弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の趣意のうち,憲法違反をいう点は実質は単なる法令違反の主張であり
,判例違反をいう点は所論引用の判例が事案を異にして本件に適切でなく,その余
は事実誤認の主張であって,いずれも少年法35条の抗告理由に当たらない。
所論にかんがみ,原審の審理手続の当否につき職権で判断する。
 本件は,外9名との共謀による強姦未遂保護事件で事実が争われ,原々審におい
て,検察官を出席させて審理した上,被害者の供述及び少年の自白供述(以下「被
害者の供述等」という。)の信用性には疑いがあるとして,少年を保護処分に付さ
ない決定をしたのに対し,検察官から重大な事実の誤認を理由として抗告受理の申
立てがなされ,これを受理した原審において,被害者の供述等の信用性に対する原
々決定の消極的評価は原々審が取り調べた証拠を前提とする限り是認できないとし
つつ,これを最終的に信用できるというためには,共犯者とされる者らのアリバイ
供述等(以下「アリバイ供述等」という。)の信用性につき更に審理を尽くす必要
があるとして,原審自ら,その点に関する事実の取調べを行い検討した上,原々決
定を取り消し,事件を家庭裁判所に差し戻す決定をしたことに対する再抗告の事案
である。
 所論は,原々審が検討していない点にまで踏み込んだ原審の事実の取調べや判断
の在り方が,事後審である抗告裁判所としての合理的な裁量の範囲を逸脱したもの
であるという。
 そこで検討すると,少年保護事件における非行事実の認定に関する証拠調べの範
囲,限度,方法の決定は,家庭裁判所の完全な自由裁量に属するものではなく,そ
の合理的な裁量にゆだねられたものであるところ(最高裁昭和58年(し)第77
号同年10月26日第一小法廷決定・刑集37巻8号1260頁),その【要旨1
】抗告裁判所による事実の取調べも,少年保護事件の抗告審としての性質を踏まえ
,合理的な裁量により行われるべきものと解される(少年法32条の6参照)。前
記のとおり,【要旨2】本件においては,原々審が取り調べた証拠を前提とする限
り,被害者の供述等の信用性に関する原々審の消極的評価は是認できないが,アリ
バイ供述等につき信用性の検討を行わない限り,被害者の供述等について最終的な
信用性の判断をすることができないというのであるから,原審が,アリバイ供述等
の信用性について,必要な事実の取調べをして検討した上で,原々決定を取り消し
,事件を差し戻したことは,合理的な裁量の範囲内として是認することができる。
 よって,同法35条2項,33条1項により,裁判官全員一致の意見で,主文の
とおり決定する。
(裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉
 徳治 裁判官 才口千晴)

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