弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人中野忠治の控訴趣意は、記録に編綴の同弁護人名義の控訴趣意書記載(但
し同控訴趣意書中二枚目表末行に其とある下に「乗組」の文字を追加し、三枚目裏
十一行目に「右はAの供述調書」とあるを「Bの供述調書及び原審証人Cの供述記
載」と訂正する)と同じであるから、これを引用する。
 控訴趣意第一点の(一)について。
 しかし、原判決挙示の証拠によれば、被告人が船の漂流前方が機関室に妨げられ
て全然見透のきかないところに居たことは、優にこれを認め得るのであつて、記録
を精査しても原判決に事実誤認を窺うべき事由は存しない。論旨は理由がない。
 同第一点の(二)について。
 所論は、要するに、海上漁船の慣習としていか釣漁場における漁船の接触につい
ては後着の漁船が先着の漁船を避くべき義務があり、何れが先着か不明の場合には
小型漁船が大型漁船を避くべき義務があるところ、被告人が船長として乗込んだD
丸は本件被害船E丸より先に漁場に到着しており、しかもE丸より著しく大型であ
るから、D丸はE丸を避くべき義務なく、その船長たる被告人に過失の責<要旨>は
ないというのである。しかし、仮に所論のような海上漁船の慣習があるとしても、
その趣旨は後着の漁船又は小型の漁船により積極的な義務を負わせたに過ぎ
ないものというべく、それがために先着の漁船又は大型の漁船に原判示り如き接触
事故防止の義務がないという趣旨ではないこと条理上当然というべきである。従つ
て被告人がその船長たるD丸がE丸より漁場に先着したものとし、且つD丸の方が
遙かに大型であつても、原判決挙示の証拠によれば、被告人はいか釣作業に熱中し
ていたため、本件接触事故の発生するまで、自船かE丸に刻々接近しつつあること
に全然気づかず、何等の措置をも施さなかつたことが明かであるから、被告人に責
むべき過失のあること勿論である。所論は独自の見解に基き被告人に本件事故発生
につき過失の責なしと主張するもので、採るを得ない。論旨は理由がない。
 同第一点の(三)について。
 所論は、要するに、原審認定の如く逃げおくれた被害者Fを接触した両船の間に
押挟んで傷害を負わせたのではなく、同人は逃げれば充分逃げられる余裕があつた
のに逃げないで自ら傷害を招いたものであるから、仮に被告人に船の接触につき過
失の責任があるとしても、被告人の過失と被害者の受傷との間には因果関係がない
から罪とならないというのである。しかし、原判決挙示の証拠を総合すれば、闇夜
の当夜D丸が押流されてきて五、六間の距離に接近した時はじめてE夫の乗組員が
これに気づき、危いと呼んだので、これを聞いた被害者は逃げる機会があつたこと
は認められるが同時にその際側にいた者も逃げないので危険とも思わずにいか釣を
続けているうち、E丸より約一尺五寸も高く且つ二尺余りの幅に枠がかけてあつて
張出してい。D丸の海進具レールが己の身辺に押迫つてきて危いと判つた時は既に
逃げる余裕がなく、右海進具レールとE丸の械関室根屋角の間に押挟まれて傷害を
蒙つたものであることが窺われ、記録を精査しても右認定に誤があることは認めら
れない。されば、被害者にも或る程度の過失があつたことは認められるけれども、
これがために前記被告人の過失と被害者の受傷との間に因果関係がないと断じ得な
いことは勿論被告人の過失責任が消滅するものでないこと洵に明らかである。所論
は独自の見解に立脚する主張であつて、採用の限りでない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 先ず、所論は原番が被告人の注意義務違背のみ責めて前記海上慣習等に何等顧慮
しなかつたのは審理不尽理由不備であるというのであるが、前記第一点の(二)に
対する判断で説明したとおりであるのみでなく、原番はこの点につき証人Gを尋問
し、またE丸船長が本件接触防止の措置をとつたことを審理判断しているのである
から、原審には毫も所論のような違法は存しない。次に、所論はいか釣漁船の接触
によつては怪我人を出さないのが通例であるから、原判決が船の接触につき被告人
に責任がある旨判示しているのみで、その接触により傷害を負わせた理由を説示し
ていないのは理由不備であるというのであるが、前記第一点の(三)に対する判断
で説明したとおりであり、原判決の説示においてもこの点を判示しているのである
から、所論は採用の限りでない。論旨はいずれも理由がない。
 同第三点について。
 記録を精査し、被告人の経歴、過失の原因、態様、被害者に存する過失、その他
諸般の情状を斟酌考量して、原審の量刑を検討するに、重きに失し不当であるとは
認め難い。論旨は理由がない。
 以上の次第であるから、刑事訴訟法第三百九十六条により本件控訴を棄却するこ
ととし、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治 裁判官 細野幸雄)

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