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○ 主文
原判決を取消す。
本件を京都地方裁判所に差し戻す。
○ 事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四三年一〇月一七日付京
都府達第六三号をもつてした砂防指定地内行為の中止および施設除却等の履行を命
ずる処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決
を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」
との判決を求めた。
第一、本案前の抗弁について
当事者双方の本案前の抗弁(控訴人の本件訴訟における原告適格の存否)に関する
主張は、控訴人において「本件処分が取消されても、そのことによつて直ちに控訴
人のする土石採取行為に許可が与えられたことにならず、依然として無許可操業で
ある、との被控訴人の主張は、形式的にはそのとおりである。しかし、被控訴人は
他の者については形式的に無許可操業をしていても本件のような中止、履行命令を
発したことが殆んどないのであるから、この点において本件処分は違法不当であ
る。また、たとえ無許可操業を理由とする中止、履行命令でも、無許可自体が違法
不当であれば、もはや適法とはいえないわけである。しかも、本件処分は控訴人に
対し命令内容を強制的に実施させようとする具体的なものであり、控訴人はそのこ
とが控訴人の権利または利益を侵害している、と主張しているのであるから、いず
れにしても、控訴人としては本件処分の取消しを求める法的利益を有するものであ
る。しかして、右法的利益の存在は、控訴人が被控訴人に対し、別途、許可を与え
ないことの違法を主張して訴訟を提起していることによつて左右されるものではな
い。」と述べたほかは、原判決事実摘示と同一(ただし、原判決二枚目裏五行目の
「そうして、」の次に「(1)この規定に違反した者(2)」を挿入する)である
からこれをここに引用する。
第二、本案について
(控訴人)
(一) 被控訴人は控訴人に対し請求の趣旨第二項記載の処分をした。
(二) しかし、右処分は、控訴人がかねてより被控訴人に対し土石採取許可の申
請(許可制の根拠法令については本案前の主張のとおり)をしたにもかかわらずこ
れを認めず、敢えて許可をしなかつたうえ、無許可採取を理由としてなされたもの
であるが、そもそも右不許可自体が次のとおり違法であり、その違法はひいては本
件処分の違法をもたらせるものである。すなわち、(1) 一般に山砂利採取は短
期間で終了するものでないのに、その許可は一年未満毎になされているのが実情で
ある。したがつて、許可申請も長期にわたり繰り返し継続的にするほかないが、そ
の代り、許可は形式的に審査して、申請さえあれば当然許可すべきものである。施
業計画の適否、条件等は専ら許可後の行政指導としてすればよいのである。控訴人
は、被控訴人も主張するとおり(別紙目録)、過去五回にわたり継続的に許可を受
けてきたのに、何故か、昭和四二年三月末を最後として許可をえられなくなつたも
のであるが、右不許可は前記の実情よりすれば違法である。
(2) 控訴人は昭和三九年頃被控訴人所管の宇治土木工営所長Aから「実額七万
円の砂利を一五万円に見積つて京都府に納入し、その差額分を操業に反対する近辺
住民の宥和対策費に充ててはどうか。」とすすめられたので、その不法をいつてこ
とわつたことがあるが、前記不許可処分は控訴人の右拒否によつて感情を害した所
長が、控訴人だけを同業者六名に比し不公平に差別していたものであるから違法で
ある。
(3) 控訴人は昭和四二年三月初め前記所長に対し許可申請をしたところ、所長
は何ら申請内容について教示指導をせず、これでは上級機関に進達できないという
だけであり、「船大工が砂利屋をやるのが間違つている。どうしたらよいかと聞く
のは饅頭屋が客にどんな色、形のものを作つて売ればよいかと問うようなもの
だ。」と嘲笑したが、これは故意に教示指導義務を怠つたもので、本件不許可はそ
の結果であるから違法である。
(4) 控訴人は実質は零細な個人会社であり砂利採取業ができなければ代表者夫
婦とその子女三名はたちまち路頭に迷うものである。したがつて、仮りに、控訴人
が被控訴人主張のようにかつて無許可または条件違反の操業をしたとしても、それ
は緊急避難であるか、またはその前後に受けた許可により瑕疵は治癒されたもので
あるから、右のような事情を理由とした今回の不許可処分は違法である。
(三) よつて、控訴人は本件処分の取消を求めるため本訴に及んだ。
(被控訴人)
(一) 控訴人主張の本件処分の存在は認める。
(二) 被控訴人のした本件処分は適法であり、何ら控訴人主張のような瑕疵はな
い。すなわち、被控訴人はかつて控訴人に対し別紙目録記載のとおり土石採取の許
可をしたが、昭和四二年三月三一日を最後としてその後は許可をしていない。しか
るに、控訴人はその後も引続き諸施設を使用し無許可操業をしているので、やむな
く規則三条、一五条一項に基き本件中止、除去処分に及んだもので、その間に何ら
