売に必要不可欠なものではなく,変動経費には当たらない。
さらに,外注加工費については,工事台帳に外注費用の欄があるにもかかわらず
加工費が計上されていないのは不合理であるし,全販売数量1万8606.3mの
8%である1480.6m分の工事を基に売上や原価を計算しておきながら,加工15
費は全体で計算するというのは妥当ではない。仮にこれを控除するとしても,同一
工事を基に,1m当たりの加工費として計算すべきである。そうすると,外注加工
費については,控除対象とすべきではないが,仮に控除する場合には,1m当たり
68円として控除すべきである。
ウ被告製品の販売数量は,以下のとおりである。20
・平成29年10月31日までの期間(以下「第1期間」という。)
3228.2m
・平成29年11月1日~平成30年5月23日(以下「第2期間」という。)
4493.5m
・平成30年6月1日~同年12月27日(以下「第3期間」という。)25
7035.6m
・平成31年1月7日~令和元年6月5日(以下「第4期間」という。)
3849m
エ以上によれば,被告の利益額(税別)は,合計6117万7515円となり,
期間別には以下のとおりとなる。
・第1期間1061万4322円5
・第2期間1477万4628円
・第3期間2313万3053円
・第4期間1265万5512円
オさらに,特許法102条2項に基づき推定される損害額には,消費税相当分
も含まれるから,損害賠償支払時点の税率(10%)に基づき,合計611万7710
50円を加算すべきである(期間別には以下のとおり。)。
・第1期間106万1432円
・第2期間147万7462円
・第3期間231万3305円
・第4期間126万5551円15
(2)推定覆滅事由の不存在
ア顧客誘引力
ガラス手摺においては,手摺取付業者とガラス取付業者が別であることが通常で
あるところ,本件発明は,簡便な取付方法であることから,手摺取付業者による手
摺取付完了後に,足場不要で,ガラス取付業者においてガラス板と目地枠を取り付20
けることができる。
こうした手摺の取付方法の簡便さは,製品金額や工事金額に反映される。このた
め,需要者を建物所有者等としたときでも,同様の外観や安全性であれば,金額で
選択するから,手摺の取付方法が製品選択の動機となり得るのであって,本件発明
を利用し取付方法の簡便さで安価になった被告製品を選択するといえる。25
足場に関しては,マンション新築工事においては足場を組むのが通常であるが,
小規模な住宅やリフォームの際には,足場を組むとは限らない。また,潜在的なメ
リットとして,不具合によるガラス板を取り換える必要がある場合や,工事が遅れ
ても,手摺工事さえ終わっていれば足場を先に撤去し,その後にガラス工事を行う
ことも可能である。さらに,メンテナンスにおいても,足場を組まずにガラス板の
取り換えなどのメンテナンスが可能である。これらの事情から,足場が不要という5
ことも,大きな顧客誘引力となる。
イ競合品について
ガラス板が連続していて目地もアルミであるフラットレール製品についての原告
のシェアは,9割以上である。
また,原告は,平成22年4月から本件特許の実施品を販売しているが,被告の10
主張する競合製品は,いずれも本件特許出願より相当後に発売された製品である。
さらに,これらの被告主張の競合製品のうち,「シャルム」(乙39。以下「乙
39製品」という。)は,手摺笠木を一度外す必要があるので施工に手間がかかり,
「FeeletM-Gslim」(乙30。以下「乙30製品」という。)及び「NT120」(乙
31。以下「乙31製品」という。)は,回転式のアルミ製目地枠を用いており,15
製造コストがかかる上,取付強度と耐久性に難点があり,「TOPRAIL」(乙42。
以下「乙42製品」という。)も,手摺笠木部分を回転させる方法であり,製造コ
スト,取付強度,耐久性に難点がある。加えて,「スウィン」(乙27。以下「乙
27製品」という。)と「ViewXシリーズ」(乙29。以下「乙29製品」とい
う。また,乙27製品,乙29製品~乙31製品,乙39製品及び乙42製品を併20
せて「乙27製品等」ともいう。)は,本件特許の侵害品である可能性が高い。
これらのことから,被告の主張する競合製品は推定覆滅事由とならない。
ウ以上より,本件においては,推定覆滅事由はない。
(3)弁護士及び弁理士費用
原告は,本件訴訟の提起のため,弁護士及び弁理士に委任しており,弁護士・弁25
理士費用は,消費税分加算前の被告の利益額の1割(611万7750円)を下回
らない(期間ごとの内訳は,前記(1)オと同じ。)。
(4)原告の損害額
以上より,原告の損害額は,合計7341万3015円となる。また,期間別に
は以下のとおりとなり,各期間の最終不法行為日に遅滞に陥っている。
・第1期間1273万7186円5
・第2期間1772万9552円
・第3期間2775万9663円
・第4期間1518万6614円
(被告の主張)
(1)被告の利益の額10
ア被告製品の1m当たりの製造原価は3553円(アルミ押出形材2129円,
部品1087円,梱包資材その他82円,生産用固定資産220.9円,BL認定
取得費用34.7円)である。
また,これとは別に,被告は被告製品の生産に際し,スロープやコーナー形状の
部品について社外加工先に加工を委託しており,総販売数1万8606.3mにお15
ける外注加工費は244万5725円であるから,被告の利益額は,5683万4
803円である。
イ特許法102条2項に基づき権利者の損害額と推定されるのは,侵害者が販
売等によって現に受けた利益の額である。したがって,侵害者は,販売時点での消
費税率に基づく負担を負うにとどまる。すなわち,消費税相当分は,販売時点の消20
費税率(8%)に基づいて算定されるべきである。
(2)推定覆滅事由の存在
ア顧客誘引力
(ア)本件発明の作用効果は,①室内側から取り付けることができるため,足場等
が不要であること,②取付強度が高く,ガラス板の肉厚が薄いものであっても風圧25
に耐え,安定して取り付けることができることである。
しかし,①については,他の競合製品においても,押し並べて室内側から取り付
けることが可能である。②は,ガラス板をアルミ製目地枠に取り付ける取付装置で
あれば一様に生じる作用効果であって,本件発明に特有の作用効果ではない。した
がって,本件発明の作用効果とされるものは,本件発明に特有の作用効果ではなく,
顧客への訴求力は乏しい。より具体的には,以下のとおりである。5
(イ)本件特許の方法により取り付けた手摺と同様の構造,すなわちガラス板等の
パネルを上下枠及び縦枠で囲繞して取り付けた構造については,本件特許の出願前
に複数の特許出願が公開されており,パネルを囲繞する構造ではないものの,ガラ
ス板等のパネルを有する手摺も,本件特許の出願前に複数の特許出願が公開されて
いる。これらの特許出願の記載から理解される本件特許出願時における技術水準を10
前提とすれば,ガラス板をガラス取付枠及びアルミ製目地枠で囲繞して取り付けた
手摺は,本件発明の方法を用いなくても,当業者の技術常識を用いて容易に構成で
きたものであり,本件発明の方法を用いて取り付けた手摺自体には本件特許の価値
がなく,本件発明の方法で手摺を取り付けるという点にのみ価値がある。
また,被告製品の需要者は,建物の所有者等の手摺の最終的な需要者であるとこ15
ろ,このような需要者にとって,被告製品を選択する際の動機となるのは,デザイ
ンや安全性等の手摺自体の特徴であり,手摺の取付方法が製品選択の動機となるこ
とはなく,被告方法に顧客誘引力はない。例外的に,手摺の取付業者が被告製品の
仮の需要者と考えられる場合は,手摺の取付方法は被告製品を選択する際の動機と
なり得ることから,このような場合にのみ,被告方法に顧客誘引力が存在し得る。20
もっとも,ほぼ全ての場合において最終的な需要者が被告製品の需要者であること
から,被告製品の販売による利益のうち,被告方法の顧客誘引力による利益の割合
は,多くても10%を超えることはない。
他方,足場は,外壁工事等にも用いるものであり,工事作業の安全確保及び周辺
環境の維持も考慮すると,足場等のない状態で施工されることはなく,被告製品の25
施工においても,手摺の取付時には足場が設置された状態である。このため,被告
製品を取り付けるための被告方法においては,足場等を不要として施工費を安価に
するという本件発明の効果を実現していない。そうすると,仮に被告方法がガラス
板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けるという特徴を含むとしても,その顧
客誘引力による利益は,被告方法の顧客誘引力による利益のうちの多くても10%
を超えることはない。5
「ガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付ける」という特徴についても,
本件発明の「アルミ製目地枠を手摺支柱に係止させる」という手法に限らず,他の
方法によっても「ガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付ける」ことはで
きる。このため,仮に「ガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付ける」と
いう特徴に顧客誘引力があり,被告方法が「アルミ製目地枠を手摺支柱に係止させ10
る」という特徴を含んでいるとしても,当該特徴に係る顧客誘引力による利益は,
ガラス板及びアルミ製目地枠を室内側から取り付けるという特徴の顧客誘引力によ
る利益のうち,多くても50%を超えることはない。
したがって,被告製品の販売による利益のうち,本件発明の顧客誘引力による利
益の割合は,多くても0.5%(=10%*10%*50%)を超えることはない。15
イ競合品
アルミ製手摺製品の市場における原告のシェアは,高くても15%を上回らない。
他方,被告のシェアは約5.35%である。
また,原告製品及び被告製品に類似する競合品として,乙27製品(平成26年
発売),乙39製品(平成29年発売),乙29製品(平成28年発売),乙3020
製品(平成27年発売),乙31製品(平成24年発売),乙42製品が販売され
ており,同種製品の市場における原告製品の占める割合は,高くとも15%を上回
らない。
これらの競合品は,いずれも,室内側から施工することができ,製造コスト,取
