弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人吉田隆行の上告理由について
 原審が適法に確定した本件の事実関係は、おおよそ次のとおりである。
 (一) 被上告人は、訴外株式会社D(以下「訴外会社」という。)に対し大阪高
等裁判所昭和四六年(ネ)第四三九号損害賠償請求事件の確定判決(昭和四八年四
月二五日弁論終結、同年七月一八日言渡)による債務名義を有している。
 (二) 訴外会社は、昭和二五年九月二六日、豚の飼育販売等を目的として設立さ
れた会社であり、また、上告会社は、昭和四六年三月一日、豚の飼育等を目的とし
て設立された会社である。
 (三) 訴外会社は、養豚業を営んでいたところ、昭和四六年二月ごろには経営困
難に陥つており、しかも、被上告人との間の前記損害賠償訴訟においても早晩敗訴
を免れない状況にあつた(同月一六日には右訴訟につき第一審の京都地方裁判所が
訴外会社に金五三三万五一七〇円の支払を命ずる判決を言い渡している。)。
 (四) 右のような状況のもとで、訴外会社の代表取締役であつたEは、義兄のA
に資金の援助を求めたが、訴外会社には被上告人に対する損害賠償債務を含め多額
の債務があつたのでAがこれに難色を示したところから、右Eを含む訴外会社の役
員らは、右債務の履行を事実上免れる意図のもとに、Aの出捐する資金で新たに別
個の会社を設立し、これによつて養豚業を継続することを計画した。
 (五) かようにして、Aは、金一〇〇〇万円を出資し、他から融資を得るなどし
て同年三月一日上告会社の設立手続を了し、同会社において訴外会社から営業設備
一切及び飼育中の豚を無償で譲り受け、かつ、その従業員をそのまま引き継いで訴
外会社の従前の事業場において養豚業を営み、訴外会社は有名無実の存在となるに
至つた。なお、上告会社が訴外会社の商号「株式会社D」に類似する「D株式会社」
なる商号を用いたのは、従前訴外会社が有していた取引上の信用等を自己の営業活
動に利用するためであつた。
 (六) 訴外会社の代表取締役はF及びE、取締役はG、H及びIであり、他方、
上告会社の設立当時における代表取締役はA及びG、取締役はH及びJであるとこ
ろ、G、H及びEはいずれもFの子であり、JはEの妻、AはJの兄であつて、A
には養豚業の経験がなく、上告会社の経営は事実上訴外会社の役員であつた者らの
手に委ねられている。
 以上のような事実関係のもとにおいて、原審は、訴外会社と上告会社とは全く同
一の法人格であり、その設立登記は同一会社についてされた二重の登記とみるべき
であるから、被上告人は訴外会社に対し金銭の支払を命じた前記確定判決を債務名
義として上告会社に対して強制執行をすることができるものと解すべきであるとし、
右両会社の人格の同一性については債権者の提起する執行文付与の訴によつて裁判
所の審理を受けるべきものであるとの見解のもとに、上告会社に対する強制執行の
ため前記確定判決に執行文の付与を求める被上告人の本訴請求を認容した。
 しかしながら、上告会社が訴外会社とは別個の法人として設立手続、設立登記を
経ているものである以上、上記のような事実関係から直ちに両会社が全く同一の法
人格であると解することは、商法が、株式会社の設立の無効は一定の要件の下に認
められる設立無効の訴のみによつて主張されるべきことを定めていること(同法四
二八条)及び法的安定の見地からいつて是認し難い。
 もつとも、右のように上告会社の設立が訴外会社の債務の支払を免れる意図の下
にされたものであり、法人格の濫用と認められる場合には、いわゆる法人格否認の
法理により被上告人は自己と訴外会社間の前記確定判決の内容である損害賠償請求
を上告会社に対しすることができるものと解するのが相当である。しかし、この場
合においても、権利関係の公権的な確定及びその迅速確実な実現をはかるために手
続の明確、安定を重んずる訴訟手続ないし強制執行手続においては、その手続の性
格上訴外会社に対する判決の既判力及び執行力の範囲を上告会社にまで拡張するこ
とは許されないものというべきである(最高裁昭和四三年(オ)第八七七号同四四
年二月二七日第一小法廷判決・民集二三巻二号五一一頁参照)。
 そうすると、これと異なる見解のもとに被上告人の本訴請求を認容すべきものと
した原審の判断には、法令の解釈適用を誤つた違法があり、右違法は判決に影響を
及ぼすことが明らかである。それ故、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない
ところ、本件の事実関係に照らせば、被上告人において事実審で訴を変更し、前記
確定判決に基づく訴外会社に対する損害賠償請求と同様の請求を上告会社に対して
する余地もないではないと認められるから、更に審理を尽くさせるため本件を原審
へ差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    戸   田       弘

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