弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

          主      文
 本件は,逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当する。
          理      由
 第1 本件審査請求の適法性
 上記A(以下「A」という。)は,平成13年5月8日,アメリカ合衆国(以下「米国」とも
いう。)連邦法典18編371条,1831条(a)(1)項,同条(a)(2)項,2314条の共謀罪,
経済スパイ罪,盗品州外輸送罪について,同国連邦地方裁判所オハイオ州北部地
区東部支部に対して公訴を提起された逃亡犯罪人であるとして,平成14年3月8
日,日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約(以下「条約」とい
う。)2条1項に基づき,米国から我が国に対して引渡しの請求がされたものであると
ころ,平成16年2月2日,東京高等検察庁検察官から当裁判所に対し,逃亡犯罪人
引渡法(以下「法」という。)8条1項に基づき,上記引渡しについての審査の請求がな
された。そこで,一件記録を調査し,検察官,A及び補佐する弁護士(以下「補佐人」
という。)の意見を聴いた上で検討するに,まず,本件審査請求の手続が条約及び法
の規定に基づき適法になされたものであることは明らかである。
 第2 引渡し拒絶事由の存否
 1 嫌疑が必要とされる犯罪の意義
 以下,本件が逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当するか否かについて
検討する。問題となるのは,条約3条が引渡しの要件として犯罪の嫌疑を要求してい
る点について,請求国の法令に基づく引渡犯罪の嫌疑が認められなければならない
のか,それが認められなくても,被請求国の法令に基づく犯罪の嫌疑が認められれ
ば足りるのかである。
 【要旨】条約3条は,「引渡しは,引渡しを求められている者が被請求国の法令上
引渡しの請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があること又はその者
が請求国の裁判所により有罪の判決を受けた者であることを証明する十分な証拠が
ある場合に限り,行われる。」と規定しており,法2条6号は,「引渡犯罪について請求
国の有罪の裁判がある場合を除き,逃亡犯罪人がその引渡犯罪に係る行為を行っ
たことを疑うに足りる相当な理由がないとき」を引渡拒絶事由の一つとする旨規定し
ているところ,条約と法が,犯罪の嫌疑(それを行ったと疑うに足りる相当な理由があ
ること)について異なる内容の規定を置いているとは解されず,「引渡しの請求に係る
犯罪」と「引渡犯罪に係る行為」の意義は基本的に同様であると解される。ところで,
逃亡犯罪人引渡しの手続において,請求国の側に一定の罪責立証を要求するか否
かについては,各国の法制は一様ではなく,立法論的には議論の余地もあり得るとこ
ろと思われるが,これを要求する制度を採る以上,その趣旨は,人権保障の見地か
ら,引き渡される者が請求国の裁判で有罪とされる見込みがあるかどうかを被請求
国において審査することにあると解するのが自然である。条約3条は「引渡しの請求
に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があること」を「請求国の裁判所により
有罪の判決を受けた者であること」と並べて規定しており,法2条6号もこれと同趣旨
であるが,これらの規定は上記のような解釈になじむものである。また,条約8条2
項(c)は,引渡しの請求に際して「引渡しの請求に係る犯罪の構成要件及び罪名を定
める法令の条文」を添付資料とする旨を規定しており,ここにいう「引渡しの請求に係
る犯罪」が請求国の法令に基づく引渡犯罪を意味することは明らかである。さらに,
逃亡犯罪人引渡法による審査等の手続に関する規則(以下「規則」という。)5条2項
3号は,審査請求書に「引渡犯罪にかかる行為に適用すべき請求国の罰条及び日本
国の相当罰条」を記載することを義務付けており,ここにいう「引渡犯罪にかかる行
為」が請求国の法令に基づく引渡犯罪及び被請求国の法令に基づく犯罪の双方を念
頭に置いたものであることは明らかである。以上によれば,条約にいう「引渡しの請
