弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

判決 平成14年11月14日 神戸地方裁判所 平成14年(わ)879号 事後
強盗被告事件
主    文
   被告人を懲役3年に処する。
   この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
   押収してある催涙スプレー1本(平成14年押第138号の1)を没収す
る。
理    由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成14年7月23日午後7時10分ころ,神戸市A区B町c丁目d
番e号所在のFビル地下1階GB店において,同店店長H管理にかかるコンパクト
ディスク3点(販売価格合計9514円相当)を窃取したが,同店に設置された防
犯センサーが作動し,同店店員I(当時24歳)及び同J(当時24歳)に追跡さ
れた上,同日午後7時11分ころ,同区B町k丁目l番m号先歩道上において,追
いつかれ,前記両名から取り押さえられるや,逮捕を免れるため,所携のウエスト
ポーチから取り出した催涙スプレー(平成14年押第138号の1)を背後にいた
前記両名の顔面に向けて,被告人の右肩越しに各1回吹き付ける暴行を加えたもの
である。
(証拠の標目)-カッコ内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号
 省略
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は,被告人が逃走中,追いかけてきた店員2名の顔面に催涙スプレーを吹
き付けた行為は,被害者らの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行とはいえないとし
て,本件犯行は事後強盗ではなく,恐喝罪あるいは窃盗罪と傷害罪が成立するにと
どまると主張するので,検討すると,前携関係各証拠によれば,被告人は,その右
後方から前記Iに,その左後方から前記Jにそれぞれ押さえ付けられ,I及びJの
身体が非常に接近し,その肩越し約20ないし30センチメートルの位置に前記両
名の顔面があるという状況において,前記両名の顔面付近に向けて,唐辛子の辛味
成分であるカプサイシン及びジヒドロカプサイシンを含有し,人や動物に局所投与
すると激痛を引き起こす判示催涙スプレーを吹き付ける行為に及んだものと認めら
れるところ,このような犯行当時の具体的状況を前提に検討すると,被害者らの顔
面に催涙スプレーを吹き付けた被告人の行為は,被害者らの反抗を抑圧するに足り
る程度の暴行であると優に認められる。弁護人の主張には理由がない。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は,刑法238条,236条1項に該当するが,なお犯情を考
慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽した刑期の範囲内で被
告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した
日から5年間その刑の執行を猶予することとし,押収してある催涙スプレー1本
(平成14年押第138号の1)は,判示犯行の用に供した物で被告人以外のもの
に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費
用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととす
る。
(量刑の理由)
 本件は,CDショップからコンパクトディスク3枚を万引きし,追いかけてきた
店員2名に対し逮捕を免れるために催涙スプレーを吹き付けたという事後強盗の事
案であるが,犯行の動機に斟酌すべき事情はなんらなく,その犯行態様も防犯タグ
の有無を確認して犯行に及ぶなど狡猾であり,万引した後被害店舗の店員である被
害者両名から追跡されて取り押さえられるや,人通りの多い時間帯の繁華街におい
て,同人らに対し激しく抵抗した上,至近距離から催涙スプレーを噴射したもので
危険かつ悪質な犯行であること,犯行当時,定職にもつかず自堕落な生活を送るな
どその生活行状全般が不良であったことなどを併せ考慮すれば,被告人の刑事責任
は重いといわざるを得ず,この際被告人を実刑に処することを考慮すべき事案であ
ると考えられるが,催涙スプレーを吹き付けた点は,逮捕をおそれた被告人が衝動
的に犯行に及んだものであり,計画的とはいえないこと,被害額がさほど多額とは
いえず,被害品は被害者に還付されたこと,被告人は相当期間の未決勾留を経て,
被害店舗の店長に対し謝罪文を送付するなど反省の情を深め,定職について更生す
る旨誓っていること,被告人の実父において前記店長に対し謝罪したこと,被告人
は幼少時から祖母に育てられたものであるが,本件を契機に千葉県に在住する実父
との交流が深まり,実父において被告人と同居してその監督をする旨誓っているこ
と,実父において金10万円を贖罪寄付したこと,被告人には罰金前科以外前科が
ないことなど被告人のために斟酌すべき事情もあるので,これらの事情をも十分考
慮し,主文のとおり量定した上,今回に限り,その刑の執行を猶予することとした
次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
   平成14年11月14日
     神戸地方裁判所第11刑事係甲
         裁 判 官   杉森研二

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