弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人遠矢良巳、同泥谷伸彦の上告理由第一点について。
 原審が確定した事実によれば、上告人らおよび被上告人らが本件不動産を共有取
得するに至つた原因は、訴外亡Dの特定遺贈にあるというのであるから、上告人ら
は、共有者の一員として通常裁判所における共有物分割の請求により、右不動産の
分割を求めることができるものといわなければならない。原判決に所論の違法はな
く、論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づき原判決を攻撃するものであつて、採
用することができない。
 同第二点について。
 共有物分割請求訴訟が固有の必要的共同訴訟であることは、所論のとおりである
が、右訴訟においては、共有者の全員が当事者であればよいのであつて、必ずしも、
共有者の一人のみが原告として訴を提起しなければならないものではない(大審院
大正一二年(オ)第二三三号同年一二月一七日判決民集二巻六八四頁参照)。原判
決には所論の違法はなく、論旨は、理由がない。
 同第三点について。
 原審の確定した事実によれば、遺言者たる訴外Dは、本件不動産を上告人らおよ
び被上告人らの四名に均等に分け与えるものとし、その旨を公正証書によつて遺言
することを決意した後、被上告人Bをして公証人のもとに赴かしめ、公証人は、同
被上告人から聴取した遺言の内容を筆記したうえ、遺言者に面接し、遺言者および
立会証人に既に公正証書用紙に清書してある右遺言の内容を読み聞かせたところ、
遺言者は、右遺言の内容と同趣旨を口授し、これを承認して右書面にみずから署名
押印したというのである。したがつて、右遺言の方式は、民法九六九条二号の口授
と同条三号の筆記および読み聞かせることとが前後したに止まるのであつて、遺言
者の真意を確保し、その正確を期するため遺言の方式を定めた法意に反するもので
はないから、同条に定める公正証書による遺言の方式に違反するものではないとい
わなければならない(大審院昭和六年(オ)第七〇七号同年一一月二七日判決民集
一〇巻一一二五頁、同昭和九年(オ)第二四八号同年七月一〇日判決民集一三巻一
三四一頁参照)。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用しがたい。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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