付強度,耐久性について,難点があるとはいえない。また,乙27製品は目地枠を25
ビス止めして固定する方法であり,乙29製品は,竪枠(目地枠)を正面側から差
し込んで固定する方法であり,いずれも,本件特許の侵害品ではない。
第4当裁判所の判断
1本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について
(1)被告製品が別紙被告製品説明書のとおりの構成を有し,別紙方法目録記載の
方法(被告方法)で取り付けられること,被告方法の構成a~c,g,h及びlが本件5
発明の構成要件A~C,G,H及びLをそれぞれ充足することは,前記(第2の2
(4)イ)のとおりである。
(2)「係止」(構成要件D,E,I)及び「係合保持」(構成要件I,J)の意義
ア本件発明に係る特許請求の範囲請求項1の記載によれば,係止爪15は,
「手摺支柱1の室外側側面に」突設された「アルミ製目地枠13を係止するため10
の」ものである(構成要件D)。他方,被係止爪16は,「アルミ製目地枠13の室
内側側面に」突設され,「アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側か
ら摺動させることによって」「係止爪15に係止される」ものである(構成要件
E)。このような係止爪15と被係止爪16とは,「アルミ製目地枠13を…摺動させ
て,その被係止爪16を係止爪15に係止させることによってアルミ製目地枠13を15
手摺支柱1に係止させ,これによって該目地枠13を最初のガラス板12の側縁部12
dに係合保持させ」るものである(構成要件I)。
そうすると,「係合保持」とは,本件発明によりアルミ製目地枠13とガラス板1
2の側縁部12dとが相互に干渉する状態に置かれることを意味するものと理解され
る。このような理解は,「次のガラス板12を同様にして…摺動させて,該ガラス20
板12の側縁部12cを先のアルミ製目地枠13に係合保持させ」る(構成要件J)と
の記載とも整合する。なお,構成要件Iと同Jとでは,「係合保持」する主体につ
き,前者では「最初のガラス板12の側縁部12d」,後者では「先のアルミ製目地枠
13」とも理解し得る表現がされている。しかし,これは本件発明により構成される
工程の機序に基づくものとも理解されるのであって,少なくとも,「係合保持」に25
つき,アルミ製目地枠13とガラス板12の側縁部12dとが相互に干渉する状態に置
かれることを意味するものと理解することとは矛盾しない。
また,アルミ製目地枠13は,手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させら
れ,その室内側側面に突設された被係止爪16が手摺支柱1の室外側側面に突設さ
れた係止爪15に係止されることによって,手摺支柱1に係止される(構成要件E
及びI)。すなわち,係止爪15と被係止爪16とがそれぞれアルミ製目地枠13の室5
内側側面と手摺支柱1の室外側側面という対向する側面に設けられた上で,手摺本
体3の長手方向の一方側からの摺動という動作を経ることで,アルミ製目地枠13
は,手摺支柱1に係止される状態になるものである。よって,「係止」とは,手摺
本体3の長手方向に直交する方向である室内側から見て前後方向の移動を規制する
ように係止爪15及び被係止爪16を係り止めすることを意味するものと理解され10
る。
これを踏まえると,「係合保持」とは,ガラス板12とアルミ製目地枠13とが,
少なくともガラス板12の板面と直交する方向である前後方向に,互いの移動が規
制されるように,相互に干渉する状態に置かれることを意味するものと理解され
る。15
イ本件明細書の記載
本件明細書には,以下の記載がある。
(ア)技術分野
「本発明は,ベランダのパラペット(堰壁)に設置される手摺本体の室外側にガ
ラス板を連続的に取り付けるようにした手摺の…取付方法に関するものである。」20
(【0001】)
(イ)背景技術及び発明が解決しようとする課題
「ベランダに設置される従来の手摺の取付装置…としては,…パラペット上に手
摺支柱を所定間隔おきに立設し,これら手摺支柱間の上枠と下枠とを横架し,上下
横枠間に立格子や面板を取り付け,また手摺支柱の上端部に手摺笠木を架け渡すよ25
うにしている。」(【0002】)
「従来のベランダに設置される手摺の取付装置は,その見付面がそのまま屋外正
面に露呈しているため外観上の体裁が好ましくなく,また風雨が直接に手摺本体を
通過して室内側に侵入し,風雨時に室内を開放しておくことができなかった。」
(【0004】)
「本発明は,手摺の取付装置の見付面の外観上の体裁を良くし,風雨時において5
も室内を開放しておくことができ,且つ手摺本体の室内側から複数のガラス板を連
続して取り付けることができるようにした手摺の…取付方法を提案するものであ
る。」(【0005】)
(ウ)発明の効果
「請求項1に係る発明によれば,…手摺本体3の室外面である見付は,手摺本体10
3の長手方向略全域にかけて連続して設けられたガラス板12で覆われているた
め,外観上の体裁が非常に良く,又該ガラス板12によって室内側への風雨の進入
を防ぐことができ,風雨の時でも室内を開放しておくことができる。」(【001
0】)
「アルミ製目地枠13は,ガラス板12の側端縁12c,12dを係合するようにして15
手摺本体3に取り付けられ,ガラス板12の上下左右の四週端縁がガラス取付枠14
とアルミ製目地枠13に係合保持されるようになっているため,ガラス板の上下端
縁のみが上下枠に係合保持され,隣合うガラス板間には従来のゴム系の目地材を充
填するのに比較して,ガラス板12のガラス取付枠14に対する取付強度が高く,風
圧に対する耐久性が良好であり,翻っていえば,ガラス板12の肉厚が薄いもので20
あっても風圧に耐え,ガラス板12を安定してガラス取付枠14に取り付けることが
できる。」(【0013】)
(エ)発明を実施するための形態
「アルミ製目地枠13は略L字状の被係止爪16を形成した基部片29とガラス板1
2の側縁部12dの端部が当接する連結件30と該連結片30を介して基部片29と一体25
形成される目地見付片31とからなり,目地見付片31の内側に水密パッキン20が
取り付けられる。…そして手摺支柱1の室外面にもL状が上記左右反対向きの一対
のL状の係止爪15が一体形成され,アルミ製目地枠13を一方側からガラス板12
の側縁部12dの端縁に連結片30が当接するまで摺動させることによって,アルミ
製目地枠13の被係止爪16は手摺支柱1の係止爪15に係止されるようになってい
る。」(【0027】)5
「アルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させることによって,ガラス板12の側
縁部12dは水密パッキン19を介してアルミ製目地枠13,正確にはその目地見付片
31と基部片29との間で挟持されて係合保持されることになる。このように互いに
隣接するガラス板12,12間の目地部もアルミ製目地枠13で係合保持されることに
なるから,従来のゴム系シール材からなる目地材に比べて,ガラス板12を強固に10
ガラス取付枠14に取り付けることができる。」(【0028】)
ウ本件明細書の上記各記載によれば,「係合保持」とは,ガラス板12の上下
左右の四周端縁(上下縁部12a,12b及び側端縁12c,12d)とガラス取付枠14及び
アルミ製目地枠13とが相互に干渉する状態に置かれることであり,かつ,そのよ
うな状態にあることによって,ガラス板12を,風圧に耐えられるように,その板15
面に直交する方向に動かないように維持することを意味するものと理解される。ま
た,「係止」については,本件明細書においても,特許請求の範囲請求項1の記載
と同様のものとして記載されていることから(【0007】),このような「係合保
持」を実現するために,室内側から見て前後方向の移動を規制するように係止爪1
5及び被係止爪16を係り止めすることを意味するものと理解される。20
エ被告の主張について
被告は,「係止」とは,室内側から見て前後方向の移動を規制し,かつ手摺本体
3の長手方向に移動自在とすることであり,「係合保持」とは,接触して手摺本体
3の長手方向における移動を規制することであると主張する。
しかし,まず,「係止」につき,「係止」に「移動自在」とする語義は通常な25
く,特許請求の範囲及び本件明細書のいずれにも,「係止」前に手摺本体3の長手
方向に摺動可能であることは記載されているものの,「係止」後にアルミ製目地枠
13を手摺本体3の長手方向に移動する動作に関する記載はない。また,アルミ製
目地枠13が「係止」後に手摺本体3の長手方向に移動自在であることの技術的意
義について,本件明細書上に何らの開示も示唆もない。
次に,「係合保持」について,特許請求の範囲の記載には,手摺本体3の長手方5
向の移動の規制を意味することをうかがわせる具体的な記載はなく,アルミ製目地
枠13の連結片30とガラス板12の側縁部12dとの接触に関する記載もない。また,
本件明細書には,「係合保持」の効果として,ガラス板12を,風圧に耐えられる
ように,その板面に直交する方向に動かないように維持することを意味するものと
理解される記載はあるものの,アルミ製目地枠13ないしガラス板12の手摺本体310
の長手方向における移動を規制することをその効果として位置付けていることをう
かがわせる具体的な記載はなく,また,そのような規制の技術的意義に関する記載
も見当たらない。本件明細書記載の実施形態(【0028】及び図16)を見ると,ア
ルミ製目地枠13の目地見付片31と基部片29との間で,水密パッキン20とコーキ
ング材22とを介して,ガラス板12が,その板面方向に挟持されていることが理解15
できる。そうすると,アルミ製目地枠13とガラス板12の側縁部12dとが接触しな
ければならないものではなく,長手方向に対して両者の位置関係が一意に規制され
るという関係にあるものではない。
したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。
(3)「室内側から」(構成要件F,J,K)の意義20
ア本件発明に係る特許請求の範囲の記載によれば,ガラス板12は,「室内側
から」その上端部12aを「ガラス上縁部嵌合溝4に嵌合」され(構成要件F),
「室内側から」倹鈍式で「上下枠5,7間に嵌め込」まれ(構成要件J),「ガラ
ス取付枠14に室内側から取り付け」られる(構成要件K)ものである。ここで,
