弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人吉井晃、同奥田実、同原田策司の上告理由は別紙のとおりである。
 上告理由第一点について。
 論旨は、a町職員定数条例改正条例施行の日、すなわち、昭和三〇年五月八日に
おいては、同町の吏員数は、条例所定の定数を超えておらず、その後五月二〇日に
七名を吏員に違法に昇任したため定数を超えるに至つたのであるから、昭和二九年
六月法律一九二号地方公務員法改正法附則三項及びa町職員の待命に関する条例に
より、臨時待命を行ない得る場合に該当せず、被上告人が上告人に対し、その意に
反して臨時待命を命じたのは違法であるというのである。
 原判決の認定するところによれば、被上告人は、訴外D外六名を、同年四月六日
に新規に採用し、同年五月二〇日吏員に昇任した結果、他に退職者や臨時待命申出
者もあつたが、同年六月一日における吏員の数は九九名となり、条例所定の定数九
八名を一名超過していたというのである。そして、さらに、原判決の認定するとこ
ろによれば、前記七名の吏員昇任は競争試験又は選考の方法によらないで行なわれ
たというのであるから、いずれにせよ、右七名の昇任は、原判決も判示していると
おり、違法といわなくてはならない。しかし、それだからといつて、右昇任が法律
上当然に無効といえないことも、原判示のとおりである。もともと、条例定数を超
えて任用できないこと及び試験または選考を経て任用すべきことは、任命権者の義
務ではあるけれども、これらの義務に違反したからといつて、任用された者または
他の吏員に対する関係において違法行為があつたということはできず、したがつて、
上告人はその違法を主張することができない(行政事件訴訟法一〇条一項参照)。
もつとも、特定の吏員に対し臨時待命を行なう目的をもつて過員を生ぜしめるため
に任用を行なつたような場合においては、その新たな任用は、臨時待命の手段とし
て行なわれたことに帰し、かかる行為は臨時待命を命ぜられた吏員に対する関係に
おいて違法行為を構成するものと解すべく、新任用者との関係では、その任用を取
り消すことができないとしても、かかる違法は待命処分そのものも違法ならしめる
ものと解するのが相当である。しかし、本件の場合、原判決の認定するところによ
れば、前記七名の昇任は上告人に臨時待命を命ずるために行なわれたのではないと
いうのであり、そして、この点に関する原判示は、原判決認定のその当時における
諸般の事情に照らして首肯することができる。前述のような前記七名の昇任の違法
は、上告人に対する待命処分まで違法ならしめるものではなく、この点に関する原
判示は正当である。
 なお論旨は、当裁判所の判決を援用して、昇任の違法は待命処分に承継される旨
を主張するのであるが、論旨援用の判決は違法性承継に関する判決でないのみなら
ず、任用と待命とはそれぞれ目的及び効果を異にする別個の行為であつて、前者の
違法性が当然に後者に承継されるわけはなく、この点に関する原判示も正当である。
論旨はすべて理由がない。
 同第二点について。
 論旨の理由がないことは大法廷判決の判示するとおりである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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