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平成22年4月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ネ)第10059号損害賠償請求控訴事件(原審・静岡地方裁判所
浜松支部平成20年(ワ)第941号)
口頭弁論終結日平成22年1月19日
判決
控訴人X
同訴訟代理人弁護士鈴木重治
同佐々木大資
被控訴人タカラバイオ株式会社
同訴訟代理人弁護士国谷史朗
同重冨貴光
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,5540万円及びこれに対する平成20年11
月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
4第2項につき,仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は「寒天オリゴ糖」という表示を商品名とする健康食品を企画販売す,
る控訴人が,同じく「寒天オリゴ糖」の表示を付した健康食品を販売する被控訴人
に対し「寒天オリゴ糖」という表示は控訴人の周知商品等表示であるとして,被,
控訴人に対し,不正競争防止法2条1項1号及び同法4条に基づき,損害賠償とし
て,逸失利益5040万円及び弁護士費用500万円並びにこれに対する訴状送達
の日の翌日である平成20年11月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延
損害金の支払を求める事案である。
2本件の前提となる事実については,原判決「事実及び理由」の「第2事案
の概要」中の「1前提事実」のとおりであるから,これを引用する(ただし,同
記載中「原告」を「控訴人」と「被告」を「被控訴人」と「原告商品」を「控,,,
訴人商品」と「被告商品」を「被控訴人商品」とそれぞれ読み替え,以下,原判,
決を引用する場合は同様に読み替えるものとする。。)
3原審における争点は,原判決の「事実及び理由「第2事案の概要」中の」
「2争点」記載のとおりであるから,これを引用する。
4原審は,控訴人商品の商品名である「寒天オリゴ糖」という文字表示は,不
正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当しないと判断して,控訴人の請
求を棄却した。そこで,控訴人が,これを不服として本件控訴を提起した。
5控訴人は,当審において,予備的に「寒天オリゴ糖」の文字及び背景の図,
柄等を含む控訴人商品の包装全体が商品等表示であり,被控訴人が類似の包装を被
控訴人商品に使用し,控訴人商品と混同を生じさせる行為を行ったことが不正競争
行為であるとの主張を追加した(以下,この主張を争点(6)とする。。)
第3当事者の主張
当事者双方の主張は,次のとおり追加するほか,原判決の「事実及び理由「第」
3争点に対する当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する。
1控訴人
(1)争点(1)(商品等表示性)及び争点(2)(周知性)について
ア特別顕著性について
原判決は,控訴人が「寒天オリゴ糖」の表示を健康食品それ自体の名称として使
用した初めてかつ唯一の営業主体であったとしても「健康食品」にその有効性を,
強調したい原材料の名称を用いることは「寒天オリゴ糖」が普通名称性を失うほ,
どに個性的な特徴を有する使用方法とはいえないとの理由で控訴人商品の特別顕著
性を否定している。
しかしながら,控訴人商品の「寒天オリゴ糖」の表示が,単に有効性を強調した
い原材料の名を冠したものであるとの原判決の判断は誤っている。
控訴人商品は,海藻100%(寒天の原料であるテングサ95%,モズク5%)
を原材料とし,抽出工程で溶解を高めるためのリン酸塩,酵素液の使用や高温熱処
理を一切行わない控訴人独自の特殊製法を用いることで,有効成分の活性を損なう
ことなく抽出し,かつ添加物も一切加えることなく製造されていることから,テン
グサの有効成分から生じる低分子物質である寒天オリゴ糖が極めて効果的に摂取で
きる食品である。そこで,控訴人は控訴人商品に「寒天オリゴ糖」の名称を付する
とともに,このような控訴人商品の特徴及びそれが控訴人独自の特殊製法によるこ
