弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 本件を高松地方裁判所に差し戻す。
第2 事案の概要
 次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」中,「第2 事案
の概要」記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決2頁24行目「11」の次に,「,21」を,同頁25行目「57」の
次に,「,証人A,同B,同C」を,それぞれ加える。
2 原判決5頁5行目「三豊郡医師会」とあるのを,「県内の医師会」と改める。
3 原判決5頁8行目末尾の次に,「同一覧表では,増床を希望する病医院から合
計884床の増床希望があるとされた。」を加える。
4 原判決5頁14行目「事前協議を行い」とあるのを,「同年8月中に3回にわ
たってヒアリングを行い」と改める。
5 原判決5頁15行目「469床を」の次に,「,既許可病床数で按分して」を
加える。
6 原判決6頁17行目末尾の次に,改行の上,次のとおり加える。
「 『医療計画公示後における病院開設等の取扱いについて』(昭和62年9月2
1日付け保発第69号)
 都道府県知事と医療機関との契約である保険医療機関の指定等に際しては,国民
に適正な医療を効率的に供給するとの観点から,地域医療計画に定める必要病床数
を超える病床についてはこれを契約の対象としないという基本的な考え方に立ち,
以下のとおり対処するものとする。
(1) 医療法30条の7の規定に基づき,都道府県知事が医療計画達成のため特
に必要があるものとして勧告を行ったにもかかわらず,病院開設が行われ,当該病
院から保険医療機関の指定申請又は療養機関の申出があった場合にあっては,健康
保険法43条の3第2項に規定する『著しく不適当と認むるものなるとき』に該当
するものとして,又は国民健康保険法37条2項の規定に基づき,地方社会保険医
療審議会に対し,指定拒否又は受理拒否の諮問を行うこと。
(2) 地方社会保険医療審議会に対しては,衛生部局の協力も得て,地域におけ
る病床数の状況,知事が勧告を行うに至った経過等を十分に説明し,その意見を求
めること。」
7 原判決7頁2行目末尾の次に,「(なお,同条は,平成14年法律第102号
により削除され,同旨の規定が健康保険法65条以下に設けられた。)」を加え
る。
8 原判決12頁7行目「基準病床数」の次に,「(平成12年法律第141号に
よる改正前は,『必要病床数』)」を加える。
第3 当裁判所の判断
 次のとおり,付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」中,「第3 当
裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する(ただし,「2項(3)」を
除く。)。
1 原判決32頁13行目末尾の次に,改行の上,次のとおり加える。
「 控訴人は,昭和62年通知により,行政当局は,中止勧告を受けた病院から,
保険医療機関の指定申請がされた場合,『著しく不適当と認むるものなるとき』に
該当するとしており,被控訴人は,『中止勧告の前提となる医療計画の内容,当該
病院開設計画の内容,中止勧告を発した理由,中止勧告に不服従の理由等』を審査
する権限を有さず,審査すべきでもない旨主張する。
 しかしながら,行政処分性の有無の判断に当たり,行政庁内部で発せられる通
達,訓令の存在,内容から,行政法規の趣旨・目的ないし存在意義を推量するのは
相当とはいい難く,元となる行政法規の規定内容自体から,その意味内容を解釈す
べきものである。
 しかるとき,旧健康保険法43条の3第3項は,保険医療機関の指定を拒むこと
ができる場合を前記(2)ウのとおり規定しており,これをみると,同項は,上記
指定を拒むことができる場合の一般的条項として『保険医療機関として著しく不適
当と認めるとき』を挙げており,『保険医療機関の指定等を取り消され2年を経過
しないとき』,『保険給付に関し診療等の内容の適切を欠くおそれがあるとして,
重ねて指導を受けたとき』とあるのは,その例示的条項であると解せられる。した
がって,保険医療機関として著しく不適当かどうかは,保険医療機関として,前2
例と同等ないしこれに準じる程度の重大な不都合があるかどうかによって決せられ
るべきものと考えられる。
 確かに,行政当局は,昭和62年通知により,中止勧告を受けた病院は,上記条
項にいう『保険医療機関として著しく不適当と認める』べきものと考えていたもの
と認められるが,その解釈の相当性にはなお,検討の余地があるというべきであ
る。
 『健康保険法の解釈と運用』(甲28)によれば,平成10年法律第109号に
よる改正後の健康保険法43の3第4項2号に関し,『医療の分野においては,情
報の非対称性のために患者の合理的な選択の確保が困難であること等から,通常の
市場原理が働きにくく,供給が需要を生む構造となっており,実際に病床数と1人
当たり入院医療費の間には強い正の相関関係が認められていることから,既に必要
かつ十分な病床が確保されている病床過剰地域における保険医療機関の開設(増床
及び病床の種別の変更を含む。)について,当該病院等の新設,増床および病床の
種別の変更に関して医療法30条の7の規定による勧告が行われ,これに従わない
場合には,これを保険医療機関の病床の利用として著しく不適当と認め,保険医療
機関の指定に当たり病床数を制限するものである』と解説されている。
 そうすると,旧健康保険法43条の3第3項の『著しく不適当』と認められる場
合の例示規定が,保険医療機関として診療内容ないし診療体制の適切さが問題とさ
れていると考えられるのに対し,医療法30条の7の規定による中止勧告を受けた
医療機関は,それとは別に,入院医療費の増大を抑制し,また病院間の過当競争を
