弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 被告京都市長が原告に対し平成八年一〇月一五日付けでした公文書一部非公開
決定は、振込先銀行名、口座番号及び印影に関する部分を除き、これを取り消す。
二 被告京都市教育委員会が原告に対し平成八年一〇月一五日付けでした公文書一
部非公開決定を取り消す。
三 原告の被告京都市長に対するその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
一 平成九年(行ウ)第二号事件
 被告京都市長が原告に対し平成八年一〇月一五日付けでした公文書一部非公開決
定を取り消す。
二 同第三号事件
 主文第二項と同旨
第二 事案の概要
一 本件は、原告が京都市公文書の公開に関する条例(平成三年七月一日京都市条
例第一二号。以下「条例」という。)に基づいて、平成六年度における飲食を伴う
接遇に関する支出命令書及び支出決定書の公開を請求したのに対し、そのうちの接
遇の相手方が分かる部分等を非公開とした被告らの決定(以下「本件処分」とい
う。)の取消しを求める抗告訴訟である。
二 争いのない事実等
1(一) 原告は、肩書所在地に事務所を置く権利能力なき社団であり、条例五条
一項に規定する公文書の公開請求権者である。
(二) 被告らは、条例二条一号の公文書の公開の実施機関である。
2 原告は、平成八年八月二一日、条例五条一項に基づいて、被告京都市長(以下
「被告市長」という。)に対して「平成六年度における飲食を伴う接遇に関する支
出命令書」の公開を、被告京都市教育委員会(以下「被告教育委員会」という。)
に対して「平成六年度における飲食を伴う接遇に関する支出決定書」の公開を、そ
れぞれ請求した。
3 これに対し、被告市長は、同年一〇月一五日付けで、右請求にかかる公文書を
「支出命令書」(甲二の一から七九)と特定した上で、振込先銀行名、口座番号、
印影及び別紙公文書目録(一)(以下「目録(一)」という。)1記載の文書の相
手方(関係行政庁職員)の所属の名称を非公開とし、その余を公開する旨の決定を
し、同日付けでその旨を原告に通知した。
4 被告教育委員会は、同年一〇月一五日付けで、右請求にかかる公文書を「経費
支出決定書」(甲四の一から六七)と特定し、別紙公文書目録(二)(以下「目録
(二)」という。)1から28記載の各文書の相手方の氏名及び氏名を識別できる
部分及び相手方の名称を非公開(同目録記載の非公開部分のとおり)とし、その余
を公開する(ただし、請求の対象外の部分[白抜き部分]を除く。)旨の決定を
し、同日付けでその旨を原告に通知した。
5 条例が規定する非公開事由
 条例は、八条で(公開しないことができる公文書)として、「実施機関は、次の
各号の一に該当する情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしな
いことができる」と規定する。
(一) 八条一号(プライバシー情報)
 個人に関する情報で、個人が識別され、又は識別され得るもののうち、公開しな
いことが正当であると認められるもの
(二) 八条二号(法人等事業活動情報)
 法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報で、
公開することにより当該団体又は個人の競争上又は事業活動上の地位その他正当な
利益を明らかに害すると認められるもの
(三) 八条三号(公共の安全、秩序の維持情報)
 公開することにより、人の生命、身体、財産等の保護、行政上の義務に違反する
行為の取締り、犯罪の予防及び捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生じ
るおそれのある情報
(四) 八条四号(国等協力関係情報)
 本市と国、他の地方公共団体又はこれらに準じる団体との間における協議、協
力、依頼等により行う事務に関して作成し、又は取得した情報で、公開することに
より当該国等との協力関係又は信頼関係を損なうと認められるもの
(五) 八条七号(行政運営支障情報)
 本市又は国等が行う許可、認可、試験、争訟、交渉、渉外、入札、人事その他の
事務事業に関する情報で、公開することにより次のいずれかに該当するもの
ア 当該事務事業の目的が著しく損なわれると認められるもの
イ 特定のものに不当に利益又は不利益を与えると認められるもの
ウ 関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれると認められるもの
エ アからウまでに掲げるもののほか、当該事務事業又は同種の事務事業の公正か
つ適切な執行に著しい支障が生じると認められるもの
