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主文
原判決中,控訴人組合に関する部分を次のとおり変更する。
被控訴人は,控訴人組合に対し,11万円及びこれに対する平成2
7年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
控訴人組合のその余の請求を棄却する。
2控訴人Aの本件控訴を棄却する。
3訴訟費用は,控訴人組合と被控訴人との間では,第1,2審を通じて,
これを100分し,その99を控訴人組合の負担とし,その余を被控訴
人の負担とし,控訴人Aと被控訴人との間では,控訴費用を控訴人Aの
負担とする。

事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人組合に対し,1100万円及びこれに対する平成27年
6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被控訴人は,控訴人Aに対し,110万円及びこれに対する平成27年6月
20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
5仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,①控訴人組合が,被控訴人の公務員である大阪府警察の警察官が,
大阪地方裁判所裁判官に控訴人組合の組合事務所を捜索すべき場所とする捜索
差押許可状を請求したこと並びに捜索差押えの執行の際に控訴人組合の組合員
(以下「控訴人組合員」という。)の容ぼうを写真撮影したり,控訴人組合の
名誉・信用を毀損する発言をしたことが違法な公権力の行使に当たり,これら
によって精神的損害を受けたと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1
項に基づき,損害金1000万円及び弁護士費用100万円の合計額1100
万円並びにこれらに対する不法行為の日である平成27年6月5日から支払済
みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,②控訴人Aが,大阪府警察の
警察官が,捜索差押えの執行の際に控訴人Aの容ぼうを写真撮影したこと及び
控訴人Aの請願を受理しなかったことが違法な公権力の行使に当たり,これに
より精神的損害を受けたと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に
基づき,損害金100万円及び弁護士費用10万円の合計額110万円並びに
これらに対する最終の不法行為の日である平成27年6月20日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したので,控訴人らが本件各控訴を
提起した。
2前提事実及び争点(争点に関する当事者の主張を含む。)は,原判決の「事
実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1及び2に記載のとおりであるから,
これを引用する(当審における当事者の主張は,適宜,原審における当事者の
主張に加える。)。ただし,原判決を次のとおり訂正する。
原判決3頁20行目の「(」から21行目の「台」までを「数台(このう
ち,JR大阪駅近辺から発着する大型バスが後記本件バスである。)」と改
め,4頁1行目の「0」の次に「,以下「本件バス」という。」を,6行目
の「との」の次に「道路運送法4条1項違反(無許可経営)の」をそれぞれ
加え,10行目の「発布」を「発付」と改める。
原判決5頁1行目の「大阪府西警察署」を「本件被疑事実に係る道路運送
法違反被疑事件の捜査本部が置かれていた大阪府西警察署」と改め,25行
目から6頁18行目までを次のとおり改める。
「強制処分である捜索差押えが憲法の保障する住居等の不可侵の権利を侵
害するものであることからすれば,捜索差押えの要件や必要を欠くことが
後に明らかになった場合には,捜索差押許可状の違法性が推認されるとい
うべきである。
仮に,捜査を尽くした結果,事後的に当該捜査が要件を欠き,必要性の
ないものであったことが明らかになったとしても,直ちに当該捜査が違法
となるものではなく,捜索差押許可状の請求時において,捜査機関が現に
収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資
料を総合勘案して合理的な判断過程により請求の要件があるといえるもの
であれば,国家賠償法1条1項の違法はないというべきであるとしても,
本件捜索差押許可状の請求は,その要件を全て欠くものであるところ,大
阪府警察の警察官は,これらの要件がないことを知りながら,又は容易に
知り得たにもかかわらず,本件捜索差押許可状を請求したものであるから,
違法である。
ア具体的な犯罪の嫌疑の不存在
