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裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
,(「」「」。),被告は被告補助参加人以下補助参加人又は国と表記するに対し
1億5687万4536円の支払を請求せよ。
第2事案の概要
本件は,地方行財政の不正の監視,是正等を目的とする権利能力なき社団であ
る原告が,国は法律上その機関の敷地取得費用につき地方公共団体に負担を求め
ることができないにもかかわらず,宮城県が国に対し納付した平成20年度の国
直轄道路事業負担金及び国直轄河川事業負担金(以下,これらを総称して「国直
轄事業負担金というに国土交通省所轄の仙台河川国道事務所以下仙台河」。)(「
川国道事務所というの敷地取得費用1億5687万4536円が含まれてい」。)
たとして,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,宮城県の長である
被告に対し,国に対する上記敷地取得費用相当額の不当利得返還請求権を行使す
るよう求め,国が被告に補助参加した事案である。
1前提事実(認定根拠を示すほかは,当事者間に争いがないか,又は,明らか
に争いがない)。
(1)当事者
ア原告は,地方行財政の不正を監視,是正すること等を目的として,仙台
市民により結成された権利能力なき社団である(弁論の全趣旨。)
イ被告は,宮城県の長である。
(2)宮城県による負担金の支出
宮城県は,平成20年9月1日から平成21年3月31日までの間に,平
成20年度国直轄道路事業負担金として合計93億3418万0830円
,,を同年度国直轄河川事業負担金として合計64億5457万0550円を
それぞれ国に納付した。
上記の国直轄事業負担金には,仙台河川国道事務所の敷地(仙台市あすと
長町土地区画整理事業施行地内12街区①−1及び①−2画地。画地面積①
−1画地1753.06平方メートル,①−2画地2340.00平方メー
トル以下本件敷地というの取得費用9億4140万3800円①。「」。)(
−1画地4億0320万3800円,①−2画地5億3820万円。なお,
平成20年度の支出額は5億3820万円であるのうち1億5687,。),
万4536円が含まれていた(乙1,丙9の1及び2,弁論の全趣旨。)
本件敷地の取得費用における宮城県負担額の算出方法は,別紙1(枝番号
を含む。以下同じ)のとおりである(弁論の全趣旨。。)
(3)住民監査請求及び本訴の提起
ア原告は,平成21年4月30日,宮城県監査委員に対し,被告において
国に対し本件敷地の取得費用の支払を請求するなど適切な措置を執るよう
求める住民監査請求をしたが,同委員は,同年6月26日付けで,これを
棄却した。
イ原告は,平成21年7月22日,本訴を提起した(顕著な事実。)
(4)仙台河川国道事務所について
仙台河川国道事務所は,国土交通省所轄の東北地方整備局の所掌事務を分
掌するために国土交通大臣によって設置された国の機関であって,その法定
所掌事務は,別紙2の1のとおりであり(国土交通省設置法30条,同法3
2条地方整備局組織規則140条同規則別表第4平成20年度当時の,,),
仙台河川国道事務所内の組織及び各組織の業務内容は,別紙2の2のとおり
であった(丙12。)
2関係法令の規定
(1)地方財政法
地方財政法12条1項は,地方公共団体が処理する権限を有しない事務を
,,,行うために要する経費について法律又は政令で定めるものを除く外国は
地方公共団体に対し,その経費を負担させるような措置をしてはならない旨
規定し,同条2項は,同条1項に該当する経費として,国の機関の設置,維
持及び運営に要する経費等を規定する。
また,地方財政法4条の5は,国が地方公共団体に対し,直接であると間
接であるとを問わず,寄付金及びこれに相当する物品等を割り当てて強制的
に徴収これに相当する行為を含むするようなことはしてはならない旨規(。)
定する。
(2)道路法等平成20年度国直轄事業負担金納付時のもの以下法令につ(。,
き同じ)。
道路法49条は,道路の管理に関する費用につき,法律に特別の定めがあ
る場合を除くほか,当該道路の道路管理者の負担とする旨規定した上で,同
法50条,電線共同溝の整備等に関する特別措置法及び同法施行令,交通安
全施設等整備事業の推進に関する法律及び同法施行令並びに道路整備事業に
係る国の財政上の特別措置に関する法律及び同法施行令(以下,道路法を除
くこれら法律及びそれぞれに関する政令を総称して「道路法関連法令」とい
