弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人等に損害金の支払を命じた部分を破棄する。
     右部分につき本件を東京高等裁判所に差戻す。
     原判決中その余の部分に関する上告人等の上告を棄却する。
     前項の部分に関する上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告代理人松本才喜の上告理由第一点について。
 被上告人が本件家屋の賃借人Dに対し昭和二五年六月一六日到着の書面を以て、
同二二年二月一日以降同二五年五月末日までの延滞賃料(月額一五〇円の割合)を
三日以内に支払うべく、若し、右期間内に支払のないときは、本件賃貸借を解除す
る旨の催告並びに条件附解除の意思表示をしたことは原判決の確定するところであ
る。しかして右賃貸借における家賃額は、昭和八年二月二三日、一ヶ月八〇円と定
められ、昭和二一年九月頃からDにおいて、自発的に一ヶ月一五〇円に値上を承認
した事実も、また原判決の確定するところである。そうして、これを家賃の統制法
規の定めるところに照せば、結局、右催告にかかる家賃額中昭和二二年二月一日以
降、同年八月末日までの分において一ヶ月七〇円合計四九〇円が所論のごとく、統
制額を超えての支払請求となるわけであるが、請求総額六〇〇〇円中右の程度の超
過額を含んでいたとしても、これがために、所論のように、右催告全部が無効とな
るものではなく、正当賃料の限度において右催告は有効であると解すべきである。
論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決は、本件転貸借について、被上告人等が承諾を与えた事実は、本件におい
て、証拠上肯認し難いとするものであることは、原判文上明らかである、であるか
ら「仮りに、その承諾があつたとしても」以下の原判決の説示は畢竟蛇足に過ぎな
いのであつて、この部分の原判示を非難する所論は、これを採用するかぎりでない。
 同第五点について。
 原判決は、上告人等の控訴を棄却しているのであるが、第一審判決によれば、上
告人(控訴人、被告)三名は、昭和二五年一一月一七日より本件家屋の明渡済まで
一ケ月金二五九九円四〇銭の割合の金員を連帯して支払うことを命ぜられている。
しかるに、原判決の認定する事実によれば、上告人等は、右建物中それぞれ被上告
人等主張部分を各独立の占有主体として占有しているというのであつて、右一ヶ月
金二五九九円四〇銭の金額は本件家屋全体の統制賃料月額であつて、これを一ケ月
の賃料相当の損害額として、計上したものであることは、また、原判示によつて明
らかである。原判決は、上告人等を共同不法占有者として連帯して右金額を支払う
義務ある旨を判示しているのであるが、家屋の一部占有者に過ぎない上告人A1及
びA2株式会社が、何が故に、上告人A3と連帯して、右家屋全部についての賃料
相当額を支払う義務があるかについては、原判決は何ら説示するところはないので
あつて、この点において、原判決は、理由不備の違法あるを免れず、論旨は理由あ
り、従つて、原判決中上告人等に対し、連帯して損害金の支払を命じた部分は、破
棄すべきものである。
 その余の論旨は民事上告特例法所定の上告の理由に該当しない。
 よつて、右破棄部分以外の原判決は正当であるから、この点に関する上告は棄却
すべきものとし、民訴四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条を適用して、
主文のとおり判決する。
 この判決は、全裁判官一致の意見によるものである。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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