とを大々的に宣伝していたものであるすなわち控訴人商品の商品名である寒,。,「
天オリゴ糖」という文字表示は,上記のような特殊製法と結びつくことによって,
他の誰でもない控訴人の商品であることを示す表示として使用し,そのように認識
されていたのであるから,元来は普通名称であったとしても,被控訴人商品が出現
する以前に既に出所識別機能を取得していたものである。
イ販売実績及び宣伝広告について
原判決は,控訴人商品の販売実績は被控訴人商品の販売開始に至るまでの間,多
くても250万円程度,購入者数にしておよそ50名程度の規模であり,テレビや
全国紙等影響力の大きい媒体による大々的な宣伝広告が行われたり,これらの媒体
に大きく取り上げられたといった事実が認められないこと,ホームページの他の商
品の宣伝やリピーターの存在等を勘案すると,アクセス数をもって必ずしも控訴人
商品の宣伝規模が大きかったものとはいえないことなどを理由に,控訴人商品が需
要者の間で広く認識されていた事実は認められないとする。
しかしながら,原判決は,控訴人が,控訴人商品につき,健康食品に興味を持つ
需要者,とりわけ,ガンに有効な健康食品を求める需要者を主なターゲットとして
宣伝広告を行っていたことを看過するものであり,妥当ではない。控訴人商品の需
要者が上記のような限定された需要層であることに加え,健康食品は少数の者が繰
り返し購入する傾向が強いことからすれば,控訴人の宣伝販売実績をもって,周知
性を認めるに十分である。
(2)争点(6)(当審における予備的主張)について
控訴人は,平成12年5月に控訴人商品の販売を開始して以来,控訴人商品を表
す標章として,別紙図面1のとおり「寒天オリゴ糖」の文字とともに,水面(海,
面)をイメージした背景上にテングサの絵を配する図形を表した包装を使用した。
,,,同包装は控訴人商品の宣伝・販売が繰り返されたことで平成16年9月までに
控訴人商品を表すものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである。
一方,被控訴人は,平成16年9月ころ,被控訴人商品の製造販売を開始し,そ
の際,被控訴人商品を表す表示として「寒天オリゴ糖」の文字とともに水面(海,
面)をイメージした背景上にテングサの絵を配する図形を表した包装を使用した。
以上のとおり,被控訴人は,需要者の間に広く認識されていた控訴人の商品等表
示と類似の商品等表示を使用したものであるから,被控訴人の行為は,不正競争防
止法2条1号の不正競争行為に該当する。これによって原判決の「第3争点に対
する当事者の主張」の5(原告の主張)記載のとおりの損害が控訴人に発生したも
のであって,控訴人商品の商品等表示が既に周知であったことから,被控訴人に過
失があったことは明らかである。
したがって,被控訴人は,同法4条により同損害の賠償責任を負っているという
べきである。
2被控訴人
(1)争点(1)(商品等表示性)及び争点(2)(周知性)について
ア特別顕著性について
控訴人は,控訴人商品に使用されている「寒天オリゴ糖」という表示は,控訴人
商品の特殊製法と結びつくことによって,控訴人の商品であることを示す表示とし
,,(,,て使用し認識されていたと主張するが控訴人が指摘する関係各証拠甲47
10,11,13の1及び14)をみても,控訴人が主張するような「特殊製法」
の具体的内容は記載されておらず,各証拠には単に「海藻100%を特殊製(方)
法で微粉末にした」旨の記載があるのみである。これらの記載からは,単に海藻1
00%を微粉末にするという抽象的な製(方)法が示されているにすぎず,これら
の証拠は控訴人独自の製法を需要者に対して何ら強調するものではない。
原判決が認定したように「寒天オリゴ糖」が健康食品の原材料として需要者に,
知られていたことにかんがみれば,控訴人商品の「寒天オリゴ糖」という表示は,
単に控訴人商品が寒天オリゴ糖を含む健康食品であることを需要者に示すにすぎな
い。すなわち「寒天オリゴ糖」という表示を見た需要者は,控訴人商品が「寒天,
オリゴ糖」を含む健康食品であると理解することはあっても,それを特定の営業主
体を示す表示として理解することなどあり得ないというべきである。
イ販売実績及び宣伝広告について
控訴人は,健康食品(特に,ガンに有効な健康食品)を求める需要者を主なター
ゲットとして控訴人商品の宣伝広告を行っていたとし,控訴人商品は需要者層が限