求に係る犯罪」と,法にいう「引渡犯罪に係る行為」とは,本来は請求国の法令に基
づく引渡犯罪ないしこれに該当する行為を意味するが,場合によって,被請求国の法
令に基づく犯罪ないしこれに該当する行為を含んで用いられることがあると解するこ
とができる。そうすると,少なくとも請求国の法令に基づく引渡犯罪の嫌疑が認められ
なければ,条約3条及び法2条6号が要求する犯罪の嫌疑が認められないことは明
らかである。
 検察官は,上記のような解釈に異を唱え,我が国の法の下で犯罪行為と評価され
る行為について嫌疑が認められれば足りると主張し,その根拠として以下のとおり主
張している。
 ① 法2条6号は,条約3条と同趣旨の規定であるところ,法2条6号にいう嫌疑の
対象は,法文上も明らかなとおり,「引渡犯罪に係る行為」であり,「引渡犯罪」そのも
のではない(法2条は,「引渡犯罪」と「引渡犯罪に係る行為」とを明確に区別して用い
ている。)。法2条6号は,我が国の裁判官に外国法令を解釈させるという困難を避
け,我が国の法令に基づく判断を要求したものと考えられる。
 ② 東京高等裁判所平成元年3月30日決定(高刑集42巻1号98頁)は,「双罰性
を考えるに当っては,犯罪構成要件の規定の仕方は国によって異なる場合が少なく
ないので,単純に構成要件にあてはめられた事実を比べるのは相当でなく,構成要
件的要素を捨象した社会的事実関係に着目して,その事実関係の中に我国の法の
下で犯罪行為と評価されるような行為が含まれているか否かを検討すべきであると
解される(法2条4号が引渡犯罪に係る「行為」との文言を使用していることに留
意)。」旨判示しており,双罰性については,請求国における法的評価を離れ構成要
件的観点を捨象した生の行為ないし自然的,社会的事実関係そのものについて判断
すべきとされているところ,この判断は,法2条6号の「引渡犯罪に係る行為」に関し
ても同様に当てはまり,構成要件的要素を捨象した社会的事実関係の中にある日本
国の法の下で犯罪行為と評価される行為について,これを行ったことを疑うに足りる
相当な理由があるか否かを審査することになると解すべきである。
 ③ 補佐人は,条約3条が「引渡しの請求に係る犯罪」と規定していることを根拠と
して,請求国における法令に基づく引渡犯罪そのものの嫌疑が必要である旨主張す
るが,条約は,4条1項(2)において「被請求国において引渡しの請求に係る犯罪につ
いて訴追されている場合」を引渡拒絶事由として掲げるなど,請求国及び被請求国
のいずれにおける手続についても「引渡しの請求に係る犯罪」という用語を用いてお
り,同用語を用いていることを理由に補佐人主張のような解釈を導くことには無理が
ある。
 ④ 条約3条は,嫌疑の相当性判断の準拠法として「被請求国の法令
上(accordingtothelawsoftherequestedParty)」と明記しているのであるから,請
求国の法令に基づく引渡犯罪についての嫌疑の相当性を判断すべしというのは特異
な解釈である。
 そこで検討するに,まず,法が「引渡犯罪」と「引渡犯罪に係る行為」を区別して用
いていることは確かであるが,そのことが「引渡犯罪に係る行為」に「引渡犯罪」に該
当する行為が含まれないと結論付ける根拠になるものでないことは既に述べたところ
から明らかである。また,検察官は,被請求国の裁判官が外国法令を解釈すること
は困難である旨主張しているが,審査の対象はあくまで事実の存否であり(規則10
条1項,5条2項2号は審査請求書に「引渡犯罪にかかる行為」を記載することを義務
付けている。),一定の法解釈を前提とするいわゆる規範的事実についても,もとより
厳密な法解釈を前提にする必要はなく,文献や裁判例等を資料として相応の妥当性
を有すると考えられる法解釈の範囲内で判断すれば足りるのであるから,上記のよう
な立場を採っても被請求国の裁判官に特段の困難を強いるものとは解されない。
 次に,検察官は,上記東京高等裁判所決定を自説の根拠として挙げるが,双罰性
について,請求国の構成要件に該当する事実そのものではなくその背後にある自然
的,社会的事実の中に我が国の法の下で犯罪行為と評価される行為が含まれてい
るかどうかを検討するべきであるということから,請求国の構成要件に該当する事実
についての嫌疑が不要であることが導かれるとするのは,明らかに論理の飛躍であ