うが道路法49条の特例として特定の管理に要する費用につき国と。),,,
地方公共団体の負担割合を定めるが,その詳細は以下のとおりである。
ア道路法50条
(ア)国道の新設又は改築に要する費用(道路法50条1項)
a国土交通大臣が新設又は改築を行う場合
国が3分の2を,都道府県が3分の1を負担する。
b都道府県が新設又は改築を行う場合
国及び当該都道府県がそれぞれ2分の1を負担する。
(イ)国道の維持,修繕その他の管理に要する費用(道路法50条2項)
a道路法13条1項にいう指定区間以下指定区間という内の(「」。)
国道に係るもの
国が10分の5.5を,都道府県が10分の4.5を負担する。
b指定区間外の国道に係るもの
都道府県の負担とする。
c道路法13条2項による指定区間内の国道の維持,修繕及び災害復
旧以外の管理に要する費用
当該都道府県又は地方自治法252条の19第1項にいう指定市の
負担とする。
イ電線共同溝の整備等に関する特別措置法及び同法施行令
電線共同溝の整備等に関する特別措置法22条1項は,指定区間内の一
般国道に付属する電線共同溝の建設,改築,維持,修繕,災害復旧その他
の管理に要する費用に関する国の負担割合につき,原則として2分の1と
し,道の区域内の指定区間内の一般国道に係る国の負担割合につき,政令
で,2分の1を超える特別の負担割合を定めることができる旨規定し,こ
れを受けて,同法施行令11条は,その負担割合につき,3分の2とする
旨定める。
ウ交通安全施設等整備事業の推進に関する法律及び同法施行令
交通安全施設等整備事業の推進に関する法律6条1項は,道路管理者が
指定区間内の一般国道について実施する道路標識,さく,街灯等の道路の
附属物で安全な交通を確保するためのもの又は区画線の設置に関する事業
に要する費用につき,国の負担割合を2分の1とし,道の区域内の指定区
間内の一般国道に係る国の負担割合につき,政令で,2分の1を超える特
別の負担割合を定めることができる旨規定し,これを受けて,同法施行令
2条の2は,その負担割合につき,3分の2とする旨定める。
エ道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律及び同法施行令
道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律4条は,地方公
共団体に対する道路の舗装その他の改築に関する国の負担につき,道路法
の規定にかかわらず,10分の7の範囲内で政令で定める旨規定し,これ
を受けて,同法施行令2条は,高速自動車国道と一体となって全国的な自
動車交通網を構成する自動車専用道路として国土交通大臣が指定する一般
国道の改築で国土交通大臣が行うものに要する費用につき,国の負担割合
を原則として10分の7とする旨定める。
(3)河川法
河川法59条は,河川の管理に要する費用につき,法律に特別の定めがあ
る場合を除き,一級河川に係るものにあっては国,二級河川に係るものにあ
っては当該二級河川の存する都道府県の負担とする旨規定した上で,同法6
0条1項が特例として一級河川の管理に要する費用(指定区間内における管
理で同法9条2項の規定により都道府県知事が行うものとされたものに係る
。),費用を除くにつき国と一級河川の存する都道府県の負担割合を定めるが
その詳細は以下のとおりである。
ア改良工事のうち政令で定める大規模な工事に要する費用
国が10分の7を,都道府県が10分の3を負担する。
イア以外の改良工事に要する費用
国が3分の2を,都道府県が3分の1を負担する。
ウ維持及び修繕に要する費用
国が10分の5.5を,都道府県が10分の4.5を負担する。
エ上記アないしウ以外の管理に要する費用
国及び都道府県がそれぞれ2分の1を負担する。
3争点及びこれに対する当事者等の主張
本件の争点は,宮城県が国直轄事業負担金として本件敷地取得費用を負担し
たこと以下本件負担というが地方財政法12条1項等に反して違法(「」。),
無効となるかであるが争点に関する当事者補助参加人を含むの主張は次,(。)
のとおりである。
(1)原告
ア国が所管する事業については,国がその費用と責任で行うべきであり,
その事業遂行のために必要な機関の設置,維持及び運営に関する費用も当
然国が負担すべきであり,そうでなければ,地方公共団体は自らが責任を
負えない事柄につき予期せぬ費用負担を受けることとなり,地方自治が成
り立たなくなってしまう。
また,国の機関の設置によって地方公共団体が利益を受けることが見込
まれるとしても,それは国と地方公共団体との役割分担が当然に予定した