「ガラス上縁部嵌合溝4」は,「手摺本体3の長手方向略全域にわたって」「ガラ25
ス用上枠5」に「連通形成される」ものであるところ,ガラス用上枠5は「手摺本
体3の室外側に」「設けら」れるものである(構成要件B)。また,「ガラス用下
枠7」は,「手摺本体3の長手方向略全域にわたって前記ガラス上縁部嵌合溝4に
対応するガラスか縁部嵌合溝6が連通形成された」ものである(同上)。さらに,
上下枠5,7は,左右側枠10,11と共に,「ガラス取付枠14」を構成する(同
上)。ガラス取付枠14の室内側にはアルミ製目地枠13が係止される手摺支柱1が5
存在するため,ガラス板12をガラス取付枠14に取り付けるに際し,手摺本体3の
室外側に持ち出さずに隣り合う手摺支柱1の間にガラス板12を通す方法によるこ
とは困難である。そうすると,手摺本体3の室外側にあるガラス取付枠14を構成
するガラス用上枠5に連通形成されたガラス上縁部嵌合溝4にガラス板12を嵌合
するといった工程が行われる以上,ガラス板12が室外側にあることは,いわば当10
然である。
したがって,「室内側から」(構成要件F,J,K)とは,ガラス板の取付けに当
たる作業者の位置を示すものと理解するのが最も自然かつ合理的である。
イ本件明細書の記載等
本件明細書には,本件発明の効果として,「ガラス板12をその周囲側端をガラ15
ス取付枠14に嵌合方式で取り付けるようになっているため,所謂倹鈍方式で室内
側からガラス板をガラス取付枠14に取り付けることができ,ガラス板12を手摺本
体3の室外側に取り付けるための足場等が不要であるから,それだけ施工費が安価
になる。」(【0011】。【0014】も同旨。)との記載がある。足場を組む必要がな
いことが本件発明の効果とされることに鑑みれば,作業者はベランダのパラペット20
に設置された手摺本体よりも室内側に所在することになるから,上記記載の「室内
側から」とは,ガラス板の取付けに当たる作業者の位置を示すものと理解される。
本件発明の実施例として「最初のガラス板12を先端側の手摺支柱1と先端側のガ
ラス側枠10との間に持ち来し,…ガラス板12の上縁部12aを上枠5のガラス上縁
部嵌合溝4に嵌合し」(【0030】)とある点も,上記の理解に沿う。25
ウ以上より,「室内側から」(構成要件F,J,K)とは,ガラス板の取付けに
当たる作業者の位置を示すものと理解される。これに反する被告の主張は採用でき
ない。
(4)被告方法について
ア構成要件D及びEと構成d及びeについて
被告方法の構成dにおける「支柱S」,「アルミ製の縦枠S22」は,それぞれ本5
件発明の「手摺支柱1」,「アルミ製目地枠13」に相当するところ,被告方法の
構成dにおいて,支柱Sの室外側側面には,「アルミ製の縦枠S22」と嵌め合わせ
るための「支柱突起部」が設けられている。また,被告方法の構成eにおいては,
アルミ製の縦枠S22の室内側側面に,手摺本体の長手方向の一方側からスライドさ
せることによって「支柱突起部」に嵌め合わされる「縦枠突起部」が設けられてい10
る。この「支柱突起部」及び「縦枠突起部」は,いずれも,支柱Sないしアルミ製
の縦枠S22に突設された爪様の形状を有する部材であると共に,両者が嵌め合わさ
れる(係り止めされる)ことによって,縦枠S22は,室内側から見て前後方向の移
動が規制される。
したがって,「支柱突起部」(構成d)は「係止爪15」(構成要件D)に,「縦15
枠突起部」(構成e)は「被係止爪16」(構成要件E)に,それぞれ相当する。
構成eにおいては,このほかに,縦枠S22を「押縁の係合用突起部と支柱突起部
との間に嵌め入れ」という工程が含まれる。しかし,当該工程が含まれるとはい
え,その後に更に縦枠S22を手摺本体の長手方向の一方側から摺動させることによ
って「支柱突起部」に「縦枠突起部」が嵌め合わされることに変わりはなく,その20
意味で,当該工程の存在ないし押縁の係合用突起部の存在は,付加的な手段にすぎ
ない。
以上より,被告方法の構成d及びeは,それぞれ,本件発明の構成要件D及びE
を充足する。これに反する被告の主張は採用できない。
イ構成要件Fと構成fについて25
被告方法の構成fにおける「ガラス」及び「ガラス上弦材の溝」は,本件発明の
「ガラス板12」及び「ガラス上縁部嵌合溝4」に相当する(構成要件Bと構成
b)。また,「ガラスの上側」は,本件発明の「ガラス板12」の「上縁部12a」に
相当する。
さらに,被告方法の構成fの「ガラスを室内側から室外側へ持ち出して」とは,
作業者が室内側に所在してガラス板の取付け作業を行うことを意味する。そうする5
と,構成fの「ガラスを室内側から室外側へ持ち出して」は,本件発明の「室内側
から」に相当する。
そうすると,被告方法の構成fは,本件発明の構成要件Fを充足する。これに反
する被告の主張は採用できない。
ウ構成要件Iと構成iについて10
被告方法の構成iにおける「ガラス上弦材S」,「ガラス下弦材S」,「最初の
ガラスの側縁部」は,それぞれ,本件発明の「上枠5」,「下枠7」,「最初のガ
ラス板12の側縁部12d」に相当する。
また,被告方法の支柱突起部と縦枠突起部が嵌め合わされることによって,縦枠
S22とガラスは,縦枠S22が,ガラスを,風圧に耐えられるように,その板面に直15
交する方向に動かないように維持する状態に置かれることとなる。縦枠S22とガラ
スとがこのような状態に置かれることは,「係合保持」に相当する。
被告方法の構成iにおいては,縦枠S22は最初のガラスの側縁部との間に隙間を
あけて位置させられるけれども,「係合保持」には,アルミ製目地枠13がガラス
板12をその板面と直交する方向に動かないように維持する以上の意味はなく,ア20
ルミ製目地枠13がガラス板12の側縁部12dに接触している必要のないことは,前
記(2)エにおいて説示したとおりである。また,証拠(甲13)によれば,ガラス
工事に係る建築工事の標準的な仕様としてエッジクリアランスを設けることが定め
られており,ガラスの破損を防止するために,エッジクリアランスを設けることは
技術常識であることが認められる。そうすると,アルミ製目地枠13とガラス板1225
の側縁部12dとの間に一定の隙間を設けることは,当業者が技術常識に基づき適宜
に行い得る設計事項に過ぎない。そうである以上,この点は,被告方法の構成iに
おいて「係合保持」を欠くと見るべき事情とはいえない。
被告方法の構成iにおいては,さらに,押縁及び止めゴムを用いて支柱突起部か
らの縦枠突起部の外れを規制させ,アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定している。
しかし,「係止」とは,「係合保持」を実現するために,室内側から見て前後方5
向の移動を規制するように係止爪15及び被係止爪16を係り止めすることを意味す
るところ,被告方法においても,縦枠突起部と支柱突起部のみでも上記の意味にお
ける「係止」がされており,押縁や止めゴムの存在は付加的な固定手段であるに過
ぎない。
以上より,被告方法の構成iは,本件発明の構成要件Iを充足する。これに反す10
る被告の主張は採用できない。
エ構成要件Jと構成jについて
被告方法の構成jにおける「ガラスの側縁部」は,本件発明の「ガラス板12の側
縁部12c」に相当する。また,「ガラス上側をガラス上弦材Sに嵌め込み,続けて
ガラス下側をガラス下弦材に嵌め込み」とは,本件発明の「倹鈍式」に相当する。15
さらに,「室内側から室外側に持ち出して」は,前記イのとおり,本件発明の「室
内側から」に相当する。
他方,被告方法の構成jにおいては,最初のガラスと同様にしてガラス上弦材S
及びガラス下弦材に嵌め込み,一方側からスライドさせることによって,縦枠S22
とガラスは,縦枠S22が,ガラスを,風圧に耐えられるように,その板面に直交す20
る方向に動かないように維持するような状態に置かれるから,これは「係合保持」
に相当する。「ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間を空けて位
置させ」ることは,前記ウのとおり,「係合保持」を欠くと見るべき事情とはいえ
ない。
以上より,被告方法の構成jは,本件発明の構成要件Jを充足する。これに反す25
る被告の主張は採用できない。
オ構成要件Kと構成kについて
(ア)被告方法の構成kにおける「ガラス取付枠」は,本件発明の「ガラス取付枠
14」に相当する。また,「室内側から室外側に持ち出して」は,前記イのとおり,
本件発明の「室内側から」に相当する。
さらに,被告方法の構成kのうち,複数のガラスが「個別に手摺本体とアルミ製5
の縦枠S22に囲繞されるようにして」取り付けられることにより,複数のガラスと
アルミ製の縦枠S22とが「外観上は連続するようにして」取り付けられる点につい
て,「連続して」(構成要件K)とは,本件明細書の記載(【0010】)によれば,
ガラス板12が取り付けられた状態での外観の形状を表現したものと理解される。
そうすると,個別のガラスの位置決めは手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞され10
るようにして行われるとしても,外観上複数のガラスとアルミ製の縦枠S22が連続
するようにして取り付けられる以上,上記構成は,なお「連続して」に相当すると
いえる。
以上より,被告方法の構成kは,本件発明の構成要件Kを充足する。これに反す
る被告の主張は採用できない。15
(イ)足場について
被告方法は,その構成それ自体及び証拠(甲4)によれば,手摺の室外側にガラ
ス板を取り付けるに当たって,足場を必要としないものと認められる。また,被告
製品の設置に当たって,ガラスの落下の危険等に対処する目的で足場が設置される
ことがあるとしても,足場設置の目的を異にする以上,この点は本件発明の技術的20
範囲への属否とは無関係である。これに反する被告の主張は採用できない。
(5)小括
以上より,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属する。
2直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)について
(1)前記(第2の2(4)イ)のとおり,被告は,被告製品を販売し,被告方法のう25
ち,手摺本体にガラス取付枠を取り付ける施工までを行い,ガラス取付作業は別の