る。そして,上記東京高等裁判所決定の事案においては,我が国の法の下で犯罪行
為と評価される行為が,請求国の法令に基づく引渡犯罪に該当する行為を包含する
関係にあったことから,本件のような問題は生じなかったものであり,同決定は,その
判示自体から明らかなように,もとより,引渡犯罪についての嫌疑が不要であるとの
見解を示したものではないのである。また,これまでに東京高等裁判所においてなさ
れた逃亡犯罪人引渡審査請求事件の各決定を見ても,そのような見解を示したもの
は見当たらない(文献についても同様である。)。
 次に,検察官は,条約は,4条1項(2)において「被請求国において引渡しの請求に
係る犯罪について訴追されている場合」を引渡拒絶事由として掲げるなど,請求国及
び被請求国のいずれにおける手続についても「引渡しの請求に係る犯罪」という用語
を用いている旨主張しているが,条約が請求国及び被請求国のいずれにおける手続
についても「引渡しの請求に係る犯罪」という用語を用いているからといって,条約4
条にいう「引渡しの請求に係る犯罪」が我が国の法の下で犯罪行為と評価される行
為を意味することになるわけではない。すなわち,同条の趣旨は,請求国の法令に基
づく引渡犯罪と(我が国における「公訴事実の同一性」と同じような意味における)事
実の同一性が認められる被請求国の法令に基づく犯罪について被請求国において
訴追されている場合等を引渡拒絶事由として定めるものと解されるところ,その要件
を充足しているかどうかを検討する上では,まずもって請求国の法令に基づく引渡犯
罪はいかなるものかを取り上げ,その上で,当該犯罪と被請求国において訴追され
ている犯罪とがいかなる関係にあるのかを考えることになるはずであるところ,仮に
同条にいう「引渡しの請求に係る犯罪」が直接的に被請求国の法令に基づく犯罪を
意味するとすると,同条の上で,当該犯罪と請求国の法令に基づく引渡犯罪との関
係を規定する部分が存在しなくなってしまうのである。そうすると,ここにいう「引渡し
の請求に係る犯罪」とは,あくまで請求国の法令に基づく引渡犯罪であり,その犯罪
について被請求国において同一性の認められる犯罪によって訴追されている場合等
という趣旨を,「引渡しの請求に係る犯罪「について」訴追されている場合」という文言
で言い表したものと解されるのである。
 次に,検察官は,条約3条が嫌疑の相当性判断の準拠法について「被請求国の法
令上」(英文では「accordingtothelawsoftherequestedParty」)と規定していること
を指摘するが,当該条文全体の英文は,「Extraditionshallbegrantedonlyifthereis
sufficientevidencetoproveeitherthatthereisprobablecausetosuspect,
accordingtothelawsoftherequestedParty,thatthepersonsoughthascommitted
theoffenseforwhichextraditionisrequestedorthatthepersonsoughtisthe
personconvictedbyacourtoftherequestingParty.」というものであり,その文章か
らして,「被請求国の法令上」は「疑うに足りる相当な理由があること」に係ると解され
るのであって,要するに,被請求国の法令に従って嫌疑を判断しなければならないと
の趣旨にすぎないと解されるのである。
(なお,条約7条2項が「請求国は,引渡しの理由となった犯罪を構成する基本的事
実に基づいて行われる限り,第2条1の規定に従い引渡しの理由となるべきいかなる
犯罪についても,この条約の規定に従って引き渡された者を拘禁し,訴追し,審判し,
又はその者に対し刑罰を執行することができる。」と規定していることも問題となり得
るが,条約7条2項は,同条1項とともに,いわゆる特定主義(請求国は引き渡された
者を引渡しの理由となった犯罪以外の犯罪であって引渡しの前に犯されたものにつ
いて訴追等することができないという国際法上の原則)について定めた規定であると
ころ,特定主義をどのように定めるかは,そもそも罪責立証を必要としない法制にお
いても問題になることであるから,罪責立証の範囲及び程度等と特に関連性を有す