本件捜索差押許可状に係る道路運送法違反被疑事件(以下「本件被疑
事件」という。)は,道路運送法4条1項違反で立件されたものである
が,①同法4条1項にいう「一般旅客自動車運送事業」に当たるという
ためには,不特定の人の運送要求(他人の需要)に応ずる運送事業でな
ければならず,自家需要に供するものと判断される可能性のないことを
要するところ,本件バスによる運送は,Bがチラシやメールで9・28
全国集会への参加者を募集し,集会に参加する意思を表明した特定の者
に対し,Bが集会場所への移動手段を提供したものであり,集会主催者
が当該集会に参加する特定の者の需要に応じて送迎を行った自家需要
にほかならず,他人の需要に応じるために行われたものではない,②同
法4条1項にいう一般旅客自動車運送事業の「経営」に当たるというた
めには,常時他人の需要に応じて反復継続し,又は反復継続する目的を
もって運送行為をなすことを要するところ,本件バスによる運送は,平
成26年9月28日に開催された特定の集会に市民らが参加するため
に1回だけ行われたものであって,本件バスは集会開催時のみに臨時的
に利用されているだけであり(なお,9・28全国集会の前に開催され
た平成25年12月15日と平成26年4月20日の各全国集会でも,
バスによる運送を行っているが,本件バスとは異なる控訴人組合が所有
・使用するマイクロバスを用いたものである上,1年の間にわずか2回
だけ開催された特定の日の全国集会のためのものである。),また,本
件バスに乗車した集会参加者らが負担した3500円は,バス運行の対
価ではないし,現地までの高速道路利用料金や燃料費,集会のための会
場費などの経費をまかなうためのカンパにすぎないから,本件バスによ
る運送は,常時他人の需要に応じて反復継続し,又は反復継続する目的
をもって運送行為をなすものではない。そして,これらのことは,大阪
府警察の警察官においても,本件捜索差押許可状を請求する前の内偵段
階で認識していたか,容易に認識できたものである。」
原判決7頁10行目末尾に「大阪府警察の警察官は,本件捜索差押許可状
の請求時には,これらのことを知っていた。」を加え,19行目の「可能で
あった」を「可能であり,控訴人組合はこれに応じていた」と改める。
原判決7頁21行目と22行目の間に次のとおり加える。
「エ本件捜索差押えは市民の平和運動を行う自由を侵害する違法なもので
あること
労働組合を含む市民が平和運動をすることは,日本国憲法前文,13
条,21条などにより保障された正当な権利である。
大阪府警察の警察官らは,9・28全国集会が開催される以前から,
本件ビラをはじめ同集会に関する情報を入手し,前年の平成25年12
月15日や平成26年4月20日に開催された集会においても京都,大
阪,神戸からバスが運行されて3000円が徴収されていたことを把握
し,道路運送法により禁止されている自家用自動車を用いた有償旅客運
送を行っているとの容疑があると判断し,9・28全国集会においても,
捜査員を配置し,集会参加者が本件バスに乗る様子や集会参加者から金
員を集めている様子などを現認したにもかかわらず,本件バスの運転手
に対して注意をすることをあえてせず,その上で,被疑者6名のうち3
名を逮捕し,本件捜索差押えを含む全国十数か所への捜索差押えを敢行
した。
このような警察官の行為は,目の前で行われている違法行為をあえて
見過ごし,後日になって強制捜査に利用することを狙ったものと解さざ
るを得ない。その強制捜査の目的は,憲法で保障された市民による平和
市民活動の自由を抑圧するものであるから,本件捜索差押許可状の請求
は,この意味でも違法である。」
原判決7頁23行目と24行目の間に次のとおり加える。
「本件被疑事件が,道路運送法4条1項違反で立件されたものであること,
同法4条1項にいう「一般旅客自動車運送事業」に当たるというためには,
不特定の人の運送要求(他人の需要)に応ずる運送事業でなければならず,
自家需要に供するものと判断される可能性のないことを要すること,同法
4条1項にいう一般旅客自動車運送事業の「経営」に当たるというために
は,常時他人の需要に応じて反復継続し,又は反復継続する目的をもって
運送行為をなすことを要することは認める。」
原判決8頁1行目の「過去にも」を「過去2回」と改め,5行目末尾に「過
去2回に用いられていたバスが本件バスと異なることは,反復継続性の判断
に影響を及ぼすものではない。」を加える。
原判決8頁20行目と21行目の間に次のとおり加える。
「エ本件捜索差押えは市民の平和運動を行う自由を侵害するものではない
こと
警察官による当日の現認のみでは,未だ道路運送法違反の疑いがある
のみで,明確に違反と断定できる状態ではなかったのであり,当日現認
した内容と,その後の捜査結果とを総合的に判断した上で,本件被疑事
実を特定するに至ったのであるから,警察官が違法行為をあえて見過ご
して強制捜査に利用した事実はない。」
