弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役7年に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
押収してあるけん銃1丁(平成14年押第117号の1),発射済実包3
組(同押号の2,9,11),空薬きょう5個(同押号の3ないし7)及び実包3
発(同押号の8,10)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,暴力団A組員であるが,同系列の暴力団に所属するBから,Aから分
派独立し,同会と対立,抗争状態にある暴力団の組長C方居宅をパワーショベルを
使用して破壊する計画を明かされ,これに助力しようと決意し,
第1 法定の除外事由がないのに,平成14年2月12日午前5時30分ころ,埼
玉県a市大字bc番地所在のC方付近路上において,回転弾倉式けん銃1丁(平成
14年押第117号の1)を,これに適合する実包11発(同押号の2ないし11
はその一部)と共に携帯したが,同日午前5時45分ころ,a警察署に出頭し,同
署司法警察員D外1名に同けん銃を提出して自首し,
第2 Bと共謀の上,同日午前5時30分ころ,C所有の上記同人方(木造瓦葺2
階建居宅)の東側玄関部分等(床面積約16平方メートル)を,パワーショベルを
使用して破壊し,もって,他人の建造物を損壊し,
第3 法定の除外事由がないのに,同日午前5時30分ころ,上記C方付近道路に
おいて,上記けん銃で弾丸3発を発射し,もって,不特定又は多数の者の用に供さ
れる場所において,けん銃を発射し,さらに,上記C方に当番として詰めていたD
らが上記損壊を阻止すべくバールを持ってパワーショベルに向かうなどしたことか
ら,同人らの抵抗を排除しようと考え,法定の除外事由がないのに,同日時ころ,
不特定又は多数の者の用に供される場所である上記C方付近道路において,Dに対
し,殺意をもって,同けん銃で弾丸2発を発射し,そのうち1発をその右大腿部に
命中させたが,同人に全治約2週間を要する右大腿部貫通銃創の傷害を負わせたに
止まり,殺害の目的を遂げなかった
ものである。
(証拠の標目)

(補足説明)
 弁護人は,判示第3の事実のうち,殺人未遂の点について,被告人には殺意がな
く,傷害罪が成立するにとどまると主張し,被告人もこれに沿う供述をする。
 しかし,関係各証拠によれば,被告人は,判示の日時ころ,判示の道路におい
て,自ら普通乗用自動車を運転しながら,運転席窓から,けん銃を右手に持って,
数メートル離れた路上に居たDを狙って弾丸2発を連続して発射し,うち1発が右
大腿部に命中して,同人は判示のとおりの傷害を負っていることが認められる。
 このように,人を狙って至近距離からけん銃を発射した場合には,殺意が認めら
れるのは当然であって,これに反する被告人の供述は信用できない。
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為は,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1項,
3条1項に,判示第2の所為は,刑法60条,260条前段に,判示第3の所為
中,けん銃発射の点は,包括して銃砲刀剣類所持等取締法31条,3条の13に,
殺人未遂の点は,刑法203条,199条にそれぞれ該当するところ,判示第3の
所為は,1個の行為で2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,
10条により1罪として重い殺人未遂罪の刑で処断し,判示第3の罪について所定
刑中有期懲役刑を選択し,判示第1の罪について被告人はその所持に係るけん銃を
提出して自首したものであるから,銃砲刀剣類所持等取締法31条の5,刑法68
条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法
47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に同法14条の制限内で法定
の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役7年に処し,同法21条を適用して未決
勾留日数中50日をその刑に算入し,押収してあるけん銃1丁(平成14年押第1
17号の1),発射済実包3組(同押号の2,9,11),空薬きょう5個(同押
号の3ないし7)及び実包3発(同押号の8,10)は,いずれも判示第1の銃砲
刀剣類所持等取締法違反の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないか
ら,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収することとする。
(量刑の理由)
 本件は,暴力団組員の被告人が,同系列の暴力団に所属するBから,対立,抗争
状態にある暴力団の組長方居宅をパワーショベルを使用して破壊する計画を明かさ
れ,これを手助けしようと決意し,同組長方付近路上にけん銃1丁及び適合実包1
1発を携帯して赴き(判示第1の事実),Bと共謀の上,同組長方居宅の一部をパ
ワーショベルを使用して損壊し(判示第2の事実),道路において,同けん銃で弾
丸3発を発射して威嚇し,さらに,相手方暴力団員が同組長方居宅の損壊を阻止す
べく抵抗するのを排除しようとして,相手方暴力団員1名に対し,殺意をもって,
同けん銃で弾丸2発を発射し,うち1発を同人の右大腿部に命中させたが,傷害を
負わせたに止まり,殺害の目的を遂げなかった(判示第3の事実)という事案であ
る。
 このように,本件は,被告人が,共犯者と共謀の上,対立,抗争状態にある暴力
団の組長方居宅を損壊し,その際,これを阻止しようと抵抗する相手方暴力団員に
対し,けん銃を発射するなどしたもので,計画的である上,対立暴力団に打撃を与
えるためには手段を選ばない典型的な暴力団特有の身勝手かつ大胆不敵な犯行で,
法秩序を全く無視するものであって,厳しい非難に値する。その犯行態様は,ガー
ドレールを切断した鉄板で運転席を装甲したパワーショベルを,深夜現場まで搬送
し,警察官らがいないのを確認した上,共犯者が組長方居宅の玄関等をパワーショ
ベルを使用して破壊し,けん銃1丁と適合実包11発を携帯した被告人が,損壊を
阻止しようとする相手方暴力団員らの抵抗を排除するため,けん銃で実弾3発を発
射し,なおも相手方暴力団員が損壊を阻止すべくバールを持ってパワーショベルに
向かうなどしたことから,同人らの抵抗を排除しようとして,相手方暴力団員1名
に対し,数メートルの至近距離から,けん銃で実弾2発を発射し,現に1発が同人
の右大腿部に命中して貫通しており,幸い全治約2週間の傷害を負わせたに止まっ
たものの,命中部位が少しでもずれていれば,より重大な結果を招来しかねなかっ
た極めて危険な犯行である。本件は,払暁の午前5時30分ころ敢行されており,
パワーショベルによる損壊行為に伴う激しい物音や振動に加え,けん銃の発射音に
気付いて本件を知った近隣住民に与えた恐怖や不安は大変に大きい。本件は射殺事
件をも含む暴力団同士の一連の抗争事件の最中に敢行され,一般社会に衝撃をもた
らしたもので,その社会的影響も大きい。また,建造物損壊の損害額は3000万
円に上ると見積もられており,多額の財産的被害も生じている。被告人は,平成1
2年8月に覚せい剤取締法違反罪で懲役1年6月,3年間執行猶予,保護観察付き
に処せられたのに,1年半を経ずしてまたもや本件犯行に及んだものである。被告
人は,殺意を否認している上,本件は所属暴力団の意向とは関係がないなどと,本
件の背後関係を明らかにしておらず,真摯な反省の情は認められない。
 以上によれば,被告人の刑責は相当に重い。
 他方,被告人は,犯行後自ら警察に出頭していることなど,被告人にとって酌む
べき事情もある。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成14年5月30日
     さいたま地方裁判所第1刑事部
(裁判長裁判官 金山薫 裁判官 山口裕之 嘉屋園江)

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