6 被告市長は、次の理由により公文書を一部非公開とした。
(一) 条例八条二号該当性
 振込先銀行名及び口座番号は、当該債権者が経理等の事業活動を行う上での内部
管理に属する事項の情報であり、公開することにより、債権者の事業活動上の利益
を明らかに損なうと認められ、条例八条二号に該当する。
(二) 条例八条三号該当性
 印影は、公開すると、偽造により当該債権者の財産等の保護に支障が生じるおそ
れがあると認められ、条例八条三号に該当する。
(三) 条例八条四号、七号該当性(目録(一)1について)
 目録(一)の協議懇談は部外秘で行っている。
 相手方の所属の名称は、これを公開すると、協議懇談会に出席した本市職員、そ
の時期や他の情報と照合することによって、協議懇談の内容等につき様々な憶測等
がなされる。また、当該行政庁職員と部外秘で相談協議したことを公開すれば、当
該関係行政庁に著しい不信、不快の念を与えることになり、被告市長が長年にわた
って関係行政庁と培ってきた協力関係もしくは信頼関係を損なうと認められ、条例
八条四号に該当する。
 また、相手方から今後同様の協議等について協力が得られなくなり、今後の被告
市長の事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると認められ、条例八条
七号工に該当する。
7 被告教育委員会は、次の理由により公文書を一部非公開とした。
(一) 条例八条一号該当性(目録(二)1から28について)
 相手方の氏名及び氏名を識別できる部分を公開すると、特定の個人が識別され、
当該個人の職業、当時の行動状況が知られることから、当該個人のプライバシーを
侵害するおそれがあると認められ、条例八条一号に該当する。
(1) 目録(二)2、4、6から10、12から14、16の一部(学識経験
者)、17から25の相手方は、私的な個人としての資格で当該懇談会や研修会等
に出席している。
 仮に、右相手方が社会的対外的活動における資格で出席しているとしても、当該
個人がある特定の行事に参加し、誰と懇談し、飲食をともにしたかという事柄は、
私的なプライバシーに属する事柄であって、その費用額まで知られたくないと考え
るのは当然である。
(2) 目録(二)1、3、5、11、15、16の一部、26から28の相手方
は、関係行政庁職員であり、職務として当該懇談会等に出席しているが、それをも
って直ちに相手方のプライバシーと関係がないということはできない。
 すなわち、条例三条一項後段は「公開しないことが正当であると認められる個人
に関する情報の保護について最大限の配慮をしなければならない。」と規定してお
り、右規定の適用について関係行政庁職員を排除する理由はない。相手方が公務員
であっても、そのプライバシーは保護されるべきであり、公務員には右条項を適用
しないとの規定がない以上、通常他人に知られたくない個人情報がみだりに公開さ
れることがないよう最大限の配慮をしなければならない。
 また、市民が右協議懇談について理解と信頼を深めるには、当該職名が公開され
れば足りるのであって、氏名については当該職員のプライバシー保護に重きを置く
べきである。
 さらに、本協議懇談は、出席者の氏名を公開することを予定せずに開催されてお
り、また、氏名を公開することについて出席者の了解を得ていないから、相手方は
自己の氏名が開示されることを予想しておらず、相手方のプライバシーを侵害する
おそれがある。
(二) 条例八条四号該当性(目録(二)1から3、5、11、15から17、2
6から28について)
(1) 相手方の氏名等を公開すると、当該会合等に出席した本市職員、当該会合
等の時期や他の情報と照合することによって、会合等の内容等につき様々な憶測等
がされるから、相手方との協力関係又は信頼関係を損なうと認められ、条例八条四
号に該当する。
(2) 目録(二)2、3、5、16、17、26から28の協議懇談は、部外秘
で行っている。
 協議内容に関して有意義な情報交換、意見交換を継続して行うには、長年にわた
って培ってきた相手方との協力関係、信頼関係が不可欠であるところ、誰を協議に
当たらせたかということは当該相手方の内部情報である上、部外秘で行った協議懇
談は相手方から公開することの了解を得ていないのだから、一方的に相手方の氏名
を公開することは、相手方に著しい不信、不快の念を与え、今後同様の協議等につ
いて協力が得られなくなり、貴重な意見交換等を行う機会が得られなくなるおそれ
がある。
(三) 条例八条七号該当性(目録(二)1から21、24から28について)
(1) 関係行政庁職員との協議懇談は、被告教育委員会の事務事業を円滑かつ効
率的に進めるために必要であり、協議懇談に出席した相手方の氏名等が公開される
