弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1主位的請求
広島県佐伯郡α町長がP1組合に対し平成16年11月16日付けでした
化製場設置許可処分,死亡獣畜取扱場設置許可処分及び施設設置許可処分を
いずれも取り消す。
2予備的請求
広島県佐伯郡α町長がP1組合に対し同日付けでした化製場設置許可処
分,死亡獣畜取扱場設置許可処分及び施設設置許可処分がいずれも無効であ
ることを確認する。
第2事案の概要
本件は,当時の広島県佐伯郡α町(現在の広島市β,以下「旧α町」とい
う。)の町長(以下「旧α町長」という。)が,P1組合に対し,化製場設
置許可処分,死亡獣畜取扱場設置許可処分及び施設設置許可処分(以下,こ
れらを総称して「本件各処分」という。)をしたところ,これら施設の周辺
に居住する原告らが,本件各処分の取消しを求めるとともに,予備的に,そ
の無効確認を求める事案である。
1関係法令等の定め
(1)化製場等に関する法律(以下「法」という。)
ア1条
(ア)この法律で「獣畜」とは,牛,馬,豚,めん羊及び山羊をいう(1
項)。
(イ)この法律で「化製場」とは,獣畜の肉,皮,骨,臓器等を原料と
して皮革,油脂,にかわ,肥料,飼料その他の物を製造するために設
けられた施設で,化製場として都道府県知事(保健所を設置する市又
は特別区にあっては,市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けたも
のをいう(2項)。
(ウ)この法律で「死亡獣畜取扱場」とは,死亡獣畜を解体し,埋却し,
又は焼却するために設けられた施設又は区域で,死亡獣畜取扱場とし
て都道府県知事の許可を受けたものをいう(3項)。
イ3条1項
化製場又は死亡獣畜取扱場を設けようとする者は,都道府県知事の許
可を受けなければならない。
ウ4条
都道府県知事は,化製場若しくは死亡獣畜取扱場の設置の場所が次の
各号の一に該当するとき又はその構造設備が都道府県の条例で定める公
衆衛生上必要な基準に適合しないと認めるときは,前条第1項の許可を
与えないことができる。ただし,この場合においては,都道府県知事は,
理由を付した書面をもつて,その旨を通知しなければならない。
1号人家が密集してる場所
2号飲料水が汚染されるおそれのある場所
3号その他都道府県知事が公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所と
して指定する場所
エ5条
化製場又は死亡獣畜取扱場の管理者は,次に掲げる措置を講じなければ
ならない。
1号化製場又は死亡獣畜取扱場の内外は,常に清潔にし,汚物処理を十
分にすること。
2号こん虫の発生の防止及び駆除を十分にすること。
3号臭気の処理を十分にすること。
4号その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置。
オ8条
第2条第1項及び第3条から前条までの規定は,魚介類又は鳥類の肉,
皮,骨,臓器等を原料とする油脂,にかわ,肥料,飼料その他の物の製造
及びその製造の施設並びに獣畜,魚介類又は鳥類の肉,皮,骨,臓器等を
化製場又はこれに類する施設に供給するためにするこれらの物の貯蔵及
びその貯蔵の施設に準用する。
(2)化製場等に関する法律施行条例(以下「化製場条例」という。)
ア3条1項
法第4条の規定による死亡獣畜取扱場の構造設備の基準は,次に掲げる
とおりとする。
1号死亡獣畜の解体を行う死亡獣畜取扱場は,次に掲げる要件を備える
こと。
ホ汚物処理設備として,汚物だめ及び汚水だめ又は汚水の浄化装置
を有すること。ただし,汚水を終末処理場のある下水道に直接流出
させることができる場合には,汚水だめ又は汚水の浄化装置を有す
ることを要しない。
イ3条2項
法第4条の規定による化製場の構造設備の基準は,次に掲げるとおりと
する。
2号原料貯蔵室及び化製室は,次に掲げる要件を備えること。
ニ換気扇を備えた排気装置その他臭気を適当な高さで屋外に放散
し,又は処理することができる設備が設けられていること。
3号汚物処理設備として,汚物だめ及び汚水の浄化装置を有すること。
ただし,汚水を終末処理場のある下水道に直接流出させることができ
る場合には,汚水の浄化装置を有することを要しない。
ウ5条
法第8条において準用する法第4条の規定による法第8条の製造又は
貯蔵の施設の構造設備の基準については,第3条第2項の規定(貯蔵の施
設の構造設備の基準については,化製室に関する部分を除く。)を準用す
る。この場合において,同項中「化製室」とあるのは「製造室」と読み
替えるものとする。
(3)化製場等に関する法律施行細則6条
法第4条第3号の規定により,公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所と
して知事が指定する場所は,次のとおりとする。
社寺,学校,病院,公園,風致地区,緑地帯,名所,旧跡,鉄道,国道そ
の他公衆の利用に供される施設の区域内及びこれに近接する地域
2前提事実(当事者間で争いがないか又は弁論の全趣旨及び後掲の証拠によ
り容易に認定できる事実)
(1)原告らは,別紙1当事者目録記載の各住所地に居住する住民である。
(2)法3条1項及び8条の規定による化製場等の設置許可に係る事務は,広
島県の事務を市町村が処理する特例を定める条例(以下「本件条例」とい
う。)により,旧α町が処理することとされていた。
旧α町は,平成17年4月25日,広島市と合併したところ,広島市に
おいては,広島市衛生事務委任に関する規則により,上記事務が被告に委
任されている。
(3)P1組合は,旧α町長に対し,平成16年6月4日,次のとおり,法3
条1項及び8条に基づき,化製場,死亡獣畜取扱場及び施設設置許可申請
(以下「本件申請」という。)をした(乙6)。
ア設置場所広島県佐伯郡α×番1外14筆
イ申請のあった施設(以下,総称して「本件各施設」という。)
(ア)化製場
(イ)死亡獣畜取扱場(解体,埋却,焼却のうち,解体を行う。)
(ウ)施設(鳥肉を原料とする飼料等の製造施設)
ウ施設規模
(ア)敷地面積139177.03㎡
(イ)建築面積5072.35㎡
(ウ)延べ床面積・構造等
・処理施設建屋(1)2910.6㎡鉄骨造地上1階
・処理施設建屋(2)1497.6㎡鉄骨造地上1階
・ボイラー棟369.8㎡鉄骨造地上1階
・管理事務所80.0㎡鉄骨造地上1階
・ポンプ室32.0㎡鉄骨造地上1階
計4890.0㎡
(エ)年間稼働日数260日
(オ)生産・処理施設
aレンダリング設備(かっこ内は「能力,仕様等」)
(a)死亡牛・牛内臓処理ライン(約10.0トン/日)
(b)豚骨,豚内臓,チキン処理ライン(約30.0トン/日)
(c)牛骨処理ライン(約15.0トン/日)
(d)牛脂処理ライン(約30.0トン/日)
(e)豚脂処理ライン(約12.0トン/日)
b牛原皮,豚原皮塩蔵処理設備
cボイラー設備(最大蒸発量8000kg/時×2基)
d廃水処理施設(最大処理量150m3
/日,無放流方式)
e脱臭設備
(a)高濃度脱臭設備(処理ガス量2000m3
/分,蓄熱燃
焼方式)
(b)中濃度脱臭設備(処理ガス量2400m3
/分,水洗浄
+2段薬液洗浄脱臭方式)
(c)低濃度脱臭設備(処理ガス量300m3
/分,ボイラー
による燃焼脱臭方式)
(4)旧α町長は,P1組合に対し,平成16年11月16日,化製場設置許
可処分,死亡獣畜取扱場設置許可処分及び施設設置許可処分(本件各処分)
をした(乙15)。
(5)原告らは,平成17年2月15日,本件各処分の取消しを求めるととも
に,本件各処分の無効確認を求める訴え(以下,これらの訴えを総称して
「本件各訴え」という。)を提起した。
3争点
(1)原告らは本件各訴えの原告適格を有するか。
(2)本件各処分は違法であるか。
(3)本件各処分は無効であるか。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(原告らは本件各訴えの原告適格を有するか)について
【原告らの主張】
原告らは,本件各施設設置場所の近隣やγ川又はδ川の流域に居住して
いるところ,次のとおり,①法4条の趣旨及び目的,②本件各処分が法令
に違反した場合に害されることとなる利益の内容及び性質,③これが害さ
れる態様及び程度を考慮すれば,本件各処分の取消しを求めるにつき法律
上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)に当たり,また,本件各
処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有する者(同法36条)に
も当たるので,本件各訴えの原告適格を有する。
ア法4条の趣旨及び目的
法4条は,化製場等の設置不許可事由として,人家が密集している場
所,飲料水が汚染させるおそれのある場所を規定している。
この趣旨は,化製場等から悪臭や汚水が発生することは不可避であり,
これらが化製場等の外へ流出することになれば,周辺住民の生活環境や
健康が害されることになってしまうので,そのような被害を防止するた
めである。
したがって,法4条が,化製場等の周辺に居住する住民の私生活や健
康上の利益を,個別的利益として保護していることは明らかである。
イ害されることとなる利益の内容及び性質
化製場等の設置許可処分が法令に違反した場合には,化製場等から悪
臭や汚水が排出されることによって,良好な環境を享受する権利である
環境権や快適な私生活が害されることになる。また,飲料水の汚染によ
って,健康被害が生じ,人の生命身体が害されることになる。さらに,
悪臭が流れ,水が汚染されることによって,化製場等の周辺にある土地
の財産的価値も下落することになるから,所有権も侵害される。
このように,当該処分が法令に違反した場合に害されることとなる利
益の内容及び性質は,極めて基本的かつ重要な人権である。
ウ害される態様及び程度
悪臭等が排出されれば,周辺住民は,常に不快な思いを強いられ,窓
も開けられない,洗濯物も干せないなど私生活に著しい支障をきたす。
汚水が排出されれば,井戸水やγ川又はδ川を源泉とする飲料水が汚
染されるところ,飲料水は,生命の源泉であり,飲料水汚染の被害は深
刻である。また,飲料水が汚染されることによって,上水の完備されて
いない地域に居住する原告らは,生活ができなくなり,長年住み慣れた
土地を出て行かなくてはならなくなる。
エまとめ
このように,法4条は,化製場等の周辺に居住する住民が有する環境
権,人格権,居住権及び所有権等,極めて基本的かつ重要な権利,利益
を,個別的権利,利益として保護しているところ,原告らは,本件各処
分によって,上記各権利,利益を著しく害されることになるから,本件
各処分の取消し又は無効確認を求める法律上の利益を有する者として,
本件各訴えにつき原告適格を有する。
【被告の主張】
ア次のとおり,①本件各処分の根拠法規である法4条の文理,②法の趣
旨及び目的,③本件各処分において考慮されるべき利益の内容及び性質
を考慮すれば,法4条は,公衆衛生の確保という一般的公益の保護を目
的としているのであり,個別的利益の保護をするものではないから,原
告らは,本件各処分の取消しの訴えを求めるにつき法律上の利益を有せ
ず,また,本件各処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益も有しな
いから,原告適格を有しない。
(ア)法4条の文理
法4条は,人家の密集している場所か否か(同条1号),飲料水が
汚染されるおそれのある場所であるか否か(同条2号),その他都道