定されていることに加えて,健康食品は少数者が繰り返し購入する傾向が強いこと
からすれば,控訴人の宣伝販売実績をもって周知性が肯定される旨主張する。
しかしながら,控訴人の提出した証拠をみても,控訴人商品が,特にガンに有効
な健康食品を求める需要者を対象として宣伝広告を行っていたものとは認め難い。
すなわち,甲3はビジネス雑誌,甲4はスポーツ新聞,甲6は時刻表,甲8は経
済記事,甲9及び10は様々な商品の広告宣伝記事であって,これらの媒体が健康
食品を求める需要者を特にターゲットとして絞った広告宣伝資料であるとは到底評
価し難いものである。
そもそも,控訴人商品に限らず,寒天オリゴ糖は,種々の健康増進効果を有する
,,食品原材料であるところ健康志向食品市場の需要者層は限定されているどころか
極めて広汎にわたっているのであって,その市場規模も1兆2000億円を下るこ
とのない極めて大きい市場である。このような健康食品市場と比較すれば,控訴人
商品の販売・広告宣伝実績は,およそ特別顕著性や不正競争防止法2条1項1号所
定の周知性を肯認するに足りるものではなく,控訴人の主張に理由のないことは明
らかである。
(2)争点(6)(当審における予備的主張)について
商品の包装は本来的には商品の出所を表示する機能を有しないのであって,控訴
人商品の包装もその例外に当たるものではない。
また,控訴人商品の包装が長期間継続的かつ大々的に広告宣伝されたような実績
等もないことからすれば,控訴人商品の包装が商品等表示性を獲得したということ
はできない。
さらに,別紙図面1の控訴人商品の包装と別紙図面2の被控訴人商品の包装に係
る文字及び模様を比較しても,①「寒天オリゴ糖」なる文字の配列・字体・色,②
背景の色,③ヒトの図柄の有無,④海藻図柄等をはじめとして,一見して類似して
いないことが明らかである。
以上によれば,上記控訴人の予備的主張は失当である。
第4当裁判所の判断
1争点(1)(商品等表示性)及び争点(2)(周知性)について
(1)証拠(乙1ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,
同認定を覆すに足りる証拠はない。
ア「寒天」は,テングサ,オゴノリなどの紅藻から得られる抽出物であり,種
々の成分を含んでいるが,その主成分はアガロースとアガロペクチンである。アガ
ロースを加水分解するとオリゴ糖が得られるが,生成するオリゴ糖はその加水分解
される結合により2種類ある。一方は,希酸による弱い加水分解又はα−アガラー
ゼによるアガロピオースを構成単位とするアガロオリゴ糖であり,他方は,β−ア
ガラーゼによるネオアガロピオースを構成単位とするネオアガロオリゴ糖である。
これらのオリゴ糖,特に,ネオアガロオリゴ糖は,昭和63年ころから,でんぷ
ん老化防止作用,静菌作用を有し,難消化性で,腸内発酵性がなく,極めて低カロ
リーであり,食品物性的にも,また,栄養生理的にも有用な特徴を有することが知
られていた(乙1ないし5。)
イ「寒天オリゴ糖とでん粉老化防止と静菌作用」と題する文献(昭和63年2
月1日発行。乙4「寒天オリゴ糖(ネオアガロオリゴ糖」と題する文献(平成),)
2年12月17日発行乙3及び寒天オリゴ糖の生産と利用と題する文献平。)「」(
成3年7月1日発行。乙5)並びに公開特許公報(乙6ないし8)の各記載から明
らかなとおり「寒天オリゴ糖」という名称は,学術文献及び公開特許公報におい,
て,遅くとも昭和63年ころから,寒天由来のオリゴ糖であるアガロオリゴ糖やネ
オアガロオリゴ糖を示す名称として,一般的に使用されていた(乙3ないし8。)
ウ被控訴人の前身である宝酒造株式会社(以下「宝酒造」という)は,平成。
10年6月ころ,長年の研究の結果,アガロオリゴ糖が,人のガン細胞に対して特
異的に自殺を引き起こす「アポトーシス作用」を持つだけでなく,マウスに対する
経口投与でガン抑制作用を示すことを世界で初めて発見した旨発表し,それが多く
の新聞において取り上げられ,さらに,宝酒造が,既にアガロオリゴ等の生産を始
めていること,同年7月下旬にも,アガロオリゴ糖の入った清涼飲料水を発売する
予定であること,アメリカの医療研究機関に臨床試験を委託して医薬品としての認
可を目指していること等も併せて新聞記事で紹介された。なお,当時「寒天オリ,
ゴ糖」という名称を使用している新聞記事もあった(乙9,10,11。)