原判決8頁23行目から9頁8行目までを次のとおり改める。
「ア承諾なき写真撮影によるプライバシー侵害
肖像権を侵害する無令状・無承諾の写真撮影は,最高裁判所大法廷
昭和44年12月24日判決・刑集23巻12号1625頁によれば,
「現に犯罪が行なわれもしくは行われたのち間がないと認められる場
合であって,しかも証拠保全の必要性および緊急性があり,かつその
撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行なわ
れるとき」との厳格な要件の下でのみ許容されるところ,本件捜索差
押時に撮影された写真のうち控訴人組合員の容ぼうが写り込んでいる
ものは,上記の厳格な要件を満たしておらず,違法である。
また,仮に,捜索差押許可状に基づく捜索差押えに際しての写真撮
影が,捜索差押えの執行の際に,捜査機関が,証拠物の証拠価値を保
存するために,証拠物をその発見された場所で,発見された状態にお
いて写真撮影することや,捜索差押手続の適法性を担保するためその
執行状況を写真撮影することは,これらの目的を達成するという限度
において,上記必要な処分として許されるものと解したとしても,本
件捜索差押時に撮影された写真のうち控訴人組合員の容ぼうが写り込
んでいるものは,以下のとおり,上記限度を超えるものである。
大阪府警察の警察官は,撮影を拒む態度を示していた控訴人組合員
や控訴人組合のプライバシーに配慮せず,故意に,本件捜索差押えに
着手する前から,カメラをC会館の前にいる控訴人組合員らに向けて
撮影を行い,捜索の最中にも,同会館内にいた控訴人Aを含む控訴人
組合員に向けて撮影を行い,それによって,控訴人A及び控訴人組合
のプライバシーを侵害した。また,上記撮影による写真の中には,捜
索差押手続の適法性を担保することが目的であれば不必要な,殊更に
控訴人組合員を被写体として撮影されたものも存在している。例えば,
甲第4号証の写真17は,控訴人組合員の背後は全く密集しておらず,
後方から撮影することが極めて容易であるにもかかわらず,あえて警
察官の背後に回って控訴人組合員を正面から撮影したものであり,意
図的に控訴人組合員を中心に撮影したものであることが明らかであ
る。同写真28は,捜索差押手続の適法性を担保するためであれば右
側3名を撮影すれば足りるにもかかわらず,あえて左側の控訴人組合
員がフレームに収まるように意図して撮影したものである。同写真4
8は,警察官が捜索差押えをする様子は全く写されておらず,あえて
警察官の背後に回って控訴人組合員を正面から撮影したものであっ
て,意図的に控訴人組合員を中心に撮影したものであり,また,同写
真には控訴人組合員が密集している様子が撮影されているので,むし
ろその密集状況を利用して多数の控訴人組合員の容ぼうを撮影しよう
としたことがうかがえる。同写真52は,室外(外階段)での写真で
あり,捜索差押えの対象物が存在しない場所で撮影されたものである
から,そもそも適法性担保のために撮影されたものとはいえないし,
この写真でも控訴人組合員の容ぼうが真正面から撮影されている。
以上のとおり,大阪府警察の警察官による写真撮影は,本件捜索差
押えの執行の状況や押収物の形状,状態等を明らかにするという限度
を超えたものであり,プライバシーを侵害しないよう配慮する義務の
履行を怠ったものであるから,違法である。」
原判決9頁16行目と17行目の間に次のとおり加える。
「憲法が勤労者の団結権を保障している趣旨に照らすと,労働組合に対す
る所属組合員の評価は特に保護されなければならない法益であるから,控
訴人組合の名誉・信用を毀損する発言が控訴人組合員に聞こえるものであ
った以上,伝播性を肯定すべきである上,D発言は,控訴人組合事務所の
あるC会館の玄関出入口前でされたものであり,この玄関は公道に接して
いるから,騒動を聞いて駆けつけた近隣住民などに聞かれ得る状態であり,
控訴人組合事務所が置かれているC会館には,控訴人組合とは別個の法人
格を有する労働組合や私企業が入居しており,その組合員や従業員が玄関
出入口を通行する際にD発言を聞くことができる状態でもあったから,D
発言には伝播性があったといえる。また,D発言を聞いた控訴人組合員も
控訴人組合を脱退する可能性があり,実際にも,控訴人組合員の中には,
その後控訴人組合から脱退した者もいるから,D発言は,当該組合員を介
して社会に伝播する可能性があった。」
原判決9頁18行目と19行目の間に次のとおり加える。
「控訴人らの引用する最高裁判決は,捜索差押えに付随する写真撮影につ
いて判断したものではなく,警察官が犯罪捜査の必要上写真撮影する際の
判断基準を示したものであるから,上記最高裁判決を引用した控訴人らの
主張は失当である。」
原判決10頁6行目と7行目の間に次のとおり加える。
「甲第4号証の写真17は控訴人組合事務所2階の捜索差押開始状況を,
同写真28は同事務所2階のカウンターキャビネットの捜索状況を,同写