府県知事が公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所として指定する場
所か否か(同条3号)を,化製場等の設置許可に係る基準として規定
している。このような法4条の文理からすれば,法4条は,化製場等
の設置場所を公衆衛生上の見地から規制する趣旨であるといえる。
(イ)法の趣旨及び目的
法(題名改正前のへい獣処理場等に関する法律)は,死亡獣畜の処
理等に起因する衛生上の危害の発生を防止し,公衆衛生の向上及び増
進を図る必要性があり,そのために,その衛生取締りを徹底強化する
必要があったことから,制定されたものである。したがって,法は,
公衆衛生の確保をその趣旨ないし目的としている。
(ウ)考慮されるべき利益の内容及び性質
本件各施設における処理の対象は死亡獣畜であるから,本件各施設
から人の生命身体に直接的な悪影響を及ぼす化学物質等が排出される
ことはなく,本件各施設の設置によって,原告ら個々人の生命身体に
直接的な被害が及ぶこともない。そうすると,法が,存在しないはず
の被害から守るべき利益を想定しているとはいえないから,この利益
を個別的権利,利益として保護しているとはいえない。
また,大気汚染や水質汚染は,大気汚染防止法,悪臭防止法,水質
汚濁防止法等によって,防止されるべきものである。したがって,法
が,大気汚染や水質汚染による侵害について,個別的権利,利益とし
ているとはいえない。
イ仮に,法4条が,個別的権利,利益の保護を目的とするものであった
としても,原告らの権利ないし法律上保護された利益が,どのように侵
害され又は必然的に侵害されるおそれがあるのか明確ではないから,原
告らに原告適格はない。
(2)争点(2)(本件各処分は違法であるか)について
【原告らの主張】
法4条(法8条で準用する場合を含む。以下,同じ。)は,化製場等の
設置不許可の要件として,①本件各施設の設置場所が同条1号ないし3号
に該当するとき(以下「場所要件」という。),②その構造設備が条例で
定める公衆衛生上必要な基準に適合しないとき(以下「構造設備要件」と
いう。)の二つの要件を規定する。
本件各処分は,次のとおり,法4条が規定する設置不許可要件(場所要
件及び構造設備要件)に該当し,また,裁量権の逸脱があるから,本件各
処分は違法である。
ア場所要件
(ア)飲料水が汚染されるおそれのある場所(法4条2号)
a法4条が場所要件と構造設備要件を別々に規定していること,同
条が場所要件として飲料水が汚染されるおそれのある場所を規定す
るのは,飲料水が生命の源であり,それが汚染されることになれば,
人体に重大な被害が発生することになるから,飲料水を汚染する危
険のある場所には,いかなる構造・設備を有していても化製場等の
設置を許さない趣旨であることなどからすれば,本件各施設設置場
所が,飲料水が汚染されるおそれのある場所に該当するか否かを判
断するに当たっては,本件各施設の構造設備を問題にすべきではな
く,もっぱら,本件各施設設置場所が,飲料水に危険が及ぶ場所か
否かのみを考慮すべきである。
本件各施設設置場所は,γ川とδ川の分水嶺である。両河川の下流
域には,水道取水源やダムがある。また,本件各施設設置場所の周辺
には,多数の井戸があって,原告らを含む周辺住民は,これらの井戸
水を飲料水,生活用水として利用している。さらに,本件各施設設置
場所は,ε山と呼ばれる山林の中腹にあって,麓にある原告P2方の
方向に向かって低くなっており,本件各施設設置場所付近を水源に,
原告P2方に向けて谷川が流れている。原告P2は,谷川の水を生活
飲料水,農業用水として利用している。このような地理的状況からす
れば,本件各施設設置場所は,法4条2号にいう「飲料水が汚染され
るおそれがある場所」に該当する。
b仮に,本件各施設設置場所が,飲料水が汚染されるおそれのある
場所に該当するか否かを判断するに当たって,本件各施設の構造設
備を考慮するとしても,後記イのとおり,本件各施設の廃水処理施
設には欠陥があるから,本件各施設設置場所は,上記「飲料水が汚
染されるおそれがある場所」に該当する。
(イ)その他都道府県知事が公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所と
して指定する場所(法4条3号)
a上記(ア)と同様に,本件各施設設置場所が,その他都道府県知事
が公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所として指定する場所(社
寺,学校,病院,公園,風致地区,緑地帯,名所,旧跡,鉄道,国
道その他公衆の利用に供される施設の区域内及びこれに近接する地
域)に該当するか否かを判断するに当たっては,本件各施設の廃水
処理施設の設備構造等を考慮すべきではない。
ζ集会所は,現在までに,月1回程度のζ地区定例会のほか,祭
り,健康相談,習い事,葬式の炊き出し,同郷会など多種多様な目
的に使用されているから,公衆の利用に供される施設といえる。
また,ζ集会所は,本件各施設設置場所から約255mの地点に
あるところ,化製場等は,死亡獣畜を処理する過程で強烈な臭気を
発生させ,広範囲に影響を与えるから,近接する地域に該当するか
否かを判断するに当たって,被告の主張する200m基準は妥当し
ない。そして,地理的状況,本件各施設設置場所からの距離,臭気
拡散があり得る範囲などを考慮すれば,本件各施設設置場所は,公
衆の利用に供される施設に近接する地域にあるといえる。
したがって,本件各施設設置場所は,法4条3号にいう「その他
都道府県知事が公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所として指定
する場所」に該当する。
b仮に,本件各施設設置場所が,その他都道府県知事が公衆衛生上
害を生ずるおそれのある場所として指定する場所に該当するか否か
を判断するに当たって,本件各施設の構造設備を考慮するとしても,
後記イのとおり,本件各施設の廃水処理施設には欠陥があるから,
本件各施設設置場所は,上記「その他都道府県知事が公衆衛生上害
を生ずるおそれのある場所として指定する場所」に該当する。
c悪臭防止法4条2項2号に定める,P1組合の排出口(高濃度脱
臭処理設備)での臭気指数の許容限度は,同組合が提出した届出書
の図面等から推定すると「23」であるところ,裁判所が実施した
鑑定の結果では,同排出口からの臭気指数は,1回目(平成20年
12月3日)が「26」,2回目(同月15日)が「25」であり,
いずれも上記許容限度を超えていた。
また,原告P2方における臭気指数の許容限度は,同法及びこれ
に基づく広島県の告示等からして「13」であるところ,広島市環
境局環境保全課が平成19年3月1日に行った臭気指数調査結果で
は「14」であり,上記許容限度を超えていた。
これらのことに,原告P2をはじめとする原告らが感じた臭気の
強さ,頻度等を併せ考えると,P1組合から生じる悪臭被害は受忍
限度を超えている。
イ構造設備要件
法4条は,化製場等の設置許可の要件として,構造設備については,
県条例で公衆衛生上必要な基準を定めることとされている。そして,化
製場条例3条1項1号ホ,2項3号(同5条において準用する場合を含
む。以下,同じ。)は,汚水の浄化装置を有することを構造設備要件と
して規定しているところ,次のとおり,本件各施設の廃水処理施設(汚
水の浄化装置)は,計画どおりに機能せず破綻しているから,同条例3
条1項1号ホ,2項3号の要件を満たさない。
(ア)本件各施設の廃水処理施設(汚水の浄化装置)が採用したクロー
ズドシステムは,処理後の水を工場内で再利用し,施設外への廃水の
排出を不要とすることを予定していた。
しかし,本件各施設の廃水処理施設の各処理過程では,窒素性化合
物(アンモニア性窒素)を想定どおりに処理できないため,窒素性化
合物(アンモニア性窒素)を多く含んだ水が,工場内で冷却水などと
して再利用されることになってしまう。
また,BOD物質及びCOD(化学的酸素要求量)物質についても,
想定どおりに処理することができない。そのため,精密ろ過膜(MF)
ユニット,活性炭吸着塔及び逆浸透膜(RO)ユニットに過大な負担
がかかるので,その交換が頻繁になり,コスト面で破綻することが予
想される。その上,精密ろ過膜(MF)ユニット及び逆浸透膜(RO)
ユニットで補足された物質は,逆洗によって,第一脱窒槽に戻される
のであって,系外に排出されるわけではないから,逆洗を繰り返すほ
どに,上記の各プロセスにかかる負荷が拡大していくことになる。そ
して,最終的には,活性炭や膜ユニットの交換頻度を上げることでは
対応しきれない高濃度のBOD・COD物質の負荷がかかることとな
り,結局,これらの物質を処理しきれないまま,工場内で冷却水など
として再利用されることになる。
そうすると,悪臭源となる窒素性化合物(アンモニア性窒素)及び
BOD・COD物質を含んだ水蒸気が,大気に大量に放出されること
になるから,上記クローズドシステムが施設外へ廃水の排出を予定し
ていなくても,結局は,汚染された水(水蒸気)が施設外へ排出され
ることと同じ結果になってしまう。
(イ)仮に,上記の各処理過程によるクローズドシステムが技術的に可
能であっても,同システムは,汚濁物質の特性が溶解性であることを
捉えていないこと,適切な配置・配列がされていないことなどから,
正常に稼働させるためには維持管理技術によるところが大きい。その
ため,維持管理のためのコストが著しく高額になることが予想される
ので,結局,上記クローズドシステムを,想定どおりに機能させるこ
とは困難であった。
また,このような施設では,往々にして,正常に稼働しないケース
が多いことからも,上記クローズドシステムは,想定どおりに機能し
ない。
ウ裁量権の逸脱
本件各施設設置場所の周辺に居住する住民(原告らを含む。)は,本
件各施設の設置について,設置反対の意思表示をしている。また,原告
らのみならず,γ川及びδ川流域の住民からも反対運動が起こり,平成
16年11月15日には,反対署名は1万3071名に達した。さらに,
河川下流に位置する廿日市の市長は,平成16年5月6日及び同年9月
30日に,反対要望を出している。
旧α町長は,このような事情を十分に認識していたのだから,憲法に
由来する住民自治の原則にかんがみて,住民の意向を最大限に尊重して,
本件各施設の設置申請に対しては不許可とすべきであった。したがって,
本件各処分には裁量権の逸脱がある。
【被告の主張】
本件各処分は,次のとおり,設置不許可の要件(場所要件及び構造設備
要件)に該当しないし,裁量権の逸脱もないから,適法である。
ア場所要件
(ア)飲料水が汚染されるおそれのある場所(法4条2号)
本件各施設設置場所について,飲料水が汚染されるおそれのある場
所に該当するか否かを判断するに当たっては,単に距離がどれだけ離
れているかといったような画一的な基準だけで判断することはでき
ず,これに加えて,本件各施設の構造・能力,環境を汚染するおそれ
のある物質の種類,当該物質の処理の手段,漏出防止対策の有無,事
故時の飲料水への影響の有無などを総合的に考慮すべきである。
a本件各施設設置場所と飲料水の水源との距離
(a)化製場等に関する法令には,具体的な数値基準は示されてい
ない。
そこで,法と規制対象及び目的が類似する「と畜場法」をみる
と,同法は,と畜場の設置許可基準として,「公衆の用に供する
飲料水が汚染されるおそれがある場所」と規定している(同法5
条1項2号)。これに関して国が示したと畜場の施設及び設備に
関するガイドラインには,と畜場で井戸水及び自家用水道を使用
