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裁判例


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主文
一一審原告の控訴をいずれも棄却する。
二一審被告らの控訴に基づき、原判決主文第一項及び第二項を次のとおり変更する。
1一審被告福岡県知事が、一審原告に対し、平成八年二月二三日付でした原判決添付文
書目録一記載二ないし五の文書部分を開示しないとの各処分のうち、次の部分をいずれ
も取り消す。
(一)同目録記載二、三の全部
(二)同目録記載四のうち、原判決添付別表1記載の各非開示部分を除いた部分
(三)同目録記載五のうち、出勤簿中の現住所欄及び休暇等に関する情報が記載されて
いる部分を除いた部分
2一審被告福岡県代表監査委員が、一審原告に対し、平成八年二月二三日付でした同目
録記載六ないし九の文書部分を開示しないとの各処分のうち、次の部分をいずれも取り
消す。
(一)同目録記載六のうち、出勤簿中の現住所欄及び休暇等に関する情報が記載されて
いる部分を除いた部分
(二)同目録記載七、八の全部
(三)同目録記載九のうち、職員数欄及びその下部に記載の情報、自己監査の概要欄の
記載部分を除いた部分
3原判決主文第一項1及び第二項4を次のとおり訂正する。
(一)同目録記載一のうち、債権者の口座番号、口座名義が記載されている部分を除い
た部分
(二)同目録記載一〇のうち、債権者の口座番号、口座名義が記載されている部分を除
いた部分
4一審原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三一審被告らのその余の控訴をいずれも棄却する。
四一審原告の控訴費用は一審原告の、一審被告らの控訴費用はそれを一〇分しその一を一審
原告の、その余を一審被告らの各負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一一審原告
1原判決を次のとおり変更する。
2一審被告福岡県知事が一審原告に対し、平成八年二月二三日付でした原判決添付文
書目録一記載一ないし五の文書部分(以下、同目録記載の各文書を「本件非開示部分
一「本件非開示部分二」等という)を開示しないとの処分並びに平成九年一月二二」、。
日付でした本件非開示部分一一及び一二を開示しないとの処分をいずれも取り消す。
3一審被告福岡県代表監査委員が一審原告に対し、平成八年二月二三日付でした本件
非開示部分六ないし一〇を開示しないとの処分を取り消す。
4訴訟費用は第一、二審とも一審被告らの負担とする。
二一審被告ら
1原判決中一審被告らの敗訴部分を取り消す。
2一審被告福岡県知事が一審原告に対し、平成九年一月二二日付でした本件非開示部
分一二を開示しないとの処分を取り消すとの一審原告の請求を却下する。
3一審原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする。
第二事案の概要
当審において、次のとおり補充して主張するほかは、原判決の「事実及び理由」中の
「第二福岡県情報公開条例」欄及び「第三事案の概要」欄各記載(原判決六頁二行
目から同六二頁五行目まで)のとおりであるから、これを引用する(但し、同一一頁七
行目の「権利能力なき社団)であり」を「権利能力なき社団)であったが、平成一一(、(
年一〇月一日特定非営利活動法人となった」に改める。。。)
一一審原告
1口座に関する情報(本件非開示部分一及び一〇)
債権者の口座に関する情報は九条二号に該当しない。すなわち、①本件の口座に関
する情報はいずれも飲食店等を営む者(債権者)の情報であるが、これらの情報は取
引相手方には広く告知するものであるから、債権者らにとって営業上の秘密とはいえ
ない、②債権者らは、これらの情報につき、自ら積極的に取引先以外の者に開示する
ことはないとしても、取引先を通じて第三者に知られることを一般的に拒絶している
とは認められず、これらの情報を取引先以外の者が入手したとしても、債権者の正常
な取引活動に具体的な支障が生ずることはない、③右情報は、内部管理に関する情報
であっても、金銭の出納や事業資金の管理内容そのものの情報ではないから重要な内
部情報とはいえないからである。
また、県民が、県の不正な公金支出をチェックするためには、口座に関する情報を