ことであるから,受益者負担の原則の見地から,例外的に国がある事業の
ために要した費用の一部を地方公共団体に負担させることが認められる場
合であっても,それはこれら事業のために直接必要な経費(例えば,国道
の新設又は改築に要する費用については,工事業者への支払のほか,工事
管理のための現場事務所設置費用,宿泊費用等)に限定されなければなら
ず,換言すれば,負担金は,あくまでも事業によって直接に受ける利益に
応じた負担に限定されるべきもので,事業内容等と無関係な人件費,施設
費等を対象とすることはできない。このように解さず,何らかの受益があ
ることを理由として負担金の対象とすることが許容されるのであれば,国
土交通省庁舎の建設費すら地方公共団体に負担を求めることができること
となる。
このほか,国が地方公共団体に対し交付する補助金においては,個別工
事に際して設置される現場事務所の設置費用のみが会計費目にいう工事費
中の営繕費として対象に含まれるが,土木事務所のように恒常的に設置さ
れる地方公共団体の庁舎の建設費等は対象に含まれておらず,補助金と負
担金とで取扱いを異にすることは許されない。
なお,仙台河川国道事務所の敷地を新たに購入する必要はなく既存の庁
舎を増改築をすれば足りるといった新規購入の必要性に関する判断が受益
者負担の概念とは無関係に国の一存でされるものであることも,本件負担
の不当性を表すものである。
結局,道路法等が規定する負担金の対象は,これらの条文が規定する事
業を行うために直接必要な経費に限定されるのであって,個別工事等の事
業と直接関係のない本件敷地の取得費用のような恒常的に設置される庁舎
の建設費等を含むものではないところ,他に国の機関の設置に要する経費
につき地方公共団体の負担割合を定めた法令は存在しないから,国の恒常
的機関として設置された仙台河川国道事務所に係る本件負担は,地方財政
法12条1項に反する。
イまた,被告及び補助参加人が主張する別紙1の本件敷地の取得費用にお
ける宮城県負担額の算出方法は,道路事業分と河川事業分を区分するに際
して事業費割合のみに基づいて算出しているわけではなく,仙台河川国道
事務所の平成20年度実施事業における各事業に要する費用に対して本件
敷地の取得費用を割り付ける方法で計算されたものではないなど,本件負
担の適法性を裏付けるものではないだけでなく,事業実施に関する地方の
受益に応じた負担という負担金の概念に反するが,そのような計算方法に
なるのは,本件敷地の取得費用が事業実施に要する費用ではなく事業主体
の維持運営に要する費用であるからにほかならない。
ウこのほか,本件負担は,本件敷地が国有地としての財産的価値を保持し
たまま残っていくものであり(この点で国道用地とは異なる,損失がな。)
いのに支払を求めるものであることからすると,実質的には寄付の強要に
ほかならず,地方財政法4条の5にも反する。
(2)被告及び補助参加人
道路法49条が規定する「管理」に関する費用とは,管理権の作用として
行われる一切の行為に要する費用をいい,条文上,直接経費に限定されてい
るわけではないところ,本件敷地の取得費用についても,道路を管理等する
には具体的な人的物的手段が不可欠である以上,道路法所定の事業に要する
費用に含まれるのであって,この点は,河川法等の各法令においても,同様
に解されるから,これら法令は,地方財政法12条1項所定の「法律又は政
令」に当たり,結局,本件負担は,同条項に反するものではない。
なお,特別会計に関する法律は,社会資本整備事業特別会計として,道路
法50条等に基づいて拠出された負担金を道路整備勘定等の繰入金として業
務勘定の歳入に充てた上で,当該歳入を業務勘定の歳出として「道路整備事
業,道路関係附帯工事及び道路関係受託工事の業務取扱いに関する諸費」に
(,,,充てることを規定する201条2項1号ロ同項2号ハ同条5項1号ロ
同項2号ロところ道路整備事業道路関係附帯工事及び道路関係受託工),「,
事に要する費用(これらの事業又は工事の業務取扱いに関する諸費及び社会
資本整備に関する横断的な調査に要する費用を除く」が道路整備勘定の歳。)
出とされている(同条2項2号イ)ことからすると,前記「道路整備事業,
道路関係附帯工事及び道路関係受託工事の業務取扱いに関する諸費」とは,
各工事費用のうち道路整備勘定の歳出から除かれた業務取扱費一般のことで
あり,営繕宿舎費のほか,職員人件費等の諸費用が含まれることが明らかで
