弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人三木今二の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法
な上告理由にあたらない。
 しかし、所論にかんがみ職権をもつて調査すると、原判決は、後記のように刑訴
法四一一条一号により破棄を免れないものと認められる。
 本件は、被告人が、昭和三九年一一月一九日、京都市内の通称a通り(この道路
は、東西に通じ、中央にグリーンベルトがあつて片側車線が四通行帯に区分され、
西行車線は、南端を第一通行帯とし、順次北方に第二通行帯、第三通行帯、第四通
行帯となつている。)の第二通行帯を、軽四輪貨物自動車を運転して西進し、午後
六時三〇分ころ、南北に通ずる通称b通りとの信号機のある交差点にさしかかつた
が、同信号機が青色であつたので、そのまゝ進行したところ、a通りを東進して同
交差点を右折してきた被害者Aの運転する原動機付自転車と衝突し、同人に加療約
二ケ月を要する左側頭部挫傷等の傷害を負わせた事件であるが、原判決は、「被告
人は、被害車両が本件交差点中央の線より南東の前記停車地点を発進した際には同
交差点横断歩道の東端から東方約二八・三メートルの地点に、グリーンベルト南端
の線通過の際においても同じく約二〇・七メートル東方にいたことになるのであつ
て、前記道路交通法三七条二項によつても、被害車両は既に右折していたと認めら
れるのであるから、その進行を妨げてはならないことはもちろん、交差点の右横断
歩道に進入後、僅か七・六メートルの至近距離に至つてはじめて被害車両を発見し
たのは、被告人が進路前方交差点内の安全、ことに右斜前方の安全を確認すること
を怠つたことによるものであることは明らかである。」として、被害車両に本件交
差点の優先通行権を認め、被告人に交差点内とくに右斜前方の安全確認義務違反が
あつたとし、同趣旨の第一審判決を是認し、控訴を棄却した。
 ところで第一審判決が証拠として掲げている被告人の司法警察員および検察官に
対する各供述調書ならびに第一審公判廷における供述、司法巡査作成の実況見分調
書によれば、被告人は、本件事件当時から、「時速約三七粁で進行し本件交差点附
近にさしかかつたが、同交差点の信号は青色であり、右斜前方約一四・四米地点の
第三通行帯を西進するタクシーがあつただけで、私の前方および右方には自動車は
見当らなかつたためそのまゝ進行したところ、先行するタクシーの後ろから相当な
急速度で飛び出してきた被害車両を、右斜前方約七・六米地点に発見し、急ブレー
キをかけたが間に合わず、衝突してしまつた。」旨弁解しているのであるが、原判
決は、この弁解を取りあげず、前記判示に引きつづき、「もつとも原判決(第一審
判決)は交差点手前二〇・一五メートルで第三通行帯を疾走してきた普通乗用自動
車に追い抜かれた旨認定しており、前記実況見分調書では、被告人が交差点に入る
直前右車両は一四・四メートル右斜前方を進行していることとなつているが、右の
各距離はいずれも単なる被告人の指示によるものであり、前記いずれの計算によつ
ても誤であることが明らかであつて、被告人が普通乗用自動車に追い抜かれたのは
右の地点よりもさらに東方の地点であると推測される。」と判示して、被告人の前
記のごとき弁解を排斥した。
 しかしながら、原判決がこの様な判断をしたのは、計算上の数字を根拠とするも
のであるが、その計算それ自体に誤りがないとしても、それは、被害者が右折する
ため本件交差点中央で停止した地点、右折してグリーンベルト南端の線を通過した
地点、被告人が被害者を発見した際被害者の進行していた地点、衝突地点およびそ
れらの各場合に被告人が進行していた地点等の各地点相互間の距離、被告人が本件
交差点に差しかかつた際の時速ならびに原審検証時に実験した被害車両が一一米(
被害者の指示する一時停止の場所から衝突地点までの距離)を進行するに要した時
間を基礎として計算した結果であり、前記各地点間の距離についてみると、実測に
よるものを含んでいるとはいえ、多くは計算の便宜上の仮定あるいは実況見分調書
添付図面の各点を縮尺によつて測定したものにすぎないのである。しかし本件実況
見分調書添付図面が正確な縮尺にもとづいて作成されたとする保証は記録上全く存
在しないところであるし、又実測によるものについてみても、元来被告人ら事件関
係者の指示するところが完全に正確なものとは云いがたいのに、本件のごとく数米
の短距離の実測の結果を拡大して、数十米の距離の計算の根拠とするときは、その
誤差は相当大きなものとなることはおのずから明らかである。さらに又原判決は、
その計算の過程において、被告人が被害者を発見してから衝突するまでの距離およ
びその間の被害者の進行距離から、被告人および被害者の速度比を出しているが、
被告人の場合は被害者を発見して急制動をかけて減速しつゝあるものであるのに対
し、被害者は発進して速度を上昇させつゝある場合のものであるのに、この点を考
慮に入れることなく漫然これを計算の基礎にしているのである。
 もつともこのような計算も、関係者の供述の信ぴよう性を検討する一資料として
利用し得る切合のあることはいなめないけれども、本件交差点南側で信号待ちをし
て本件事故を目撃した京都市営バスの運転手Bも、第一審公判廷において、「当時
南北信号は赤であつたので停止していると、a通りを東から西に三台位の自動車が
走り、先行の一台目が通り過ぎた直後、二台目の被告人の軽四輪が通過する瞬間、
被害者の単車と衝突した。一台目と被告人の車との間隔は六、七米あつたと思う。」
旨被告人の弁解に沿う供述をしており、そのことから考えても被告人の弁解にもた
やすく排斥し得ないものがあるのに、前記のごとき根拠の薄弱な計算を唯一のより
どころとして被告人の弁解を軽々しく排斥したのは、著しく採証法則に違背した違
法な判断であつて、到底容認することができない。
 そして、もし被告人の供述するごとく、被告人が先行車に比較的近接して進行し
ていたとすれば、その位置関によつては、原判示のような注意義務を要求すること
ができない場合も考えられるところである。とすれば、原判決の前記のごとき違法
は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、これを破棄しなければ著しく正
義に反するものと認める。
 よつて刑訴法四一一条一号により原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため、
同決四一三条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
 公判出席検祭官 斎藤周逸
  昭和四三年八月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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