弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審の未決勾留日数中三〇日を原判決の本刑に算入する。」
との部分を破棄する。
     検察官のその余の部分に対する本件上告および被告人の本件上告をいず
れも棄却する。
         理    由
 弁護人栗山茂武の上告趣意は、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由にあた
らない。
 検察官の上告趣意について。
 記録によれば、被告人は、本件につき昭和四二年三月二五日札幌地方裁判所にお
いて懲役七年の言渡を受け、同年四月三日控訴を申し立て、同年六月二二日原裁判
所において、「本件控訴を棄却する。当審の未決勾留日数中三〇日を原判決の本刑
に算入する。」との言渡を受けたものであるところ、右控訴申立の日から原判決宣
告の日の前日までの間は本件により引き続き勾留されていたこと、これより先、被
告人は昭和四一年一二月一日札幌簡易裁判所において業務上過失傷害、道路交通法
違反の罪により罰金三五、〇〇〇円に処せられ、その換刑処分として昭和四二年三
月三日から一四〇日間(すなわち同年七月二〇日まで)労役場留置の執行を受けて
いたものであることが認められる。
 これによつてみれば、被告人の原審における未決勾留(法定通算の対象となる分
を除く。)は、その全期間を通じ、右労役場留置の執行と競合して行なわれたこと
が明らかであるが、このように罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合
する未決勾留日数を刑法二一条により本刑に算入することが違法であることは、論
旨引用の各高等裁判所の判例(札幌高等裁判所昭和二九年三月一六日判決、高裁刑
事判決特報三二号六二頁、東京高等裁判所昭和三四年二月一四日判決、高裁判例集
一二巻三号二一一頁)の示すところであるから、原判決が、原審における未決勾留
日数中三〇日を第一審判決の本刑に算入する旨言い渡したことは、刑法二一条の適
用につき右各判例に相反する判断をしたものといわなければならない(なお、当裁
判所昭和四一年(あ)第一八七八号同四二年五月二六日第二小法廷判決参照。)。
論旨は理由がある。
 よつて、刑訴法四〇五条三号、四一〇条一項本文、四一三条但書により原判決中
「当審の未決勾留日数中三〇日を原判決の本刑に算入する。」との部分を破棄し、
原審における未決勾留日数は算入しないこととし、原判決のその余の部分に対する
上告は、上告趣意としてなんらの主張がなく、したがつてその理由がないことに帰
し、被告人の本件上告は全部理由がないから、同法四一四条、三九六条により右各
上告を棄却し、同法一八一条一項但書により当審における訴訟費用は被告人に負担
させないこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 勝田成治公判出席
  昭和四三年四月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美

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