施工業者によって施工されている(なお,弁論の全趣旨によれば,被告は,ガラス
の販売は行っていないものと認められる。)。
もっとも,証拠(甲4)によれば,ガラス取付作業に当たる施工業者は,被告製
品を使用して,被告の指定した被告方法により,被告の作業に引き続いて取付作業
を行ったものと見られる。この点で,被告とガラス取付作業に当たる施工業者と5
は,共同して被告方法を実施していたものと評価できる。
したがって,被告は,本件特許権の直接侵害に当たる行為をしていたものと認め
られる。これに反する被告の主張は採用できない。
(2)また,前記(第2の2(4)イ)のとおり,被告製品は,被告方法により取り
付けられる物であって,その構造も被告方法による取付けを前提としたものであ10
り,経済的,商業的又は実用的な用途として,被告方法により取り付ける以外の用
途があるとは想定し難い。したがって,被告装置は,「その方法の使用にのみ用い
る物」(特許法101条4号)に当たる。
そうすると,被告が業として行う被告製品の生産,譲渡及び譲渡の申出は,本件
特許権の間接侵害に当たるというべきである。これに反する被告の主張は採用でき15
ない。
3乙3文献に基づく進歩性欠如の有無(争点3-1)について
(1)乙3文献の記載
乙3文献には,以下の記載が認められる。
ア発明の属する技術分野20
「本発明は,例えば駐車場の屋根を支持する柱等に取り付けて,横方向からの風
雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される建築用サイドパネルに関するものであ
る。」(【0001】)
イ従来の技術
「従来,この種の建築用サイドパネルは,…相対向する上,下枠a,bに形成さ25
れた溝cにアクリル板等からなるパネルdの上下両辺部を嵌め込み,パネルdと溝
cとの隙間をビードe,fで埋めるように構成されていたので,次の点で改良の余地
があった。」(【0003】)
「パネルdをスライドさせて溝cに嵌め込む際,ビードeが不測に外れないよう
に注意を払う必要があり,また,ビードe,fが差し込みにくい場合,ビードe,f
に中性洗剤を塗布して滑りをよくしたり,ぬるま湯で暖めて柔らかくするといった5
工夫が必要で,建築用サイドパネルの購入者にとっては,組み立て作業がかなり面
倒であった。/…使用可能なパネルdの厚みが溝cの幅によって制限されることに
なり,汎用性がないため,…パネルの厚みに対応する多品種を製造しなければなら
ず,不経済であった。」(【0004】。なお,「/」は改行部分を示す。)
ウ発明が解決しようとする課題10
「本発明は,組立作業が容易で,しかも,パネル厚の変更にもある程度対応でき
る汎用性のある経済的な建築用サイドパネルを提供するものである。」(【000
5】)
エ発明の実施の形態
「Aは,本発明に係る建築用サイドパネルの一例を示し,駐車場の屋根Bを支持15
する柱Cに取り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用され
る。この建築用サイドパネルAは,相対向する上,下枠1a,1bと,上,下枠1a,
1bの長手方向両端部間に連結された一対の端面縦枠2と,上,下枠1a,1bの長手
方向中間部間に連結された中間縦枠3a,3bと,上,下枠1a,1bの溝に嵌め込まれ
た複数枚の枠付きパネル4とを備えている。前記中間縦枠3a,3bは,隣り合う枠20
付きパネル4の目地毎に配置されており,上,下枠1a,1bの溝の両側に相対向し
て設けられている。」(【0019】)
「枠付きパネル4は,…パネル材4aと,その周囲四辺に固定された方形の枠体4
bとで構成されている。パネル材4aとしては,有色透明のアクリル板…等が使用さ
れる。枠体4bとしては,アルミ型材…等が使用され,これらはパネル材4aの種類25
に応じて任意に選択できる。」(【0020】)
「中間縦枠3a,3bは,…縦板部27と,その両側辺から略直角に折れ曲がった両
側板部28と,それらの先端から内側へ略直角に折れ曲がった鍔板部29とから成
り,縦板部27には,上下両端部とその中間部に,…中間縦枠取付金具30への取付
用ボルト31を挿通するための貫通孔32が形成されている。」(【0026】)
「中間縦枠取付金具30は,横板部30aとその両端から略直角に折れ曲がり且つ5
ねじ孔33が形成された一対の垂直板部30bとから成り,横板部30aには,その両
端寄りの二箇所に貫通孔34が形成され,前記上枠1aの下面と下枠1bの上面に,
夫々,前記横板部30aが上,下枠1a,1bの溝7を横切り且つ前記垂直板部30bが
互いに上下に向かい合う状態にボルト・ナット等の止め具35で取り付けるように
構成されている。」(【0027】)10
「上,下枠1a,1b,端面縦枠2,中間縦枠3a,3bは,何れも鋼板を曲げ加工し
たものであるが,アルミ等で作製してもよい。」(【0028】)
「次に,上記建築用サイドパネルAの組立手順を説明する。」(【0029】)
「予め,端面縦枠2とパネル係止金具23とは,ボルト26を前記ねじ孔24にね
じ込んで仮止めしておき,この状態で,一方の端面縦枠2を上,下枠1a,1bの長15
手方向一端部にボルト22で連結する。」(【0030】)
「しかる後,上,下枠1a,1bの他端側から上,下枠1a,1bの溝7に枠付きパネ
ル4をスライドさせて嵌め込み,その縦枠材を前記端面縦枠2の溝19に嵌め込
む。」(【0031】)
「この状態で,端面縦枠2とパネル係止金具23の締付け操作を行い,枠付きパ20
ネル4の縦枠材をパネル係止金具23と端面縦枠2のパネル受け部18で挟持す
る。」(【0032】)
「しかる後,中間縦枠取付金具30を上,下枠1a,1bに取り付け,次の枠付きパ
ネル4を上,下枠1a,1bの溝7に中間縦枠取付金具30と当たる位置までスライド
させて嵌め込む。」(【0034】)25
「次に,中間縦枠3a,3bを中間縦枠取付金具30に取り付ける。即ち,中間縦枠
3a,3bの貫通孔32を通して挿入したボルト31を中間縦枠取付金具30のねじ孔33
にねじ込むことにより,…両側の中間縦枠3a,3bの鍔板部29で枠付きパネル4の
隣り合う縦枠材を挟持する。」(【0035】)
「上記の作業を繰り返し,最後の枠付きパネル4を上,下枠1a,1bの溝7に嵌
め込んだら,他端の端面縦枠2を,予め,パネル係止金具23を仮止めした状態5
で,上,下枠1a,1bの他端に連結すると共に,枠付きパネル4の縦枠材を当該端
面縦枠2の溝19に嵌め込み,この状態で,前記と同様に,端面縦枠2とパネル係
止金具23の締付け操作を行い,枠付きパネル4の縦枠材をパネル係止金具23と端
面縦枠2のパネル受け部18で挟持して固定する。」(【0037】)
「上記の構成によれば,上,下枠1a,1bの溝7に嵌め込むパネルとして,予10
め,パネル材4aの周囲四辺に方形の枠体4bが固定されて成る枠付きパネル4を使
用しているので,…作業に不慣れな建築用サイドパネルの購入者サイドでは,ビー
ド4cの差し込みを行う必要がなくなり,組立作業が容易である。」(【0038】)
「しかも,上,下枠1a,1bの溝7にスライド自在に嵌め込んだ枠付きパネル4
の縦枠材を端面縦枠2の溝19に嵌め込み,当該端面縦枠2の溝の一側縁に形成さ15
れたパネル受け部18と端面縦枠2の内部に設けられたパネル係止金具23とで前記
縦枠材を挟持して固定し,上,下縦枠1a,1bの溝7の両側に設けられた中間縦枠3
a,3bで,枠付きパネル4の隣り合う縦枠材を挟持して固定するので,枠付きパネ
ル4の厚さ(枠体4bの厚さ)が上,下枠1a,1bの溝7の幅より薄くても,パネル
受け部18とパネル係止金具23とによる挟持および両側の中間縦枠3a,3bによる20
挟持により,ガタツキのない状態にしっかり固定できる。」(【0039】)
「従って,上,下枠1a,1bに形成する溝7の幅が一定であるにもかかわらず,
溝幅の範囲内で厚さ(枠体の厚さ)の異なる枠付きパネル4を使用できることにな
り,ある程度の汎用性が得られるので,経済的である。」(【0040】)
(2)本件発明と乙3発明の対比等25
ア技術分野について
乙3文献の記載によれば,乙3発明は,例えば駐車場の屋根を支持する柱等に取
り付けて,横方向からの風雨や風雪の吹き込みを防止すべく使用される建築用サイ
ドパネルに関するものであり,ベランダのパラペットに設置される手摺本体の室外
側にガラス板を連続的に取り付けるようにした手摺の取付方法に関するものである
本件発明とは,そもそも技術分野を異にする。5
イ本件発明と乙3発明の相違点について
前記アの点を措くとしても,乙3文献の上記各記載によれば,本件発明と乙3発
明とは,少なくとも,以下の点で相違する。
すなわち,本件発明では,手摺支柱1の室外側側面にアルミ製目地枠13を係止
するための係止爪15が突設され(構成要件D),アルミ製目地枠13の室内側側面10
には,アルミ製目地枠13を手摺本体3の長手方向の一方側から摺動させることに
よって前記係止爪15に係止される被係止爪16が突設され(構成要件E),アルミ
製目地枠を上下枠5,7間を一方側から摺動させて,その被係止爪16を係止爪15
に係止させることによってアルミ製目地枠13を手摺支柱1に係止させる(構成要
件I)のに対し,乙3発明では,上,下枠1a,1b及び一対の端面縦枠2からなる枠15
が取り付けられる柱等に,中間縦枠3a,3bを係止する部材はなく,止め具35によ
り上,下枠1a,1bに取り付けられた中間縦枠取付金具30により中間縦枠3a,3bを
取り付ける(乙3文献【0027】,【0035】)こととされている。
他方,乙4文献には,複数の支柱とこれらの支柱を連結する横架材とからなる骨
組に保持されるパネルの取付構造において,前記骨組の少なくとも片側に,横方向20
に適宜間隔を置いて縦方向に設けられた複数の支持部材と,前記支持部材の上側か
ら縦方向に差し込むことによって,前記支持部材に取り付けられるパネルとを具備
することを特徴とする取付構造が記載されている(【0007】)。このうち,パネル
は,支持部材に,支持部材及び骨組の上側から差込み及び引抜き可能に取り付けら
れ,支持されるものであり(【0034】),支持部材は,通常,支柱あるいは横桟に25
固定されるが,支柱と一体的に形成されたものであってもよい(【0036】)。この
ように,乙4文献には,そもそも目地枠を設ける構成の開示も示唆もなく,したが
って,目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