知る必要性が高い。
2調査委員会資料(本件非開示部分一一)
(一)九条三号は、行政における内部的な審議、検討、調査研究等が円滑に行われる
ことを確保する観点から、公文書の開示義務を免除したものであり、本号に該当す
、、、、るためには行政の意思形成過程における審議検討調査研究等に関する情報で
開示することにより当該または同種の審議、検討、調査研究等に著しい支障が生ず
るおそれがあることが必要である。
しかし、本件非開示部分一一の文書は、旅費問題調査委員会が不正公金支出の実
態の解明と県民への説明公表という設置目的に基づき実態調査をした結果であり、
それ自体完結した情報であるから、行政の意思形成における審議、検討、調査研究
等に関する情報を記載した文書ではないし、また、それを開示することにより、当
該または同種の審議、検討、調査研究等に著しい支障が生ずるおそれもない。
また、公金不正支出の原因や背景の究明、改善策の検討等は、広く県民に情報が
公開され、県民の参加と監視のなかで然るべき方策が確立されなければならないか
ら、県民の行政参加、民主主義の観点からすれば、本件非開示部分一一の文書は、
審議、調査等の円滑な遂行を確保するとの理由で開示義務が免除されるべき情報で
あるとはいえない。
(二)九条五号は、事務事業の公正かつ適正な執行又は円滑な執行を確保する観点か
ら情報公開原則の例外として開示義務を免除したものである。一審被告知事は、不
正公金支出の実態の解明と県民への説明、公表という義務を県民に対して負ってい
るから、一審被告知事はこの責務を果たすことによってこそ公正かつ適正な公務執
行を実現しうるというべきである。したがって、本件非開示部分一一の文書は本号
に該当しないと解すべきである。
二一審被告ら
1本条例九条一号(個人情報)
九条一号は「個人に関する情報」であって「特定の個人が識別され、又は識別さ、、
れうるもの」と客観的・一義的に定め、これを原則として非開示情報とした上で、た
、、。だし書イロハに該当する情報を例外的に非開示情報から除く方式を採用している
本号の「個人に関する情報」には、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関す
る一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるのであって、
個人が識別されうる情報のうち、私生活上の事実に関するもので、性質上公開に親し
まないような個人情報に限られるものではない。本条例には右制限的な要件は付加さ
れておらず、九条一号の立法趣旨や文言に著しく反しているばかりか、このような抽
象的かつ曖昧な基準によるのでは、個人の正当な権利利益を十分に保護できないし、
また、実施機関においても大量、多種多様の開示請求について短期間のうちに迅速に
開示・非開示の決定をすることが困難となる不都合が生じるからである。
(一)個人の氏名について
氏名は、特定の個人が識別できる最も基本的な情報であり、個人の人格権の一部
を構成するものであるから、九条一号本文により原則として非開示とされるべきも
のである。公務員に限って「氏名の開示によって、私生活上の平穏が不当に害され
る」という要件が満たされる場合に非開示とされる根拠はない。
(二)出勤簿について
出勤簿は、個々の県職員の出勤状況、休暇等の情報が記載された文書であり、当
該職員の個人に関する情報で、しかも個人の識別が可能な情報であるから、九条一
号に該当する非開示情報である。
ことに「年休、病欠、産休」という出勤簿に記載された情報は、性質上公開に親、
しまないような個人情報の典型であり「その詳細な事情が判明するか否か」という、
法文にない要件を開示基準として付加すべきではない。
2本条例九条二号(事業情報)
九条二号は、営利活動、非営利活動を問わず、競争上の地位その他の正当な利益を害
する情報を非開示とするものである。
(一)債権者の氏名等
事業者にとって、売上や顧客(いわゆる客筋)に関する情報は、ノウハウと同様
の重要な情報であり、これが開示されると、競争上の地位その他正当な権利が害さ
れるから九条二号に該当し、非開示とすべき情報である。
(二)債権者番号
福岡県では、県の債権者に対する支払事務の適正化や迅速化のため、あらかじめ
債権者に関する情報(債権者が支払先として指定した金融機関名、預金種別、口座
