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平成18年(ワ)第1139号不当利得返還等請求事件
(口頭弁論終結の日平成18年4月25日)
判決
原告A
被告タイホー工業株式会社
同訴訟代理人弁護士村林隆一
同井上裕史
同訴訟代理人弁理士福田賢三
同福田伸一
被告B
同訴訟代理人弁護士村林隆一
同井上裕史
被告ジョンソン株式会社
同訴訟代理人弁護士渡部喬一
同小林好則
同仲村晋一
同近藤勝彦
同守田大地
同松井章義
同松田一彦
被告C
同訴訟代理人弁護士岡田春夫
同森博之
主文
1原告の被告タイホー工業株式会社及び被告Bに対する訴えを却下する。
2原告の被告ジョンソン株式会社及び被告Cに対する請求をいずれも棄却す
る。
3訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
被告らは,原告に対し,それぞれ金520万円を支払え。
2請求の趣旨に対する答弁
()被告タイホー工業株式会社(以下「被告タイホー」という)及び被告B1。
ア本案前の答弁
主文1項と同旨。
イ本案の答弁
原告の被告タイホー及び被告Bに対する請求をいずれも棄却する。
()被告ジョンソン株式会社(以下「被告ジョンソン」という)及び被告C2。
主文2項と同旨。
第2当事者の主張
1原告の主張(請求原因)
()被告タイホーに対する請求1
ア原告は,昭和52年6月21日,考案者を原告,考案名称を「車両のエ
アーワイパ」とする考案について実用新案登録の出願(実願昭52-82
155)をした。同出願は,昭和54年1月22日に出願公開(実開昭5
4-9438)され,昭和57年12月13日に出願公告(実公昭57-
58027)された後,登録された(登録番号第1501677号。以下
「本件実用新案権」という。。)
イ被告タイホーは,昭和54年12月24日,発明者をDら,発明名称を
「防曇剤」とする発明について特許出願(特願昭54-166942)し
た。同出願は,昭和56年7月23日に出願公開(特開昭56-9087
6)され,昭和62年10月7日に出願公告(特公昭62-47227)
された後,登録された(登録番号第1441167号。以下「本件特許権
1」という。。)
ウ本件特許権1の特許請求の範囲は,その先願である本件実用新案権の実
用新案登録請求の範囲に含まれるものである。被告タイホーが,本件実用
新案権を盗用したのは明らかである。
エ被告タイホーは,①名称「自動車用ガラスコーティング剤,商品番号」
第20886号(クリンビューガラスコート撥水剤,②名称「自動車用)
くもり止め剤,商品番号20970号(フロントガラス撥水剤)を販売」
している。前記各製品は,シリコンオイルを使用した油膜取りクリンビュ
ーであって,本件特許権1の実施品である。
オ本件実用新案権の後願となる本件特許権1は無効である。したがって,
被告タイホーが,前記エの各製品を販売して得た何億円もの利益は,本件
実用新案権を有する原告が取得すべきものである。
よって,原告は,被告タイホーに対し,不当利得金の内金として400
万円を支払うことを求める。
()被告Bに対する請求2
ア原告は,弁理士である被告Bに対し,昭和52年3月20日ころ,油の
膜で撥水剤と湯膜を防止する防曇剤の考案に関し,実用新案登録出願を依
頼した。
イ被告Bは,発明者及び出願人を分離前被告E(以下「E」という)名。
義で,発明名称を「艶出し撥水剤」とする発明について特許出願し(特願
昭49-16487。出願日昭和49年2月9日,同出願は登録された)
(登録番号第925546号。以下「本件特許権2」という。この出。)
願は,原告の行ったシリコンオイル油,撥水剤の考案を冒認出願したもの
である。
被告Bは,原告から開示された考案を出願せず,また,依頼人の秘密を
,。,保持するという職務上の義務に違反して考案内容を漏洩したその結果
本件特許権2が冒認出願され,また,被告タイホーは本件特許権1の発明
を実施する商品(油膜取りクリンビュー)を販売して利得した。