乙5文献には,支柱に竪枠を取り付け,これと上枠及び下枠とにより板ガラスを
上下左右の四辺で支持する構成が開示されているところ(【請求項4】,【0023】
等),この竪枠は本件発明の「アルミ製目地枠13」に相当するものといえる。し5
かし,竪枠の固定方法については,ビスによる固定が示されている(【0023】)の
みであって,支柱に突設された係止爪及び竪枠に突設された被係止爪という構成の
開示も示唆もなく,また,目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もな
い。
乙6文献には,支柱に巻回収納されたファブリックを横方向に引き出し,その端10
部を隣接する他の支柱に設けられたフックに係止することによってフェンスとして
使用することができるファブリックフェンスが記載されており(【請求項1】,
【0029】,【0033】等),そもそも目地枠を設ける構成の開示も示唆もなく,した
がって,目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
乙7文献には,石綿建材を被覆処理するためのスレート被覆構造に関する発明が15
記載されており(【0001】),本件発明とはそもそも技術分野を異にする上,被告
の主張によっても,取付部材にカバー部材を倹鈍方式により取り付ける構成が開示
されているというにとどまるし,目地枠を設ける構成及び目地枠を摺動させて係止
させる構成の開示も示唆もない。
乙8文献には,強度的安定性に優れた囲い,例えば防雪,防風,防雨として活用20
でき,あるいは目隠し等としても活用できる囲いを簡易に組み立てることができる
と共に,その分解が容易で保管スペースも少なくて済む,組立式囲いに関する発明
が記載されており(【0001】),本件発明とはそもそも技術分野を異にする上,被
告の主張によっても,支柱間の区画部を覆う覆板の上下の端部分を倹鈍方式で上下
の条溝に挿入する構成が開示されているというにとどまるし,目地枠を設ける構成25
及び目地枠を摺動させて係止させる構成の開示も示唆もない。
乙9文献には,建築物内部を2つの部屋に仕切る間仕切面部の構造に関する発明
が記載されており(【0001】),本件発明とはそもそも技術分野を異にする上,被
告の主張によっても,複数の単位仕切パネルを上下ランナーに倹鈍式で取り付ける
構成が開示されているにとどまるし,目地枠を設ける構成及び目地枠を摺動させて
係止させる構成の開示も示唆もない。5
さらに,乙10文献~乙12文献は,いずれも,単に部材を引っ掛けて留めると
いう意味での「係止」が周知慣用技術であることを示すものとして被告の引用する
ものであるが,その点を措くとしても,乙10文献及び乙11文献には,いずれも
目地枠に関する構成の開示も示唆も認められない。また,乙12文献は,その公開
日は本件特許の出願日に後れるものであるし,その点を措くとしても,左右の竪枠10
は,ガラス板に取り付けられるものであり(【請求項1】),また,ガラス板の左
右側端に対面する見込片相互間に隙間が存在し(【0008】,図2),この隙間すな
わち目地を覆う部材はないことから,やはり目地枠に関する構成の開示も示唆もな
い。
したがって,上記相違点につき,乙3発明に乙4文献~乙12文献を組み合わせ15
たとしても,当業者が本件発明の構成を容易に想到することができたとはいえな
い。
(3)小括
以上によれば,本件発明は,特許出願前に当業者が乙3文献~乙12文献記載の
発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,特許法2920
条2項に違反して特許されたものとはいえない。したがって,本件特許権は,特許
無効審判により無効にされるべきものとは認められない。この点に関する被告の主
張は採用できない。
4サポート要件違反の有無(争点3-2)について
(1)被告は,本件発明の課題は,手摺本体の室外側長手方向略全域に,手摺本体25
の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにすることで
あるところ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,この課題を解決する
には本件特許の請求項2に係る発明の構成が必要であるとした上で,本件発明の構
成には,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映さ
れていないなどと主張する。
しかし,本件発明が解決しようとする課題は,手摺の取付装置の見付面の外観上5
の体裁を良くし,風雨時においても室内を開放しておくことができ,且つ手摺本体
の室内側から複数のガラス板を連続して取り付けることができるようにした手摺の
取付方法を提案することにある(本件明細書【0005】)。また,その効果は,「手
摺本体3の室外面である見付は,手摺本体の長手方向略全域にかけて連続して設け
られたガラス板12で覆われているため,外観上の体裁が非常に良く,又該ガラス10
板12によって室内側への風雨の侵入を防ぐことができ,風雨の時でも室内を開放
しておくことができる。」(【0010】),「所謂倹鈍方式で室内側からガラス板1
2をガラス取付枠14に取り付けることができ,ガラス板12を手摺本体3の室外側
に取り付けるための足場等が不要であるから,それだけ施工費が安価になる。」
(【0011】。なお,【0014】も同旨。),「互いに隣り合う複数のガラス板12間15
にアルミ製目地枠13が配設されるようになっているため,…アルミ特有の見栄を
発揮することができ,手摺本体3の見付面の体裁がこの面からの良好である。」
(【0012】),「ガラス板12の上下左右の四週端縁がガラス取付枠14とアルミ製
目地枠13に係合保持されるようになっているため,…ガラス板12のガラス取付枠
14に対する取付強度が高く,風圧に対する耐久性が良好であ」る(【0013】),20
「複数のガラス板12の互いに隣り合うガラス板12間に取り付けられる目地材とし
てアルミ製目地枠13を用い,このアルミ製目地枠13を,手摺支柱1に設けた係止
爪15にアルミ製目地枠13に設けた被係止爪16を手摺本体3の長手方向の一方側
から摺動させて,手摺本体3に係止するようにしているから,アルミ製目地枠13
も室内側から容易に取り付けることができ,足場等が不要であるから,この面でも25
安価に施工することができる。」(【0015】)というものである。
本件明細書には,少なくとも最後のガラス板12を嵌め入れる工程より前の工程
については,本発明に係る特許請求の範囲の記載と同じ内容が記載されているとい
えると共に,当業者が,本件発明の上記課題を解決し,その効果を実現することが
できる記載がされているものといえる。
他方,本件明細書には,【発明を実施するための形態】として,少なくとも最後5
のガラス板12を嵌め入れる側の側枠11につき,固定側枠部材17と該固定側枠部
材17から一方側に後退移動すると共に該固定側枠部材17に重合するよう進入移動
可能な可動側枠部材18との2部材によって形成する構成が示されており(【003
6】),この構成は,本件特許の請求項2に係る発明に対応するものと理解され
る。10
もっとも,上記【0036】は,本件発明の好適な一実施形態の例を示したものに過
ぎず(【0020】),本件明細書を全体として見ても,最後のガラス板12を嵌め入
れる側の側枠11の構成につき上記のものに限定されることをうかがわせる記載は
ない。また,最後のガラス板12につき,本件特許の請求項2に係る発明によらな
ければ側枠11に固定できないというものでもない。現に,証拠(甲4)によれ15
ば,被告方法においては,最後のガラスを入れた後,壁面と端部枠Sの間から端部
縁Sを入れて,端部枠Sと端部縁Sを嵌め合わせるという方法が行われることが認
められる。
したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載と
を対比したとき,特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載さ20
れた発明ということができるとともに,発明の詳細な説明の記載又はその示唆によ
り,当業者が,上記課題を解決し,その効果を実現することができる範囲のもので
あるといえる。
(2)また,被告は,本件明細書には,ガラスとは独立して,目地枠について長手
方向の移動を規制する手段は開示されておらず,したがって,長手方向の移動を規25
制する手段を限定する事項は開示されていないとした上で,ガラスとは独立して,
目地枠について長手方向の移動を規制する手段を任意に付加することができるとす
ると,その手段はあらゆる手段を含み,足場が不要であるという本件発明の作用効
果を実現できないものも含まれ得るなどとも主張する。
しかし,前記1(2)エで説示したように,アルミ製目地枠13は,「係止」によっ
て,室内側から見て前後方向に規制されるものではあっても,本件発明に係る特許5
請求の範囲及び本件明細書のいずれの記載においても,発明の構成として,目地枠
の長手方向への移動の規制に関する開示ないし示唆はされていない。よって,アル
ミ製目地枠13の長手方向への移動に関しては,本件発明の作用効果に即する範囲
で,その移動が規制されているものも,移動が規制されていないものも含み得ると
解するのが相当である。そして,本件明細書には,本件発明の作用効果として足場10
等が不要であることが具体的に記載されているのであるから,ガラスとは独立し
て,目地枠について長手方向の移動を規制する手段を任意に付加し得るとしても,
これには足場等を不要とする本件発明の作用効果を実現し得なくなるものは含まれ
ない。このため,この点に関する被告の主張はその前提を欠き,失当である。
(3)以上より,本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものということができ15
るから,本件特許は,特許法36条6項1号所定の要件を満たしていない特許出願
に対してされたもとはいえない。したがって,本件特許権は,特許無効審判により
無効にされるべきものとはいえない。この点に関する被告の主張は採用できない。
5原告の損害額(争点4)について
(1)被告製品の販売による被告の利益の額について20
ア被告製品の売上額
前記(第2の2(4)ア)のとおり,被告製品1mあたりの売上金額(税別)は,