の違法はない。
また、控訴人は本件処分違法の前提問題として土石採取不許可の違法を主張する
が、右不許可の処分にも何らの違法はない。すなわち、被控訴人が控訴人に対しそ
の後許可を与えなかつた理由は、従前、控訴人が、再三再四、無許可操業と許可条
件違反の操業をしたため近隣住民の非難を受け、被控訴人においても繰り返し文書
による中止命令、警告等をしたが少しも反省せず、違法操業を継続したためであ
る。また、控訴人の違法操業のため、青谷川は下流約三粁にわたり川水が泥で黄褐
色を呈し、泥土の堆積が著しくなり、下流五〇米の砂防堤(高さ六・三米、長さ六
七・五米)も昭和四三年一二月末には完全に満砂するようになつた。そのため、下
流農民は水田灌漑、果樹消毒用水の利用等ができなくなり甚大な被害を蒙つた。か
くして、砂防法の趣旨に照らし、もはや控訴人に許可を与えることができなくなつ
た次第である。
(三) 以上のとおりであるから、いずれにしても控訴人の本訴請求には応じ難
い。
第三、証拠関係(省略)
○ 理由
まず、職権により、本件取消訴訟における控訴人の原告適格の存否について調査検
討する。
当事者双方の主張および成立に争いない甲第一一号証によれば、控訴人が本訴にお
いて取消を求める行政処分とは、被控訴人が昭和四三年一〇月一七日付をもつて控
訴人に対し発した砂防法二条、四条一項、同法施行規程三条、砂防指定地管理規則
(昭和四〇年四月一日京都府規則一五号)三条、七条、一五条一項に基く中止、履
行命令すなわち、(1)京都府城陽町(現在市)<以下略>先青谷川流域における
掘削、盛土、土石の採取行為の中止と(2)土石採取に使用している洗浄選別施設
一切の除却、沈澱池の埋戻し、跡地の整地の履行とを命ずる処分であり、右処分の
理由とするところは、要するに、控訴人が被控訴人の許可なく右土地での土砂等採
取をしたことが前記規則三条に違反するというのである(原判決二枚目表一一行目
から同裏八行目-当審で付加した部分も含む-までにおいて控訴人の挙示する法規
内容参照)。
右事実関係によれば、控訴人は右処分の名宛人にほかならないのであるから、本件
処分が取消されることによつて前記作為(除却等)、不作為(操業中止)の義務に
つきその負担を免れうるのであつて、このことはまさに控訴人の現実的かつ具体的
な権利利益の回復というべく、控訴人は行訴法九条所定の抗告訴訟をおこす法律上
の利益があるということができる。
被控訴人は、控訴人はもともと無許可で土石採取しているものであり、たとえ本件
処分を取消してもそれによつて何ら操業権を獲得するものではないから、右取消を
求める法律上の利益はない旨主張する。しかし、本件処分を取消す法律上の利益の
存することは前記のとおりであつて、右利益は控訴人が本件取消訴訟によつて操業
権または操業の利益を新らたに取得しうるか否かと関係なく現存するものと解すべ
きである。いいかえれば、控訴人が本訴を提起した目的は本件処分によつて直接的
に課せられた一定の作為、不作為義務を端的に免れようとするところにあり、右の
目的(法律上の利益)は控訴人が操業をなしうる法律上の地立を有しているか否か
の問題とは別の次元の問題というべきである(操業不許可処分の取消訴訟を起こし
たうえ、右不許可処分の効力の一時停止を申立てた場合に、かりに不許可処分の効
力を停止しても、許可申請をした状態に戻るだけで、特段あらたな法的利益を得る
わけではなく、まして積極的に許可処分があつたことにはならないから、右のよう
な一時停止の申立をする利益がない、という場合と同一視できないこともちろんで
ある)。現に、控訴人は、本件において、本件処分の理由(本件処分の適法性を根
拠づける実体的構成要件事実)とされている被控訴人の操業不許可処分自体の違法
をるる主張しているのであり、もしこの点に関する控訴人の主張が認められれば、
ひいては本件処分も違法たるを免れない場合も考えられなくはないのである(一般
論としては、その当否は別として、実体上、許可制度そのものの適否についても争
いうる筋合である。なお、不許可処分の効力の存否を、本訴において、先決問題と
して理由中で断ずることは可能である)。
これを要するに、控訴人が無許可操業者であることについての法的評価は、すべ
て、本件訴訟の対象たる「本件処分の法適合性の存否」の問題、すなわち、本件処
分が控訴人挙示の規則一五条一項、同三条所定の構成要件事実を充足しているかど
うかに関する本案上(実体上)の問題にほかならないのである。もしそうではな
く、被控訴人主張のようにこれを訴訟要件の問題であるとすれば、一般に無許可の
ものを名宛人とする中止、除却命令については一切不服申立が許されないこととな
り、右命令が直接的に一定の作為、不作為を課するもので、操業できる法律上の地
位を与えるか否かとは別の次元に属する問題である点に照らし、極めて不合理な結
果を招くことになる(たとえば、無許可操業者といえども、他人が設置し使用した
ものを除却し、他人が変形した形質を原状に回復する義務はないはずであるから、
かかる処分を受けた場合は当然その処分の違法性を主張し争うことは容認されなけ
ればならない)。