ウよって,原告は,被告Bが依頼内容に沿った出願をしなかったことある
いは考案内容を漏洩したことを原因として,得べかりし利益400万円の
支払を求める。
()被告ジョンソンに対する請求3
アEが有していた本件特許権2は,本件実用新案権を盗用して取得された
ものである。
イ被告ジョンソンの販売する「レインダッシュスーパーロング」は,本件
特許権2の技術的範囲に含まれる。
ウ被告ジョンソンは「レインダッシュスーパーロング」の販売をして不,
,,,,当な利益を上げているので民法703条704条708条に基づき
その販売額10年分を原告に支払う必要がある。
被告ジョンソンは,本件特許権2について,Eから実施許諾を得て,商
品名「レインダッシュスーパーロング」という撥水剤を販売して,何億円
もの利益を上げている。本件特許権2は冒認出願であって,本来は原告が
被告ジョンソンから実施料を受けるべきである。
よって,原告は,被告ジョンソンに対し,不当利得金の内金として40
0万円の支払を求める。
()被告Cに対する請求4
ア弁理士亡Fは,本件実用新案権について,故意に第10年分の登録料を
支払わず,本件実用新案権を失効させた。
イ被告Cは,亡Fの子であり,上記行為に関する亡Fの権利義務関係を承
継する者である。
ウよって,原告は,被告Cに対し,10年目の登録料を払っていれば得た
であろう400万円の支払を求める。
()被告らに対する請求5
原告が,前記()ないし()記載の各被告らの行為によって被った精神的苦14
痛を金銭評価すれば,少なくとも各120万円を下らない。
よって,原告は,各被告らに対し120万円の支払を求める。
2被告らの主張
()被告タイホー1
ア被告タイホーに対する請求原因のうち,イは認め,ウは否認し,アは知
。,,らないエ及びオのうち本件特許権1による眼鏡用防曇剤を製造販売し
また,別の特許権により「自動車くもり止め剤」をクリンビューの商品名
で製造販売し,利益を得た事実はあるが,その余は否認する。
イ本件は本人訴訟とはいえ,二度にわたり,大阪地裁,大阪高裁,最高裁
,,において理由がないとされた事件について何ら調査研究をすることなく
また,専門家と相談することなく,漫然と被告に精神的・経済的に著しく
負担を掛けることを目的としてなされたものである。したがって,裁判制
度の目的に照らし,著しく相当性を欠くものであり,本件訴えの提起は不
適法であり,訴権を濫用するものである。したがって,本件訴えの却下を
求める。
ウ本件における原告の主張は,大阪地方裁判所平成16年(ワ)第3264
号と訴訟物を同じくするものであり,前訴の確定判決の既判力により棄却
を免れない。
()被告B2
ア被告Bに対する請求原因は否認する。
イ本件は本人訴訟とはいえ,三度にわたり,大阪地裁,大阪高裁,最高裁
,,において理由がないとされた事件について何ら調査研究をすることなく
また,専門家と相談することなく,漫然と被告に精神的・経済的に著しく
負担を掛けることを目的としてなされたものである。したがって,裁判制
度の目的に照らし,著しく相当性を欠くものであり,本件訴えの提起は不
適法であり,訴権を濫用するものである。したがって,本件訴えの却下を
求める。
ウ本件における原告の主張は,大阪地方裁判所平成11年(ワ)第2664
号と訴訟物を同じくするものであり,前訴の確定判決の既判力により棄却
を免れない。
()被告ジョンソン3
ア被告ジョンソンに対する請求原因のうち,アは知らない。イ及びウのう
ち,被告ジョンソンが「レインダッシュスーパーロング」をかつて販売し
ていたことは認め,その余は否認する。被告ジョンソンは,本件特許権2
についてEから実施許諾を得た事実はない。また,被告ジョンソンは,平
成15年12月31日に,自動車製品事業から撤退しており,現在は「レ
インダッシュスーパーロング」の販売を行っていない。
イ被告ジョンソンは,レインダッシュスーパーロングの販売において,い
かなる意味においても原告の技術を使用していない。
ウ原告の請求は,大阪地方裁判所平成11年(ワ)第2664号及び同平成