と、協議懇談に出席したこと自体に対する非難や憶測等がなされたり、懇談会でど
のような内容の話し合いがなされたかということについて出席者の顔ぶれから誤っ
た憶測がなされたりする。そうすると、相手方は今後協議懇談への参加を嫌がり、
あるいは、率直な意見表明を控えたり、相手方に不快、不信の感情を抱かせること
となる。また、これを公開することにより、当該相手方の意見が京都市の施策とな
るとの誤解を、関係者をはじめ市民に与えるおそれがあるなど、今後の事務事業の
公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると認められ、条例八条七号エに該当す
る。
(2) 目録(二)2、3から5、7、8、10、12、16から19、24から
28の協議懇談は、部外秘で行った内密の協議を目的とする会合である。
三 争点
1 平成九年(行ウ)第二号事件
 接遇の相手方の所属の名称が条例八条四号、七号所定の非公開事由に該当する
か。
2 同第三号事件
 接遇の相手方の氏名等が条例八条一号、四号、七号所定の非公開事由に該当する
か。
四 争点に対する当事者の主張
1 被告ら
 事実及び理由第二の二(争いのない事実等)6、7に記載のとおり。
2 原告
(一) 条例八条一号該当性(目録(二)1から28について)
 被告教育委員会が非公開とする文書の相手方は、いずれも京都市の事務事業に直
接関係のある会議、会合の出席者である。相手方のプライバシーが問題となるの
は、当該会議等への出席が当該相手方にとって私的な領域の問題といえる場合であ
る。とすれば、当該相手方が、公務あるいは所属団体の職務として京都市の会議等
に出席している場合は私的な領域の問題とはいえず、相手方のプライバシーとは関
係がない。本件の相手方はすべて公務あるいは所属団体の職務として右会議等に出
席しているので、相手方の氏名等は、一号の非公開事由に該当しない。
(1) 目録(二)2、4、6から10、12から14、16の一部(学識経験
者)、17から25の相手方は、いずれも市の予算を用いて開催された会合に、社
会的対外的活動における資格で出席しているものであり、これらの会合はいずれも
市の公的事業に関するものであって、相手方の役職、氏名はその公益的会合の参加
者として表示されているのであるから、これが開示されても、当該相手方の私生活
の平穏が侵害されるとは考えられない。
 また、被告教育委員会は、相手方の氏名が公開されることによって私生活の平穏
が侵害される事情を具体的に主張立証していない。
(2) 目録(二)1、3、5、11、15、16の一部、26から28の相手方
は関係行政庁職員である。そして、当該公務員の氏名は、当該公務を遂行した者を
特定し、あるいは責任の所在を明示するために表示されるものであって、それ以上
に右公務員の個人としての行動や生活にかかわる意味合いを含むものではなく、プ
ライバシーが問題になる余地はない。
(二) 条例八条四号該当性(目録(一)1、同(二)1から3、5、11、15
から17、26から28について)
(1) 本件各文書を公開することと、被告らの主張する「様々な憶測などがなさ
れる」こと、「相手方との協力関係又は信頼関係を損なう」こととの因果関係が不
明である。被告らは公開により相手方との協力関係又は信頼関係を損なうことの合
理的理由を説明していない。
(2) 条例八条四号の「協力関係又は信頼関係を損なうと認められるもの」と
は、同種事業の遂行が不可能もしくは著しく困難となる現実的な危険性が存在する
ことが客観的に明白である場合に限られる。そして、本件各文書には、懇談会の相
手方の所属、役職、氏名、概括的抽象的な開催目的、開催日、場所など懇談会の外
形的事実に関する情報が記載されているだけであり、それ以上に懇談会の個別的具
体的な開催目的やそこで話し合われた懇談会の内容を明らかにするものではない。
したがって、本件各文書を公開しても、以後同種懇談会の開催が著しく困難となる
とはいえない。
① 目録(一)1、同(二)1、3、5の協議懇談のテーマは非公開にしなければ
ならないような特別のものではなく、むしろ市民が広く議論できるようにその関連
情報を積極的に開示すべきものである。
② 目録(二)11、15の会合も、その趣旨からして特に参加者名を内密にしな
ければならない協議懇談ではない。また、他の指定都市の出席者の職名を公開して
いるのであるから、どの指定都市のどの部署から参加したのかは明らかであり、当
該参加者名を公開しても当該市との協力関係又は信頼関係を損なうとはいえない
し、また、協議懇談の具体的内容は公開されないのであり、参加者の氏名が公開さ
れることによって相手方の信頼関係が得られなくなるとは考えられない。