番号、口座名義人等)を電算システムに登録している。債権者番号は債権者の登録
内容を表す番号として県と債権者との間でのみ設定されたものであり、事業者の内
部事項に関する情報である。これが開示されれば、悪用されるおそれもあり、事業
者の正当な利益が害されるから九条二号に該当し、非開示とすべきである。
3本条例九条四号(国等関係情報)
監査委員は、議会や知事その他の執行機関の何れにも属さない独立した機関であり、
効率的な自治行政及び公正な自治財政の確保を目的として、知事その他の執行機関の行
財政の執行をチェックする機関であるが、地方自治における行政の多様化等に伴い、監
査業務が複雑化、高度化するのに対応するために、協議会を設け、協議会において監査
業務に関して協議検討し、監査業務の向上に勤めている。したがって、監査委員協議会
等では高度の信頼関係に基づき協議の目的達成のために未確定、検討中の情報が進んで
提供されているが、これが開示されれば、監査委員の関心事、重点項目だけでなく、ど
の都道府県がどのような地位の者を何名参加させたかという情報からだけでも当該都道
府県の監査の重点事項が明らかになり、他の都道府県との信頼関係や他の協議会等につ
いての信頼関係が著しく損なわれることになる。よって、本件非開示部分九は、いずれ
も九条四号に該当し、非開示とすべき情報である。
4本条例九条五号(行政運営情報)
一審被告らは、本件非開示部分一、一〇の各部分ごとに非開示処分の理由を具体的に
主張したが、情報が開示されることによって著しい支障を生ずるおそれの有無程度につ
いて更に具体的に主張立証しようとするならば、結果的に非開示とすべき情報の公開を
しなければなしえないのに等しくなり、不当である(本条例九条四号にかかる本件非開
示部分九についても同様。。)
5本条例二条(本件非開示部分一二の文書の公文書性)
本条例二条一項にいう「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得し
た文書であり、決裁又は回覧等の手続が終了し、実施機関において管理しているものを
いう「職務上取得した」とは、当該文書等の最終的処分権限を得ることをいうが、本件。
非開示部分一二の各文書は各職員の私物であり、控訴人知事はこれを預かっているだけ
である(保全)から、職務上取得した文書ではなく、したがって、開示請求の対象とな
る公文書ではない。また、決裁又は回覧等の手続の終了、実施機関による管理という要
件も満たしていない。
第三当裁判所の判断
一本案前の主張(本件非開示部分一二)について
原判決六二頁八行目から同六四頁八行目までを引用する(但し、同六三頁一行目の「同
被告は」を削除し、同六四頁五行目の「については」の次に「これらを公文書であると、
して」を加える。、。)
二本条例の解釈指針
同六四頁一一行目から同六五頁三行目までを削除し、右部分を次のように改める。
憲法は、民主主義の原点として言論、出版等一切の表現の自由(憲法二一条一項)を
保障し、国民主権の制度の骨格をなすものとして公務員の選定、罷免権、普通選挙の保
障、住民自治(憲法一五条一項、九二条、九三条二項)等を定めているが、その実質的
な具現は、活動をなし、あるいは制度に参加する国民らの現状に対する正確な認識等を
当然の前提としているのであるから、いわゆる知る権利は、これらの表現の自由等に内
包し、派生した権利と解するのが相当である。
しかしながら、憲法が保障する表現の自由をみても、外部に向けた自己意思等の表現
を目的としており、さらに、その範疇にどのような内容を具体的に含めるかは、立法に
より創設すべきものである。右の知る権利も、同様に具体的内容を明確に定めた法令等
がない限り、未だ抽象的な権利にすぎず、裁判規範として規律性を有する具体的な権利
とは言い難いところ、県は、本条例を制定し、一条で、県民の公文書等の開示を求める
権利を明らかにし、実施機関が保有する公文書等の開示を求める県民の権利を設定する
ことを明確にし、二条で公文書の範囲を明らかにし、三条では、その解釈及び運用につ
いて、実施機関において県民の公文書等の開示を求める権利が十分に尊重されるように
解釈して運用することとする一方、個人に関する情報がみだりに公にされることのない
ように最大限の配慮をしなければならないことを定め、さらに具体的には、九条におい