エ平成11年7月ころ,宝酒造は,アガロオリゴ糖に,ガン抑制作用のみなら
ず,発ガン防止効果もあることが確認された旨発表し,その事実及び同社が販売す
る「寒天オリゴ糖」入りの清涼飲料水を写真入りで紹介する新聞報道がされ,多く
の新聞記事で「寒天オリゴ糖」という名称が使用された(乙12,13,14。)
(2)以上の事実によれば「寒天オリゴ糖」という表示は,寒天から生成される,
(),,オリゴ糖アガロオリゴ糖及びネオアガロオリゴ糖を指す物質名称でありかつ
遅くとも平成11年7月ころには,寒天由来のオリゴ糖を示す名称として,需要者
間に認識され通用していたと認めるのが相当である。
したがって「寒天オリゴ糖」という表示は普通名称であって,原則として,自,
他識別機能ないし出所表示機能を有するものではないから,それを商品に使用して
も,商品等表示性を有するものではないというべきである。
(3)この点について,控訴人は,同人が「寒天オリゴ糖」という商品名を健康食
品それ自体の名称として使用した初めてかつ唯一の営業主体であって,平成12年
5月の販売開始以来,新聞や雑誌,時刻表に広告を掲載し,インターネットや地下
鉄,看板などでも広範に広告を展開するなどの大々的な広告活動を行ってきたこと
からすれば,仮に「寒天オリゴ糖」が原材料を表す普通名称であったとしても,例
外的に,控訴人商品の「寒天オリゴ糖」という表示について自他識別機能ないし出
所表示機能を取得するに至っている旨主張する。
しかしながら,全証拠を精査しても,控訴人が「寒天オリゴ糖」という商品名,
を健康食品それ自体の名称として使用した初めてかつ唯一の営業主体であったこと
を認めるに足りる証拠はない。かえって,上記認定のとおり「寒天オリゴ糖」と,
いう名称は,被控訴人の前身である宝酒造の研究成果の発表及びそれに続く商品の
開発の過程で,新聞記事などにより需要者に認識されるようになったものと認めら
れるから,需要者には「寒天オリゴ糖」を商品化したのは宝酒造であるとの認識が
広がっていたものと認められるのであり,証拠(甲3)によれば,控訴人が健康食
品としての寒天に注目したきっかけも,上記宝酒造の研究成果を聞知したことによ
るものであると認められるから,控訴人を「寒天オリゴ糖」という商品名を健康,
食品それ自体の名称として使用した初めてかつ唯一の営業主体と認めることはでき
ないというべきである。
(4)また,控訴人による控訴人商品の販売実績及び宣伝広告についての認定・判
断は,原判決「第4当裁判所の判断」中の3(2)のとおりであるから,これを引
用する。
上記認定・判断のとおり,被控訴人商品の販売開始時期である平成16年9月7
日までに販売された控訴人商品の販売回数,売上げ総額及び販売個数は,最も多く
認定してもせいぜい販売回数133回余り,売上げ総額250万円程度,販売個数
250個程度にすぎず,また,控訴人商品の宣伝広告の実績として証拠上認められ
るものは,平成12年6月29日付け(甲9)及び同年8月17日付け(甲10)
の「中日ショッパー」という地方紙の広告欄の小さな広告,平成13年8月1日発
行「国際グラフ8月号(甲3)に記載された半頁の控訴人商品を紹介する対談記」
事,平成13年12月版日本時刻表(甲6)の広告欄の小さな記事「サンデー毎,
日」平成13年9月16日号(甲7)及び平成12年4月28日付け「中日新聞」
(甲8)の各広告欄の「寒天オリゴ糖」と表示された包装箱の写真すら掲載されて
いない極めて小さな広告,平成13年11月1日から平成14年10月31日まで
の間に都営地下鉄浅草線連結妻窓に掲載された7枚のステッカー(甲13の1,1
3の2,平成13年10月11日に設置された千葉県柏市国立がんセンター入口)
の看板(甲15)及び平成14年8月20日配信が開始された控訴人のホームペー
ジ(総アクセス数8万2212件。甲11,19)にすぎないことが認められる。
これに対し「生活習慣病予防など効能・効果18分野の健康食品市場を調査」,
と題するプレスリリース(乙16)によれば,健康志向食品市場の平成19年(2
007年)の総売上げ見込みは1兆2668億円であり,各分野における平成20
(),,年2008年の主要効能別規模予測においても整腸効果関連で2779億円
生活習慣病予防関連で1695億円,マルチバランス関連で1513億円,滋養・