する場合,その水源は,便所,汚物集積所等の地下水を汚染する
おそれのある場所から,20m以上離れなければならないとして
いる。
(b)本件各施設の廃水処理施設から最も近い飲料水の水源は,原
告P2方の井戸であるところ,本件各施設の廃水処理施設と当該
井戸とは,少なくとも200mは離れている。
原告P3,同P4,同P5,同P6,同P7,同P8,同P9,
同P10,同P11,同P12は,各自,飲料水の水源として井
戸を利用しているところ,これらの井戸は,本件各施設設置場所
と谷川を隔てた場所に位置している。
本件各施設の廃水処理施設と,δ川の支流とは250m以上,
γ川とは1km以上,η団地に係る専用水道の水源である井戸と
は約3.67km,廿日市市東部簡易水道の水源である井戸とは
約5.07km,δ川の支流の水が流れ込むΘダムとは約23k
m以上,それぞれ離れている。
b本件各施設の構造・能力等
本件各施設に特有の廃水は,獣畜の解体等の処理に伴い発生する
有機系廃水等であるから,微生物等による浄化処理が可能であった。
本件各施設の廃水処理施設は,微生物による処理を基本としつつ,
活性炭吸着塔や逆浸透膜等による処理も予定されていたのであり,
高い浄化能力を有する施設であった。その特徴は,工場内から排出
する汚水を,浄化処理後,工業用水として工場内で再利用するクロ
ーズドシステムを採用している点であり,河川に排出することも地
下に浸透させることも予定されていなかった。また,本件各施設の
廃水処理施設は,同施設外への浸透及び漏出を防止するために不透
性の構造となっており,その主要部分は地下に埋設されるため,地
上に設置される場合と比べて災害時等に廃水が地表面に流出する可
能性は極めて低かった。
cまとめ
上記の本件各施設の構造・能力等からすれば,災害時等に廃水が
地表面に流出することがあっても,それは一時的かつ少量であると
予測されるので,本件各施設の廃水処理施設から250m以上離れ
たδ川の支流に廃水が流れ込むような事態は想定し難いし,まして
や,1km以上離れたγ川の支流に廃水が流れ込むような事態はさ
らに想定し難い。仮に,廃水がδ川の支流に流れ込むようなことが
あったとしても,Θダムが本件各施設の廃水処理施設から23km
以上離れており,本件各施設からの廃水が有機系廃水等であること
からすれば,多量の河川水による希釈と微生物による分解作用等が
十分に期待できるから,公衆衛生上憂慮すべき影響が生じるとはい
えない。
災害時等に廃水が地下に浸透したとしても,本件各施設からの廃
水が有機系廃水等であることからすれば微生物による分解作用が十
分に期待できるし,土壌粒子によるろ過作用も十分に期待できる。
そして,本件各施設の廃水処理施設と原告P2方の井戸とは少なく
とも200mは離れていることからすれば,地下水を水源とする井
戸水に公衆衛生上憂慮すべき影響が及ぶとはいえない。なお,本件
各施設設置場所と谷川を隔てた場所に位置している井戸(上記(b)
の原告P3らの井戸)は,本件各施設設置場所の山とは別の山を基
点とする地下水を水源とするものであるから,これらの井戸につい
ても,公衆衛生上憂慮すべき影響が及ぶとはいえない。
したがって,本件各施設設置場所は,飲料水が汚染されるおそれ
のある場所には該当しない。
(イ)その他都道府県知事が公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所と
して指定する場所(法4条3号)
a化製場等に関する法律施行細則6条は,法4条の知事が指定する場
所を,社寺,学校,病院,公園,風致地区,緑地帯,名所,旧跡,鉄
道,国道その他公衆の利用に供される施設の区域内及びこれに近接す
る地域と規定する。
ところで,広島県衛生部長が広島・呉市長・各保健所長に対して
昭和31年12月13日付けで送付した「へい獣処理場等に関する
法律の一部を改正する法律等の運営について」と題する通知(公第
4857号)においては,同細則6条の規定する「公衆の利用に供
される施設」とは,特定及び不特定多数人の集合する施設にして,
利用回数の多いものであること,「近接する地域」とは,施設の所
在位置を中心に大体200m以内の区域を基準とするが,土地の状
況,設備及び業種により適宜勘案して判断することとの解釈が示さ
れている。
そして,①本件各施設の廃水処理対策は,高度の浄化能力を有す
る廃水処理施設を設置するなどしたものであること,②本件各施設
の化製室等においては,臭気対策として,高濃度臭気については蓄
熱燃焼脱臭方式,中濃度臭気については水洗浄(冷却)及び薬液洗
浄(酸・アルカリ・次亜塩)による脱臭方式,低濃度臭気について
はボイラー利用型燃焼脱臭方式が採用されており,効果的な臭気対
策が講じられていること,③廃水処理施設においても,処理層の密
閉化及び脱臭処理設備への送気が予定されており,臭気対策を重視
した設備内容となっていることなどからすれば,上記の200mと
いう数値基準は,妥当であった。
b本件各施設から255m以上離れた位置にはζ集会所,約800m
の位置にι神社,約1500mの位置にλ寺及び神社がある。
いずれの施設も,本件各施設から200m以上離れているので,
本件各施設設置場所は,社寺,学校,病院,公園,風致地区,緑地
帯,名所,旧跡,鉄道,国道その他公衆の利用に供される施設に近
接する地域にはない。また,そもそも,ζ集会所は,月一度の定例
会等に利用されているにすぎず,利用回数が多いものとはいえない
から,その他公衆の利用に供される施設に当たらない。
cしたがって,本件各施設設置場所は,その他都道府県知事が公衆
衛生上害を生ずるおそれのある場所として指定する場所には該当し
ない。
dP1組合から生じる悪臭被害が受忍限度を超えるものであるとの
主張は争う。
イ構造設備要件
(ア)構造設備要件は,化製場条例3条に規定されているところ,本件
各施設の構造設備は,同3条の基準にすべて適合していた。
(イ)後記【原告らの主張】イは否認する。
化製場条例3条1項1号ホ,2項3号は,本件各施設の構造設備の
基準として,汚水の浄化装置を有することを規定する。
汚水の浄化装置は,沈殿腐敗が十分に行いうる構造,容積の多層式
浄化装置以上のものであればよいところ,本件各施設の廃水処理施設
(汚水の浄化装置)は,次のとおり,この水準を優に上回っていた。
a本件各施設の廃水処理施設は,処理後の水を工場内で再利用する
クローズドシステムを採用した。
このクローズドシステムは,複数の一般的な廃水処理プロセスを
組み合わせることで,単一のプロセスによるよりも,高度の浄化処
理を可能とし,それを前提に,処理後の水を工場内で再利用するこ
とで施設外への廃水の排出を不要とするものであった。個々の廃水
処理プロセスにおいて,特殊な処理が行われているわけではなかっ
た。
b本件各施設の廃水処理施設は,第一脱窒槽,回転円板型硝化槽,
第二脱窒槽及び再曝気槽から構成される循環式硝化脱窒素法による
処理に,4段階のろ過又は吸着を内容とする物理化学的処理(生物
ろ過槽,精密ろ過膜(MF)ユニット,活性炭吸着塔及び逆浸透膜
(RO)ユニットから構成される)を組み合わせた処理プロセスが
用いられ,循環式硝化脱窒素法の核となる硝化のプロセスにおいて
は,生物膜法(円板等の表面に固着した微生物の増殖活動を利用し
て,廃水・汚水の浄化を図る方法)の一つである回転円板法(回転
式の円板を低速回転させ,当該円板の表面に固着した微生物を汚濁
物質と酸素に交互に接触させることで廃水・汚水の浄化を図る方法)
が用いられていた。
なお,本件各施設において発生する廃水は,BOD(生物化学的
酸素要求量)が高く,窒素,リン等を含んでいるところ,循環式硝
化脱窒素法は,BOD物質の除去と同時並行的に窒素等を除去しう
る点で合理的かつ経済的な手法であった。
cこのように,本件各施設の廃水処理施設は,一般的な科学的知見
に照らし,十分に実現が可能であり,その選択も,本件各施設にお
いて発生する廃水の性状に照らし妥当なものであったといえる。
(ウ)したがって,本件各施設の構造設備は,化製場条例で定める公衆
衛生上必要な基準に適合しないときには,該当しない。
(3)争点(3)(本件各処分は無効であるか)について
【原告らの主張】
ア法3条1項及び8条の規定による化製場等の設置許可に係る事務は,
旧α町においては,本件条例により,旧α町が処理することになってい
た。
化製場等の設置許可に係る事務の処理にあたっては,高度に専門的な
判断が要求され,他方で,ひとたび違法な設置許可がなされると,当該
施設の周辺に居住する住民等には,飲料水の汚染等,甚大な損害が生じ
てしまう。これらのことからすれば,化製場等の設置許可に係る事務は,
審査能力に限界のある市町村に委ねるべきではなく,法3条1項及び8
条が規定するように都道府県知事が十分に審査を行った上で,慎重に判
断をすべきである。
そうすると,化製場等の設置許可に係る事務を市町村(旧α町を含む。)
に委ねることを規定した本件条例は,法に違反し無効であるから,旧α
町長がした本件各処分もその根拠を欠き,無効であるというべきである。
イ仮に,本件条例が有効であり,旧α町長が化製場等の設置許可の権限
を有しているとしても,旧α町は,化製場等の設置許可・不許可を判断
する審査能力を欠いており,主体的・自律的な判断を行うための能力が
なかった。
旧α町(長)は,本件各処分をするに当たり,申請書類の形式的な適
式性に関する判断しかせず,具体的な申請内容の当否については,主体
的・自律的な調査,判断をしなかった。その結果,本件各施設の設置を
不許可とすべきであったにもかかわらず,違法に許可してしまったので
あるから,本件各処分には,重大かつ明白な瑕疵があり,無効である。
【被告の主張】
本件条例が無効であるかどうかということと,本件条例により化製場等
の設置許可に係る事務の処理を委ねられた市町村の審査能力とは関係がな
いから,本件条例は有効である。
また,本件各処分が無効であるかどうかを判断するに当たっても,旧α
町(長)が審査能力を欠いていたかどうかは直接関係がなく,上記(2)【被
告の主張】で述べたとおり,本件各処分は適法であるから,重大かつ明白
な瑕疵はない。
したがって,本件各処分は無効ではない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前提事実に加えて,証拠(甲3の1,4,21,48の1ないし15,4
8の17ないし23,乙2,4,6,10,18,19,33)及び弁論の
全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
(1)P1組合の本件申請に係る添付書類には,次の内容の記載があった(甲
3の1)。
ア事業の概要
本件各施設は,国の施策である畜産副生物の適正処理の推進等に伴う
施設で,広島県内及びその周辺地域の食肉市場,部分肉工場及び小売店
等から発生する牛,豚,鶏等の動物性加工残渣やへい死獣,牛,豚の原
皮等を集荷し,各々その用途に合わせて生産,処理するものである。
イ環境保全設備についての基本方針
本件各施設においては,臭気,騒音,振動等の適切な公害防止対策を計
画し,十分な環境保全を計る必要がある。これらの公害計画の具体的な対
応は,次のとおりとする。
(ア)処理目標値は,法,条例規制基準等に基づく公害関係規制値もしく
はそれ以上とする。
(イ)原料の搬入から建屋内で行い,天井を高くして工場内の空間面積を
大きく取り,建屋は搬出入時以外はすべて完全密閉化する。また,建屋
構造については,床材や壁材に臭気や水分がしみこまないものとする。
(ウ)臭気が工場内から外部に漏れないように建屋内の圧力は常に負圧