(三) 条例八条七号該当性(目録(一)1、同(二)1から21、24から28
について)
(1) 被告らは、本件各文書中の相手方の氏名等を公開した場合、本市の事務事
業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じる具体的理由を明らかにしていない。
(2) 条例八条七号エの「同種の事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が
生じると認められるもの」とは、同種事業の遂行が不可能もしくは著しく困難とな
る現実的な危険性が存在することが客観的に明白である場合に限られる。
 本件各文書には、懇談会の相手方の所属、役職、氏名、概括的な開催目的、開催
日など懇談会の外形的事実に関する情報が記載されているだけであり、それ以上に
懇談会の個別的、具体的な開催目的やそこで話し合われた懇談会の内容を明らかに
するものではない。したがって、本件各文書を公開したからといって、以後本件各
懇談会にかかる事務事業の執行が著しく困難となるとはいえない。
 目録(二)2、4、6から10、12から14、18から21、24、25の協
議懇談は内密にしなければならないような特別なものではなく、このうち2、4、
6から10、12、18、19、21、24、25はむしろ市民が広く議論できる
ようにその関連情報を積極的に開示すべきものである。
第三 当裁判所の判断
一 条例八条一号該当性(目録(二)1から28について)
1 目録(二)1から28は、被告教育委員会が実施した各種協議会、懇談会、接
待に要した支出決定書であり、公開しないとされた部分はその出席者の職名又は氏
名である。
2 相手方の職名及び氏名が、条例八条一号の個人に関する情報で、個人が識別さ
れ又は識別され得るものに該当することは明らかである。
3 ところで、公という語は「表だったこと」との意味で、他方、私という語は
「表ざたにしないこと」との意味であるから、公事は公開し私事は公開しないとの
原則が当然導かれるものである。とすれば、ある情報が通常他人に知られたくない
と望むことが正当であるかどうかを考えるには、事柄が公事にかかわるか私事にか
かわるかが重要な意味を有するというべきである。
 これを会合等の出席者名にあてはめると、出席者名を通常他人に知られたくない
と望むことが正当であるというためには、当該会合等に私人として参加したことを
主張立証する必要があるというべきである。さらに、ある情報が公事にかかわるか
私事にかかわるかを見極めるには、当該会合等の目的、出席者が当該会合等に参加
した立場、用いられた費用が公費かどうかなどを総合して判断するのが相当であ
る。
4 これを本件についてみると、(一)前記協議会等の目的は被告らの主張を前提
としても被告らの事務事業(公務)に関するものであり、(二)出席者の立場はそ
の属する団体が被告らの事務事業と関係を有することを反映したものと考えられる
し、(三)本件各文書はいずれも公費の支出決定書であり、私的な会合等に公費が
用いられることはないので、その出席者は当該協議会等に単なる私人として参加し
たものと認めることはできないから、当該協議会等の出席者名等の情報が私事に関
わるもので通常他人に知られたくないと望むことが正当であるということはできな
い。
5 したがって、これら個人の職名及び氏名は、条例八条一号に該当しない。
二 条例八条二号、三号該当性(振込先銀行名、口座番号、印影について)
 振込先銀行名及び口座番号は、専ら当該債権者の内部での経理上の処理に関する
情報であり、公開することにより右債権者の事業活動上の正当な利益を明らかに害
すると認められる情報に当たる。
 また、印影は、取引行為における印鑑の重要性に鑑みれば、公開することにより
当該債権者の財産等の保護に支障が生じるおそれがあると認められる。
 したがって、振込先銀行名及び口座番号に関する部分は条例八条二号に、印影に
関する部分は条例八条三号にそれぞれ該当するというべきである。
 そうすると、本件処分のうち、振込先銀行名、口座番号及び印影に関する部分を
非公開とした部分は正当である。
三 条例八条四号該当性(目録(一)1、同(二)1から3、5、11、15から
17、26から28について)
1 目録(一)1、同(二)1から3、5、11、15から17、26から28に
記載された相手方の氏名及び職名並びに相手方の名称は、条例八条四号の「市と国
等との間における協議等により行う事務に関して作成した情報」に該当することは
明らかである。
2 被告らは、相手方の職名及び氏名等を公開すると、会合等の内容等について様
々な憶測等がされたり、一部の者の意見だけを参考にしている、偏った内容になっ