強壮関連で1132億円,骨強化関連で1051億円,栄養バランス関連で900
億円,美肌効果関連で836億円,ダイエット関連で758億円という規模である
ことが認められる。
上記の控訴人商品の販売実績及び宣伝広告の実態並びに健康志向食品市場の規模
に照らせば,控訴人の販売実績及び宣伝広告は極めて小規模なものといわざるを得
ず,上記控訴人の販売実績及び宣伝広告の事実を根拠として「寒天オリゴ糖」と,
いう普通名称について,それが控訴人商品を表示するものとしての自他識別機能な
いし出所表示機能を取得したものと認めることができないことは明らかである。
(5)控訴人は,当審において,控訴人商品の「寒天オリゴ糖」という表示は,そ
の特殊製法と結びついて控訴人の商品であることを示す表示として使用,認識され
ていた旨主張する。
しかしながら,上記(4)において挙示した証拠を精査しても,広告には単に海藻
を特殊製法で微粉末にした旨の記載があるのみであって,その特殊な製法の具体的
内容が記載された広告は見当たらないから「寒天オリゴ糖」という表示がその特,
殊製法と結びついて使用,認識されていたとの控訴人の主張は失当である。
(6)さらに,控訴人は,当審において,控訴人商品は,ガンに有効な健康食品を
求めている限定された需要層を主な需要者として宣伝広告を行っているから,控訴
人の宣伝販売実績をもって周知性を認めるに十分である旨主張する。確かに,前記
(4)において挙示した証拠によれば,控訴人の広告の中には「ガンと闘っている,
方々に」との見出しを付しているものも散見されるが,そのような限定のない広告
もあり,逆に,上記都営地下鉄浅草線連結妻窓に掲載された7枚のステッカーに至
っては「ダイエットをお考えの方に」という大見出しを付し「寒天』を使用した,『
理想のダイエット食品」との宣伝文句が記載され「ガン」という文言が一切記載,
されていないことが認められるから,上記控訴人の主張は,失当である。
(7)以上のとおり「寒天オリゴ糖」という表示は,控訴人を営業主体とする商,
品等表示とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく「寒天,
オリゴ糖」という文字表示が控訴人の周知商品等表示であることを理由とする不正
競争防止法2条1項1号に基づく控訴人の請求は理由がない。
2争点(6)(当審における予備的主張)について
(1)控訴人商品の包装の表示と被控訴人商品の包装の表示との類比について
控訴人商品の包装の表示は,別紙図面1のとおり,上半分を灰色とし,下半分に
白波の立つ海のような青い背景を配し,同背景に重なるように,テングサ様のオレ
,,,「」ンジ色の植物図形を配しさらに同図形に重なるように黒色の寒天オリゴ糖
の文字を縦書きに配した構成態様からなるものである。
一方,被控訴人商品の包装の表示は,別紙図面2のとおり,上半分をクリーム色
に,下半分を小豆色にし,その中間をグラデーション的色彩とする背景を配し,左
側に,右手,腰及び右膝に金色のぼかしのある白地の人体図形を配し,右側に,テ
ングサ様の金色の植物図形を配し,背景に重なるように,その上段部に,小豆色の
「寒天オリゴ糖」の文字を横書きに配した構成態様からなるものである。
以上によれば,控訴人商品の包装の表示と被控訴人商品の包装の表示とは,その
外観において,図柄及び色彩が全く異なっていることが一見して明らかであるばか
りか,前記1で認定したとおり「寒天オリゴ糖」という文字表示は,商品の原材,
料を表した普通名称であって,それ自体単独で自他商品識別機能ないし出所表示機
能を有するものとは認められないことをも考慮すれば,控訴人商品の包装の表示と
被控訴人商品の包装の表示が類似するとは認められない。
(2)したがって,控訴人の予備的主張も理由がない。
3結論
以上のとおり,控訴人の被控訴人に対する原審における本訴請求は,当審におい
て追加された予備的主張も含めて,理由がなく棄却されるべきである。
そうすると,控訴人の請求を棄却した原判決は正当であるから,本件控訴を棄却
することとし,主文のとおり,判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
東海林保
裁判官
矢口俊哉
(別紙図面1)
(別紙図面2)

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