16年(ワ)第3264号の蒸し返しにすぎず,速やかに棄却されるべきも
のである。
()被告C4
ア被告Cに対する請求原因のうち,イは認め,ア及びウは否認する。
イ亡F(平成10年5月31日死亡)は,原告から第10年分の登録料支
払の委託を受けていなかった。このことは,次の各点から明らかである。
)本件実用新案権の登録料は第9年分まで納付されている。a
)原告は,大阪地方裁判所平成14年(ワ)第1323号事件において,b
亡Fの原告宛領収書を提出した。当該領収書の日付(平成2年12月1
日)及び金額(3万5240円)を登録原簿記載の第9年分の登録料に
関する納付状況(金額2万7000円,納付日平成2年12月7日)と
対比すると,これは,第9年分の登録料の支払委託に係る領収書である
(なお,当該領収書の金額3万5240円の内訳は,第9年分の登録料
2万7000円,手数料8000円及びその消費税(3%)240円で
ある。さらに,領収書の日付が登録原簿記載の納付日よりも前であ。)
ることから,亡Fは,単発の顧客である原告には,登録料及び手数料を
前払してもらってから特許庁に登録料を納付していたことが分かる。し
,,たがって原告が第10年分の納付も亡Fに委託していたとするのなら
同様に当該年度分に対応する金額の前払が原告よりなされ,当該支払に
。,関する亡Fの領収書が証拠として提出されてしかるべきであるしかし
原告は,本訴においても,前訴においても,肝心の第10年分の登録料
の支払委託に係る領収書を提出していない(むしろ,前訴の訴状の請求
の原因第4項1ないし4行目において,その領収書がないことを自認し
ている。。)
)なお,平成5年改正前の実用新案法の下では,実用新案権の存続期間c
は「出願公告から10年。但し,出願から15年を超えない」とさ,。
れていた(平成5年法律第26号による改正前の実用新案法15条1
項。つまり,原告は,仮に平成3年12月に第10年分の登録料を納)
付しても,出願から15年(すなわち,平成4年6月21日)でもって
権利の存続期間が満了し,残り半年しか権利を享受しえないため,第1
0年分の登録料の納付を希望しなかったのではないかと推測される。
ウ原告の被告Cに対する損害賠償請求の法律構成は不法行為又は契約違反
と考えられる。
不法行為については,原告は,本件訴訟と実質的に同一の主張に基づき
亡Fに対して平成14年2月に損害賠償請求訴訟を提起しているのである
,(,)から遅くとも当該訴訟提起から3年の経過すなわち平成17年2月
により消滅時効が完成する。
契約違反については第10年分の納付期限は平成3年12月13日な,(
いし遅くとも追納が許される平成4年6月13日。平成5年法律第26号
による改正前の実用新案法33条1項参照)である。したがって,遅くて
も追納期限である平成4年6月13日が起算点となるので,消滅時効の完
成は明らかである。
被告Cは,消滅時効を援用する。
理由
1原告がこれまでに提起した訴訟について
後掲各証拠によれば,原告がこれまでに提起した訴訟について,次のとおり
認められる。
()大阪地裁平成11年(ワ)第2664号(丙1・丁1,丁2)1
ア原告の求めた裁判
被告ジョンソンに対し,商品名「レインダッシュスーパーロング」の販
売の差止め及び620万円(損害賠償500万円及び慰謝料120万円)
の支払
,()被告Bに対し620万円損害賠償500万円及び慰謝料120万円
の支払
イ請求原因
原告は,昭和52年3月ころ,弁理士である被告Bに対し,特許権ない
し実用新案権の登録出願手続を依頼する目的で,①車両のエアワイパーに
ついてのアイディア,②ウインドウガラスに油状,ワックス状,油紙又は
他の液状,固体状,グリス状のものを塗布することにより,ウインドウガ
ラスに付着する雨・水等の水滴を粒状にして吹き飛ばし,ウインドウガラ
スに残さないようにしたアイディア,③加熱装置を設置して,熱風をウイ
。,ンドウガラスに吹き出して凍結を防止するアイディアを開示したしかし
被告Bは,依頼人の秘密を保持するという職務上の義務に違反して,上記