真48は同事務所2階の捜索差押終了時の状況を,同写真52は同事務所
3階の捜索を開始する旨を立会人に告げている状況をそれぞれ撮影したも
のであって,いずれの写真も立会人がいるところで適正な捜索を実施して
いることを担保する目的で撮影されたものであり,その中の一部に控訴人
組合員の容ぼうが写り込んでいても,令状の執行状況等を明らかにする限
度を超えているとはいえず,違法な写真撮影とはいえない。また,立会人
以外の控訴人組合員もビデオカメラを撮影して,警察官の手続をけん制す
る等しており,大勢の控訴人組合員と警察官が密集する中で,各状況を適
切なタイミングで撮影する必要があるから,上記写真の程度において,控
訴人組合員が写り込むことはやむを得ないものであって,意図的に控訴人
組合員を中心に撮影したものではない。」
原判決11頁2行目末尾に「控訴人組合と控訴人組合員とは同じ当事者で
あり,控訴人組合と控訴人組合員とを区別して名誉・信用の毀損の有無を論
ずることはできない。」を加える。
原判決11頁13行目と14行目の間に次のとおり加える。
「請願法は,憲法の定めにかかわらず,「平穏であること」を官公署への
請願をするに当たっての要件としていない。また,請願権が基本的人権の
一つとして憲法で保障され,現在の代議制の下で,その重要な存在意義が
認められることからすると,「平穏であること」という要件を付すること
により,正当な請願であっても「平穏」でないとして拒否されるおそれも
ある。これらのことからすれば,請願権の行使の要件として請願法の条文
にない「平穏であること」という要件を付するべきではない。
仮に,「平穏であること」が請願権を行使するための要件であるとして
も,その場合の「平穏」の意味は,請願権行使の保障の趣旨からすれば,
より厳格に解さなければならない。すなわち,請願権が上記のとおり基本
的人権の一つとして憲法上明示されていること及び請願権の現代における
重要な意義に鑑みれば,請願権の行使を制限することになる「平穏」の要
件は,権利行使の制限が必要最小限のものにとどめられるべきであり,暴
行や脅迫といった違法行為を伴う場合を除く趣旨をいうものと解すべきで
ある。そして,控訴人Aの請願は,当初から平穏なものであったし,控訴
人組合員による抗議行動からも離れて行っているのであるから,平穏な請
願である。」
原判決11頁22行目の「具備しているか否かの確認を求めたところ」を
「具備していることを確認できれば上記「請願書」を受理すると告げたとこ
ろ」と改め,12頁1行目末尾に「請願法に明示されていなくとも,憲法の
規定から請願には平穏が求められるところ,控訴人Aの請願は控訴人組合員
による抗議活動と一体のものであり,平穏にされたものではなかった。」を
加える。
第3当裁判所の判断
1認定事実
認定事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1
に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり訂
正する。
原判決13頁21行目及び26行目の「際して,」の次にいずれも「上記
集会の参加者のために,」を加える。
原判決16頁9行目と10行目の間に次のとおり加え,15行目の「」」
の次に「〔本件バス〕」を加え,17行目から18行目にかけての「上記大
型バス」を「本件バス」と改め,22行目の「運転手が」の次に「本件バス
を」を加え,24行目の「発布」を「発付」と,25行目の「前記」から2
6行目の「)」まで及び17頁2行目の「上記大型バス」をいずれも「本件
バス」とそれぞれ改める。
「第96条
次の各号のいずれかに該当するときは,その違反行為をした者は,3年
以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
1号第4条第1項の規定に違反して一般旅客自動車運送事業を経営し
たとき。
(2号,3号は省略。)」
原判決17頁19行目の「乙3,16」を「乙16」と改める。
原判決19頁5行目及び6行目の「発布」をいずれも「発付」と改め,5
行目の「された」の次に「(このうち,控訴人組合の事務所を捜索すべき場
所とする捜索差押許可状が本件捜索差押許可状である。)」を加え,15行
目及び26行目の「捜索差押許可状」をいずれも「本件捜索差押許可状」と
改める。
2争点①本件捜索差押許可状の請求に係る違法性の有無
捜索差押許可状を請求するための要件
ア刑事訴訟法189条2項は,特定の犯罪の嫌疑があると認められること
が捜査の要件である旨を規定しており,嫌疑の有無を判断する権限は司法
警察職員にあるが,その判断は恣意的なものであってはならず,特定の犯
罪が行われたことを疑わしめるに足りる客観的な事情の存在が必要と解す
べきである。
イ刑事訴訟法218条1項は,捜索差押えの要件として,犯罪の捜査をす
るについて必要があるとき,すなわち,捜索差押えを行わなければ捜査の