6739円である。
また,被告は,平成29年1月13日~令和元年6月5日までの間,被告製品を
製造,販売したところ,総販売数は1万8606.3mである。その内訳は,証拠25
(乙19,32)によれば,以下のとおりであると認められる。
・第1期間3228.2m
・第2期間4493.5m
・第3期間7035.6m
・第4期間3849m
イ控除すべき経費等5
(ア)被告製品1mあたりの原価,費用
a被告製品の1mあたりの製造に当たり,アルミ押出形材2129円,部品1
087円,梱包資材その他82円(いずれも税別)を要することについては,当事
者間に争いがない。
b被告製品生産用固定資産について10
証拠(乙34)によれば,被告製品の生産用固定資産には10種の金型が含まれ
ること,その取得価格(税別)は,合計286万円であることが認められる(な
お,被告の利益の額の算定に当たってその取得に要する費用を控除すべきことは,
当事者間に争いがない。)。これを1mあたりに換算すると(なお,このような計
算方法によることについては当事者間に争いがない。),1mあたり153.7円15
(小数点第2位以下切捨て。以下同じ。)となる。
他方,被告は,手摺門扉製作用モータープレス機1台を被告製品専用で使用して
いたとして,その取得費用の控除を主張する。しかし,証拠(乙34)によれば,
当該モータープレス機は,被告において同時に導入したモータープレス機3台のう
ちの1台であり,他の2台は別の製品の用途に用いられていることが認められる。20
そうすると,被告製品専用で使用されているモータープレス機1台も,被告製品の
製造以外の用途に転用可能なものと見られることから,その取得費用は,被告製品
の製造のために直接的追加的に必要であった費用に当たるとはいえず,これを控除
すべきではない。
cBL認定取得費用について25
証拠(甲14,15,乙29の2,30の2,31の2)によれば,BL(ベタ
ーリビング)認定とは,一般財団法人ベターリビングにより,製品の品質,性能,
アフターサービス等に優れた住宅部品であると適合評価を受けたことを示すものと
認められる。このような性質のものであることに鑑みると,BL認定を取得するこ
とは,被告が他社と伍して被告製品を販売するにあたって必要であったものといえ
るから,その取得費用は,被告製品の販売のために直接的追加的に必要であった費5
用に当たるといえ,被告の利益の額の算定に当たって控除すべきである。
その額について,証拠(乙35)によれば,このBL認定取得のために,被告
は,64万7800円(税別)を要したことが認められる。これを1mあたりに換
算すると,34.8円となる。
(イ)外注加工費10
証拠(乙36)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告製品を製造,販売する
にあたり,スロープ及びコーナー部について,社外加工先に加工,生産を依頼して
いたこと,スロープの加工費用は1ユニット(1m)あたり1850円(税別),
コーナーユニットの加工費用は1か所あたり1200円(同上)であったこと,第
1期間についてコーナーユニットが301か所,第2期間についてスロープが4.15
5m,コーナーユニットが394か所,第3期間についてコーナーユニットが83
0か所,第4期間についてスロープが28m,コーナーユニットが463か所であ
ったことが認められる。
そうすると,外注加工費(税別)は,第1期間について36万1200円,第2
期間について48万1125円,第3期間について99万6000円,第4期間に20
ついて60万7400円となるところ,これは被告製品の製造,販売に直接的追加
的に必要であった費用に当たるから,被告の利益の額の算定に当たって控除すべき
である。
これに対し,原告は,工事台帳に外注費用の欄があるにもかかわらず外注加工費
が記載されていないのは不合理である,全販売数量の8%に過ぎない工事を基準に25
売上や原価を計算しているのに,外注加工費用は全体で計算するのは妥当でない,
などと主張する。しかし,被告製品の取付けに当たり,スロープ及びコーナー部が
必要となること,これを社外加工先に依頼して加工,生産を依頼すること自体は不
自然ではないし,工事台帳(乙23の1~23の12)に「外注商品」,「外注費
用」といった項目があることを考慮しても,なお乙36の記載内容の信用性に疑義
を抱くべき具体的な事情は見当たらない。また,全販売数量の一部をもとに売上等5
を計算するからといって,外注加工費につき実数に基づき計算したとしても,その
こと自体は何ら不適当でもなければ,不合理でもない。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ)小括
以上によれば,外注加工費を除く以外の被告製品の製造販売に係る費用(税別)10
は,1mあたり3486.5円(=¥2,129+¥1,087+¥82+¥153.7+¥34.8)となる。これ
に,外注加工費として,第1期間について36万1200円,第2期間について4
8万1125円,第3期間について99万6000円,第4期間について60万7
400円を加えたものが,控除すべき費用となる。
ウ被告の利益の額15
(ア)前記ア及びイによれば,1mあたりの被告製品の売上額から控除すべき経費
等を差し引いた1mあたりの利益額は,3252.5円(=¥6,739-¥3,486.5)とな
る。
そうすると,被告製品による被告の利益の額は,以下のとおりとなる。
・第1期間1013万8520円(小数点以下切捨て。以下同じ。)20
3,228.2m*¥3,252.5/m-¥361,200=¥10,138,520
・第2期間1413万3983円
4,493.5m*¥3,252.5/m-¥481,125=¥14,133,983
・第3期間2188万7289円
7,035.6m*¥3,252.5/m-¥996,000=¥21,887,28925
・第4期間1191万1472円
3,849m*¥3,252.5/m-¥607,400=¥11,911,472
(イ)消費税について
消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるとこ
ろ(消費税法4条1項),「例えば,次に掲げる損害賠償金のように,その実質が
資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当する5
ことに留意する。…(2)無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財
産権の権利者が収受する損害賠償金」(消費税法基本通達5-2-5)とされているこ
とに鑑みると,特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金
を侵害者から受領した場合,その損害賠償金も消費税の課税対象となるものと推察
される。そうすると,特許権者が特許権侵害による損害のてん補を受けるために10
は,課税されるであろう消費税額相当分についても損害として受領し得る必要があ
るというべきであるから,「利益」には消費税額相当分も含まれ得ると解される。
適用されるべき消費税率について,原告は,損害賠償支払時点の税率(10%)
によるべきと主張する。
しかし,上記のとおり,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金に対する消費15
税が課せられるのは,損害賠償金の実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認めら
れることによる。ここで,資産の譲渡等に相当する行為と見られるのは,特許権侵
害行為である。また,消費税基本通達9-1-21では,「工業所有権等又はノウハウを
他の者に使用させたことにより支払いを受ける使用料の額を対価とする資産の譲渡
等の時期は,その額が確定した日とする。」とされている。これらのことに鑑みる20
と,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金は,特許権侵害行為時に直ちに損害
が発生して金額が確定するものであるから,資産の譲渡等の時期は,特許権侵害行
為時であると解される。
そうすると,本件においては,第1期間~第4期間のいずれにおいても,本件特
許権侵害行為時の消費税率8%が適用されることとなる。25
(ウ)以上によれば,被告の利益の額(税込)は,以下のとおりとなる。
・第1期間1094万9601円
・第2期間1526万4701円
・第3期間2363万8272円
・第4期間1286万4389円
(2)推定覆滅について5
ア本件発明の効果
本件明細書の記載によれば,本件発明の効果は,前記4(1)のとおりである。要
するに,本件発明の効果は,①外観上の体裁の良さ及び室内側への風雨の進入防止
並びに②取付強度の高さ及び風圧に対する耐久性の良さと,③取付作業時に足場等
が不要となることによる施工コストの低減にあるといえる。もっとも,上記効果の10
うち①及び②は,手摺本体取付け後の効果であるため,取付方法に係る発明である
本件発明によるのでなければ実現し得ない効果とは必ずしもいえない。
イ本件発明の貢献の程度等について
(ア)本件発明は,手摺の取付方法に係る発明である。手摺を選択するのは,最終
的にはこれを取り付ける建築物の施主であるものの,手摺の取付方法そのものが施15
主の関心を惹くとは考え難い。その意味で,本件発明に係る手摺の取付方法を実施
することは,製品選択の直接の動機となるとはいえない。
しかし,本件発明の効果①~③は,いずれも建築物に取り付けるべき手摺製品の
選択の動機となり得る事情ということはできる。
(イ)もっとも,前記アのとおり,効果①及び②は,いずれも手摺本体取付け後の20
効果であるため,取付方法に係る発明である本件発明によるのでなければ実現し得
ない効果とは必ずしもいえない。例えば,本件特許出願後に公開されたものである
ものの,特開2009-228320号公報(乙16。平成21年10月8日公開)には,手
摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数のガラス板等のパネルが取り付けら
れ,パネル間にはパネル支持枠(アルミニウム系金属で構成されるものであり25
(【0012】),アルミ製目地枠に相当する。)を用い,パネルの上下左右全ての側