アイディア②を盗用し,Eの名義を用いて「艶出し撥水剤」の名称で特,
許出願(特願昭50-15722号)し,これが登録された。被告Bは,
被告ジョンソンとの間で,上記特許権について実施契約を締結し,被告ジ
ョンソンは,上記特許権を実施して,商品名「レインダッシュスーパーロ
ング」として商品化して販売している。被告Bは,上記実施契約により,
年間数億円の利益を得ており,原告は同額の損害を被り,また,被告らの
行為によって原告の被った精神的苦痛を金銭に換算すると,120万円を
下らない。
ウ訴訟の結果
大阪地方裁判所は,平成11年7月13日,被告Bが原告のアイディア
を盗用したと認めるに足りる証拠はなく,請求原因は理由がないとして,
原告の請求をいずれも棄却した。控訴審である大阪高等裁判所は,同年1
2月21日,控訴を棄却し,同判決は確定した。
()大阪地裁平成14年(ワ)第1323号(乙1,戊1ないし3)2
ア原告の求めた裁判
被告Bに対し,520万円(財産的損害400万円及び慰謝料120万
円)の支払
被告タイホーに対し,520万円(財産的損害400万円及び慰謝料1
20万円)の支払
,()亡Fに対し520万円財産的損害400万円及び慰謝料120万円
の支払
イ請求原因
「」,,被告タイホーがクリンビューと称する商品を製造販売する行為は
本件実用新案権及び原告の有する特許第2566512号の特許権を侵害
し,被告タイホーは,これによって何億円かの利益を得ている。
原告は,昭和52年3月ころ,弁理士である被告Bに対し,①車両のエ
,,,アワイパーについてのアイデア②ウインドウガラスに油状ワックス状
油紙又は他の液状,固体状,グリス状のものを塗布することにより,ウイ
ンドウガラスに付着する雨・水等の水滴を粒状にして吹き飛ばし,ウイン
ドウガラスに残らないようにしたアイデア,③加熱装置を設置して,熱風
をウインドウガラスに吹き出して凍結を防止したり,油膜を除去するアイ
デア,④防曇剤のアイデアを開示した。被告Bは,前記①についてのみ本
件実用新案権に係る実用新案登録出願をし,他のアイデアを第三者に漏ら
し,このアイデアに基づいて,被告タイホーが本件特許権1に係る出願を
した。
,。亡Fは本件実用新案権の10年目分の登録料を故意に支払わなかった
ウ訴訟の結果
大阪地方裁判所は,平成14年4月30日,被告タイホーに対する請求
は,同被告が本件実用新案権及び原告の有する特許権の技術的範囲に属す
る車輌用エアワイパーを販売している事実を認めるに足りる証拠はないと
して,被告Bに対する請求は,同被告が原告主張の技術を第三者に漏らし
た事実も,その結果,被告タイホーが本件特許権1を出願するに至った事
,。実についてもこれを認めるに足りる証拠はないとしていずれも棄却した
亡Fに対する訴えは,第1回口頭弁論期日(平成14年3月28日)に
取下げによって終了した。
()大阪地裁平成16年(ワ)第3264号(乙2,乙3・丁3,丁4,丁5)3
ア原告の求めた裁判
国に対し,5000万円の支払
G,H,被告B,E,被告ジョンソン及び被告タイホーに対し,各自金
400万円の支払
イ請求原因
原告は,昭和52年3月ころ,車両のエアーワイパーを考案したので,
,。,弁理士である被告Bに対し実用新案登録出願の手続を依頼したその際
原告がハスの葉に水をかけても水滴が葉に残らないことにヒントを得て考
案した,油膜を車両のウインドガラスの内外にコーティングする撥水剤及
,,。び防曇剤の考案についても口頭で実用新案登録出願の手続を依頼した
被告Bは,本件実用新案権に係る出願をしたものの,前記撥水剤及び防曇
剤の考案については,原告から出願の依頼を受けながらこれを出願せず,
また,依頼人の秘密を保持するという職務上の義務に違反して,その内容
を第三者に漏洩した。
,(「」,被告タイホーはフロントガラス撥水剤名称自動車用くもり止め剤
商品番号20970)を販売している。同製品は本件特許権1の実施品で
ある。しかし,本件実用新案権の実用新案登録請求の範囲には,油膜を防