あり,このことは,本件負担の正当性を裏付けている。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,本件負担につき,地方財政法12条1項等に反して違法無効にな
るとはいい難いと判断するが,その理由は,以下のとおりである。
1(1)まず道路法49条が規定する管理に関する費用について被告及び,「」,
補助参加人は,直接経費,間接経費を区別することなく,これに要する一切
の費用を指すことを前提にするものである旨主張するのに対し,原告は,こ
れら費用は,道路法等が規定する事業を行うために直接必要な経費に限定さ
れるべきである旨主張する。
(2)そこで検討するに地方財政法12条1項は国が処理する事務に要す,,,
る経費は国が全額負担すべきであるという負担区分の原則を前提として,地
方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費につき,
国が地方公共団体に対して法令上の根拠なしにその経費の全部又は一部を負
担させることを原則として禁止した上で,法律又は政令において,その例外
を認めているが,その趣旨は,地方公共団体が処理する権限を有しない事務
であっても,当該事務の遂行の結果が当該地方公共団体の住民の利益を増進
するものについては,法令上の根拠をもって地方公共団体に負担させること
にあると解される。
そして,道路法49条は,道路の管理者が費用の負担者であることを原則
とし,同法50条及び道路法関連法令が,国道の管理費用につき,主に受益
者負担の見地にたって,その住民が国道の管理によって生じる利益を受ける
ことができる国道沿線の地方公共団体も一定割合を負担することが相当であ
るとの趣旨から,国と地方公共団体の負担割合を定めるものと解される。
このように,道路法50条及び道路法関連法令所定の負担割合は地方財政
法12条1項の趣旨を受けて規定されたものと解されるところ,道路法49
条にいう「管理」とは,およそ道路管理権の作用として行われる一切の行為
をいい,具体的には,道路の新設,改築,維持,修繕,災害復旧,占用許可
等の行政処分,道路台帳の調整等をいうものと解されるが,これら事務のう
ち,例えば,占用許可等の行政処分及び道路台帳の調整に関しては,申請の
受付,検討,決裁,書類の管理等の日常的な事務そのものであって,河川国
道事務所等の人的物的結合体の活動自体が管理に該当するともいい得ること
からすれば,庁舎及び人員の整備自体に要する費用はこれら事務の遂行に直
接要する経費ということができ,新設,改築,維持,修繕及び災害復旧に関
しても,単発的な工事の発注だけではなく,その前提として日常的かつ継続
的に調査及び情報収集を行った上で分析,企画,立案等の事務を行うことが
当然に予定され,特に改築,維持及び修繕については,日常的かつ継続的に
国道の交通状況に関する情報等を収集したり国道の状態を観察したりするこ
とが不可欠であって,庁舎及び人員の整備に要する費用は,やはり,新設,
改築,維持,修繕及び災害復旧の不可分な一部であるこれら日常的かつ継続
的な事務に直接要する費用ということもできるから,こうした道路法所定の
「」,「」,管理の意義に照らすと原告のいう国道の管理に直接必要な経費は
極めて相対的な概念であって,国直轄道路事業負担金としての負担の可否を
決する概念としては機能し難い面があるといわざるを得ない。
,,,,(3)また河川法も地方財政法12条1項を受けて河川法59条において
一級河川の管理費用につき,原則として国の負担とした上で,同法60条に
おいて,一級河川の管理費用につき,主に受益者負担の見地にたって,河川
の管理によって生じる利益を直接に受けることができる一級河川流域の都道
府県も一定割合を負担することが相当であるとして,国と地方公共団体の負
担割合を定めるものと解されるところ,河川法59条にいう「管理」とは,
,,河川管理者が河川の管理権の作用として行う一切の行為をいい具体的には
河川工事,河川の維持修繕,河川台帳の調整,河川使用の許可,河川に関す
,,,,,る規制等の行政管理河川区域河川保全区域河川予定地河川立体区域
河川保全立体区域,河川予定立体区域の指定等をいうものと解され,こうし
た河川法所定の「管理」の意義に照らすと,やはり,原告のいう一級河川の
「管理」に直接必要な経費は,国道の場合と同様に,極めて相対的な概念で
あって,国直轄河川事業負担金としての負担の可否を決する概念としては機
能し難い面があるといわざるを得ない。
(4)さらに具体的な仙台河川国道事務所の事業内容をみても別紙2の2の,,
とおり,仙台河川国道事務所は,宮城県の地勢,気象状況,過去の災害にお