状態を維持し,さらに原料受入室から製造及び製品粉砕室までの各プラ
ントから排出する臭気は,臭気濃度にあわせて局所吸引と全体換気で,
ダクトで捕集した後,適切な脱臭設備で脱臭処理を行うものとする。
(エ)工場内の臭気濃度を削減するため,製造プラントの臭気排出箇所は
全て密閉化して,その各箇所から排出する臭気は直接吸引して脱臭設備
に導く構造であって,臭気の逆流がないものとする。
(オ)廃水から発生する臭気を削減するため,製造プラントから排出する
廃水温度をできる限り低下させる。
(カ)製造プラントの廃水排出口から廃水処理施設までの導入経路は地
下埋設型で,温度の高い凝縮汚水は直接ポンプアップにて圧送され,残
りの廃水は自然落差で一次貯留槽に集水後,廃水処理施設へポンプアッ
プされる。
(キ)廃水処理施設の廃水受入部である調整槽等は臭気の発生源である
ため,密閉構造で鉄筋コンクリート造りとし槽内の臭気を吸引して処理
施設に導く構造とする。
(ク)これらの対応策は各々独自に実施するのではなく,相互間には密接
な関連があり,その相乗効果が期待できるよう配慮する。
ウ臭気処理施設
レンダリング設備の運転はバッチ方式であり,クッカーやプレス等の
製造プラントの主要部分からは,強烈な高濃度の臭気が発生するが,製
造過程で発生する凝縮水が移流する原水ピット等のように,主要製造プ
ラントからの臭気ほど臭気濃度が高くない箇所もある。そこで,平成1
2年に現工場にて脱臭処理公開試験を行い,これを踏まえ,臭気を,臭
気濃度により高・中・低の3つに区分し,①高濃度臭気は「蓄熱燃焼炉
で燃焼処理方式」,②中濃度臭気は「水洗浄+アルカリ・次亜塩及び酸
による2段薬液洗浄脱臭処理方式」,③低濃度臭気は「ボイラ利用型燃
焼脱臭処理方式」を採用した。このように,工場から排出する臭気を,
臭気特性と臭気濃度別に分けたのち,適切な脱臭処理方法で処理を行
い,処理後のガス濃度を排出口臭気指数で25以下,敷地境界線の臭気
指数を13以下まで低減させて安定した処理を行う。
エ廃水処理施設
本件各施設における廃水処理施設(以下「本件廃水処理施設」という。)
は,一次処理設備,二次処理設備,高度処理設備及び造水処理設備から
構成されるが,化製工場等から排出される汚水を処理するものであり,
工場内から排出する汚水を浄化処理後,工業用水として再利用するクロ
ーズドシステム化を図っている。
化製工場から排出される汚水には,クッカーからの生産系汚水(凝縮
汚水),床・コンテナの洗浄排水,洗車排水及び(中濃度)脱臭処理設
備から排出される脱臭排水がある。
これらの排水(以下「総合廃水」という。)は,まず,一次処理設備
の自動微細目スクリーンと傾斜板付油分離槽で,粗大固形物と油分の除
去が行われ,スパイラル式熱交換器で冷却後,第一脱窒,回転円板型硝
化槽,第二脱窒,再曝気からなる硝化液循環型の生物学的脱窒処理法(生
物膜法である回転円板法を用いた循環式硝化脱窒素法)を用いた二次処
理設備で浄化される。そして,総合排水は,さらに,処理水の安定性を
上げるため,生物ろ過後,精密ろ過膜と活性炭吸着塔により処理水中の
不純物を高度処理で除去された後,逆浸透膜により微量成分の除去を目
的とした造水処理が行われ,再利用水槽に貯留される。貯留した処理水
は,無駄に放流されるのではなく,工業用水として循環利用されるので,
周辺への影響はない。
(2)P1組合は,旧α町長に対し,平成16年8月,本件廃水処理施設の設
計根拠に係る資料(株式会社P13作成の廃水処理施設基本設計書)を提出
した(乙10)。その概要は,次のとおりである。
ア本件各施設から排出される汚水の種類,排出量及び水質
(ア)本件各施設から排出される汚水は,生産系汚水(凝縮汚水),コ
ンテナ洗浄排水,床洗浄排水,洗車排水及び中濃度脱臭処理水である。
(イ)上記(ア)の各汚水及び総合排水の排出量及び水質は,別紙2マテ
リアルバランスシート各バランス表示値欄①ないし⑥記載のとおりで
ある(なお,各バランス表示値欄の①ないし⑰の番号は,マテリアル
バランスシートに記載の①ないし⑰の番号に対応する。)。
イ総合排水と処理水の汚水量及び水質の比較(設計基準値)
(ア)総合排水の汚水量及び水質は,次のとおりである(別紙2マテリ
アルバランスシート各バランス表示値欄⑥)。
a汚水量150.0m3
/日
bPH6.0~8.0
cBOD2300mg/L(345kgBOD/日)
dCOD860mg/L(129kgCOD/日)
eSS(浮遊物質)490mg/L(73.5kgSS/日)
fN-Hex(油脂)240mg/L(36.0kgN-Hex/日)
gT-N(全窒素)314mg/L(47.1kgT-N/日)
hT-P(全リン)40mg/L(6.0kgT-P/日)
i液温36℃
(イ)本件各施設の廃水処理施設で処理後の処理水について,想定する
汚水量及び水質は,次のとおりである。
a汚水量通常約110m3
/日(最大約149m3
/日)
bPH6.0~8.0
cBOD3mg/L以下
dCOD10mg/L以下
eSS0mg/L以下
fN-Hex0mg/L以下
gT-N10mg/L以下
hT-P2mg/L以下
i水温18~25℃
j濁度10度以下
k大腸菌郡数10個/mL以下
ウ汚水の性状
上記イの設計基準値を前提とすると,BODとT-NとT-Pの比は,
100対13.7対1.7となり(生物処理の適正値は100対5対1),
BODに対してT-NとT-Pが高く,通常の活性汚泥処理では除去が
困難である。このため,本件廃水処理施設は,汚水中の油脂分を有機炭
素源として利用しながら浄化処理する硝化液循環型生物学的脱窒処理法
(生物膜法である回転円板法を用いた循環式硝化脱窒素法)を採用する。
エ処理方式
回転円板型循環式硝化脱窒素方式に高度膜処理方式を加えた方式。
オ処理設備の構成
処理設備の構成は,次のとおりである(別紙2マテリアルバランスシ
ート参照)。
(ア)一次処理設備
一次処理設備は,自動微細目スクリーン,傾斜板付油分離槽,調整
槽及びスパイラル式熱交換器から構成される。
(イ)二次処理設備
二次処理設備は,第一脱窒槽,回転円板型硝化槽,第二脱窒槽,再
曝気槽,反応槽,沈殿槽,沈殿分離槽,炭素源貯槽,凝集剤貯槽,汚
泥貯留槽,汚泥反応・凝集槽,汚泥脱水機,AP溶解供給槽及びCP
溶解供給槽から構成される。
(ウ)高度処理設備
高度処理設備は,生物ろ過槽,調整槽,精密ろ過膜(MF)ユニッ
ト及び処理水槽から構成される。
(エ)造水処理設備
造水処理設備は,活性炭吸着塔,逆浸透膜(RO)ユニット,処理
水槽,再利用水槽,希硫酸槽,膜洗浄剤槽及び次亜鉛槽から構成され
る。
カ第一脱窒槽
(ア)第一脱窒槽へは,①調整槽からの流入水(総合排水が調整槽及び
熱交換器を通過したもの),②脱水分離水,③逆洗排水及び④硝化槽
循環液が流入する(別紙2マテリアルバランスシート参照)。第一脱
窒槽入口において想定する各流入水の水量及び水質は,次のとおりで
ある。
a調整槽からの流入水(別紙2マテリアルバランスシート各バラン
ス表示値欄⑥)
(a)流入水量150m3
/日
(b)PH6.0~8.0
(c)BOD2300mg/L(345.0kgBOD/日)
(d)COD860mg/L(129.0kgCOD/日)
(e)SS490mg/L(73.5kgSS/日)
(f)N-Hex240mg/L(36.0kgN-Hex/日)
(g)T-N314mg/L(47.1kgT-N/日)
(h)T-P40mg/L(6.0kgT-P/日)
(i)液温36℃
b脱水分離水(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値
欄⑫)
(a)流入水量6.4m3
/日
(b)PH6.0~8.0
(c)BOD50mg/L(0.32kgBOD/日)
(d)COD80mg/L(0.51kgCOD/日)
(e)SS100mg/L(0.64kgSS/日)
(f)N-Hex5mg/L(0.03kgN-Hex/日)
(g)T-N10mg/L(0.06kgT-N/日)
(h)T-P8mg/L(0.05kgT-P/日)
(i)水温25℃
c逆洗排水(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄
⑮)
(a)流入水量30m3
/日
(b)PH6.0~6.5
(c)BOD63mg/L(1.90kgBOD/日)
(d)COD65mg/L(1.95kgCOD/日)
(e)T-N35mg/L(1.05kgT-N/日)
(f)T-P2mg/L(0.05kgT-P/日)
(g)水温25℃
d硝化槽循環液(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示
値欄⑦)
(a)流入水量320m3
/日
(b)PH6.0~7.0
(c)BOD100mg/L(32kgBOD/日)
(d)COD170mg/L(54.4kgCOD/日)
(e)SS400mg/L(128kgSS/日)
(f)N-Hex10mg/L(3.2kgN-Hex/日)
(g)T-N30mg/L(9.6kgT-N/日)
(h)T-P10mg/L(3.2kgT-P/日)
(i)液温28℃
e第一脱窒槽への流入水平均値
(a)流入水量506.4m3
/日
(b)PH6.0~7.0
(c)BOD749mg/L(379.22kgBOD/日)
(d)COD367mg/L(185.87kgCOD/日)
(e)SS399mg/L(202.14kgSS/日)
(f)N-Hex78mg/L(39.23kgN-Hex/日)
(g)T-N114mg/L(57.82kgT-N/日)
(h)T-P18mg/L(9.3kgT-P/日)
(i)液温30℃
(イ)第一脱窒槽出口において想定する水量及び水質は,次のとおりで
ある(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑧)。
a汚水量506.4m3
/日
bPH6.0~7.0
cBOD749mg/L(379.22kgBOD/日)
dCOD367mg/L(185.87kgCOD/日)
eSS399mg/L(202.14kgSS/日)
fN-Hex78mg/L(39.23kgN-Hex/日)
gT-N50mg/L(25.32kgT-N/日)
hT-P18mg/L(9.30kgT-P/日)
i液温30℃
(ウ)第一脱窒槽の必要容量は,次の式によって算定される。
必要容量=(NO3-N濃度×硝化液循環液量)÷(脱窒素速度定
数×MLSS濃度)
また,NO3-N濃度は,第一脱窒槽及び第二脱窒槽において,N
O3-Nが100パーセント還元するとすれば,次の式によって算定
される。
NO3-N濃度=(流入水中のNH4-N濃度-処理水中のNH4-
N濃度)÷(流入汚水量(硝化槽循環液を除く。)+硝化液循環液量)
上記(ア)及び(イ)に加えて,脱窒素速度定数を0.03kgN/kgMLSS
日,MLSS濃度を400mg/Lとして,必要容量を計算すると,必要
容量は300m3
となる。
【計算式】
NO3-N濃度=((114mg/L×0.7)-50mg/L)÷(1+
1.72)=11mg/L
必要容量=(11mg/L×(1.72×186.4m3
/日)×10-3

÷(0.03kgN/kgMLSS日×(400mg/L×10-3
))=293.9
m3
以上
キ回転円板型硝化槽
(ア)回転円板型硝化槽と曝気槽型硝化槽の長所及び短所を比較する
と,硝化槽の入口から出口間で液温を2~5℃程度低下させることが
でき,増殖の遅い硝化菌を高濃度に定着できて,硝化菌の管理が容易
な硝化槽を設計するためには,回転円板型しか選択できない。