目的を達成することができないときであることが必要である旨定めてい
る。
任意捜査によって容易に捜査の目的を達成することができる場合には,
捜索差押えをすべきではないが,任意捜査を前置することは必須ではなく,
被疑事実との関連性の程度と対象者が受ける不利益の程度を考慮して必要
性を判断すれば足りるものと解すべきである。
ウ刑事訴訟法222条1項,102条2項は,被疑者以外の者の身体,物
又は住居その他の場所の捜索の要件として,押収すべきものの存在を認め
るに足りる状況のある場合に限ると定めている。
エ上記アからウまでは,強制捜査である捜索差押えの要件として定められ
たものであるところ,捜索差押許可状の請求及び発付の要件でもあるとい
うことができ,被疑者以外の第三者の身体,物又は住居その他の場所に対
する捜索差押許可状の請求は,①具体的な犯罪の嫌疑があること,②当該
被疑事実に関する事実の証拠となり得る物が捜索すべき場所に存在する蓋
然性があること,③その物を強制処分である捜索差押えにより押収する必
要性があることが要件となる。
違法性の判断基準
捜索差押許可状の請求は,公権力の行使に当たるが,捜査は,公判の準備
を目的として証拠の収集及び保全をする行為であり,捜査を尽くした結果と
して,事後的に当該捜査が要件を欠き,必要性のないものであったことが明
らかになることがあり得るとしても,直ちに当該捜査が違法となるものでは
なく,捜索差押許可状の請求時において,捜査機関が現に収集した証拠資料
及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合
理的な判断過程により請求の要件があるといえるものであれば,国家賠償法
1条1項の違法はないというべきである。
これに対し,控訴人らは,強制処分である捜索差押えが憲法の保障する住
居等の不可侵の権利を侵害するものであることからすれば,捜索差押えの要
件や必要を欠くことが後に明らかになった場合には,捜索差押許可状の違法
性が推認されるというべきであると主張する。
しかし,犯罪の捜査が,秘密を保持し,しかも迅速に行われることを必要
とするものであることからすると,捜査機関が捜索差押えのために令状の発
付を求めたり,発付された令状を執行するに当たっては,その性質上,刑罰
権の存否を終局的に確定することを目的とする公判手続の場合等とは異な
り,捜索差押許可状の請求時において,捜査機関が現に収集した証拠資料及
び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理
的な判断過程により請求の要件があるといえるものであれば足りるというべ
きであるから,控訴人らの上記主張は採用することができない。
具体的犯罪の嫌疑について
本件捜索差押許可状は,道路運送法4条1項違反の被疑事実に関して請求
されたものであるところ,同法4条1項にいう一般旅客自動車運送事業の「経
営」に当たるというためには,常時他人の需要に応じて反復継続し,又は反
復継続する目的をもって運送行為をなすことを要し,一時的運送にすぎない
場合は含まれない。
これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件捜索差押許可状
の請求の時点において,本件捜索差押許可状の被疑事実において被疑者とさ
れている者が事務局責任者を務めるBが,平成26年9月28日に京丹後市
で開催する9・28全国集会について,ビラやホームページ等により,同全
国集会への参加者を募るとともに,Bが集会参加者のために開催地への往復
の手段としてJR京都駅,JR大阪駅,JR神戸駅の各近辺から発着するバ
ス数台を準備し,バスを往復利用した場合には3500円を徴収することな
どを案内し,平成26年9月28日,本件バスを集会参加者のためにJR大
阪駅と開催地との往復の手段として運行し,本件バスを往復で利用した集会
参加者から3500円を徴収したこと(前記認定事実ア,イ,Bは,
9・28全国集会に先立って,平成25年12月15日及び平成26年4月
20日にも,9・28全国集会と同様の米軍基地建設反対に関する集会を開
催しているところ,平成25年12月15日に開催された米軍基地建設反対
に関する集会に際しては,上記集会の参加者のために,京都発バスとして京
阪バス2台が運行されたのみならず,大阪発バスとして控訴人組合が所有・
使用する自家用マイクロバス2台(自動車登録番号「E」及び「F」)が開
催地への往復の交通手段としてBによって運行され,平成26年4月20日
に開催された同様の集会に際しては,上記集会の参加者のために,京阪バス
やレンタカーのバス以外に,大阪発バスとして控訴人組合が所有・使用する
上記自家用マイクロバス2台及び自家用大型バス1台が開催地への往復の交
通手段としてBによって運行され,Bが,各運行において,いずれも乗車料
金3000円で乗客を募集していたこと(前記認定事実本件バス
及び上記控訴人組合が所有・使用する自家用マイクロバス(自動車登録番号
