弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
       本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人山田宰,同對崎綾子,同竹田久美子,被告人Bの弁護人児玉隆
晴,同冨田千鶴,被告人C及び同Dの弁護人綱取孝治,同清水保彦の上告趣意のう
ち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適
切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は事実誤認,単なる法令違反
の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,電磁的公正証書原本不実記録,同供用罪の成立について
職権で判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,次の事実が認められる。
 (1) 株式会社E銀行(以下「E銀」という。)は,平成10年4月から金融機
関の自己責任と市場規律を重視した透明なルールに基づく金融監督行政の中核的手
法として早期是正措置制度が導入されるようになったことを受け,同措置の発動を
受けることを回避するため,資本の増強を図る必要が生じた。そこで,E銀の役員
であった被告人らは,第三者割当増資の方法による新株の発行を決定し,その第1
回増資及び第2回増資(第1回増資につき発行価額1株400円,払込期日平成9
年9月18日,第2回増資につき発行価額1株350円,払込期日平成10年3月
19日)を行ったが,その際,発行総株式数合計1億7150万株のうち合計50
86万4000株については,消費者金融業者及びその関連会社の協力の下に,以
下の方法で払込みが行われた。
 ア F株式会社は,平成9年9月18日,第1回増資に際して引き受けた新株2
250万株分の申込証拠金として90億円をE銀に払い込んだが,その金員は,次
のようにして得られたものである。
 E銀は,消費者金融業者であるG株式会社の関連会社のH株式会社に42億円を
融資し,Hは,この資金で同じ関連会社であるI株式会社に対する40億円の債務
を返済し,Iは,これによって得た40億円をFに融資した。また,E銀は,消費
者金融業者であるJ株式会社に対し50億円を融資し,同社は,この資金で関連会
社のK株式会社に対する50億円の債務を返済し,その返済によって得た50億円
をKがFに融資した。
 イ L株式会社及びM株式会社は,平成10年3月19日,第2回増資に際して
引き受けた合計新株2836万4000株分の申込証拠金の一部として合計99億
2730万円をE銀に払い込んだが,その金員は,次のようにして得られたもので
ある。
 E銀は,N株式会社外10社の消費者金融業者に対し5億円又は10億円あて合
計100億円を融資し,そのうちN外7社はその関連会社に対する債務を返済する
などし,当該関連会社からF又は株式会社Oに対し,残るP株式会社外2社は直接
Fに対し,それぞれE銀から得た融資と同額の融資をし,さらに,Fは,これによ
って得た資金90億円のうち,L株式会社に対し60億円,Mに対し29億300
0万円をそれぞれ融資し,Oは,同じく得た10億円をMに融資した。
 (2) 新株引受会社ないし融資の受皿会社となったF,L株式会社,M及びOは
,E銀の子会社ではないが,E銀の経営について実権を握っていたE銀取締役会長
Qのファミリー企業であるなどE銀の実質的支配下にあった会社であり,被告人ら
から払込資金の調達,その後の債務の清算等につきE銀において手当てするという
申出があったこともあって,E銀の新株引受けや融資の受皿会社となることに応じ
た。
 上記F外3社の財務状況をみると,資産状況は必ずしも良好ではなく,利息の支
払はできても元本の支払をできるだけの収益力はなく,上記申込証拠金の払込みの
ために融資を受けた資金の返済については,E銀の経済的支援がなければできない
状況にあり,E銀の責任による返済資金の調達が予定されていた。
 (3) E銀は,上記(1)の各消費者金融業者又はその関連会社に対し各融資をする
に際して,各消費者金融業者等がE銀の依頼で融資したF等から返済を受けない限
り,各消費者金融業者等に対し貸金債権の返済を求めない旨の合意をした。
 2 【要旨】以上の事実関係の下では,F,L株式会社及びMが払い込んだ分だ
けE銀において資本が増えて新たに利用できる資産が増加したかのようであるが,
その実質をみると,E銀が,上記1(1)の各消費者金融業者又はその関連会社を通
じて,F等に対し間接的に融資したものであり,E銀の資金が回り回ってF等に移
動しただけであって,本件各払込みは,E銀の資金によりされたものにほかならな
い。しかも,本件各払込みに際し,E銀は,各消費者金融業者等に対し貸金債権を
有することになったとはいえ,その債権は,上記のとおり,F等が各消費者金融業
者等に返済しなければ,E銀が各消費者金融業者等に返済を求められないものであ
り,かつ,F等において各消費者金融業者等に対する債務を弁済する能力がなかっ
たと認められるから,E銀が取得した上記各貸金債権は,実質的な資産と評価する
ことはできない。そうすると,本件各払込みは,いずれも株式の払込みとしての効
力を有しないものといわざるを得ず,電磁的公正証書原本不実記録,同供用罪の成
立を認めた原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 泉 徳治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口
千晴)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