(イ)回転円板型硝化槽入口において想定する水量及び水質は,次のと
おりである(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑧)
a汚水量506.4m3
/日
bPH6.0~7.0
cBOD749mg/L(379.22kgBOD/日)
dCOD367mg/L(185.87kgCOD/日)
eSS399mg/L(202.14kgSS/日)
fN-Hex78mg/L(39.23kgN-Hex/日)
gT-N50mg/L(25.32kgT-N/日)
hT-P18mg/L(9.30kgT-P/日)
i液温30℃
(ウ)回転円板型硝化槽出口において想定する水量及び水質は,次のと
おりである。
a汚水量506.4m3
/日
bPH6.0~7.0
cBOD100mg/L(50.64kgBOD/日)
dCOD170mg/L(86.09kgCOD/日)
eSS400mg/L(202.56kgSS/日)
fN-Hex10mg/L(5.06kgN-Hex/日)
gT-N50mg/L(25.32kgT-N/日)
hT-P10mg/L(5.06kgT-P/日)
i液温28℃
(エ)硝化槽におけるBOD面積負荷は,平均で8gBOD/㎡日以下とす
る。ただし,多段ステージの場合は,1ステージ目は40gBOD/㎡日以
下とする。
(オ)回転円板の必要面積は,回転円板型硝化槽に流入する汚水のBO
D値379.22kgBOD/日を,想定するBOD面積負荷8gBOD/㎡日で
除した47403㎡以上必要となる。
回転円板の必要台数は,回転円板の1軸当たりの面積が9530㎡
であるから,上記面積47403㎡を9530㎡で除すと,6台とな
る。
回転円板の面積は57180㎡(=9530㎡×6台)となるから,
実質的なBOD面積負荷は6.6gBOD/㎡日(=379.22kgBOD/
日÷57180㎡)となる。
(カ)食物連鎖を有効に働かすために,回転円板は3段処理方式(各段
をステージと表示する)として,1ステージの回転円板は3台,2ス
テージの回転円板は2台,3ステージの回転円板は1台とする。
1ステージのBOD面積負荷は13.3gBOD/㎡日,2ステージのB
OD面積負荷は3.98gBOD/㎡日,3ステージのBOD面積負荷は1.
59gBOD/㎡日となる。
1ステージのMLSS濃度は17000mg/L,2ステージのMLS
S濃度は12700mg/L,3ステージのMLSS濃度は8400mg/L
となる。
ク第二脱窒槽
(ア)第二脱窒槽の入口において想定する水量及び水質は,次のとおり
である(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑨)
a汚水量186.4m3
/日
bPH6.0~7.0
cBOD100mg/L(18.64kgBOD/日)
dCOD170mg/L(31.69kgCOD/日)
eSS400mg/L(74.56kgSS/日)
fN-Hex10mg/L(1.86kgN-Hex/日)
gT-N50mg/L(9.32kgT-N/日)
hT-P10mg/L(1.86kgT-P/日)
i液温28℃
(イ)第二脱窒槽の出口において想定する水量及び水質は,次のとおり
である(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑩)。
a汚水量186.4m3
/日
bPH6.0~7.0
cBOD40mg/L(7.46kgBOD/日)
dCOD70mg/L(13.05kgCOD/日)
eSS400mg/L(74.56kgSS/日)
fN-Hex8mg/L(1.49kgN-Hex/日)
gT-N30mg/L(5.59kgT-N/日)
hT-P10mg/L(1.86kgT-P/日)
i水温25℃
ケ再曝気槽
(ア)再曝気方式
低分子のBOD成分や残留油分(N-Hex)の完全分解を考慮し
て生物膜法による接触曝気型再曝気方式を採用する。
(イ)再曝気槽の入口において想定する水量及び水質は,上記ク(イ)の
とおりである(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄
⑩)。
コ生物ろ過槽
(ア)生物ろ過方式
下向流方式
(イ)ろ過速度
150m/日
(ウ)ろ材
珪砂(粒径0.6mm,均等係数1.4以下)
(エ)ろ層
単層(砂厚400~600mm)
(オ)生物ろ過層の入口において想定する水量及び水質は,次のとおり
である(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑪)
a汚水量180.4m3
/日
bPH6.0~7.5
cBOD20mg/L(3.61kgBOD/日)
dCOD30mg/L(5.41kgCOD/日)
eSS30mg/L(5.41kgSS/日)
fN-Hex-
gT-N30mg/L(5.41kgT-N/日)
hT-P8mg/L(1.44kgT-P/日)
i水温25℃
(カ)生物ろ過層の出口において想定する水量及び水質は,次のとおり
である(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑬)
a汚水量180.4m3
/日
bPH6.0~8.0
cBOD20mg/L(3.61kgBOD/日)
dCOD25mg/L(4.51kgCOD/日)
eSS20mg/L(3.61kgSS/日)
fN-Hex-
gT-N20mg/L(3.61kgT-N/日)
hT-P5mg/L(0.90kgT-P/日)
i水温25℃
サ精密ろ過膜(MF)ユニット
(ア)形式
加圧型中空糸MF膜型
(イ)精密ろ過膜(MF)ユニットの出口において想定する水量及び水
質は,次のとおりである(別紙2マテリアルバランスシート各バラン
ス表示値欄⑭)
a汚水量170.4m3
/日
bPH6.0~8.0
cBOD10mg/L(1.70kgBOD/日)
dCOD15mg/L(2.56kgCOD/日)
eSS-
fN-Hex-
gT-N15mg/L(2.56kgT-N/日)
hT-P5mg/L(0.85kgT-P/日)
i水温25℃
シ活性炭吸着塔・逆浸透膜(RO)ユニット
(ア)形式
活性炭フィルタ型及び三酢酸セルロース製中空糸型
(イ)活性炭吸着塔の出口において想定する水量及び水質は,次のとお
りである(別紙2マテリアルバランスシート各バランス表示値欄⑯)
a汚水量170.2m3
/日
bPH6.0~8.0
cBOD3mg/L(0.51kgBOD/日)
dCOD10mg/L(1.70kgCOD/日)
eSS-
fN-Hex-
gT-N10mg/L(1.70kgT-N/日)
hT-P2mg/L(0.34kgT-P/日)
i水温25℃
(ウ)逆浸透膜(RO)ユニットの出口において想定する水量及び水質
は,次のとおりである(別紙2マテリアルバランスシート各バランス
表示値欄⑰)
a汚水量142.7m3
/日
bPH6.0~8.0
cBOD3mg/L以下(0.43kgBOD/日)
dCOD10mg/L以下(1.43kgCOD/日)
eSS-
fN-Hex-
gT-N10mg/L以下(1.43kgT-N/日)
hT-P2mg/L以下(0.29kgT-P/日)
i水温18~25℃
j濁度10度以下
k大腸菌群数10個/cc以下
(3)本件各施設設置場所は,ε山と呼ばれる山の中腹にある(甲21,48
の23,乙2)。
本件各施設設置場所の周辺には,同設置場所から約255m離れた場所に
ζ集会所がある(乙4)。また,同設置場所の北東側には東西方向に伸びる
γ川の支流が,西側には南北方向に伸びるδ川の支流がそれぞれ位置してい
るところ,同設置場所からγ川の支流までは約1km以上離れており,δ川
の支流までは約250m以上離れている(甲48の23)。
本件各施設設置場所から,西へ約3.67km離れた地点にはγ川沿いに
η団地に係る専用水道の水源である井戸が(乙33),南へ約5.07km
離れた地点にはδ川沿いに廿日市市東部簡易水道の水源である井戸が(乙3
3),南へ約23km離れた地点にはΘダムがある(乙19)。
(4)本件各施設設置場所と原告らの居住地の位置関係は,次のとおりである
(別紙3)。
ア原告P2は,本件各施設設置場所があるε山の麓の約200m離れた場
所に居住している(乙2,18)。
イ原告P3,同P4,同P5,同P6,同P7,同P8,同P9,同P1
0,同P12は,本件各施設設置場所から,約500mないし1km離れ
た地域(ζ地区)に居住している(甲21,乙33)。ζ地区と本件各施
設設置場所があるε山の麓との間にはδ川の支流があり,ζ地区はε山と
は別の山の麓に位置している(甲21,乙2,33)。
なお,原告P14は,広島市μに住所地があるものの,ζ地区には同原
告の母が居住する住宅があり,そこで生活をすることがほとんどである
(甲48の18)。
ウ原告P11は,本件各施設設置場所から約1.8km離れた地域に居住
している(乙33)。
エ原告P15,同P16,同P17,同P18は,本件各施設設置場所か
ら約2ないし5km離れた地域に居住しており,その居住地はいずれもδ
川沿いである(乙33)。
オ原告P19,同P20,同P21,同P22,同P23は,本件各施設
設置場所から約4km離れた地域(η)に居住しており,ηは,γ川沿い
にある(乙33)。
(5)原告らの飲料水の水源は,次のとおりである。
ア原告らのうち,原告P2,同P3,同P4,同P6,同P7,同P8,
同P9,同P10,同P12,同P11及び同P14は,自宅にある井
戸の井戸水(ボーリング水)を飲料水の水源としている(甲48の1な
いし8,10,18,19)。
イ原告らのうち,原告P5は,自宅近くを流れる谷川の谷水及び自宅に
ある井戸の井戸水(ボーリング水)を飲料水の水源としている(甲48
の17)。
ウ原告らのうち,原告P15,同P16,同P17,同P18は,廿日
市市東部簡易水道を飲料水の水源としている(甲48の9,20,21,
22)。
エ原告らのうち,原告P19,同P20,同P21,同P22,同P2
3は,η団地に係る専用水道を飲料水の水源としている(甲48の11
ないし15)
2争点(1)(原告らは本件各訴えの原告適格を有するか)について
(1)行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは,当該
処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必
然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政
法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させ
るにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護す
べきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここに
いう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又
は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原
告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者に
ついて上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該
処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨
及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考
慮すべきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮する
に当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣
旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,
当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとな
る利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべき
ものである(同条2項。最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年1
2月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁)。
(2)上記の見地に立って,原告らが本件各処分の取消しを求める訴えにつき
原告適格を有するか否かについて検討する。
ア法4条は,場所要件として,化製場等の設置場所が,人家が密集してい
る場所(同条1号),飲料水が汚染されるおそれのある場所(同条2号),
のいずれかに該当するときには化製場等の設置を許可しないことができ
ると規定する。また,法4条は,構造設備要件として,化製場等の構造設
備が都道府県の条例で定める公衆衛生上必要な基準に適合しないと認め
るときには化製場等の設置を許可しないことができるとし,化製場条例3
条及び5条が,この化製場等の構造設備の基準を規定する。同条例は,化
製場等の構造設備の基準として,①汚物処理設備として,汚物だめ及び汚
水だめ又は汚水の浄化装置を有すること(同条例3条1項1号ホ,2項3
号,5条),②換気扇を備えた排気装置その他臭気を適当な高さで屋外に
放散し,又は処理することができる設備が設けられていること(同条例3
条2項2号ニ)などを定めている。
さらに,法5条(法8条において準用する場合を含む。)は,化製場
等の管理者の講じなければならない措置として,①化製場等の内外は,
常に清潔にし,汚物の処理を十分にすること(法5条1号),②こん虫
の発生の防止及び駆除を十分にすること(同条2号),③臭気の処理を
十分にすること(同条3号),④その他都道府県が条例で定める衛生上
必要な措置を規定している。これら法5条の規定は,いずれも化製場等
の周辺地域における悪臭等の衛生環境の悪化を防止することを目的とし
ているということができる。
そして,法3条1項に基づく化製場等の設置許可は,法4条の規定に
適合することを要件としてされるものであるところ,上記法4条の規定
に加えて,法5条には化製場等の周辺地域における悪臭等の衛生環境の
悪化を防止することを目的としている規定があることも併せて考慮すれ
ば,化製場等の設置許可に関する法の規定は,化製場等の操業に伴う悪
臭,廃水,飲料水の汚染など衛生環境の悪化によって,化製場等の周辺
地域に居住する住民に,健康又は生活環境の被害が発生することを防止
し,もって良好な衛生環境及び生活環境を保全することも,その趣旨及
び目的とするものと解される。
イ法,化製場条例及び化製場等に関する法律施行細則の規定に違反した
違法な化製場等の設置が許可された場合には,そのような化製場等の操
業に起因して,周辺地域の飲料水の汚染,悪臭や昆虫の発生などが生じ
るおそれがある。また,化製場等の周辺の一定範囲の地域に居住する住
民は,上記のような衛生環境の悪化による被害を直接受けるおそれがあ
り,その被害の程度は,住宅の場所が,化製場等に接近するにつれて増
大するものと考えられる。さらに,化製場等の周辺の一定範囲の地域に
居住する住民が,当該地域に居住し続けることにより,そのような被害
を反復,継続して受けた場合には,これらの住民の健康や生活環境に係
る著しい被害にも至りかねないものである。法が,上記アの趣旨,目的
を達成するため,化製場等の設置について上記のとおり許可制を採用し
(3条1項),許可後についても,化製場等の管理者の公衆衛生上の措
置義務(5条),設置者等への報告要求及び立入検査権(6条1項),
設置基準に適合しなくなった場合の措置命令(6条の2),命令違反時
の許可の取消し又は命令違反者に対する施設の使用制限若しくは使用禁
止の命令(7条),並びに命令違反者に対する懲役を含む罰則等(10
条2号及び11条2号)を規定して,その規制内容が極めて厳しいもの
となっているのは,ひとたび周辺住民の健康や生活環境に被害を与えた
場合の,その被害の重大性にかんがみてのことと考えられる。
ウ以上のような化製場等の設置許可に関する法の規定の趣旨及び目的,こ
れらの規定が化製場等の設置許可制度を通して保護しようとしている利
益の内容及び性質,規制内容の厳しさ等を考慮すれば,法は,これらの規
定を通じて,公衆衛生の向上及び増進などの公益的見地から,化製場等の
設置を規制するとともに,悪臭,汚水,飲料水の汚染等衛生環境の悪化に
より健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある
個々の住民に対して,そのような被害を受けないという利益を個々人の個
別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当で
ある。
したがって,化製場等の設置予定場所の周辺に居住する住民のうち,違
法な化製場等の設置に起因する衛生環境の悪化により健康又は生活環境
に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該化製場等の設
置許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消
訴訟における原告適格を有するというべきである。
エこれを本件についてみると,上記認定の原告ら(原告P14を除く。)
の居住地と本件各施設の設置場所との距離関係,本件各施設設置場所周
辺の地理状況に加えて,違法な化製場等の設置に起因する衛生環境の悪
化は広範囲に及ぶことが予想されることなどを併せて考えると,本件各
施設設置場所の周辺に居住する原告ら(原告P14を除く。)は,いず
れも,衛生環境の悪化により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接
的に受けるおそれのある者ということができるから,本件各処分の取消
しを求める法律上の利益を有する者であると認められる。また,原告P
14は,広島市μに住所地があるものの,上記で認定したとおり,本件
各施設設置場所から約500mないし1km離れた地域(ζ地区)にあ
る同原告の母の居宅で生活をしていることがほとんどであることからす
れば,同原告についても,衛生環境の悪化により健康又は生活環境に係
る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者ということができるか
ら,本件各処分の取消しを求める法律上の利益を有する者であると認め
られる。
したがって,原告らは,本件各処分の取消しを求める法律上の利益を
有する者として原告適格を有するから,本件各訴えのうち本件各処分の
取消しを求める部分は適法である。
(3)行政事件訴訟法36条は,無効等確認の訴えの原告適格について規定す
るところ、同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の
利益を有する者」の意義についても、上記(1)の取消訴訟の原告適格の場合
と同義に解するのが相当である(最高裁平成元年(行ツ)第131号同4年
9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号1090頁)。
そうすると,上記(2)で説示したところからして,原告らは,本件各処分
の無効確認を求める法律上の利益を有する者として原告適格を有するか
ら,本件訴えのうち本件各処分の無効確認を求める部分も適法である。
3争点(2)(本件各処分は違法であるか)について
(1)場所要件(法4条2号ないし3号)について
アまず,場所要件のうち,「飲料水が汚染されるおそれのある場所」(法
4条2号)について検討する。
(ア)化製場に関する法令等には,化製場と飲料水の水源との距離につ
いて,具体的な数値基準は示されていないが,建築基準法施行令(昭
和25年政令第338号)34条は,くみ取り便所の便槽の設置場所
について,井戸から5m以上(地盤面下3m以上埋設した閉鎖式井戸
で,その導水管が外管を有せず,かつ,不浸透質で造られている等の
場合は,1.8m以上)離して設けなければならない旨規定している。
また,法と規制対象・目的の点で類似すると考えられる「と畜場法」
は,と畜場の設置許可基準として,法4条2号と同様に,「公衆の用
に供する飲料水が汚染されるおそれがある場所」と規定している(同
法5条1項2号)ところ,これに関して国が示したと畜場の施設及び
設備に関するガイドラインには,と畜場で井戸水及び自家用水道を使
用する場合,その水源は,便所,汚物集積所等の地下水を汚染するお
それのある場所から,20m以上離れなければならないとしている(乙
17)。
(イ)aそして,上記1(3),(4)認定のとおり,本件各施設設置場所か
ら最も近い飲料水の水源は,原告P2方の井戸である。
原告P2方の井戸は深さ約20mであり(甲21),ε山の麓に
位置しているところ,本件各施設設置場所は,同原告方から,直線
距離にして約200m離れ,同原告方と標高差が約50mないし7
0mあるε山の中腹に位置している。
bまた,本件各施設設置場所の周辺には,飲料水の水源として,原
告P3,同P4,同P6,同P7,同P8,同P9,同P10,同
P12,同P11及び同P14の各井戸があり,原告P5の井戸及
び谷水があるが,原告P11を除くこれらの原告らが居住する地域
(ζ地区)と本件各施設設置場所のあるε山の麓との間には,δ川
の支流があって,同原告らが居住しているのはε山の麓ではない。
そして,これらの原告らが居住する地域は本件各施設設置場所から
約500mないし1km離れた地域にあり,原告P11方は,同施
設設置場所から約1.8km離れ,ε山とは異なる山の麓に位置し
ている。
cさらに,本件各施設設置場所の周辺には,飲料水の水源として,
上記a,bのほかに,η団地(原告P19,同P20,同P21,
同P22,同P23が居住)に係る専用水道の水源である井戸,廿
日市市東部簡易水道の水源である井戸及びΘダムがあるが,η団地
に係る専用水道の水源である井戸は,本件各施設設置場所から直線
距離にして約3.67km,廿日市市東部簡易水道(原告P15,
同P16,同P17,同P18が利用)の水源である井戸は本件各
施設設置場所から直線距離にして約5.07km離れている。
Θダムには,本件各施設の西に位置するδ川の支流が流れ込んで
おり(乙19),このδ川の支流には,本件各施設設置場所付近を
流れる谷川の水が流入している(甲22)が,Θダムは,本件各施
設設置場所から直線距離にして約23km離れている。
(ウ)また,上記1(1)の認定事実に証拠(乙6)及び弁論の全趣旨を総
合すると,本件各施設の廃水処理施設は,処理後の水を工場内で再利
用するクローズドシステムを採用しており,河川に排出することも地
下に浸透させることも予定されていないし,施設外への浸透及び漏出
を防止するため,不浸透の構造とされている上,その主要部分は地下
に埋設されているため,地上に設置されている場合と比べて台風,大