部が支持固定される手摺の構成が開示されている。そうすると,効果①及び②につ
いては,本件発明の実施による貢献の程度の評価に当たっては,必ずしも重視し得
るものではない。
(ウ)他方,効果③については,最終的な需要者(ないしこれに対して建築物に取
り付けるべき手摺を提案する手摺取付業者や建築物の開発業者等)にとって,顧客5
誘引力を生じ得るものといってよく,本件発明の貢献の程度を評価するに当たって
はこれを考慮に入れるべきである。
もっとも,複数階層の建築物の建築現場においては,手摺取付工事のための足場
は不要であっても,別工程のために足場の設置が必要となることは,当然あり得る
(乙50~54参照)。このため,このような場合は,結局は足場等設置に要する10
コストが発生し,施工コスト低減の効果がないか,あるとしても,設置期間短縮等
による限られた効果しか生じないものと合理的に推察される。
他方,このような事情は主として建築物の新築時や大規模修繕時のものであり,
それ以外のメンテナンス時には,足場等を不要とすることによる施工コストの低減
という効果が発揮されることは考えられる。現に,乙42製品のカタログ(乙415
2)には,「パネルは室内側から取り付けられ,メンテナンス性に優れていま
す。」と記載されている。また,原告製品のカタログ(甲15)においても,「ガ
ラス嵌め込み工事における,外部足場が不要になります。」との記載があり,これ
もメンテナンス性における優位性を指摘するものと理解される。ただし,建築物の
新築時及び大規模修繕時に比較すると,それ以外の機会にメンテナンスを実際に要20
する例は,規模的にかなり少ないと推察される。
さらに,被告は,そのウェブサイト(甲3の1)において,被告製品の特徴とし
て,ガラスの連続した意匠となること,4辺支持とすることでガラス厚を薄く設計
できるとともに,手すりの高耐風圧仕様となること,ガラスの縦枠への掛かり寸法
をガラス厚とし,安心な製品仕様としていることを挙げるものの,足場を組む必要25
がないこと(その結果として施工費が安価になること)については触れていない。
加えて,本件発明に係る手摺取付方法によれば,ガラス取付業者においてガラス
板と目地枠を取り付けることができるとしても,それがどの程度施工コストの低減
に貢献する効果を有しているのかは明らかではない。
(エ)以上によれば,本件発明は,施工コスト低減という効果(③)によりこれを
実施する製品の販売等に貢献するものであって,相応の顧客誘引力を有するといえ5
るものの,その程度は限られているというべきである。また,効果①及び②に関し
ては,本件発明は,手摺本体の取付け完了後の外観上の体裁及び取付強度の点で同
程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえない。
ウ競合品について
(ア)外観上の体裁の良さ等(①)について10
証拠(乙27,29~31,39,42。各枝番を含む。以下同じ。)によれ
ば,乙27製品等は,いずれも,手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数
のガラス板が取り付けられ,ガラス板間にはアルミ製目地枠を用いているものと認
められる。これにより,これらの製品は,本件発明の効果①と同様の効果を奏する
ものといえる。15
(イ)取付強度の高さ等(②)について
証拠(乙27,29~31,39,42)によれば,乙27製品等は,いずれ
も,ガラス板間の目地材としてアルミ製目地枠(縦枠,竪枠)を用い,ガラス取付
枠とアルミ製目地枠とでガラス板の上下左右を係合保持しているものと認められる
(乙31製品については,「2辺支持タイプ」との記載もあるが(甲18),「420
辺支持」との記載のある「ガラスタイプ」もある(乙31)。)。これにより,こ
れらの製品は,本件発明の効果②と同様の効果を奏するものといえる。
これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製
目地枠ないし手摺笠木部分の取付方法ゆえに取付強度と耐久性に難点がある旨を指
摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる取付強度及び耐久性の問題点が具体的25
にどの程度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件明細書によれば,取付
強度及び耐久性に係る本件発明の効果は,「ガラス板の上下端縁のみが上下枠に係
合保持され,隣合うガラス板間には従来のゴム系の目地材を充填するのに比較し
て」(【0013】)の強度に関するものに過ぎない。このほか,原告製品(証拠(甲
14,15)及び弁論の全趣旨より,本件発明に係る取付方法により取り付けられ
るものと認められる。)と同様に,これらの製品の施工例として高層マンション等5
の複数階層を有する建築物が示されていること(乙30,31,42)に鑑みて
も,乙30製品,乙31製品及び乙42製品は,少なくとも,原告製品と競合し得
る程度には本件発明の効果②と同様の効果を奏するものと見られる。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(ウ)施工コストの低減(③)について10
証拠(乙37~42)によれば,乙27製品等は,いずれも,ガラス板とアルミ
製目地枠を室内側から取り付けることが可能であり,ガラス板とアルミ製目地枠を
室外側に取り付ける作業のために足場を組む必要はないものと認められる。これに
より,これらの製品は,本件発明の効果③と同様の効果を奏するものといえる。
これに対し,原告は,乙30製品,乙31製品及び乙42製品につき,アルミ製15
目地枠ないし手摺笠木部分が回転式であるがゆえに製造コストに難点がある旨を指
摘する。しかし,上記取付方法ゆえに生じる製造コストの問題点が具体的にどの程
度のものであるかは明らかでない。そもそも,本件発明の効果の1つである施工コ
ストの低減は,足場等を設ける必要がないことによって実現されるものであって,
アルミ製目地枠の取付方法が回転式であること(乙30製品,乙31製品)や手摺20
笠木部分の取付方法が回転式であること(乙42製品)による製造コストとは無関
係である。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
(エ)その他
原告は,乙27製品及び乙29製品につき,本件特許権を侵害する製品である可25
能性が高い旨を指摘する。しかし,原告も可能性を指摘するにとどまるし,これら
の製品が本件特許権を侵害することを認めるに足りる証拠もないことから,本件に
おいては,この点は考慮に含めないこととする。
(オ)以上より,乙27製品等は,いずれも,本件発明の効果と同様の効果を有す
る製品として,原告製品及び被告製品と市場において競合するものと見るのが相当
である。5
もっとも,原告は,原告製品を遅くとも平成24年3月までには販売していると
認められる(甲14,15,弁論の全趣旨)。他方,証拠(乙55)及び弁論の全
趣旨によれば,乙27製品等の販売開始時期は,乙31製品が平成24年,乙27
製品が平成26年,乙30製品が平成27年,乙29製品が平成28年3月,乙3
9製品が平成29年10月であることが認められる。10
また,原告製品,被告製品及び乙27製品等の各売上額やアルミ製目地枠のフラ
ットレール製品市場におけるシェアは,いずれも証拠上明らかでない。
これらの事情を総合的に考慮すると,アルミ製手摺製品の市場において原告製品
及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば,特許法102条2
項に基づく損害額の推定覆滅事由としてこれを考慮すべきではあるものの,被告に15
よる主張立証の程度に鑑みれば,その程度は相当に限られると見るべきである。
エ推定覆滅の程度
以上の事情を総合的に考慮すれば,被告製品の売上に対する本件発明の貢献の程
度は限られるものの,他方で,競合品の存在による推定覆滅の程度も相当に限定的
であり,他に推定を覆滅すべき具体的な事情も見当たらないことから,本件におい20
ては,2割の限度で損害額の推定が覆滅されるものとするのが相当である。これに
反する原告及び被告の各主張は,いずれも採用できない。
そうすると,特許法102条2項に基づき推定される原告の損害額は,以下のと
おりとなる。
・第1期間875万9680円25
・第2期間1221万1760円
・第3期間1891万0617円
・第4期間1029万1511円
(3)弁護士及び弁理士費用相当損害額
原告が本件訴訟の提起及び追行を弁護士及び弁理士に委任したことは当裁判所に
顕著な事実であるから,その費用については,特許法102条2項に基づき推定さ5
れる原告の損害額の1割の限度で,被告の行為と相当因果関係のある損害と認める
のが相当である。ただし,本件において,原告は,弁護士及び弁理士費用相当損害
額として,消費税相当分加算前の被告の利益の額を基準として請求していることを
踏まえ,消費税分加算前の被告の利益の額から推定覆滅に係る分を控除した額の1
割をもって,弁護士及び弁理士費用相当損害額とすることとする。10
そうすると,弁護士費用相当損害額は,以下のとおりとなる。
・第1期間81万1081円
・第2期間113万0718円
・第3期間175万0983円
・第4期間95万2917円15
(4)小括
したがって,原告の損害額は合計5481万9267円となり(内訳は以下のと
おり),原告は,被告に対し,本件特許権侵害の不法行為に基づき,同額の損害賠
償請求権を有する。
・第1期間957万0761円20
・第2期間1334万2478円
・第3期間2066万1600円
・第4期間1124万4428円
また,原告は,第1期間の分については訴状送達の日の翌日すなわち平成29年
11月16日を,第2期間~第4期間の分については各期間の最終日を,それぞれ25
遅延損害金の起算日として請求していることから,これに基づく遅延損害金請求権
を有する。
6差止請求及び廃棄請求について
前記第2の2(4)のとおり,被告は,令和元年6月5日まで被告製品を製造,販
売していたものであるが,現時点でこれを製造,販売し,また,被告方法を使用し
ていることを認めるに足りる証拠はない。しかし,被告方法が本件発明の技術的範5
囲に属することなどを争い,本件訴え提起後も被告製品の製造,販売を継続してい