「E」)は,法人及び代表者個人のいずれにおいても,道路運送法4条1項
所定の一般旅客自動車運送事業の許可を得ていないこと(前記ウ
が大阪府警察の捜査によって明らかになっていたにすぎなかったことが
明らかである。
上記事情によれば,Bは,Bが開催する集会の参加者の需要に応じて運送
行為を行っているところ,Bが年にわずか1,2回開催する集会の参加者の
便宜のために本件バスを含む上記道路運送法4条1項所定の一般旅客自動車
運送事業の許可を得ていないバスを運行しているにすぎないのであるから,
Bの本件バスによる運送行為は,一時的運送にすぎず,常時他人の需要に応
じて反復継続し,又は反復継続する目的をもって運送行為をなすものとはい
えないことが明らかである。
そうすると,Bの事務局責任者らに道路運送法4条1項違反の具体的な嫌
疑が存在するとした大阪府警察の警察官の判断は,捜索差押許可状の請求時
において,捜査機関が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行
すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により導き出さ
れたものとはいえないから,本件捜索差押許可状の請求は,その余の点につ
いて検討するまでもなく,違法であり,かつ,上記判断については,解釈が
分かれ得るものでもないから,上記請求をした大阪府警察の警察官には,過
失がある。
3争点②本件捜索差押許可状の執行に係る違法性の有無
写真撮影について
当裁判所も本件捜索差押えにおける写真撮影に違法はないものと判断する
が,その理由は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」
の3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決を次の
とおり訂正する。
ア原判決28頁25行目と26行目の間に次のとおり加える。
「控訴人らは,肖像権を侵害する無令状・無承諾の写真撮影は,最高裁
判所昭和44年12月24日判決・刑集23巻12号1625頁によれ
ば,「現に犯罪が行なわれもしくは行われたのち間がないと認められる
場合であって,しかも証拠保全の必要性および緊急性があり,かつその
撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもって行なわれ
るとき」との厳格な要件の下でのみ許容されるところ,本件捜索差押時
に撮影された写真のうち控訴人組合員の容ぼうが写り込んでいるもの
は,上記の厳格な要件を満たしておらず,違法であると主張する。
しかし,控訴人らの引用する最高裁判決は,捜索差押えに付随する写
真撮影について判断したものではなく,警察官が犯罪捜査の必要上写真
撮影する際の判断基準を示したものであるから,上記最高裁判決を引用
した控訴人らの主張は失当である。」
イ原判決29頁9行目の「である」の次に「(なお,大阪府警察の警察官
が,本件捜索差押えに着手する前から,カメラをC会館の前にいる控訴人
組合員らに向けて撮影を行ったことを裏付ける証拠はない。)」を加え,
16行目の「写真」から17行目の「かえって,」までを削除し,18行
目の「認定事実」を「前記認定事実」と改め,同行目と19行目の間に次
のとおり加える。
「これに対し,控訴人らは,①甲第4号証の写真17は,控訴人組合員
の背後は全く密集しておらず,後方から撮影することが極めて容易であ
るにもかかわらず,あえて警察官の背後に回って控訴人組合員を正面か
ら撮影したものであり,意図的に控訴人組合員を中心に撮影したもので
あることが明らかである,②同写真28は,捜索差押手続の適法性を担
保するためであれば右側3名を撮影すれば足りるにもかかわらず,あえ
て左側の控訴人組合員がフレームに収まるように意図して撮影したもの
である,③同写真48は,警察官が捜索差押えをする様子は全く写され
ておらず,あえて警察官の背後に回って控訴人組合員を正面から撮影し
たものであって,意図的に控訴人組合員を中心に撮影したものであり,
また,同写真には控訴人組合員が密集している様子が撮影されているの
で,むしろその密集状況を利用して多数の控訴人組合員の容ぼうを撮影
しようとしたことがうかがえる,④同写真52は,室外(外階段)での
写真であり,捜索差押えの対象物が存在しない場所で撮影されたもので
あるから,そもそも適法性担保のために撮影されたものとはいえないし,
この写真でも控訴人組合員の容ぼうが真正面から撮影されていると主張
する。
しかし,証拠(乙7,8)によれば,甲第4号証の写真17は控訴人
組合事務所2階の捜索差押えの開始状況を,同写真28は同事務所2階
の執務室北側に設置されているカウンターキャビネットの捜索状況を,
同写真48は同事務所2階の捜索差押終了時の状況を,同写真52は同
事務所3階扉前において,捜索を開始する旨を立会人に告げている状況