雨等の災害時等に廃水が地表面に流出する可能性は低いということが
できる。また,仮に災害時等に廃水が地表面に流出することがあった
としても,①上記(イ)aの位置にある原告P2方に,②同施設から2
50m以上離れたδ川の支流及び上記(イ)bの位置にある原告らの井
戸や谷水に,③さらには,同施設から1km以上離れたγ川支流及び
上記(イ)cの位置にあるη団地に係る専用水道,廿日市市東部簡易水
道の水源である井戸やΘダムに,上記廃水が流れ込むような事態は想
定しにくい。現に,鑑定の結果によれば,鑑定人P24,同P25,
同P26(以下「鑑定人ら」という。)が,原告P2方の井戸,原告
P3方井戸,原告P2方奥左側から流れてくる沢水,同方奥右側から
流れてくる沢水,原告P14の所有する田の上にある本件各施設の生
活排水路,同生活排水路と小川との合流地点上流,同合流地点下流に
ついて,平成20年12月4日に水質測定を行ったところ,原告P2
方の井戸,原告P3方井戸について,飲料水適合一般項目につき,水
質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)の定める
基準に適合している旨の,原告P2方奥左側から流れてくる沢水,同
方奥右側から流れてくる沢水,原告P14の所有する田の上にある本
件各施設の生活排水路,同生活排水路と小川との合流地点上流,同合
流地点下流について,水質汚濁の係る環境基準(昭和46年12月2
8日環境庁告示第59号)の定める生活環境の保全に関する環境基準
に適合している旨の測定結果が出ていることが認められる。
(エ)以上(ア)ないし(ウ)の諸事情,とりわけ,本件各施設と原告らが
利用する飲料水の水源との距離関係,本件各施設やこれら水源の周辺
の地理状況,本件各施設の構造・能力,鑑定の結果等を総合すると,
本件各施設設置場所は,法4条2号の規定する「飲料水が汚染される
おそれのある場所」に該当しないというべきである。
イ次に,場所要件のうち,「その他都道府県知事が公衆衛生上害を生ず
るおそれのある場所として指定する場所」(法4条3号)について検討
する。
(ア)化製場等に関する法律施行細則6条は,法4条3号の規定により,
公衆衛生上害を生ずるおそれのある場所として知事が指定する場所を,
「社寺,学校,病院,公園,風致地区,緑地帯,名所,旧跡,鉄道,国
道その他公衆の利用に供される施設の区域内及びこれに近接する地域」
と規定している。そして,この「その他公衆の利用に供される施設」及
び「近接する地域」という文言については,「へい獣処理場等に関する
法律の一部を改正する法律等の運営について(通知)(昭和31年12
月13日公第4857号広島県衛生部長から広島・呉市長・各保健所
長宛)において,それぞれ「特定及び不特定多数人の集合する施設にし
て,利用回数の多いものであること。」,「施設の所在位置を中心に大
体200メートル以内の区域を基準とするが,土地の状況,設備及び業
種により適宜勘案して判断すること。」との解釈が示されている(乙2
1)。
(イ)上記1(3)認定のとおり,本件各施設設置場所の周辺には,ζ集会
所がある。ζ集会所は,現在,祭り,葬式のまかない,健康相談等に
使用され,月1回の定例会のほか,不定期に親睦会等が開かれている
ところ,本件各施設設置場所から直線距離にして約255m離れてい
る(甲21,乙4)。そして,ζ集会所は,本件各施設設置場所があ
るε山とは異なる山の麓に位置しており,ε山の麓との間には,δ川
の支流が流れている(乙2,4)。また,本件各施設設置場所はε山
の中腹にあるところ,ζ集会所と本件各施設設置場所の標高差は約6
0mある(乙4)。
また,本件各施設設置場所から直線距離にして約800mの位置に
ι神社があり,約1500mの位置にλ寺及び神社がある。
(ウ)aそして,本件各施設の廃水処理施設については,上記ア(ウ)の
とおりの廃水処理対策が予定されていたのであり,現に,原告P2
方の井戸,原告P3方井戸,原告P2方奥左側から流れてくる沢水,
同方奥右側から流れてくる沢水,原告P14の所有する田の上にあ
る本件各施設の生活排水路,同生活排水路と小川との合流地点上流,
同合流地点下流における水質測定において,環境基準項目及び飲料
水適合一般項目につき,それぞれ水質汚濁の係る環境基準(昭和4
6年12月28日環境庁告示第59号)の定める生活環境の保全に
関する環境基準及び水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省
令第101号)の定める基準に適合している旨の鑑定結果が出てい
ることは,上記ア(ウ)のとおりである。
bまた,本件各施設の臭気対策については,本件化製場の脱臭設備
は,工場内で発生した臭気を高濃度,中濃度,低濃度に分けてダク
ト捕臭し,それぞれ蓄熱燃焼脱臭方式,水洗浄+二段薬液洗浄脱臭
方式,ボイラー利用型燃焼脱臭方式で脱臭して排出するものであり,
高濃度脱臭設備は工場稼働中とその前後1時間,中濃度脱臭設備は
常時(24時間),低濃度脱臭設備は工場稼働時間中稼働している
こと,原料は全てコンテナに密封された状態でウイング車両により
搬入され,搬入から製品搬出まで,作業は全て建屋内で実施される
ので,臭気が外に出ることはないこと,さらに,工場は密閉構造で
外部に臭気が漏れない構造であり,建屋内は常に負圧状態を維持し
ていることに加え,内部の製造プラントの臭気発生箇所は密閉化さ
れているため二重の密閉構造となっていたことが認められ(上記1
(1)の認定事実,乙6,弁論の全趣旨),このように,本件化製場に
おいては,臭気が周辺に漏れないような相応の臭気対策が予定され
ていたといえる。現に,鑑定結果によれば,鑑定人らが,本件各施
設の敷地境界線,原告P2方について,臭気測定をしたところ,い
ずれについても,臭気指数が10未満で,悪臭防止法に基づく規制
基準に適合していたことが認められる。また,これらの地点から遠
方に所在するζ集会所においても同様の結果が出ることが容易に推
察される。
なお,原告らは,広島市は,「臭気の改善について(通知)」と
題する書面において,本件化製場の各施設の排出口における臭気指
数の規制基準を,一応「中濃度脱臭処理設備の排出口における規制
基準を(臭気指数)16,高濃度脱臭処理設備の排出口における規
制基準を(臭気指数)23」と具体的に算出しているが,広島市環
境局環境保全課による測定結果及び鑑定結果は,いずれもこの規制
基準を超えており,しかも,広島市が上記書面により上記規制基準
を超えているおそれがあるとしてこれを改善するよう通知している
にもかかわらず被告において改善ができていないことからすると,
深刻な問題であるなどと主張する。
確かに,広島市が平成19年6月22日付け「臭気の改善につい
て(通知)」と題する書面において,本件化製場の各施設の排出口
における臭気指数の規制基準を,一応「中濃度脱臭処理設備の排出
口における規制基準を(臭気指数)16,高濃度脱臭処理設備の排
出口における規制基準を(臭気指数)23」と具体的に算出してい
ること(弁論の全趣旨),上記のとおり,広島市環境局環境保全課
による調査では,平成19年5月11日に中濃度脱臭処理設備の排
出口から採取した臭気につき臭気指数37,同月30日に中濃度脱
臭処理設備及び高濃度脱臭処理設備から採取した臭気につき,それ
ぞれ臭気指数19及び27との測定結果が出ており,また,鑑定結
果でも,平成20年12月3日に高濃度脱臭処理設備から採取した
臭気につき臭気指数が26,同月15日に高濃度脱臭処理設備から
採取した臭気につき臭気指数が25との測定結果が出ていることが
認められる。
しかしながら,広島市が一応算出した上記規制基準値(「中濃度
脱臭処理設備の排出口における規制基準を(臭気指数)16,高濃
度脱臭処理設備の排出口における規制基準を(臭気指数)23」)
は,悪臭防止法施行規則6条の2に定める方法により,気体排出口
から拡散した臭気の地表上での最大着地濃度が敷地境界線における
臭気指数の規制基準(第2種区域:臭気指数13)を超えないよう
算出したものであるが,上記規制基準値は,①本件化製場の敷地境
界が確定していないこと,②中濃度脱臭処理設備における排出ガス
の温度,水分量等が実測できないことから,悪臭防止法4条2項2
号に基づく規制基準を算出する根拠となる数値を確定できず,その
ため確定的な規制基準の算出することができなかったため,本件化
製場に係る届出書の図面等から推定して算出した推定値にすぎない
ものである(弁論の全趣旨)。そして,被告は,悪臭防止法4条2
項2号に基づく規制基準を超えているおそれがある旨記載された広
島市の上記書面を受け取ると,広島市指摘の上記規制基準値につい
て異論はあったものの,誠実かつ速やかに対応すべく,中濃度脱臭
処理設備及び高濃度脱臭処理設備の煙突を4.5ないし4メートル
延長する工事を実施し(これにより排出口の実高さが変更され,悪
臭防止法施行規則6条の2に定める方法により算出する臭気指数に
変化をもたらした。),その結果,悪臭防止法4条2項2号に基づ
く規制基準はいずれも50前後となったことが認められる(甲75,
弁論の全趣旨)。
このように,そもそも施設の排出口での規制基準値は,算出方法
の基礎となる数値によって変更しうる相対的な数値にすぎないので
あり,原告らの臭気による被害の実態を推認するには,上記した敷
地境界線又は原告ら方での測定結果が重要であるといえるところ,
これについては,上記したとおりである。
(エ)以上,(ア)ないし(ウ)で説示したところ,とりわけ,ζ集会所や
ι神社,λ寺等と本件各施設設置場所との距離関係,これらの施設周
辺の地理状況,本件各施設の廃水処理設備・臭気設備の状況,これら
の設備における廃水処理対策・臭気対策の内容,上記鑑定の結果等を
総合すると,本件各施設設置場所は,法4条3号の規定する「その他
都道府県知事が公衆衛生上害を生ずるおそれがある場所として指定す
る場所」に該当しないというべきである。
ウ以上のとおり,本件各施設設置場所は,飲料水が汚染されるおそれの
ある場所(法4条2号),その他都道府県知事が公衆衛生上害を生ずる
おそれのある場所として指定する場所(法4条3号)のいずれにも該当
しない。
(2)構造設備要件(法4条,化製場条例3条1項1号ホ,2項3号)につい

ア法4条は,化製場等の設置許可の要件として,構造設備については,県
条例で公衆衛生上必要な基準を定めることとされている。
本件の場合,この県条例にあたるものは,化製場条例であり,上記公衆
衛生上必要な基準は,同条例3条に規定されている。
イそして,上記(2)で述べた本件各施設の廃水処理設備及び脱臭設備の構
造・能力,臭気及び水質に係る鑑定結果等に加え,証拠(乙6,21,4
0)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件化製場の構造設備は,化製場条
例3条の基準に適合したものであったことが認められる。
ウ原告らは,P27作成の鑑定意見書(甲45)及び鑑定意見補足書(甲
49)(以下,一括して「P27意見書」という。)を根拠として,本件
各施設に採用された廃水処理システムは破綻しており,同施設の設備の環
境対策は到底万全とはいえず,同施設は,化製場条例3条2項3号に規定
する「汚水の浄化装置を有すること」という基準に適合したものとはいえ
ない旨主張するので,検討する。
本件各施設は,と畜場等から搬出された畜産副産物について,加熱処理
等による水分の除去,液体部(油脂)と固体部(タンパク質等)の分離を
行い,当該分離物から肥料・飼料等の原料を製造する施設であり,このよ