て、実施機関は、開示請求に係る公文書等に九条各号のいずれかに該当する情報が記録
されているときは、当該公文書等の全部又は一部の開示をしない決定ができるなどの手
続をも定めたのであって、このような本条例の規定等も総合検討すれば、本条例は、地
方自治の場において、県民等に実施機関の管理する公文書等の開示を求める権利(以下
「公文書開示請求権」という)を実体的に確立し、これによって県民等の県政に対する。
理解と信頼を深め、さらに住民自治の本旨に則った県民参加による県政を推進するため
に、その開示手続の制度化を図ったものと解することができる。
本条例制定の趣旨は、右のとおりであるが、定立された右公文書開示請求権は、前記
参政権等の実質的な保障となり、効果あらしめるものであること、本条例が九条等で適
用除外事由を定め、非開示文書を明らかにしていることなどを総合すると、県が保有す
る公文書の開示については、非開示事由に該当しない限り、原則として公開しなければ
ならないものというべきである。
右のとおり、本条例は、公文書開示請求権の内容を具体的に設定し、県民等の憲法上
の抽象的な権利であった「知る権利」を地方自治の場において実効あらしめるために、
裁判規範としての性格を有する公文書開示請求権という具体的権利にまで高めたと解さ
れるから、本条例の解釈、適用に当たっては、右の原則開示の趣旨や本条例の制定の目
的等を踏まえ、非開示事由を定めた各条項を合理的、客観的に解釈し、当該情報が開示
されることによって侵害される権利の有無等も対比考量して判断すべきものというべき
である。
三九条一号該当性(個人情報)について
次に、付加、訂正するほかは、同六五頁五行目から同七六頁一行目までと同じである
から、右部分を引用する。
1同六六頁三行目の「しかし」から同五行目の「事実である」までを削除し「しか、。、
し、前記説示のように、県が保有する公文書の開示については、非開示事由に該当し
ない限り原則として公開しなければならないものというべきでありまた手引乙、、、(
二、五頁)においても『実施機関は、県民の公文書の開示を請求する権利を十分に尊
、。』重するよう原則公開の精神に立ってこの条例の解釈及び運用をしなければならない
『実施機関は、開示の請求があった公文書に記録された情報が、第九条の各号に定め
られた情報(適用除外事項)に該当するか否か、また、そのことにより当該公文書を
開示しないことができるかどうかの判断に当たっては、原則公開の立場から適正に解
釈し、及び運用しなければならない』と明記されていることからすれば、この観点か。
ら当該情報が開示されることによって侵害される権利(プライバシー)の内容を対比
考量してその判断がなされなければならない。そして、さらに」に改める。、
2同六六頁一〇行目の末尾に続けて「なお、一審被告らは、本条例には右制限的な要
件は付加されておらず、九条一号の立法趣旨や文言に著しく反しているばかりか、こ
のような抽象的かつ曖昧な基準によるのでは、個人の正当な権利利益を十分に保護で
きない旨主張するが、右のように解釈することは、前記のように公文書開示請求権と
プライバシー権との調整を図った結果であって、採用できない」を各加える。。
3同七六頁二行目から同七七頁末行までを削除して、右部分を次のように改める。
出勤簿中、職、氏名の欄の記載は、当該職員の公務員たる地位に関する情報であっ
て、前記のように個人に関する情報には該当せず、本来開示しなければならない情報
である。また、出勤及び出張に関する記載は、当該職員の公務遂行に関する情報であ
るから、個人に関する情報には該当せず、本来開示しなければならない情報である。
そして、右各記載が開示されることにより、当該職員の生活の平穏が不当に侵害され
ることの具体的な主張立証がなされているとは認められないから、右各記載は、九条
一号により保護が予定されている情報には当たらないというべきである。
しかし、出勤簿中、当該公務員の住所(電話番号を含む)のほか、年次休暇、特別
休暇、職務専念義務免除、病気休暇等が記載された情報は、いずれも、個人の私的活
動に関する情報であったり、職務と関係のない個人の私生活や行動に関わる情報であ
って、その性質上公開を望まない、公開に親しまない個人に関する情報である。そし
て、本件の出勤簿には、職や氏名の情報が記載されており、これらの情報は、前記の