をそれぞれ撮影したものであることが認められ,いずれの写真も立会人
がいるところで適正な捜索を実施していることを担保する目的で撮影さ
れたものであるから,立会人である控訴人組合員の容ぼうが写り込んで
いても,令状の執行状況等を明らかにする限度を超えているとはいえず,
違法な写真撮影とはいえない。また,その中の一部に立会人以外の控訴
人組合員の容ぼうが写り込んでいたとしても,
拠(乙7,8)によれば,立会人以外の控訴人組合員も,捜索差押えの
場又は立会人に接近して,捜索撮影の状況をビデオカメラで撮影するな
どして警察官の手続を監視しようとしていたことによるものであり,意
図的に立会人以外の当該組合員の容ぼうを撮影したものではないと認め
られるので,違法な写真撮影とはいえない。」
D発言について
ア前記認定事実によれば,D警視らは,本件捜索差押許可状の呈示が
終了した午前9時10分頃,捜索のためにC会館内に入ろうとしたとこ
ろ,多数の控訴人組合員が周囲を取り囲んで騒然とした状況になり,その
ような状況下で,Gから警察官が何人入るか等の質問を受けたため,警察
官の人数とそれぞれの担当する場所を告げたこと,Gは「あとこっちの人
数割り振りせなあかんから。5分くらい待っといてえな。ちょっとここで
居ってや。かまへん。あのーもう。」と,控訴人組合員の立会いの分担を
決めるために待ってほしいという趣旨のことを述べたこと,これに対し,
D警視は,「悪いけど5分やで。」と答え,Gの返答を挟み「なんでか言
うたらな,証拠隠滅されたらあかんねんや。」と告げたこと,これに対し,
控訴人組合員が「そんなんするか,コラッ,お前。」と述べると,D警視
は「今までやっとんねん。やっとんねん。やっとんねん。」と発言したこ
と,これに対し,控訴人組合員が「やってる言うたなあコラーッ。」と述
べたところ,D警視は「やってる言うたわい。言うたわい。なんぼでも言
うたるわ。」と述べたことが明らかであるところ,控訴人らは,D警視の
上記「なんでか言うたらな,証拠隠滅されたらあかんねんや。」,「今ま
でやっとんねん。やっとんねん。やっとんねん。」との発言(D発言)が,
故意に,控訴人組合が過去に証拠隠滅を行ったとの事実を公然と摘示し
て,控訴人組合の名誉・信用を毀損するものであると主張する。
D警視の上記「なんでか言うたらな,証拠隠滅されたらあかんねんや。」
との発言は,Gから捜索差押えの執行までに5分間の猶予を求められたの
に対し,5分に限り許容した上で,その理由を説明したものであるから,
一般論として,捜索差押許可状の呈示から捜索差押えの執行までに時間的
間隔が生じた場合には,罪証隠滅のおそれが発生する旨を説明したと受け
取られるものであり,それだけでは,一般人に対し,控訴人組合が犯罪に
関する証拠の隠滅をしたことがあるか,これをするおそれのある団体であ
るとの印象を与えるものではないので,控訴人組合の社会から受ける客観
的評価を低下させるものではない。他方,D警視の上記「今までやっとん
ねん。やっとんねん。やっとんねん。」との発言(以下「本件発言」とい
う。)は,D警視としては,本件捜索差押許可状の呈示から捜索差押えの
執行までに時間的間隔が生じた場合に罪証隠滅のおそれが発生すると考
えられる根拠として,一般論として,過去に罪証隠滅されたことがある旨
を述べたものである可能性はある(乙16,原審証人D)が,控訴人組合
員の「そんなんするか,コラッ,お前。」との発言に応じたものであるこ
とからすると,一連のやり取りを聞いた一般人に,控訴人組合が過去に罪
証隠滅行為を行ったことがあると受け取られるものであり,控訴人組合の
社会から受ける客観的評価を低下させるものである。そして,控訴人組合
は,控訴人組合員が自主的に組織する団体であり,控訴人組合が犯罪に関
する証拠の隠滅を行ったことがあるというのは,控訴人組合員がこれを行
ったことがあることを意味するものであり,本件発言は,控訴人組合が行
った証拠隠滅行為の内容も明らかにしていないのであるから,本件発言に
よって直ちに控訴人組合員による控訴人組合に対する社会的評価が低下
するものとはいえず,本件発言による名誉・信用毀損が成立するには,第
三者への伝播可能性のあることが必要である。
イD発言の当時,C会館の入口前は,大阪府警察の警察官ら約30名に加
えて多数の控訴人組合員がC会館の玄関付近に集まり,騒然とした状況に
あり,D発言は,そのような状況下で,スピーカー等を使用せずにされた
C会館に控訴人組合と
は別個の法人格を有する労働組合や私企業が入居しているとしても,本件
発言に至る一連のやり取りをC会館内にいた第三者や通行人が全て聞く
ことが可能であったと認めることはできないし,本件発言を聞いただけで
一連のやり取りを聞かなければ,本件発言の意味を理解することは困難で
あったと認められる。そして,前記のとおり,控訴人組合が犯罪に関する
証拠の隠滅行為を行ったことがあるというのは,控訴人組合員が証拠隠滅