うに,本件各施設においては,畜産副産物に係る処理が行われることから,
その製造工程において発生する廃水は,必然的にBODが高く,窒素及び
リン等を含んでいる(BODとは,生物化学酸素要求量をいう。代表的な
有機汚濁指標の一つで,一定の条件の下で微生物が消費した酸素の量から
求められ,その値が大きいほど,水の有機汚濁が進んでいることを示す。
水質汚濁防止法による公共用水域への排出基準は,160mg/L(日間
平均120mg/L)を許容限度としている。窒素は,リン,カリウムと
並ぶ植物の三大栄養素の一つであり,湖沼,河川又は海域において,リン
とともに富栄養化の原因物質になる。水中においては,4種類の窒素化合
物(有機体窒素(タンパク質・アミノ酸を構成する窒素),アンモニア性
窒素,亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素)の形で存在し,これらの総量は,全
窒素又は総窒素(T-N)と呼ばれる。水質汚濁防止法による公共用水域
(閉鎖性水域に限る。)への排出基準は,120mg/L(日間平均60
mg/L)を許容限度としている。また,リンは,窒素,カリウムと並ぶ
植物の三大栄養素の一つであり,湖沼,河川又は海域において,窒素とと
もに富栄養化の原因物質になる。水中においては,イオン化により溶存し,
又は,懸濁成分に付着・吸着する等の様々な形で存在し,これらの総量は,
全リン又は総リン(T-P)と呼ばれる。水質汚濁防止法による公共用水
域(閉鎖性水域に限る。)への排出基準は,16mg/L(日間平均8m
g/L)を許容限度としている。)(乙6,10,26)。
本件各施設においては,これら窒素等を多く含むという同施設の廃水の
性状を考慮し,人為的な制御,管理の下,これらの汚濁物質に係る微生物
の分解・吸収作用を活用して廃水中の上記汚濁物質を水から分離し,上記
BODや窒素等を低下,除去するために,生物学的硝化脱窒素法の一つで
ある循環式硝化脱窒素法が採用されている(生物学的硝化脱窒素法とは,
自然界に広く分布する微生物(硝化細菌及び脱窒細菌)の活動を利用して
廃水中の窒素を除去する技術である。その工程は,硝化細菌によりアンモ
ニア性窒素を硝酸性窒素等に酸化する硝化工程と,同工程を経た廃水を嫌
気性条件下に置き,当該廃水中の硝酸性窒素等を脱窒細菌により窒素ガス
として除去する脱窒素工程からなる。後記循環式硝化脱窒素法や循環脱窒
活性汚泥法等がある。)(乙6,10,26)。そして,本件各施設にお
いては,循環式硝化脱窒素法の核となる硝化(上記のとおり,廃水中のア
ンモニア性窒素を硝酸性窒素等に酸化することをいう。)のプロセスにつ
いて,生物膜法の一つである回転円板法が採用されている(生物膜法とは,
円板等の表面に固着した微生物の増殖活動を利用して廃水の浄化を図る
方法であり,その構造に基づき,上記回転円板法等がある。これは,回転
式の円板を低速回転させ,当該円板の表面に固着した微生物(生物膜)を
汚濁物質と酸素に交互に接触させることで廃水の浄化を図る方法であ
る。)(乙6,10,26)。これは,P27意見書が有効と指摘する活
性汚泥法(水槽(ばっき槽)内に浮遊する活性汚泥(多数の微生物や浮遊
物質からなる汚泥)を処理プロセス内で循環させ,活性汚泥中の微生物の
活動を利用して廃水の浄化を図る方法)と対比すると,水槽内の汚泥濃度
の管理及び汚泥の返送が不要である等の特徴を有する。
また,本件各施設においては,処理後の廃水を再利用するため,上記循
環式硝化脱窒素法を用いた生物学的処理に,4段階のろ過又は吸着を内容
とする物理化学的処理(沈殿,ろ過,活性炭吸着,膜分離等の方法により,
廃水中の汚濁物質を水から分離する処理)を組み合わせた処理プロセスを
用いて廃水処理を行うこととされている(乙6,10,26)。そして,
本件各施設で用いられている循環式硝化脱窒素法が,上記活性汚泥法のみ
ならず,回転円板法を含む生物膜法によっても実現可能なプロセスである
ことは,一般に認識されている(乙27)。また,回転円板法と活性汚泥
法とは,廃水処理プロセス中における微生物の存在態様を異にするという
根本的な差異があるため(乙26),両者の優劣の評価の視点によって相
対的にならざるを得ないが,回転円板法は,一般に,窒素除去率が高いこ
と等が知られている(乙28)。
これらのことからすると,本件各施設の廃水処理プロセスは,一般的な
科学的知見に照らしても,その実現可能性に問題を見出し難く,また,そ
の選択についても,処理の対象となる廃水の上記性状に照らして,誤りを
見出せない。
原告らは,本件各施設の廃水処理施設の処理プロセスでは,想定どおり
に,窒素を除去することはできないと主張し,P27意見書にも,①第一
脱窒槽では,脱窒素反応が起きず,窒素除去が行われない,②回転円板型
硝化槽では,硝化反応が起きず,窒素除去が行われない,③生物ろ過槽で
は,急速ろ過であることから,溶解性である窒素を除去できない,④精密
ろ過膜(MF)ユニットでは,溶解性である窒素を除去できない,⑤活性
炭吸着塔では,アンモニア,硝酸又は亜硝酸は吸着されないから,窒素を
除去できない,⑥逆浸透膜(RO)ユニットでは,アンモニアを除去でき
ないとの記載部分がある。
しかしながら,上記①については,本件各施設の第一脱窒槽の容量は,
MLSS(水槽内に浮遊又は懸濁している粒子状の不溶解性物質であり,
生物処理法において廃水の浄化に関与する微生物量の指標とされている
(単位:mg/L))の濃度,脱窒素速度定数(脱窒反応の進行速度は脱
細菌の濃度に比例するところ,その比例定数を脱窒素速度定数という。)
の値及び窒素の還元量(除去計画量)から機械的に算出される,当該計画
量を除去するために必要な容量の基準値(乙29)を満たしている。上記
②については,本件各施設の回転円板に係るBOD面積負荷の設計値(乙
10)は,他業種の廃水及び都市下水に関し提示されている一般的な基準
値等(乙28)と比較しても,適正な範囲内の値である。上記③ないし⑥
の点については,いずれも,科学的な根拠が十分とはいえず,これを認め
るに足りる的確な証拠も見出せない。その他,P27意見書は,総じて,
検討過程に,事実の誤認や推論の飛躍がみられ(例えば,回転円板型硝化
槽の設計条件を検討するにあたり,その前提となる流入汚水の性状(N-
Hexの数値等)が誤っていることなど),実証性,具体性に乏しく,全
体としてその信用性に疑問を拭いきれず,同意見書をもって,原告ら主張
のように,本件各施設に採用された廃水処理システムが破綻しており,化
製場条例3条2項3号に規定する「汚水の浄化装置を有すること」という
基準に適合したものとはいえないとはいい難い。
そうすると,P27意見書をもってしても,本件化製場の構造設備が,
化製場条例3条2項3号の「汚水の浄化装置を有すること」という基準に
適合したものであったとの上記認定を覆すことはできず,他に本件化製場
の構造設備が化製場条例3条の基準に適合したものであるとの上記認定
を覆すに足りる証拠はない。
したがって,本件各施設は,法4条の規定する「その構造設備が都道府
県の条例で定める公衆衛生必要な基準に適合しない」場合には該当しな
い。
(3)裁量権逸脱の有無
原告らは,本件各施設の設置に関して,本件各施設設置場所の周辺に居
住する住民のみならず,γ川及びδ川流域の住民,河川下流に位置する廿
日市の市長等の反対があったから,旧α町長は,住民自治の原則にかんが
み,住民の意向を最大限に尊重して,本件各施設の設置を不許可とすべき
であったにもかかわらず,本件各処分をしたのは裁量権の逸脱であると主
張する。
確かに,一般的に,地域社会との調和という観点から,周辺住民等の同
意を得た上で化製場等を設置することが望ましいのは原告らの述べるとお
りであるが,しかし,法は,化製場等の設置に関して,周辺住民等の同意
をその設置要件として規定していないし,化製場等の設置許可に係る手続
への周辺住民等の関与を認めた規定もない。このように,法は,化製場等
の設置許可の判断に当たり,化製場等の設置許可基準ないし考慮要素とし
て,周辺住民等の同意の有無を想定していないから,旧α町長において,
周辺住民等の同意を得ないまま化製場等の設置許可をしたとしても,その
ことが直ちに,裁量権の逸脱になるということはできないというべきであ
る。したがって,この点に関する原告らの主張は,法律上の根拠を欠くも
のであって採用することができない。
(4)まとめ
以上説示したところによれば,本件各処分は,法4条が規定する化製場
等の設置不許可要件(場所要件及び構造設備要件)に該当しないし,本件
各処分に裁量権の逸脱を認めるような事情も見出せない。
したがって,本件各処分は,いずれも適法なものであったと認められる。
4争点(3)(本件各処分は無効であるか)について
(1)原告らは,化製場等の設置許可に係る事務を市町村に委ねることを規定
した本件条例は法に違反し無効であるから,旧α町長がした本件各処分も
その根拠を欠き,無効であると主張する。
しかしながら,法は,2条において,「この法律で「化製場」とは,獣
畜の肉,皮,骨,臓器等を原料として皮革,油脂,にかわ,肥料,飼料そ
の他の物を製造するために設けられた施設で,化製場として都道府県知事
(保健所を設置する市又は特別区にあっては,市長又は区長。以下同じ。)
の許可を受けたものをいう。」と規定し,市長又は区長が,化製場等の設
置許可に係る事務を担い設置許可権限を行使する場合があることを認めて
いる。このような法の規定からすれば,法は,都道府県知事以外の者が化
製場等の設置許可に係る事務を担い設置許可権限を行使することを一切禁
止するものではないというべきであるから,本件条例が化製場等の設置許
可に係る事務を旧α町長に委ねているとしても,そのことから直ちに,法
に違反するとはいえない。さらに,本件条例は,地方自治法252条の1
7の2第1項の規定に基づき,化製場等の設置許可に係る事務を旧α町長
に委ねているところ,同項が,都道府県知事の権限に属する事務の一部を
市町村に対して配分することを認めたのは,住民に身近な行政は,できる
限りより住民に身近な地方公共団体である市町村が担任することができる
ようにするためであって,このような地方自治法の理念にかんがみれば,
都道府県知事の権限に属する化製場等の設置許可に係る事務を市町村に委
ねている本件条例が著しく不合理であるともいえない。
これらのことからすれば,本件条例は無効であるとは認められないから,
この点に関する原告らの主張は採用することができない。
(2)原告らは,旧α町(長)は,本件各処分をするに当たり,具体的な申請
内容の当否について,主体的・自律的な調査,判断をすることなく,違法
な本件各処分をしたのだから,本件各処分は無効であると主張するが,本
件各処分が適法なものであることは上記3で説示したとおりであるし,上
記主張事実を認めるに足りる十分な証拠もないから,この点に関する原告
らの主張は採用できない。
(3)そして他に,本件各処分が無効であることを基礎づける事実を認めるに
足りる証拠はない。
5結論
以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却す
ることとして,主文のとおり判決する。
広島地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官植屋伸一
裁判官中嶋邦人
裁判官西田昌吾は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官植屋伸一

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