止する防曇剤も含まれており,本件実用新案権より後願である本件特許権
1は無効であるから,被告タイホーが同製品の販売によって得た何億円も
の利益の一部は,原告が取得すべきものである。被告Bが前記防曇剤の考
案について出願していれば,又はその考案の内容を第三者に漏洩しなけれ
ば,被告タイホーに本件特許権1が付与されることはなかった。原告は,
,。その結果本来原告が得たであろう400万円を得ることができなかった
本件特許権2の出願は,原告が被告Bに実用新案登録出願の依頼をして
いた内容について,E名義で冒認出願されたものである。
被告ジョンソンはEから本件特許権2の実施許諾を受けて商品名レ,,「
インダッシュスーパーロング」という撥水剤を販売し,何億円もの利益を
得た。被告Bが前記防曇剤の考案について出願していれば,又はその考案
の内容をEに漏洩せず,Eがこれを冒認出願しなければ,本件特許権2は
原告に付与され,原告は被告ジョンソンから実施許諾料等を受けることが
できた。原告は,その結果,本来原告が得たであろう400万円を得るこ
とができなかった。
他に本件特許権1及び同2の特許庁担当審査官及び国に対し,違法に特
許査定がなされたとして損害賠償を求める。
ウ訴訟の結果
大阪地方裁判所は,平成16年7月29日,原告が被告Bに対し,本件
実用新案権の出願手続を依頼した際に,撥水剤及び防曇剤の考案について
も開示して,実用新案登録出願の手続を依頼したとの事実を認めることは
できない,原告主張の被告タイホーの行為が不法行為を構成するとはいえ
ない,被告ジョンソンの行為が不法行為を構成するとは認められないなど
として,原告の請求をいずれも棄却した(なお,原告の被告ジョンソンに
対する請求及び被告Bに対する請求のうち本件特許権2に関する部分は,
前訴(判決注:大阪地裁平成11年(ワ)第2664号)の確定判決の既判
力により棄却を免れないとした。控訴審である大阪高等裁判所は,同。)
年12月24日,控訴を棄却し,最高裁判所第一小法廷は,平成17年6
月30日,上告を棄却した。
2被告タイホーに対する請求
原告の請求は,要するに,被告タイホーの本件特許権1は,原告の本件実用
新案権を盗用して得たものであり,また,本件実用新案権の後願として無効と
されるべきものであるから,本件特許権1の実施品である被告タイホー製品の
,,,製造販売によって得た利益を不当利得として原告に支払うべきでありまた
慰謝料の支払を求めるというものである。
前記1()及び()に認定したとおり,原告は,本訴請求と実質的に同一の請23
求を既に2回行って敗訴しているのであるから,本訴請求は過去の訴訟の蒸し
返しといわざるを得ない。そして,その請求内容をも併せ考えれば,かかる訴
え提起は正当な権利行使とはもはやいうことはできず,被告の地位を不当に長
く不安定な状態におき,ことさらに応訴のための負担を強いるものといわざる
を得ないのであって,民事訴訟制度を濫用するものというべきである。したが
って,本件訴えは,訴権の濫用にあたり,訴えの利益を欠くものとして,訴え
を却下するのが相当である。
3被告Bに対する請求
原告の請求は,要するに,被告Bが原告から実用新案登録の出願の依頼を受
けたにもかかわらず,これを他人名義で出願するか,漏洩したことによって,
本件特許権1及び同2が成立し,それによって原告の得られたはずの利益が得
られなかったとして,その利益及び慰謝料の支払を求めるものである。
前記1()ないし()に認定したとおり,原告は,本訴請求と実質的に同一の13
請求を既に3回行って敗訴しているのであるから,本訴請求は過去の訴訟の蒸
し返しといわざるを得ない。そして,その請求内容をも併せ考えれば,かかる
訴え提起は正当な権利行使とはもはやいうことはできず,被告の地位を不当に
長く不安定な状態におき,ことさらに応訴のための負担を強いるものといわざ
るを得ないのであって,民事訴訟制度を濫用するものというべきである。した
がって,本件訴えは,訴権の濫用にあたり,訴えの利益を欠くものとして,訴
えを却下するのが相当である。
4被告ジョンソンに対する請求
