弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人斎藤茂の上告理由第一、二点について。
 原審は、被上告人B1は、昭和一二年三月ごろ自己の財産をその子である上告人
はじめ訴外D、亡Eらに分与することとし、次男Dには共有山林の持分と畑二反歩
を、三男Eには所有山林の毛上を贈与し、上告人には本件山林を含むその余の財産
全部を贈与することとし、これが所有権移転登記手続は隠居による相続を原因とし
てすることとしたうえ、自らはa村bの開拓地に入植したこと、上告人は右約旨に
基づき、本件不動産の引渡を受け、F家の主宰者として以来今日まで本件不動産を
自己の所有物としてその使用収益を継続し、かつこれに対する公租公課も自ら負担
していたこと、被上告人B1は昭和三〇年ごろ転居先の九戸郡a村からH部落に帰
来したが、借財整理や生活費に当てるため上告人らに対し金銭の要求をなし、かつ
本件不動産は前示認定のように昭和一二年ごろ上告人に一旦贈与したにもかかわら
ず、その所有権の移転登記がなされていなかつたため、上告人や弟Dと被上告人B
1との間に紛争が生じたので、昭和三〇年一二月一三日ごろ親類や部落の有力者が
上告人方に集り、訴外Gが仲裁役となり、被上告人B2ら八名が立会人となつて示
談解決に努めた結果、本件不動産に関してはその所有権が上告人に帰属しているこ
とを確認し、被上告人B1はすみやかに上告人名義に所有権移転登記をする旨の和
解が成立したこと、その際和解条項と題する書面(甲第一号証)を作成し、被上告
人B2はこれに立会人として他の関係人とともに署名捺印していること、他方、被
上告人B2は、かつて被上告人B1ら数名の共有であつた九戸郡a村大字cd所在
山林の管理者をしていたところ、その立木の売却代金の配分にあたり、右B1の持
分が同人の前示移住の際既に次男Dに譲渡され、その所有権移転登記が経由されて
いるにもかかわらず、Dに配分すべき代金を被上告人B1に配分したため、後に至
つて、B1に対し不当利得としてその代金の返還を求め、その債務名義をえたうえ、
B1に対する強制執行として、本件山林を差し押えたこと、以上の事実を認定しな
がら、被上告人B2は上告人の本件山林の前示所有権取得に関し登記の欠缺を主張
するについて正当な利益を有する第三者に当たらないとはいえない旨判示している。
 しかしながら、実体上物権変動があつた事実を知る者において、右物権変動につ
いての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合
には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しな
いものであつて、民法一七七条にいう第三者に当たらないものと解すべきところ(
最高裁判所昭和三一年四月二四日第三小法廷判決民集一〇巻四号四一七頁、同四〇
年一二月二一日第三小法廷判決民集一九巻九号二二二一頁、同四二年(オ)第五六
四号同四三年八月二日第二小法廷判決参照)、原審認定の前示事実によれば、被上
告人B2は、単に本件山林が被上告人B1から上告人に対して贈与された事実を知
悉していたというに止まらず、後に生じた右両名間の紛争について自ら立会人とし
てその解決に努めたうえ、右贈与の事実を確認し、すみやかにその旨の所有権移転
登記手続をすべきことを内容とする和解を成立させ、自ら立会人として和解条項を
記した書面に署名捺印したというのであり、他方、その後に至つて、自己の債権の
満足を得るために、右和解の趣旨に反し、本件山林をB1の所有物件として差し押
えたというのであるから、同被上告人としては、上告人の本件山林の所有権取得に
ついてその登記の欠缺を主張することは著しく信義に反するものというべきであり、
同人は右登記の欠缺を主張するについて正当の利益を有する第三者には当たらない
ものと解するのが相当である。和解の立会人は、必ずしも和解当事者の当該和解上
の義務の履行について、積極的に協力すべき法律上の義務を負うものとはいえない
けれども、和解条項を記した書面に立会人として署名捺印することは、そのような
和解の成立したことを確認することによつて、その内容となつている法律関係が終
局的に確定することを是認するとともに、仮りに後に至つて右和解について紛争が
生じるような事態に立ち至つた場合には、自らその内容を証明すること等によつて、
紛争を解決すべき立場に立つことを表明したに外ならず、これによつて何らかの利
益を受ける等の特段の事情が存在しなくとも、その後に至つて、自らその内容を否
認するが如きは、著しく信義に反し、許されないものといわなければならない。そ
して、右和解成立後相当長期間が経過したとしても、かかる事実は、その間右和解
の内容を変更するような特段の事情の生じない限り、これのみによつて、前示の法
律関係を左右するものとはいい難い。
 しかるに、原判決は、右と異なる見解にたつて、被上告人B2は上告人の本件不
動産取得に関し登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たら
ないとはいえない旨判示して、上告人のこの点に関する主張を排斥しているのであ
るから、原判決は民法一七七条の第三者に関する法律の解釈を誤つたものというべ
く、この誤りが原判決の結論に影響すること明らかであるから、論旨はこの点にお
いて理由があり、原判決は破棄を免えない。そして、本件は、さらにこの点につい
て審理を尽さしめるため、原審に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見により、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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