しかして、以上の結論は、控訴人が本訴において無許可であること自体を自認して
いるからといつて、これを左右にすべきものではない(本件の場合、控訴人は無許
可を自認してはいるが自分の操業自体の違法を自認しているわけではない。)。
そうすると、本件はすすんでその本案の当否について審理すべきである。しかる
に、これと異り、控訴人の訴の利益を否定し、本件訴を却下した原判決は取消しを
免れない。
よつて、民訴法三八八条にしたがい、本件を原審である京都地方裁判所に差し戻す
こととし、主文のとおり判決する。
(裁判官 岩本正彦 石井 玄 畑 郁夫)
(別紙目録)
<略>
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
被告知事指定代理人らは、主文同旨の判決を求め、本案前の主張として次のとおり
述べた。
一 砂防法二条によると、主務大臣は砂防設備を要する土地又は治水上砂防のため
一定の行為を禁止もしくは制限すべき土地を指定することができ、同法四条一項に
よると、地方行政庁は、右の指定を受けた指定地内において、治水土砂防のため一
定の行為を禁止もしくは制限することができ、同法施行規定三条によると、禁止も
しくは制限すべき行為は、都道府県規則によつて定めることになつている。
砂防法、同法施行規程三条にもとづき制定された砂防法による指定地取締規則(昭
和二三年四月二〇日京都府規則第二四号)および現行の砂防指定地管理規則(昭和
四〇年四月一日京都府規則第一五号・以下単に規則という)によると、指定地内に
おける土砂等の採取については、被告知事の許可を受けなければならず(規則三
条)、被告知事は許可に際し条件を付することかできる(規則七条)。そうして、
許可又は許可条件に違反した者に対し、被告知事は、許可を取り消し、変更し、条
件を変更し、あるいは行為の中止、施設等の除却、土地の現状回復を命ずる(規則
一五条一項)権限がある。
二 原告会社が操業している場所を流れている青谷川は、原告会社操業の地域を含
め、その流域一帯の大部分が砂防指定地として指定されている(大正五年五月六日
内務省告示第二六号)。
三 原告会社に対する従前の許可の経過は次のとおりである。
<略>
四 原告会社の砂防指定地内の行為の許可期間は昭和四二年三月三一日で満了し、
以後、原告会社に対する許可は与えられていない。
それにも拘らず、原告会社は砂防指定地内である原告会社作業場で、山砂利採取の
ための諸施設を残存し、無許可操業を続行している。
五 そこで、被告知事は昭和四三年一〇月一七日、規則一五条一項にもとづき、原
告会社に対し砂防指定地内行為の中止並びに施設除却等の履行を命ずる処分(以下
本件処分という)をした。
六 原告会社は本件処分の取消しを訴求して本件訴を提記した。
しかし、本件訴には、訴の利益がない。すなわち、
原告会社には、なんら施業を行なう権限がないのであるから、本件処分が取り消さ
れても、法的利益はないことは明白である。
七 そうすると、本件訴は不適法であり却下を免れない。
原告会社訴訟代理人は、次のとおり反駁した。
一 原告知事主張の一ないし五の各事実は認める。
二 原告会社は、次の理由で、本件処分の取消しを求める利益がある。
継続的事業において、施業権の存続期間を満了し、権利が更新設定されるまでの間
は、たとえ形式的には無権利の状態であつても、実質的にみれば、施業権の更新継
続を法的に期待し得る権利状態であり、その間の事実の施行は全くの無権利操業で
はなく、右のような権利状態における操業である。
○ 理由
一 被告知事主張の一ないし五の各事実は、当事者間に争いがない。
二 行政法上の許可とは、行政法令による禁止を特定の場合に特定人に解除する行
為を指称し、許可を受けたものは、適法に一定の行為ができるだけで(禁止の解
除)、この許可によつて何らかの権利が発生するものではないと解するのが相当で
ある。
本件においても、被告知事の許可がないと、指定地内で土砂等の採取ができず、そ
の許可を受けた者だけが許可条件のもとに適法に土砂等の採取ができるにすぎな
い。従つて、許可を受けない限り、適法にこれらの行為ができないことは明らかで
あり、原告会社が主張するような期待権が発生する余地はない。
三 行政事件訴訟法九条は、処分取消しの訴は当該処分の取消しを求めるについ
て、法律上の利益のある者に限り提訴できるとしているが、この法律上の利益のあ
る者とは、取消判決をするについて、具体的利益がある者をいうと解するのが相当
である。
四 以上の視点に立つて本件を観ると、原告会社は、本件訴によつて本件処分の取
消しを訴求しているが、原告会社の主張どおり本件処分に違法の瑕疵があり取り消
されたところで、原告会社は指定地内で土砂等の採取ができる立場にないことは、
原告会社が無許可であることを自認している限り明白である。
そうすると、原告会社には本件処分の取消しを求める具体的利益は何もないことに
帰着する。
五 以上の次第で、原告会社の本件訴は訴訟要件を欠き不適法な訴として却下を免
れないから、民訴法八九条に従い主文のとおり判決する。

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