弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
原決定を取り消す。
本件をさいたま地方裁判所に差し戻す。
         理    由
本件は,被告人の父である申立人からの保釈請求を却下した裁判に対して申立人が
した準抗告に関し,申立人が刑訴法352条所定の「決定を受けたもの」に当たら
ないから,同法429条1項の「不服がある者」にも該当しないとして,申立てを
不適法とした原決定に対する特別抗告の事案である。所論は,準抗告の申立権に関
する原判断が,所論引用の札幌高等裁判所平成7年(く)第41号同年11月7日
決定・判例時報1570号146頁(以下「本件引用判例」という。)と相反する
というのである。
 本件引用判例は,勾留された被告人の配偶者からの保釈請求を却下した決定に関
し,配偶者には刑訴法352条による抗告の申立権があるとしたものであるところ
,保釈請求却下の裁判に対する抗告と準抗告とで申立権者の範囲につき差異がある
と解すべき理由はないから,申立人に準抗告の申立権がないとした原決定の判断が
,本件引用判例と相反するものであることは,所論指摘のとおりである。
 そこで検討すると,【要旨】勾留された被告人の配偶者,直系の親族又は兄弟姉
妹は,刑訴法88条1項により保釈の請求をすることができるのであるから,それ
らの者が自ら申し立てたその保釈の請求を却下する裁判があったときは,同法35
2条にいう「決定を受けたもの」又は同法429条1項にいう「不服がある者」と
して抗告又は準抗告を申し立てることができるものと解するのが相当である。以上
と同趣旨の本件引用判例は正当というべきであり,論旨は理由がある。
 よって,刑訴法434条,426条2項により,原決定を取り消し,本件をさい
たま地方裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定
する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田
豊三)

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