行為を行ったことがあることを意味するのであるから,控訴人組合員が控
訴人組合を脱退後であっても,本件発言を第三者に伝播させて控訴人組合
の社会的評価を低下させる可能性は少ないと認められる上,そのような場
合にまで控訴人組合の権利を保護し,控訴人組合に対する不法行為を認め
るのは相当ではない。
ウそうすると,D発言は違法ではないというべきである。
4争点③請願の受理に係る違法性の有無
控訴人らは,控訴人Aから請願の受理を求められたH警部が,故意又は過失
により受理を拒否し,控訴人Aの憲法16条で保障された請願権を侵害したと
主張する。
しかし,前記認定事実(認定事実ウからオまで)によれば,控訴人Aから
「請願書」と題する書面の受理を求められたH警部は,当初,騒然とした中で
出された請願は受理できない,「請願書」と題された書面であっても,事件の
捜査に対する抗議を内容とするものであれば受理できない等と述べて,上記「請
願書」と題する書面の受理できないとの姿勢を示していたものの,控訴人Aが,
大阪府警察本部では同様の請願を受け付けてもらっている旨を告げたため,H
警部は,大阪府警察本部に確認する旨述べた上で,午前10時16分頃西警察
署内に戻ったこと,H警部は,西警察署内にて,当直管理責任者らと協議した
結果,請願法2条に定める形式的要件(請願者の氏名や住所の記載の有無)を
確認した後で受理するとの方針を決め,西警察署の玄関へと戻り,上記方針に
基づき,控訴人Aが提出しようとしている書面について,請願の形式的要件の
確認を要求したこと,これに対し,控訴人Aは,スピーカーを使用し,抗議行
動を行っていた者に対して,「入る前に請願をチェックすると言ってます。そ
れやったらできないということで断りました。請願を受け取らないということ
で終わらせましたので,皆さんよろしくお願いします。」等と述べてそれ以上
請願の受理の要請はしないことを表明したことが明らかであり,控訴人Aは,
H警部が最終的に受理・不受理を決定する前に,受理要請を撤回しているので
あるから,H警部が控訴人Aによる請願の受理を拒否したとはいえない。
なお,証拠(甲5の1,乙17,原審証人H)によれば,控訴人Aが,H警
部の前で,折りたたんでいた「請願書」と題する書面を広げたが,広げたのは
ほんの一瞬であり,この際にH警部が請願法2条に定める形式的要件(請願者
の氏名や住所の記載の有無)を確認していなかったと認められるから(なお,
H警部とのやり取りの中で,控訴人Aが「内容も見ずにおかしい言うな。」(甲
6の2の19頁)と,控訴人Aの横でH警部と対峙していた人物が,「そんな
もん,中身見なわからへんやないか。」(甲6の2の7頁),「中身もみてへ
んやん」(甲6の2の17頁)と発言していることからも,H警部が請願法2
条に定める形式的要件(請願者の氏名や住所の記載の有無)を確認していなか
ったことが裏付けられている。),H警部が,控訴人Aが提出しようとしてい
る書面について,請願の形式的要件の確認を要求したことは正当であり,不受
理にしようとしたものとは認められない。
そうすると,その余の点について検討するまでもなく,請願の受理に係る違
法は認められない。
5争点④控訴人らの損害
控訴人組合員が違法な本件捜索差押許可状に係る
捜索差押えに対応せざるを得ないために,控訴人組合の通常の業務を行うこと
ができなかったことが明らかである。そして,本件捜索差押えに要した時間が
約3時間30分であること(前記前提事実イ),本件捜索差押えに対応せざ
るを得なかったために行うことができなかった控訴人組合の通常の業務の具体
的な内容は明らかでないこと,控訴人組合は営利を目的とした法人ではないこ
となどを考慮すると,控訴人組合員が本件捜索差押えに対応せざるを得ないた
めに,控訴人組合の通常の業務を行うことができなかったことによる控訴人組
合の損害は10万円,この損害と相当因果関係のある弁護士費用は1万円と認
めるのが相当である。
6以上によれば,控訴人組合の請求は,11万円及びこれに対する不法行為の
日(本件捜索差押許可状に係る控訴人組合事務所への捜索差押えの日)である
平成27年6月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がない
から,これを棄却すべきであるから,控訴人組合の請求を全部棄却した原判決
は一部相当でなく,控訴人組合の本件控訴は一部理由がある。他方,控訴人A
の請求はいずれも理由がなく棄却すべきであるから,これと同旨の原判決は相
当であって,控訴人Aの本件控訴は理由がない。
よって,原判決中控訴人組合に関する部分を上記の趣旨に変更するとともに,
控訴人Aの本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第4民事部
裁判長裁判官中村也寸志
裁判官大西忠重
裁判官山口浩司

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