ように開示すべき情報であるから、これらの情報と併せ判断すれば、当該公務員の住
所や休暇等に関する情報は、特定の個人が識別されうる情報であり、性質上公開に親
しまない情報であると認められる。したがって、右各記載の情報は、九条一号により
保護が予定されている情報であるというべきである。
一審原告は、これら休暇は、労働者の正当な権利行使として誰はばかることなく取
ることのできるものであるから、有給休暇等の権利を行使したことが開示されても何
ら不都合はない旨主張するが、権利行使の正当性をもってそれが開示されてよいとす
る根拠にはなりえず、権利行使の正当性は開示の局面の利益考慮の対象にならないと
いうべきであるから、一審原告の右主張は失当である。
なお、本件出勤簿によれば、休暇等に関する情報が記載されている部分とそれ以外
の情報が記載されている部分とは、休暇等に関する情報が記載されている部分を黒く
塗潰す等の方法により容易に分離することができるものと認められる。
よって、本件非開示部分五、六の文書のうち、現住所欄、年次休暇、特別休暇、職
務専念義務免除、病気休暇等が記載された休暇等に関する情報欄以外の部分は九条一
号に該当しないが、右各欄の部分については、同号に該当するものと認める。
四九条二号該当性(事業情報)について
同七八頁二行目から同八四頁一二行目までを引用する。但し、同八〇頁七行目から同
八行目にかけての「振込先銀行名、同支店名、口座の種別」を削除し、同八二頁七行目、
の「口座」の次に「番号及び口座名義」を加える。
五九条三号該当性(行政内部情報)について
次に、付加、訂正、削除するほかは、同八五頁一行目から同九八頁末行までのとおり
であるから、右部分を引用する。
1同八六頁九行目から同末行目までを削除する。
2同八七頁五行目の「別表1」について「別表1」中の番号17の「件名、用務名」、
欄の末尾に「復命」を加え、同番号18の「件名、用務名」欄の「七都道府県」を()
「」、「、」「」「」。七都府県に同番号33の件名用務名欄の選任を専任に各改める
3同九五頁一二行目の「事業」の次に「実施」を加え、同九六頁六行目の「おそれが
が」を「おそれが」に改める。
六九条四号該当性(国等関係情報)について
次に、付加、訂正するほかは、同九九頁二行目から一〇五頁二行目までのとおりであ
るから、右部分を引用する。
1同一〇〇頁九行目の「31」の次に「32」を、同一〇一頁三行目の「29」の、、、
次に「32」をそれぞれ加える。同一〇二頁五行目の「七都道府県」を「七都府県」、
に、同一一行目の「施策」を「生産」にそれぞれ改める。
2同一〇五頁二行目の次に、行を改めて「なお、一審被告らは、どの都道府県がどの、
ような地位の者を何名参加させたかという情報からだけでも当該都道府県の監査の重
点事項が明らかになり、他の都道府県との信頼関係や他の協議会等との信頼関係が著
しく損なわれることになる旨主張するが、このおそれも抽象的な主張にとどまり、県
と国等との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれを根拠づける具体的な事実の立
証がなされているとは認められない。
また、一審被告らは、本件非開示部分九の各部分ごとに非開示処分の理由を具体的
に主張した以上に、県と国との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれの有無程度
について、更に具体的に主張立証しようとするならば、結果的に非開示とすべき情報
の公開をすることに等しくなり不当である旨主張するが、前記説示(本条例九条各号
の非開示事由の解釈指針)からしても、開示を求められた公文書が本条例所定の非開
示事由に該当するか否かの判断が実施機関の裁量にゆだねられているということはで
きないから、公文書の開示を拒むには、その公文書を開示することによって非開示事
由として定められている支障が発生することを、実施機関において主張、立証しなけ
ればならないし、また、自ずからその立証の程度も決まってくるといわざるをえない
ところ、一審被告らにおいて、個別の文書ごとに何ら具体的な立証をしているとは認
められない以上、前記認定を左右するものとはなりえず、一審被告らの右主張は採用
できない」を加える。。
七九条五号該当性(行政運営情報)について
次に、付加、訂正するほかは、同一〇五頁四行目から同一一七頁九行目までのとおり