たといった被告の対応を踏まえると,なお被告により本件特許権が侵害されるおそ
れがあると考えるのが相当である。そうすると,本件においては,被告製品の製
造,譲渡及び譲渡の申出並びに被告方法の使用の差止の必要性があると共に,被告
による本件特許権の侵害を予防するために,被告製品の廃棄を行わせる必要もある10
といえる。
したがって,原告は,被告に対し,本件特許権に基づき,被告製品の製造等及び
被告方法の使用の差止請求権並びに被告製品の廃棄請求権を有する。これに反する
被告の主張は採用できない。
7結論15
以上より,原告の請求は,主文第1項~第4項の限度で理由があるから,その限
度でこれらを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし
て,主文のとおり判決する。なお,主文第1項~第3項については,仮執行の宣言
を付すのは相当でないから,これを付さないこととする。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官25
杉浦正樹
裁判官5
杉浦一輝
裁判官
布目真利子
(別紙)
物件目録
「スリムフェイスガラス」又は「スリムフェイスガラスタイプ」という名
称を含む商品名の手摺
(別紙)
方法目録
1被告製品に係る手摺の取付方法の名称
「スリムフェイスガラス」又は「スリムフェイスガラスタイプ」という名
称を含む商品名の手摺の取付方法5
2図面の簡単な説明
【図1】被告製品に係る手摺の外観正面図である。
【図2】同縦断側面図である。
【図3】被告手摺取付方法により施工した最初の工程を示す縦断側面図で
ある。10
【図4】同次の工程を示す縦断側面図である。
【図5】同更に次の工程を示す横断平面図である。
【図6】(a)は,同更に次の工程を示す横断平面図である。(b)は,同要部拡
大横断平面図である。
【図7】同更に次の工程を示す横断平面図である。15
【図8】同更に次の工程を示す横断平面図である。
【図9】同最後の工程を示す横断平面図である。
3被告製品に係る手摺の取付方法の説明
被告製品に係る手摺の取付方法を分説して説明すれば,以下のa~lの構成
に分説することができる。20
aベランダ端のパラペット上にその長手方向に一定間隔おきに支柱Sを設置
し,これら支柱Sの頂部に手摺の笠木を横にわたさせることによって手摺本体
を形成してなる手摺の取付方法において,
b手摺本体の室外側に,手摺本体の長手方向のほぼ全域にわたってガラス
上側を入れ込む溝が連続して形成されるガラス上弦材Sと,手摺本体の長手方
向のほぼ全域にわたって前記ガラス上弦材Sの溝に対応するガラス下側を入れ
込む溝が連続して形成されたガラス下弦材Sと,ガラス上弦材Sとガラス下弦
材Sの間に,ガラス左右側縁部を入れ込む溝が端部枠S及び端部縁Sで形成さ
れる左右側枠とからなるガラス取付枠が一体的に設けられ,5
cこのガラス取付枠に複数のガラス板と各ガラス板の継ぎ目に目地部材を
取り付けるにあたって,目地部材としてアルミ製の縦枠S22を使い,
d支柱Sの室外側側面には,アルミ製の縦枠S22と嵌め合わせるための支柱
突起部が設けられ,
eアルミ製の縦枠S22の室内側側面には,アルミ製の縦枠S22を押縁の係合10
用突起部と支柱突起部との間に嵌め入れ手摺本体の長手方向の一方側からスラ
イドさせることによって前記支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部が設けら
れ,
fまず最初のガラスを室内側から室外側に持ち出してその上側をガラス上弦
材の溝に嵌合し,15
g次にガラスの下側をガラス下弦材Sの溝に落し込むように入れることによ
ってガラスをガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間に嵌め込み,
h次にそのガラスをガラス上弦材Sの溝とガラス下弦材Sの溝に沿って一方
側からスライドさせて,該ガラスの側縁部を,ガラス取付枠の他方側の右側枠
である端部枠Sと端部縁Sとで形成された前記溝に入れ込み,20
i次にアルミ製の縦枠S22をガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間を一方側
からスライドさせて,その縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせて,さらに,
押縁及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制させ,
アルミ製の縦枠S22を支柱Sに固定し,これによって該縦枠S22を最初のガラ
スの側縁部との間に隙間をあけて位置させ,
jそして次のガラスを同様にして室内側から室外側に持ち出してガラス上側
をガラス上弦材Sに嵌め込み,続けてガラス下側をガラス下弦材に嵌め込み,
これも同様に一方側からスライドさせて,ガラスの側縁部を先のアルミ製の縦
枠S22との間に隙間をあけて位置させ,5
k複数のガラスとアルミ製の縦枠S22を交互にガラス取付枠に室内側から室
外側に持ち出して取り付けることによって,手摺本体の室外側長手方向のほぼ
全域に複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるよう
にして取り付けられることにより,複数のガラスとアルミ製の縦枠S22とが外
観上は連続するようにして取り付けられる10
l手摺の取付方法。
押縁の係合用突起部
押縁の係合用突起部
押縁の係合用突起部
押縁の係合用突起部
押縁
止めゴム
押縁止めゴム
押縁
止めゴム止めゴム
押縁
止めゴム
押縁
押縁
止めゴム
止めゴム
押縁押縁止めゴム
シール材
バックアップ材
(別紙)
被告製品説明書
1被告製品の名称
「スリムフェイスガラス」又は「スリムフェイスガラスタイプ」という名
称を含む商品名の手摺5
2図面の簡単な説明
【図1】被告製品に係る手摺の外観正面図である。
【図2】同縦断側面図である。
【図3】(a)は,同横断平面図である。(b)は,同要部拡大横断平面図である。
3被告製品に係る手摺の構造の説明10
被告製品に係る手摺の構造は,以下のa~lの構成に分説することができる。
aベランダ端のパラペット上にその長手方向に一定間隔おきに支柱Sを設置
し,これら支柱Sの頂部に手摺の笠木を横にわたさせることによって手摺本体
を形成してなる手摺であって(図1参照のこと。),
b手摺本体の室外側に,手摺本体の長手方向のほぼ全域にわたってガラス15
上側を入れ込む溝が連続して形成されるガラス上弦材Sと,手摺本体の長手方
向のほぼ全域にわたって前記ガラス上弦材Sの溝に対応するガラス下側を入れ
込む溝が連続して形成されたガラス下弦材Sと,ガラス上弦材Sとガラス下弦
材Sの間に,ガラス左右側縁部を入れ込む溝が端部枠S及び端部縁Sで形成さ
れる左右側枠とからなるガラス取付枠が一体的に設けられ(図2,図3(a)参照20
のこと。),
cこのガラス取付枠に複数のガラス板と各ガラス板の継ぎ目に目地部材を
取り付けるにあたって,目地部材としてアルミ製の縦枠S22からなり(図3(a),
(b)参照のこと。),
d支柱Sの室外側側面には,アルミ製の縦枠S22と嵌め合わせるための支柱
突起部が設けられ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),
eアルミ製の縦枠S22の室内側側面には,アルミ製の縦枠S22を押縁の係合
用突起部と支柱突起部との間に嵌め入れ手摺本体の長手方向の一方側からスラ
イドさせることによって前記支柱突起部に嵌め合わされる縦枠突起部が設けら5
れ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),
f最初の右側のガラスが室内側から室外側に持ち出されてその上側をガラス
上弦材の溝に嵌合され(図2参照のこと。),
g右側のガラスの下側をガラス下弦材Sの溝に落し込むように入れることに
よってガラスをガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間に嵌め込み(図2参照の10
こと。),
hその右側のガラスをガラス上弦材Sの溝とガラス下弦材Sの溝に沿って一
方側からスライドさせて,該ガラスの側縁部を,ガラス取付枠の他方側の右側
枠である端部枠Sと端部縁Sとで形成された前記溝に入れ込み(図3(a)参照の
こと。),15
iアルミ製の縦枠S22をガラス上弦材Sとガラス下弦材Sの間を一方側から
スライドさせて,その縦枠突起部を支柱突起部に嵌め合わせて,さらに,押縁
及び止めゴムを用いて,支柱突起部からの縦枠突起部の外れを規制させ,アル
ミ製の縦枠S22を支柱Sに固定し,これによって該縦枠S22を右側のガラスの
側縁部との間に隙間をあけて位置させ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこ20
と。),
j左側のガラスを右側のガラスと同様にして室内側から室外側に持ち出して
ガラス上側をガラス上弦材Sに嵌め込み,続けてガラス下側をガラス下弦材に
嵌め込み,該左側のガラスをアルミ製の縦枠S22に向かってスライドさせて,
該左側のガラスの側縁部を先のアルミ製の縦枠S22との間に隙間をあけて位置
させ(図3(a),(b),特に図3(b)参照のこと。),
k複数のガラスとアルミ製の縦枠S22を交互にガラス取付枠に室内側から室
外側に持ち出して取り付けることによって,手摺本体の室外側長手方向のほぼ
全域に複数のガラスが個別に手摺本体とアルミ製の縦枠S22に囲繞されるよう5
にして取り付けられることにより,複数のガラスとアルミ製の縦枠S22とが外
観上は連続するようにして取り付けられる(図1~図3参照のこと。)
l手摺。
※別紙「特許公報」は省略5
押縁S22
止めゴム
シール材
バックアップ材
押縁の係合用突起部

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弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
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条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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