弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     上告人らの被上告人Bに対し訴外尼崎市のため第一審判決添付目録記載
の土地について神戸地方法務局尼崎支局昭和三七年四月一〇日受付第六八五〇号を
もつてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める請求に関し、原判決を破棄し、
右破棄部分を大阪高等裁判所に差し戻す。
     上告人らの被上告人らとの間において被上告人尼崎市長が昭和三六年二
月一一日付で被上告人Bに対してした右土地の払下処分の無効確認を求める請求(
第一次請求)に関し、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、訴えを却下する。
     上告人らのその余の上告を棄却する。
     第二項に関する訴訟の総費用及び前項に関する上告費用はいずれも上告
人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人佐々木哲蔵の上告理由一について。
 第一審判決添付目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は普通財産である
から、同土地の訴外a商店街協同組合(以下「訴外組合」という。)への払下げは
行政処分ではなく、私法上の売買契約にすぎないとした原審の判断は、正当であり、
原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難するもので
あつて、採用することができない。
 同二について。
 地方自治法二四二条の二第一項四号によるいわゆる代位請求訴訟は、同法二四二
条一項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の一定の財務会計上
の違法な行為又は怠る事実によつて地方公共団体が被り、又は被るおそれのある損
害の回復又は予防を目的とするものであり、地方公共団体が、その執行機関又は職
員による右違法な行為又は怠る事実によつて被り、又は被るおそれのある損害の回
復又は予防のため、当該職員又は当該違法な行為若しくは怠る事実に係る相手方に
対し、実体法上同法二四二条の二第一項四号所定の請求権を有するにもかかわらず、
これを積極的に行使しようとしない場合に、住民が地方公共団体に代位し右請求権
に基づいて提起するものである。右のような代位請求訴訟の目的及び構造にかんが
みれば、地方公共団体が右違法な行為又は怠る事実に係る相手方に対して有する右
実体法上の請求権については、その請求権の相手方が右違法な行為又は怠る事実の
直接の相手方であると否とにかかわらず、住民は、地方公共団体に代位し、右請求
権の相手方を被告として、代位請求訴訟を提起することができるものと解するのが、
相当である。そして、このように解しても、地方公共団体がもともと実体法上有す
る請求権について住民にその代位行使を許すにすぎず、地方公共団体が行使するこ
とのできない権利の代位行使を認めるものではないから、取引の安全を害するもの
でもないし、右訴訟の被告とされる右違法な行為又は怠る事実の直接の相手方以外
の第三者に実質的な不利益を与えるものでもない。右二四二条の二第一項四号にい
う相手方を当該違法な行為又は怠る事実の直接の相手方に限ると解すべき合理的な
理由は、ないといわなければならない。してみると、原審が、代位請求訴訟につい
て被告適格を有する者は当該違法な行為又は怠る事実に係る直接の相手方に限ると
の見解のもとに、尼崎市から本件土地の払下げを受けた訴外組合から更にこれを転
得した被上告人Bは被告適格を欠くと判断し、本件所有権移転登記抹消登記手続請
求の訴えを不適法として却下したことは、法令の解釈適用を誤つたものといわなけ
ればならず、右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。したが
つて、この点に関する論旨は理由があるから、原判決中判決主文第一項掲記の部分
は破棄を免れない。そして、右部分については、更に審理をさせるため、これを原
審に差し戻す必要がある。
 次に、職権をもつて調査するに、本判決主文第二項掲記の請求は、地方自治法二
四二条の二第一項二号にいう行政処分の無効確認請求として提起されたものであり、
被上告人市長が昭和三六年二月一一日付で本件士地を被上告人Bに対し払い下げた
とし、かつ、右払下げは行政処分であるとして、右払下げの無効確認を求めるもの
であるところ、第一審判決は、本件土地は尼崎市から訴外組合に払い下げられたも
のであり、被上告人Bに払い下げられたものではないから、右請求は理由がないと
して請求棄却の本案判決をし、原判決も、同じ理由により、第一審判決を維持して
上告人らの控訴を棄却した。しかしながら、行政処分無効確認訴訟においては、そ
の確認の対象とされた行政処分の存在することが訴えの適法要件をなし、右行政処
分が存在しない場合には訴えは不適法として却下すべきものである。それゆえ、上
告人らの前記請求については、その確認の対象とされた本件土地の被上告人Bへの
払下げの事実が存在しないというのであるから、訴えを不適法として却下すべきで
あつたのであり、この点を看過して請求棄却の本案判決をした第一審判決及びこれ
を維持した原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法があり、その違法は判決の結
果に影響を及ぼすことが、明らかである。したがつて、右請求に関する部分につい
て、原判決を破棄し、第一審判決を取り消したうえ、訴えを却下することとする。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条、四〇八条、三九六条、三八六条、
三八四条、九六条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    江 里 口   清   雄

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