弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を千葉地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は、千葉地方検察官検事出射義夫作成の控訴趣意書記載のとおり
であるからこれを引用し、これに対し当裁判所は次のように判断する。
 控訴趣意第一点について
 所論は要するに、原判決は、本件公訴事実中の強姦未遂の点については、刑事訴
訟法第二三五条第一項所定の期間経過後に告訴がなされたのであるから該告訴は右
法条に違反し無効であり、従つてこれを看過してなされた本件強姦未遂の公訴提起
手続は無効であるとして該公訴を棄却したが、右は事実を誤認したか又は右法条の
解釈適用を誤つた結果不法に公訴を棄却したものであるから、原判決は破棄を免れ
ない、というのである。
 よつて審案するに、原判決が所論のとおり本件強姦未遂事件の被害者A及びその
法定代理人Bは本件被害当日である昭和三六年七月一八日に既に犯人を知つていた
にかかわらず、その後二年一ケ月余を経過した昭和三八年九月七日に至つて初めて
告訴状を提出し或は司法警察員に対し告訴の意思を表明したことが認められるか
ら、該告訴の意思表示は刑事訴訟法第二三五条第一項に違反しその効なく、該公訴
提起手続は無効であるとして公訴を棄却したことは、原判決に徴し明らかである。
 <要旨>そもそも刑事訴訟法第二三五条第一項にいわゆる犯人を知つたとは、犯人
が何人であるかを知つたことをいい、犯人の氏名、年令、職業、住居等の詳
細を知る必要はないが少くとも犯人を他の者と区別して特定することができる程度
に認識しなければならないのである。しかして親告罪の告訴は犯人との関係その他
諸般の事情を考慮して決定されるものであり、特に犯人が誰であるかは、告訴の意
思決定に重要な意味をもつものであるから、被害者がかかる考慮をなし得る程度に
犯人を特定し得ない以上未だ犯人を知つたとはいい得ないものと解すべきである。
 そこで、以上の見解の下に、本件被害者及びその法定代理人が犯人を知つた時期
について検討するに、Aの司法警察員に対する各供述調書(二通)、同人の検察官
に対する供述調書、B作成の告訴状、同人の司法警察員に対する供述調書並びに証
人Bの当審公判廷における供述を総合すれば、本件被害者A(当時一五年)は昭和
三六年七月一八日午後五時頃中学校より帰宅の途中ひとり本件現場の山道にさしか
かつた際、前方より歩いて来た男に突如右手を掴まれ胸に果物ナイフを突きつけら
れて附近の山林中の細道に引張り込まれたが、男が掴んでいた手を緩めた隙に急い
で逃げ帰り難を免れたものであるところ、被害者にとつて右犯人は当日偶々同所に
おいて出会つた見知らぬ男であつて、その氏名、住所、職業はもとより、どこの誰
であるかの見当さえつかず、只その人相、服装等につき三〇才位の細面、痩形、背
は普通より少し大きいように思われる男で、シャツとズボンを着用し、地下足袋を
履き、星のマークのついている宣伝帽を被り、風呂にも入らないらしく汗臭くて乞
食のように感じられたという程度の認識があるに過ぎなかつたところ昭和三八年九
月七日佐倉警察署員から被告人の写真を示され「犯人によく似ている」と述べて告
訴の意思を表明し、更に同年一〇月一二百警察署において被告人に面接させられ
「犯人に相違ない」旨確認したことが認められるのであつて、被害者たるAは右九
月七日までは犯人について人相服装などはやや詳細に記憶しているものの、犯人と
はかつて面識もなく何処の誰であるかは明らかでないのであつて、かかる認識の程
度では未だ犯人を他の者と区別し告訴の意思を決定しうる程度に犯人を知つたとは
いい得ないというべく同日被告人の写真を示され改めて犯人を特定し得たときはじ
めて犯人を知つたものと認むべきである。
 つぎに被害者の法定代理人(実母)Bは、本件発生当日夕刻被害者が中学校教師
と巡査に送られて帰宅したので本件の発生を知り、同日夜被害者に当時の模様を尋
ねてみたが、被害者より犯人の人相、服装等を聞いただけでは、犯人がどこの誰で
あるか全く見当がつかず、かような犯人は厳重に処罰して貰いたいと思つたけれど
も、万一犯人が近在の知り合いの者であつたならば告訴をしたために却つて困つた
事態に立ち至るかも知れないと考え、告訴を見合わせていたところ、昭和三八年九
月七日に至り被告人を検挙した佐倉警察員より、犯人は各地で悪事を重ねた男で遠
方の者であると教えられたので、告訴することを決意し、同日同署長宛てに告訴状
を作成提出したものであることが認められるのであつて、かかる状況の下において
は右Bは右同日まで犯人を他人と区別して特定し得なかつたものであり、右同日に
いたつてはじめて被告人を犯人として知つたものと認むべきである。
 されは被害者Aが昭和三八年九月七日司法警察員に対して表明した告訴の意思表
示並に同日被害者の法定代理人Bが司法警察員に対してなした告訴状による告訴は
いずれも適法有効なものと解すべきにかかわらず、原判決が前記のように判示して
本件公訴を棄却したのは違法であり、論旨は理由がある。
 よつて、控訴趣意第二点(量刑不当の主張)に対する判断はこれを省略して、刑
事訴訟法第三九七条第一項、第三九八条により、原判決全部を破棄し、本件を原裁
判所である千葉地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 長谷川成二 判事 関重夫 判事補 松岡登)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