原告の請求は,要するに,被告ジョンソンの製造販売する製品が,原告が発
明したにもかかわらず冒認出願された本件特許権2の実施品であるとして,同
製品の製造販売による利益を得るのは本来は原告であるとして,不当利得の返
還及び慰謝料の支払を求めるものである。
原告は昭和52年に弁理士である被告Bに自ら行った発明を開示したとこ
ろ,当該発明が冒認出願された(昭和49年出願の本件特許権2)と主張する
のであって,各行為の先後関係をみれば,その主張内容自体が不合理なもので
ある。さらに,原告は,被告ジョンソンに対し,前記1()及び()の各訴訟を13
提起していずれも敗訴しているところ,前記各訴訟は不法行為に基づく損害賠
償請求権,本訴は不当利得返還請求権というように法律構成に相違はあるもの
の,請求原因とされた社会的事実は実質的に同一というべきである。したがっ
て,原告の主張内容自体の不合理さに,実質的に同一の社会的事実に基づく不
法行為を原因とする損害賠償請求権の不存在について既判力が働くことをも併
せ考えれば,原告の本訴請求は理由がないものというべきである。
5被告Cに対する請求
原告は,本件実用新案権の登録料の支払を,弁理士の亡Fに依頼していたと
ころ,亡Fは第10年分の登録料を支払わず,本件実用新案権を失効させて原
告に損害を与えた旨主張する。
戊4によれば,本件実用新案権は,昭和52年6月21日に出願され,昭和
57年12月13日に出願公告されて,昭和58年8月10日に登録されたこ
と,第1年分ないし第3年分の登録料合計9000円が昭和58年5月4日に
支払われたこと,第4年分ないし第6年分の登録料合計2万7000円が昭和
60年2月5日に支払われたこと,第7年分及び第8年分の登録料合計5万4
000円が昭和63年12月7日に支払われたこと,第9年分の登録料2万7
000円が平成2年12月7日に支払われたこと,平成3年12月13日第1
0年分登録料不納を原因として,平成5年2月25日に抹消登録されたことが
認められる。また,戊5によれば,亡Fは平成2年12月1日に原告から3万
5240円を受領したことが認められる。
平成2年12月1日に原告が亡Fに支払った3万5240円は,前記第9年
分の登録料及び諸経費(手数料8000円及びその消費税相当額(税率3%)
240円)と一致することに照らせば,原告は亡Fに対し第9年分の登録料支
払を委託してその支払をしたものと推認される。これに対し,原告が第10年
分の登録料を亡Fに支払ったことを証する書面は何ら提出されていない。かか
,,る事実関係に加え平成5年法律第26号による改正前の実用新案法の下では
実用新案権の存続期間は「出願公告の日から10年をもって終了する。ただ,
し,実用新案登録出願の日から15年をこえることができない(平成5年。」
法律第26号による改正前の実用新案法15条1項)とされ,本件実用新案権
は,10年目の中途の平成4年6月には存続期間が満了することになっていた
ことをも併せ考えれば,原告が亡Fに対し,本件実用新案権の第10年分の登
録料の支払を委託したとは認め難く,これを認めるに足りる証拠はないといわ
ざるを得ない。
6結論
以上によれば,原告の被告タイホー及び被告Bに対する訴えは訴権の濫用に
該当するのでこれを却下し,原告の被告ジョンソン及び被告Cに対する請求は
理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
設樂隆一裁判長裁判官
古河謙一裁判官
吉川泉裁判官

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〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
時給 当社規定による
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シフトは週40時間以上
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