るものではないと解される。)
 2 嫌疑の有無
 以上のとおりであるから,本件においては,請求国の法令に基づく引渡犯罪である
ところの,引渡しの請求に係る各犯罪について,Aがこれを行ったと疑うに足りる相当
な理由があることを証明する十分な証拠がなければ,その余の点について判断する
までもなく,逃亡犯罪人を引き渡すことができない場合に該当することになる。
 本件審査請求書によれば,上記引渡しの請求に係る各犯罪の要旨は,以下のとお
りである(なお,引渡犯罪名は,共謀罪(下記第1の1及び2),経済スパイ罪(同第2
及び第3),盗品州外輸送罪(同第4)である。)。
「Aは,米国オハイオ州クリーブランド市所在のB財団(以下「B」という。)のC研究所
に勤務していたものであるが,
第1 1998年1月から1999年7月ころにかけて,
1 下記第2及び第3記載の経済スパイ罪に該当する違法行為を行うことをD(以下
「D」という。)らと共謀し,
2 下記第4記載の盗品州外輸送罪に該当する違法行為を行うことをDらと共謀し,
第2 Dらと共謀の上,1999年7月ころ,日本国埼玉県に所在する特殊法人E(以下
「E」という。)の利益に資することを意図し,又は知りながら,C研究所の第164号研
究室において,Bの研究者により開発された同財団の財産である実験用ガラス容器
入りの10種類のDNAと細胞系の試薬等を窃取し,もって外国機関の利益に資する
ことを意図し,又は知りながら営業秘密を窃取等し,
第3 Dらと共謀の上,Eの利益に資することを意図し,又は知りながら,そのころ,同
所において,Bの研究者により開発された同財団の財産である実験用ガラス容器入
りの20種類のDNAと細胞系の試薬等を損壊し,もって外国機関の利益に資すること
を意図し,又は知りながら営業秘密等を破壊し,
第4 Dらと共謀の上,1999年7月ころ,窃取されたものであることの情を知りなが
ら,Bの研究者により開発された実験用ガラス容器入りのDNAと細胞系の試薬を米
国カンザス州カンザスシティ所在のD方に送付し,もって窃取されたものであることの
情を知りながら,5000ドル以上の物品を州外に輸送した。」
(以下,上記各事実を「犯罪事実第1の1」などと表記する。)
 検察官は,犯罪事実第2及び第3の各試薬等の所有権はBにあったのであり,Aに
よる上記試薬等の持ち出し,損壊行為は経済スパイ罪等に問擬される行為(以下便
宜「経済スパイ活動」という。)であった旨主張しており,Aが上記試薬等の持ち出し,
損壊行為に及んだ状況や,その前後に度々電子メールでEの関係者と連絡を取った
り,罪証隠滅工作と見られる行為に及んでいたことなどを内容とする,B関係者の宣
誓供述書等を提出している。しかしながら,それらの資料は,Aの側の言い分を踏ま
えた上で作成されたものではなく,主として一方当事者であるB側の主張や供述を取
りまとめたものである。また,上記の電子メールの内容にもAの行為が経済スパイ活
動であったことを推察させるような事項は含まれていない。他方,A及び補佐人は,A
が上記試薬等の持ち出し,損壊行為に及んだ事実は基本的に争わないが,持ち出し
あるいは損壊した試薬等の種類数を争い,また,それらの試薬等の所有権は上記第
164号研究室の主任研究員であったAにあったのであり,少なくともAはそのように
認識していたのであるから,Aの行為は営業秘密の窃取や破壊には当たらない,そ
れらの行為は,Aが,同研究室においてAの下で研究をしていた博士研究員であるF
(以下「F」という。)が自己に対して裏切り行為に及んだという同人に対する悪感情
や,同人に自己の研究を乗っ取られたくないという気持ちから行った,幼稚な嫌がら
せ行為にすぎず,経済スパイ活動などではない旨主張しており,補佐人は,Aの陳述
書や,上記持ち出し,損壊行為に係る試薬のほとんどが比較的容易に入手可能な材
料から難易度の比較的低い高価でない技術によって作成されていると推測されるこ
となどを記載した日本人研究者の陳述書等を提出している。このうち,Aの陳述書
は,Aが1992年に渡米し,他の日本人研究者に従事してアルツハイマー病の研究
を始めてから,1996年に「G」とのテーマでHのグラント(科研費)を取得し,1997年
にBに雇用された後も上記研究を継続していた状況や,研究の停滞に伴う心理的葛
藤やFとのあつれきなどから,1999年2月か3月ころ,米国での研究者生活に見切