排除するという行政目的が働いているものと考えられるところ,病院間の過当競争
により,診療内容の低下につながるおそれも否定できないから,保険医療機関とし
ての指定に当たり,中止勧告を受けたかどうかを斟酌することは,必ずしも不相当
とはいえないが,旧健康保険法43条の3第3項にいう『著しく不適当』と認める
かどうかの判断に当たっては,指定することによって,前2例と同等ないしこれに
準ずる程度の不都合がもたらされるおそれがあるかどうかの観点から,慎重に検討
されるべきものと考えられる。
 したがって,被控訴人(平成11年7月16日法律第87号による改正後は『厚
生(労働)大臣』は,保険医療機関として指定するかどうか,の判断に当たって
は,申請病院が中止勧告を受けていることの一事をもって直ちに指定を拒否できる
と解するのは相当でなく,前記の事情を総合的に判断し,慎重に対処すべきもので
ある。
 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。」
2 原判決32頁17行目「しかしながら」から同頁23行目末尾までを,次のと
おり改める。
「 改正健康保険法の規定をみると,同法は,『当該病院等が保険医療機関の指定
等を取り消され5年を経過しないとき,保険給付に関し,診療内容等の適切を欠く
おそれありとして重ねて指導を受けたとき,その他保険医療機関として著しく不適
当と認めるときは指定を拒むことができる』(同法43条の3第3項)とし,『当
該病院等の医師,歯科医師,看護婦その他の従業者の人員が厚生労働大臣の定める
基準により算定した員数を満たさないとき(同法43条の3第4項1号),医療法
7条の2第1項に規定する地域における保険医療機関の病床の数がその指定を行う
ことによって,同法30条の3第1項に規定する医療計画において定める基準病床
数を勘案して厚生労働大臣の定めるところにより算定した数を超えることになると
認める場合であって(その数を既に超える場合を含む。),当該病院の開設者等
が,同法30条の7の規定による都道府県知事の勧告を受け,これに従わないと
き』(同法43条の3第4項2号),『その他適正なる医療の効率的な提供を図る
観点より,当該病院等の病床の利用に関し,保険医療機関として著しく不適当なと
ころがあると認めるとき』(同法43条の3第4項3号)は,『その申請に係る病
床の全部又は一部を除いて指定をすることができる』(同法43条の3第4項前
段)としている。
 なお,前記甲28によれば,厚生労働省当局は,上記43条の3第3項の『著し
く不適当と認めるとき』の例として,『①指定を取り消された医療機関の開設者が
別の医療機関等として指定申請をしてきたとき,②取消処分を逃れるために保険医
療機関等の指定を辞退し,その後,しばらくして指定申請してきたとき,③保険医
療機関等の指定取消を2度以上重ねて受けたとき,④不正請求及び不当請求に係る
返還金(加算金を含む。)を納付していないとき,⑤指導監査を再三受けているに
もかかわらず,指示事項について改善が見られず,指定更新時を迎えたとき』を挙
げている。また,同法43条の3第4項3号の『著しく不適当なところがあると認
めるとき』の例として,『入院医療に関し,保険医療機関の指定の取消事由には該
当しないが,国又は都道府県知事の指導又は監査で再三にわたり指摘を受けている
にもかかわらず,指摘事項について改善が見られないまま,保険医療機関の指定の
更新時を迎えた場合又は指定の変更を行う場合が該当する。』(平成10年7月2
7日保発第101号)としている。
 以上によれば,改正健康保険法43条の3第4項2号の『中止勧告を受けてこれ
に従わないとき』は,同法43条の3第4項3号にいう『著しく不適当なところが
あると認めるとき』の例示規定であると解せられ,保険病床の指定申請に際して
は,保険医療機関としての指定ないし保険病床指定を拒否できる『著しく不適当と
認めるとき』の例示として他に規定された場合と同等ないしこれに準ずる程度の不
都合がもたらされるおそれがあるかどうかの観点から,慎重に検討されるべきもの
と考えられる。
 したがって,改正健康保険法の下においても,厚生労働大臣としては,前記
(ア)と同様の判断過程を経た上で,申請に係る病床の全部を指定除外とする,一
部について指定除外とする,あるいは病床の指定除外とせず,申請どおり指定する
とのいずれかの判断をしなければならないのであって,地方社会保険協議会の議決
のない限り,病床の除外指定ができないことも,旧健康保険法と同様である。」
3 原判決34頁20行目「しかしながら」とあるのを,「確かに,保険病床指定
の拒否処分を争う場合の経済的負担が大きいことは否定できないが,その負担は事
実上のものにとどまると言わざるを得ない。そして」と改める。
4 原判決35頁2行目末尾の次に,改行の上,次のとおり加える。
「 また仮に,控訴人が中止勧告の無効を確認する旨の判決を得た上で,保険医療
機関の指定申請に及んだ場合においても,改正健康保険法43条の3第4項1号,
3号に該当するとして,保険病床の指定を受けられない可能性も否定できない。
 控訴人は,上記改正健康保険法43条の3第4項1号,3号が適用されるのは,
既に開設された保険医療機関の指定更新,ないしみなし申請に係るものであり,新
規開設の場合には適用の余地がないように主張するが,そのように解すべき根拠は
ない。
 したがって,保険医療機関の指定申請に対する処分前に,中止勧告の無効確認を
求めることが,本件紛争の一回的解決に資するということはできない。」
第4 以上によれば,本件訴えは,いずれも不適法として却下すべきであり,これ
と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。
高松高等裁判所第4部
裁判長裁判官 松本信弘
裁判官 吉田肇
裁判官 種村好子

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