,,,,ける被災状況人口推移広域圏別人口割合の推移年齢別人口割合の推移
,,,,,人口増減率就業人口割合等の情報を収集調査分析した上で災害対策
福祉サービス機能の向上,交通問題対策,地域経済発展,地域住民の安全な
,,,生活の確保等の観点から各業務分野に対応した課を設けまちづくり支援
広報等各種の活動を通して地域住民とのコミュニケーションを図って地域の
ニーズを把握しながら,別紙2の1のとおり,広範な業務を所掌しているの
であって,これら事業に要した費用について,仙台河川国道事務所の法定所
掌事務に直接必要なものであるか否かによって,国直轄事業負担金としての
負担の可否を決することには,困難な面があるといわざるを得ない。
(5)そうすると仙台河川国道事務所が道路法及び道路法関連法令並びに河川,
法所定の事業に要した費用に関し,原告が主張するような区分で国直轄事業
負担金としての負担の可否を決することは,抽象的かつ理念的には,特に外
部発注工事を伴う単発的な新設事業又は改築事業を念頭におくと,地方分権
に配慮した分かりやすい基準であるということはできるものの,道路法及び
河川法各所定の「管理」全般を視野に入れると,実際には,本件負担の適否
を決する基準としては機能し難い面があるといわなければならず,道路法等
の解釈として,当然に直接経費,間接経費を区別した取扱いが導かれるとは
いい難い。
(6)この点に関し原告は何らかの受益があることを理由として負担金の対,,
象とすることが許容されるのであれば,国土交通省庁舎の建設費すら地方公
共団体に負担を求めることができることとなる旨主張する。
しかし,国土交通省庁舎と仙台河川国道事務所との区別については,法定
所掌事務に着目してその内容が地方公共団体の住民に利益をもたらすものか
,,否か等の観点から合理的にこれを行うことが可能でありこの点に関連して
原告が,地方整備局組織規則140条2項及び同条3項によれば仙台河川国
道事務所が一定の場合に別紙2の1の法定所掌事務以外の事務を行うことが
あり,また,仙台河川国道事務所が独自に組織自体の広報活動を行っている
旨指摘するところについても,前者は,同条2項及び同条3項は,形式的な
管轄規定によって生じ得る不都合を回避するための規定と解され,後者は,
地域の特徴に応じた事業を行う上で広報活動等も付随的事務として必要であ
るといい得るのであって,原告の指摘する点によって仙台河川国道事務所の
法定所掌事務が不明確であるとか,専ら特定の地方公共団体以外の利益とな
,。るものを含むなどとはいい難いから原告の主張を採用することはできない
(7)また原告は国が地方公共団体に対し交付する補助金においては土木,,,
事務所のように恒常的に設置される地方公共団体の庁舎の建設費等は対象に
含まれておらず,補助金と負担金とで取扱いを異にすることは許されない旨
主張する。
確かに,国が地方公共団体に対し交付する補助金に関しては原告指摘の実
情が認められる(乙8)けれども,道路法上,補助金と負担金とでは対象を
異にする部分があること(同法50条1項,2項によれば,地方公共団体が
補助金を受けて行うことが予定されているのは新設又は改築のみである,。)
土木事務所と仙台河川国道事務所がその所掌事務等につき異なっていること
弁論の全趣旨補助金ないし負担金の負担割合については受益者負担と(),,
いう観点のほか,実施事業の性格,税収入の配分,国家財政及び地方財政の
状態等をも踏まえて各々政策的に判断されるものであり,現に,国道の新設
又は改築に要する費用につき,道路法50条1項は,国が事業を実施した場
合の地方公共団体の負担割合と,地方公共団体が事業を実施した場合の地方
公共団体の負担割合とに,差異を設けていることにかんがみると,補助金と
負担金とで同一の取扱いをすべきことを前提とする原告の主張は採用できな
い。
(8)このほか原告は仙台河川国道事務所の敷地を新たに購入する必要はな,,
く既存の庁舎を増改築をすれば足りるといった新規購入の必要性に関する判
断が受益者負担の概念とは無関係に国の一存でされるものであること等を指
摘して,地方財政法12条1項違反を主張するが,そのような必要性の判断
は,典型的な国道の新設,改築等に際してもされるものである上,庁舎が永
続性のあるものでない以上,庁舎を新築するか増改築するかという問題は当
然起こり得るものであるから,国道の管理等の事業を実施する上で不可欠な
庁舎の存続に関する判断が受益者負担の概念と全く無関係にされるとはいう
ことはできず,その他原告が種々主張する点を考慮しても,本件負担を地方
財政法12条1項に反して違法無効ということは困難である。