ているなどのあらぬ疑いを市民から向けられ、また、相手方の意見がそのままに京
都市の教育施策となるとの誤解を教育関係者をはじめ、保護者、市民に与えかねな
いと主張する。しかし、右文書には協議の具体的内容は記載されていないから、相
手方の氏名や職名を公開しても出席者の発言や協議の結果、京都市の施策との関係
は明らかにはならず、相手方の氏名等を公開することで右憶測等が生じ、当該相手
方との協力関係又は信頼関係が損なわれるとは認められない。
3 また、被告教育委員会は、これら協議等の出席者を公開しない理由として、出
席者の氏名を公開すると、出席していない者が不満を持ち、当該組織内で出席者と
出席していない者との関係が悪化する旨主張する。
 しかし、出席者の組織内での評価や立場にどのような影響を与えるかは明らかで
ない上、仮に出席を求められなかったことに不満を持つ者がいたとしても、そのよ
うな不満は主観的な感情の問題であって、そのために協力関係や信頼関係が損なわ
れるとは考えにくいし、また、右主張は抽象的な危惧感を述べるものに過ぎない。
4 被告らは、相手方の職名及び氏名は当該相手方の内部情報であるから条例八条
四号に該当すると主張するが、右内部情報の意味するところは明らかでない上、右
主張はこれらを公開することにより当該相手方との協力関係又は信頼関係が損なわ
れることを具体的に窺わせるに足りるものではない。
5 なお、本件協議会等は、その趣旨、内容等に鑑みると、その開催を内密にする
ことが合理的に要請されているものと認めることはできないから、被告教育委員会
がその開催に当たって部外秘としたとの一事をもって非公開事由に当たるとするこ
とはできない。
6 したがって、相手方の氏名及び職名並びに相手方の名称は、条例八条四号に該
当しない。
四 条例八条七号該当性(目録(一)1、同(二)1から21、24から28につ
いて)
1 条例八条七号は、京都市又は国等が行う事務事業の中には、入札予定価格、試
験問題、用地買収計画、交渉の記録など、事務事業の性質上、公開することによ
り、その目的が損なわれたり、公正かつ適切な執行が妨げられるものがあるため、
これらに関する情報を非公開とすることを規定したものである。
2 目録(一)1、同(二)1から21、24から28に記載された相手方の氏名
及び職名が、市長の予算執行に関する事務にかかるものとして、条例八条七号の
「本市が行うその他の事務事業に関する情報」に該当することは明らかである。
3 被告らは、相手方の氏名及び職名を公開すると、協議懇談に出席したこと自体
に対する非難や憶測等がなされたり、懇談会でどのような内容の話し合いがなされ
たかということについて出席者の顔ぶれから誤った憶測がなされたりし、また、相
手方の意見が京都市の施策になるとの誤解を与えるおそれがあり、京都市と相手方
との信頼関係を著しく損ない、今後の事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障
が生じると主張する。
 しかし、相手方の氏名及び職名を公開するとどのような憶測がなされたり誤解を
与えるかは不明である上、右主張はこれらを公開することにより今後の事務事業の
公正かつ適切な執行に著しい支障が生じることを具体的に窺わせるに足りるものと
はいえない。
 また、本件各文書には、懇談会の相手方の氏名等、抽象的な開催目的など懇談会
の外形的事実に関する情報が記載されているだけであり、それ以上に懇談会の開催
目的や懇談会の内容を明らかにするものではないから、相手方の氏名及び職名を公
開することによって同種の事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じると
認めることはできない。
 なお、被告教育委員会が、本件協議会等の開催に当たって部外秘としたとの一事
をもって非公開事由に当たるとすることができないことは、前説示の理由と同じで
ある。
4 したがって、相手方の氏名及び職名は、条例八条七号に該当しない。
五 結論
 以上の次第で、本件公文書のうち、振込先銀行名、口座番号及び印影に関する部
分を除き、その余の記載部分を非公開とした本件処分はその限度で違法として取消
を免れないから、本訴請求を主文第一、二項の限度で正当として認容し、その余を
失当として棄却することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成一〇年一二月一六日)
京都地方裁判所第三民事部
裁判長裁判官 大谷正治
裁判官 山本和人
裁判官 平井三貴子

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