弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人鈴木喜太郎提出の控訴趣意書に記載された通りであるか
らこれを引用し、右に対し当裁判所は左の如く判断する。
 弁護人の控訴趣意第一点は、本件公訴事実中には訴因が特定していない部分があ
るから、本件公訴は不適法として棄却さるべきである、即ち被告人は、本件起訴状
記載の各日時に、Aに対してはわいせつフイルム三巻を、Bに対しては合計五巻
を、Cに対しては二巻を販売し、各フイルムには夫々題名があり内容も異なるのに
本件起訴状にはAに対しては一巻、Bに対しては二巻、Cに対しては一巻を各販売
したとのみ記載していて、その題名を表示していないから、右起訴状では、被告人
は右A等に対し、何れの、如何なる題名、内容のわいせつフィルムを販売した事実
を起訴したものか明らかでない、結局本件起訴状の右各訴因は特定を欠き刑事訴訟
法第二五六条第三項に違反し、本件公訴は同法第三三八条第四号に則り棄却される
べきものである、と云い、同第二点は、原判決は前記起訴状記載事実をそのまま犯
罪事実として認定して原判決別表1記載の日時場所でAにわいせつフィルム一巻
を、別表2記載の日時場所でBに一巻を、別表12記載の日時場所でCに一巻を、
別表3、4及び10記載の各日時場所で三回に亘りDに、三巻、一巻及び一巻合計
五巻を夫々販売したと判示しているが、原判決挙示の証拠によれば右A等に対して
は右判示の巻数の外に更にそれぞれ一巻乃至数巻の題名、内容の異るフィルムを併
せて販売していることが明らかであるから、原判決別表1、2、3、4及び10の
判示は、被告人が数本のフイルムのうち何れの如何なる題名、内容のフイルムを販
売した事実を罪となるべき事実として認定したものか全く不明であり、又援用の証
拠によつてもこれを特定することができないから、原判決は審理不尽の違法を犯し
たものであるというのである。
 <要旨>よつて按ずるに、被告人が特定の日時場所で、一人の特定人に一回に各内
容の異るわいせつフイルム数本を販売した場合に、検察官は、その数本全部
の販売事実を起訴することも又一回に販売した数本のうちの一本乃至数本の販売事
実を起訴することも、その自由裁量に任かされたところである。そして後の場合に
はできるだけ、起訴状において、その数本のうち何れの一本乃至数本を販売した事
案を起訴したものであるかを明示特定することは、望ましいことではあるが、これ
を明示、特定しなかつたからといつて、直に起訴状の訴因が不特定で違法であると
いうことはできない。何となれば被告人のわいせつ図画販売の事実は、その行われ
た日時場所及び売渡された相手方が特定されているのであつて、被告人がその日時
場所でその相手方にわいせつ図画を販売した事実そのものは特定されているからで
ある。そしてこの事は、右の如き起訴状に基き判決する場合に、罪となるべき事実
を判示するに当つても同様であつて、一回に数本のわいせつフイルムを一人の特定
人に販売した場合に、その特定の日時場所においてその特定人にわいせつフィルム
一本を販売した旨判示し、その一本が数本のうちの何れの一本かを特定しなかつた
からといつて、直にその原判決は、被告人の犯罪事実を確定していないものとして
審理不尽の違法があるということはできない。そして原判決挙示の証拠(但し、
D、E、F、Gの各司法警察員に対する供述調書は何れもその謄本)中押収にかか
るフイルムを除くその余の証拠によつても、被告人は原判決別表1判示の日時場所
においてAに対し、男女性交等の場面を露骨詳細に撮影した八ミリ映画フイルム
「旅の宿」と題するもの一巻及び「入刺」と題するもの一巻合計二巻を、Bに対し
同表2判示の日時場所において右同様のわいせつフイルム合計四巻をそれぞれ各判
示の価格で販売し、Cに対し同表12判示の日時場所で「高校二年生」と題するわ
いせつフィルム一巻を判示価格で販売し、同時に被告人所有の「夜這」と題するわ
いせつフィルム一巻を右C所有のわいせつ録音テープ二巻と交換し、Dに対し同表
3判示の日時場所において前同様のフイルム合計三巻を、同表4判示の日時場所で
右同様のフイルム五巻を、同表10判示の日時場所で右同様のフイルム二巻をそれ
ぞれ販売した事実が認められる。従つて原判決別表1、2、4、10、12の各事
実については、証拠上は被告人がわいせつフイルム二巻乃至五巻を販売したものと
認められるに拘らず、本件起訴状は訴因として各一本を販売したものとして表示
し、原判決も各一本を販売したものと認定していることは所論のとおりであるが、
被告人が右別表1、2、4、10、12判示の日時に、同判示のA外四名の者に男
女性交の場面を露骨詳細に撮影したわいせつフイルムをそれぞれ販売したとのわい
せつ図画販売の事実自体は特定されていることは前に説示したとおりであつて、原
判決も右特定のわいせつ図画の販売を被告人の罪となるべき事実として判示してい
るのであるから本件起訴状の訴因が不特定で違法であるとの所論、及び原判決は罪
となるべき事実を確定せず審理不尽の違法があるとの所論はともに採用できない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 岩田誠 判事 飯守重任 判事 赤塔政夫)

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