(9)なお被告及び補助参加人が援用する特別会計に関する法律は単に道路,,
法50条等により地方公共団体から納付された負担金を営繕宿舎費等に支出
することを許容するのみであり,直ちに負担金の算出方法の在り方を規定す
るものではなく,積極的に本件負担の正当性を基礎付けるものとはいい難い
が,本件負担と営繕宿舎費等も基礎として算出した負担金を営繕宿舎費等に
も充て得ることとは体系的に整合性が高いということができる。
(10)結局,道路法49条が規定する「管理」に関する費用について,直接経
費,間接経費を区別することなく,形式的な文理のとおり,これに要する一
切の費用を指すことを前提にしたことをもって,本件負担を違法無効である
ということはできない。
2(1)つぎに原告は別紙1の本件敷地の取得費用における宮城県負担額の算,,
出方法につき,道路事業分と河川事業分を区分するに際して事業費割合のみ
に基づいて算出しているわけではないこと,仙台河川国道事務所の平成20
年度実施事業における各事業に要する費用に対して本件敷地の取得費用を割
り付ける方法で計算されたものではないこと等を指摘し,事業実施に関する
地方の受益に応じた負担という負担金の概念に反する計算方法であり,その
ような計算方法になるのは,本件敷地の取得費用が事業実施に要する費用で
はなく事業主体の維持運営に要する費用であるからにほかならない旨主張す
る。
,,「」(2)しかし上記1のとおり本件敷地の取得費用が道路法等所定の管理
に要する費用に該当すると解することをもって直ちに違法であるとはいい難
いところ,そこでみた国道及び一級河川の「管理」の意義等に照らせば,単
に平成20年度に実施した事業に要したとされる予算額のみならず,各事業
に従事する職員数及び各事業で等分に負担すべき要素を考慮するなど別紙1
のような計算方法をとることは,道路法等の受益者負担の趣旨に即した一つ
の負担金の算出方法ということができるから,原告が主張する点をもって,
本件負担が道路法等の受益者負担の趣旨に反するということはできない。
3さらに,原告は,本件負担につき,国道用地と異なり本件敷地の所有権がそ
のままの財産的価値を保持したまま国に帰属するなどとして実質的には寄付の
強要にほかならず,地方財政法4条の5に反する旨主張するが,本件敷地と国
道用地は,公用財産と公共用財産の違いはあれ,いずれも行政財産であって,
法的に有意な財産的価値の相違を見出すことはできない上,上記のとおり,本
件負担は,地方財政法12条1項の例外を定める法律又は政令に従ってされた
ものであるといい得る以上,強制的な徴収とはいえないから,同法4条の5に
反するものではない。
4なお,証拠(甲1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,国は,全国知事会
の要望等を踏まえ,平成25年度までに国直轄事業負担金を段階的に廃止する
方針の下,請求が遅れていた平成21年度の国直轄事業負担金については,退
職手当及び営繕宿舎費を対象から除外して地方公共団体に請求することとした
事実がうかがわれるが,これは,その経過,内容等に照らし,国直轄事業負担
金全廃に至る過程における世論の動向等に配慮した謙抑的な方向での解釈の変
更という政策的判断に基づくものと理解することができるから,このことをも
って,本件負担を違法無効ということはできない。
第4結論
以上によれば,原告の請求には理由がないからこれを棄却することとし,主文
のとおり判決する。
仙台地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官畑一郎
裁判官廣瀬孝
裁判官雨宮隆介

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
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応募方法
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
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ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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応募方法
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