であるから、右部分を引用する。
1同一〇七頁三行目の「反復」の次に「継続」を加え、同一〇八頁一一行目の「失わ
れること」を「失われ」に、同一二行目の「支障を生ずること」を「支障を生ずるお
それがあること」に、同末行目の「損なわれること」を「損なわれ」に、同一〇九頁
一行目の「支障を生ずること」を「支障を生ずるおそれがあること」にそれぞれ改め「
る。
2同一一〇頁七行目の「出席者等」を「出席者のうち相手方」に改め、同頁八行目の
「債権者等」から同一〇行目の「等を含む」までを削除する。。)
3同一一四頁七行目の次に、行を改めて「なお、一審被告らは、本件非開示部分一、
一〇の各部分ごとに非開示処分の理由を具体的に主張した以上に、情報が開示される
ことによって著しい支障を生ずるおそれの有無程度について、更に具体的に主張立証
しようとするならば、結果的に非開示とすべき情報の公開をすることに等しくなり不
当である旨主張するが、前記説示(六の2)と同様採用できない」を加える。。
4同一一七頁九行目の次に、行を改めて「なお、一審原告は、一審被告知事は不正公
金支出の実態の解明と県民への説明、公表という責務を県民に対して果たすことによ
ってこそ公正かつ適正な公務執行を実現しうるのであるから、本件非開示部分一一の
文書は本号に該当しないと解すべきである旨主張するが、独自の見解であって採用で
きない」を加える。。
八本件非開示部分一二について
1同一一七頁一一行目から同一一八頁三行目までを引用する。
2同頁四行目から同一二〇頁一一行目までを削除し、右部分を次のように改める。
また、手引によれば「決裁又は回覧等の手続が終了」にいう「決裁」とは、実施機、
関がその権限に属する事項について、事務決裁規程等に基づき、事案の最終的意思決
定を行うことをいい「回覧」とは、文書等に係る事務を所掌する実施機関が、文書に、
関する管理規程等に基づき、その内容を確認することをいい「手続が終了」とは、起、
案文書については、決裁権者が、意思決定のための押印又は署名をしたときをいい、
回覧文書については、決裁権者がその内容を最終的に確認したときをいうとされてい
る。
(二)一般に情報公開条例の対象となる公文書の範囲の定め方には、①職員が職務上
作成しまたは取得した文書、②右の文書のうち決裁または供覧・受理手続等を終え
た文書という大きく二つの方式があるが、本条例は②の方式を採用している。した
がって、本条例にいう公文書は、決裁権者の決裁済み文書ということになり、決裁
を受けていない公文書は開示の対象とならない公文書ということになるし、また、
直接決裁の対象にならない文書や資料も開示の対象にならない公文書というべきで
ある(もっとも、直接決裁の対象にならない文書や資料であっても、決裁文書との
一体性という実質的要素を考慮し、決裁済みの回議書に添付されている資料も含め
て公文書と解するのが相当である。。)
(三)本件非開示部分一二の文書中、補助簿以外の文書や資料は、いわゆる雑賦金の
入金や出金に関する記録が記載されているメモやノートであったり、その入出金を
管理する預貯金通帳、領収書、振込依頼書であり、それらは、出張日程や期間、事
務状況の調整をするためなどの下書きとして作成されたものやその実行段階の各書
類であって、職員の私的な文書ではなく、職務に関して作成されたものといえる。
しかし、右各文書や資料は、直接回覧や決裁を受ける文書ではないし、また旅行命
令簿といった公文書等に添付されて決裁に回る文書でもないから、職員が職務上作
成した公文書と解することはできない。
しかし、補助簿については、証拠(甲二五の2ないし6)によれば、出張の多い
課では補助簿と呼ばれる帳簿が作成されていること、福岡県国民健康保健課でも、
出張の事務処理の際、補助簿に出張内容を記入し、ある程度まとまった時点で、公
式の出張簿である「旅行命令簿」に転記する方法を取っていたこと、補助簿には出
張先や期間を記入して庶務担当係長に提出し、課長補佐や課長の決裁をもらってい
たことが認められ、これによれば、補助簿は、職務上作成されたものとして、開示
の対象となる公文書であるというべきである。
一審被告らは、補助簿は、旅行命令において作成が義務づけられていたものでは
なく、事務状況や他の出張者の有無等を勘案しながら出張日程や期間を調整するた