りを付け,帰国してEに就職することを決意するに至った心境,その中で,Fに対する
嫌がらせ等として上記試薬等の持ち出し,損壊行為に及んだ状況などを具体的かつ
詳細に記述したものであり,AがEの利益のために経済スパイ活動としてBの営業秘
密を盗み出したり損壊したりしたのではないというAの言い分を,それなりの説得力を
持って説明しており,AがEの関係者と度々連絡を取っていたことや罪証隠滅工作と
見られる行為に及んだことなどについても,Eへの就職活動の目的や,Fと結託して
いると思われたB関係者にEへの就職を妨害されたくなかったなどという意図との関
係で,一応納得の行く説明を加えているものということができる。また,上記日本人研
究者の陳述書についても,それ自体疑わしい内容を含んでいるものと見るべき理由
はなく,Aが経済スパイ活動をしたとの推認に消極に働くものということができる。さら
に,AがBから持ち出した試薬等がEの研究に用いられるなどし,それがEに多大の
利益をもたらしたなどという事実があるとすれば,そのことは,Aが上記試薬等の持ち
出し,損壊行為に及ぶに際してEの利益に資することを意図し,又はこれを認識して
いたことを推認させる事情ということができようが,そのような事実があったとは認め
難い。
 なお,通常の場合,逃亡犯罪人は文字どおり逃亡しているのであるから,請求国
側があらかじめ逃亡犯罪人の言い分を知ることは困難であるということもできるが,
本件においては,A側が,平成11年(1999年)10月以降,米国の検察側に対して,
自己の言い分を聞いてほしい旨の申入れを再三行っていたのに,それが聞き入れら
れないままに,平成13年5月に起訴がなされたという事情がある(検察官はその旨
の補佐人の主張を争っていない。)。さらに,条約8条7項は,「被請求国の行政当局
は,引渡しを求められている者の引渡請求の裏付けとして提出された資料がこの条
約の要求するところを満たすのに十分でないと認める場合には,自国の裁判所に当
該引渡請求を付託するかどうかを決定する前に請求国が追加の資料を提出すること
ができるようにするため,請求国に対しその旨を通知する。被請求国の行政当局は,
その資料の提出につき期限を定めることができる。」と規定しているところ,平成14
年3月に米国から我が国に対して引渡請求があった後,本件審査請求がなされるま
でに約2年間を費やしているが,その間の平成14年5月から平成15年11月にかけ
て,補佐人と同一の弁護士が法務省に対して上記と概ね同趣旨のA側の主張ないし
陳述を記載した意見書多数を提出していたという事情も認められる。
 そこで,これらの事情も踏まえて,現時点において双方から提出された一切の資料
を総合して検討すると,犯罪事実第2及び第3の経済スパイ罪について,Aが,上記
試薬等の持ち出し,損壊行為に及ぶに際して,Eの利益に資することを意図し,又は
これを知っていたと疑うに足りる相当な理由があるとは認められないというべきであ
る。
 さらに,犯罪事実第4の盗品州外輸送罪については,検察官自身,本件窃取及び
損壊に係る試薬の市場価値を割り出すことは困難であるし,その意味もない,それら
の商業的価値は算出不能である旨自認しており(平成16年2月9日付け意見書),
犯罪事実第4の盗品州外輸送罪について,輸送に係る試薬が5000ドル以上の物
品であったと疑うに足りる相当な理由があるとは認められないことが明らかである。
 また,以上からすれば,犯罪事実第1の1及び2の共謀罪についても,Aがこれら
の罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるとは認められないことが明らかであ
る。
 第3 結論
 以上のとおりであり,本件は,条約3条の逃亡犯罪人が引渡しの請求に係る犯罪
を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを証明する十分な証拠がある場合に該
当しないから,その余の点について判断するまでもなく,法10条1項2号により,逃亡
犯罪人を引き渡すことができない場合に該当する旨の決定をすることとして,主文の
とおり決定する。
(裁判長裁判官 須田 賢 裁判官 井口 修 裁判官 西田時弘)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