弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
       原判決中上告人らの敗訴部分を破棄する。
       前項の部分につき,本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人和田聖仁の上告受理申立て理由について
 1 原審が確定した事実関係は,次のとおりである。
 (1) 写真の現像等を業とする株式会社である上告人株式会社Y1は,平成9年
6月23日,貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)3条所定の登録
を受けて貸金業を営む被上告人との間で,「約定書(基本約定)」を取り交わし,
上告人Y2及び上告人Y3は,同年8月25日,被上告人に対し,この約定に基づ
き上告人株式会社Y1が被上告人に対して負担する債務について,保証債務極度額
を600万円,保証期間を平成14年6月22日までとする連帯保証をした。
 上告人株式会社Y1及び上告人Y2は,平成11年5月18日,被上告人との間
で,上記「約定書(基本約定)」と同旨の「基本取引約定書兼根保証契約書」(以
下,「約定書(基本約定)」又は「基本取引約定書兼根保証契約書」による取引約
定を「本件基本取引約定」という。)を取り交わした。
 (2) 被上告人は,本件基本取引約定に基づき,上告人株式会社Y1に対し,平
成9年6月23日から平成12年2月14日までの間,第1審判決別紙計算書の「
年月日」欄(ただし,対応する「貸金額」欄が空欄のものを除く。)記載の日に「
貸金額」欄記載の金銭を貸し付けたが,その際,「天引額」欄記載の金額を天引き
した上で「交付額」欄記載の金額を交付した(これらの貸付けを同計算書記載の番
号に従い,「貸付け1」などという。)。
 上告人株式会社Y1は,被上告人に対し,貸付け1から30までについては,同
計算書の「年月日」欄(ただし,対応する「支払額」欄が空欄のものを除く。)記
載の日に「支払額」欄記載の金額を弁済しており,これらの貸付けは完済になって
いる。
 (3) また,被上告人は,本件基本取引約定に基づき,上告人株式会社Y1に対
し,平成12年5月11日から平成13年7月19日までの間,同計算書の「年月
日」欄(ただし,対応する「貸金額」欄が空欄のものを除く。)記載の日に「貸金
額」欄記載の金銭を利息等を天引きすることなく貸し付けた(これらの貸付けにつ
いても,同計算書記載の番号に従い,「貸付け31」などという。)。
 上告人株式会社Y1は,被上告人に対し,貸付け31から39までについては,
同計算書の「年月日」欄(ただし,対応する「支払額」欄が空欄のものを除く。)
記載の日に「支払額」欄記載の金額を弁済したが,貸付け40から42までについ
ては弁済していない。
 (4) 貸付け31から33までについては,手形決済の方法で弁済がされており
,被上告人は,上告人株式会社Y1から各弁済を受けてから7ないし10日以上後
に,領収書(以下「本件各領収書」という。)を上告人株式会社Y1に交付してい
る。
 2 本件は,上告人株式会社Y1が,被上告人に対し,上記各貸付けにつき支払
われた利息等のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える部分を元本に
充当すると過払金が生じているとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返
還を請求し,被上告人が,上告人株式会社Y1並びにその保証人である上告人Y2
及び上告人Y3に対し,貸付け40から42までの貸金の返還を請求する事案であ
る。
 3 原審は,次のとおり判断し,上告人株式会社Y1の請求を棄却し,被上告人
の請求を一部認容した。
 (1) 利息制限法2条は,利息の天引きがされた場合の同法1条1項の規定の適
用の仕方,すなわち,受領額を元本として計算した場合の利率が同項の制限に服す
ることを定めているのであるから,法43条1項が一定の要件の下に利息制限法1
条1項の規定の適用を排除しているのは,利息の天引きがされた場合の規定である
同法2条の規定の適用をも排除する趣旨と解するのが相当である。したがって,利
息の天引きについても,債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されること
を認識した上でその天引きを承諾したのであれば,法43条1項所定の任意の弁済
に当たる。
 利息の天引きがされた貸付け1から30までについては,被上告人が上告人株式
会社Y1に対して法17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」と
いう。)及び法18条1項所定の事項を記載した書面(以下「18条書面」という。)
をいずれも交付した事実が認められ,法43条1項の規定の適用要件を満たすもの
ということができる。
 (2) 利息の天引きがされていない貸付け31から33までについては,被上告
人が上告人株式会社Y1に対して17条書面を交付しており,かつ,各弁済につい
ては,被上告人は,上告人株式会社Y1から各弁済を受けた都度,直ちに,18条
書面を上告人株式会社Y1に対して交付したものということができる。
 したがって,上記各弁済については,法43条1項により有効な利息の債務の弁
済とみなされる。
 4 しかしながら,原審の上記判断は,いずれも是認することができない。その
理由は,次のとおりである。
 (1) 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場
合における天引利息については,法43条1項の規定の適用はないと解するのが相
当である(最高裁平成15年(オ)第386号,同年(受)第390号同16年2
月20日第二小法廷判決・民集58巻2号475頁参照)。したがって,貸付け1
から30までについては,法43条1項の規定の適用要件を欠くものというべきで
ある。これと異なる原審の前記3(1)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明ら
かな法令の違反がある。
 (2) 法18条1項は,貸金業者が,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部
について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,18条書面をその弁済をした者
に交付しなければならない旨を定めている。
 そして,17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに
交付することが義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後
にしなければならないものと解すべきである(前掲最高裁平成16年2月20日第
二小法廷判決参照)。
 【要旨】前記のとおり,被上告人は,前記各弁済を受けてから7ないし10日以
上後に上告人株式会社Y1に対して本件各領収書を交付しているが,これをもって
,上記各弁済の直後に18条書面を交付したものとみることはできない(なお,前
記事実関係によれば,本件において,上記各弁済について法43条1項の規定の適
用を肯定するに足りる特段の事情が存するということはできない。)。したがって
,貸付け31から33までについても,法43条1項の規定の適用要件を欠くもの
というべきである。これと異なる原審の前記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼ
すことが明らかな法令の違反がある。
 5 以上によれば,上記の各点についての論旨はいずれも理由があり,その余の
論旨及び上告理由について判断するまでもなく,原判決中上告人らの敗訴部分は破
棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審
に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 津野
 修)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