めの書面として、右事務の取扱者が必要に応じて工夫した結果作成するようになっ
た書面であり、したがって、作成していない課もあるし、作成している課でもその
、、。、「」形式記入者記入方法もまちまちである補助簿は公文書である旅行命令簿
の作成に先立ち、課によって便宜上作成されていた書面にすぎないから、公文書で
はないと主張するが、右認定のように職員が個人的に手控えとして作成した、文書
作成のための下書きやメモとは異なるというべきであるから、右主張は採用できな
い。また、補助簿の記載形式、方法が各課で統一されていないことをもって、右認
定を左右するものとはならないというべきである。
(四)ところで、証拠(甲二五の1ないし15、二七)及び弁論の全趣旨によれば、
一審被告知事は、旅費問題調査委員会の要請に応じて、旅費の不正支出の実態を把
握し、その改善策等を検討するために、平成八年一一月五日、関係書類一切の破棄
・改ざん等を禁じるために、本件非開示部分一二の文書を保全したことが認められ
る。
そこで、本件非開示部分一二の文書中のメモやノート等補助簿以外の文書や資料
について、一審被告知事が「職務上取得」したことになるのかを検討する。
前記説示のように、本条例三条が、その解釈及び運用について、実施機関におい
て県民の公文書等の開示を求める権利が十分に尊重されるように解釈して運用する
こととするなど、本条例の原則開示の趣旨や本条例の制定の目的等を踏まえるなら
ば、情報公開制度の対象となる公文書の範囲を広く捉えたうえで、対象公文書でも
行政決定途上の文書についてはさらに内容的に非公開文書にあたるか否かを検討す
るとの見地から判断するのが相当である。本条例の手引においても「職務上取得と、
は、実施機関の職員が自己の職務の範囲内で事実上取得した場合をいい、文書等に
関して取得権限を有するか否かを問わないと解説されているがこの趣旨は取。」、、「
得」という概念を狭く限定して解釈することなく、本条例の趣旨及び目的を具現せ
んとするものであって、右解釈と同旨の方向性を有するものと解される。したがっ
て、本条例二条にいう「職務上取得」の「取得」は、文書等を取得した実施機関に
おいて、右文書等に対する最終的な保持権限、処分権限等を有することを必要とす
るものではないというべきである。
そうすると、前記認定のように、本件非開示部分一二の各文書は、旅費の不正支
出の実態調査のために被告知事が県職員に対して保全の指示をし、その結果補助機
関を用いて事実上取得したものであるから、被告知事が職務上本件非開示部分一二
の各文書を取得したものというべきである。
これに対して、一審被告らは、本条にいう「取得」とは、実施機関の職員に当該
文書等を受領することについての権限があるか否かは問わないが、実施機関が当該
文書等を提出者に返還する必要がなく、自ら最終的な処分権限を取得することをい
うと主張するが、前記説示に照らして、採用できない。
更に、右認定のように、右各文書は、旅費の不正支出の実態調査のために旅費問
題調査委員会に提出されたもので、調査検討の俎上に載せるための書類に添付され
てあるいはそれと一体となって調査委員会に回るのが通常であるから、おそらく回
覧、決裁の要件は満たしていると推測できるし、取得後相当期間が経過しているこ
とからすれば、実施機関において管理しているものと推定されるところ、この点に
ついて本件各処分の適法性について主張立証責任を負う一審被告らにおいて右手続
が未了であること等を具体的に主張立証しない。
2以上によれば、本件非開示部分一二の各文書は、いずれも本条例二条の「公文書」
に該当するから、本件非開示部分一二の各文書を「公文書」に該当しないとしてなさ
れた公文書不存在決定は違法というべきである。
第四結論
以上説示のとおり、一審原告の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、一審被告ら
の控訴は前記限度で理由があるから原判決を変更し、その余の一審被告らに対する請求
を棄却し、原判決主文第一項1及び第二項4を訂正して、主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第二民事部
裁判長裁判官將積良子
裁判官兒嶋雅昭
裁判官山本善彦

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