弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主 文
     原判決中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人を懲役1年2月に処する。
     原審における未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
理 由
 本件各控訴の趣意は,横浜地方検察庁検察官鈴木和宏作成の控訴趣意書及
び弁護人堀内国宏作成の控訴趣意書に,検察官の控訴の趣意に対する答弁
は,同弁護人作成の答弁書に,それぞれ記載されたとおりであるから,これらを
引用する(なお,検察官は,検察官の控訴趣意は,少なくとも本件公訴事実1の
売春防止法違反の罪と同3の児童福祉法違反の罪が牽連犯であると主張するも
のである旨釈明した。)。
第1 本件公訴事実の概要等
 被告人に対する本件公訴事実の概要は,「乙が神奈川県厚木市内のマンショ
ン居室を事務所として営む売春クラブの従業員であった被告人が,1 乙と共謀
の上,平成13年10月31日ころ,前記事務所において,A’子ことA子(昭和59
年10月15日生,当時17歳)との間で,同児童をして,不特定の男客を相手に対
償を受けて性交させ,その対償を同児童と分配取得する旨を約し,もって人に売
春させることを内容とする契約をし(売春防止法違反),2 乙及び前記売春クラ
ブの従業員であった丙(原審相被告人)と共謀の上,A子が18歳に満たない児
童であることを知りながら,平成13年12月2日から同月7日までの間に,前後3
回にわたり,いずれも同市内のアパート居室において,男性遊客に対償を供与さ
せた上,同人にA子を引き合わせ,同児童をして,前記遊客を相手に陰茎を口淫
させるなどの性交類似行為をさせ,もって児童買春の周旋をすることを業とする
とともに18歳に満たない児童に淫行をさせ(児童買春等処罰法違反,児童福祉
法違反),3 乙及び丙と共謀の上,A子が18歳に満たない児童であることを知り
ながら,同月9日及び同月10日の前後2回にわたり,同県伊勢原市内の各ホテ
ル客室において,男性遊客2名にそれぞれ対償を供与させた上,同人らにA子を
引き合わせ,同児童をして,前記遊客らを相手に性交をさせ,もって児童買春の
周旋をすることを業とするとともに売春の周旋をし,かつ,18歳に満たない児童
に淫行をさせた(児童買春等処罰法違反,売春防止法違反,児童福祉法違反)」
というものである。
 これに対し,原判決は,罪となるべき事実として,本件公訴事実2及び3と同旨
の事実を認定し,この事実に係る児童福祉法違反,児童買春等処罰法違反,売
春防止法違反の各罪の成立を認め,これらを科刑上の一罪として取り扱い,被
告人を懲役1年2月及び罰金50万円に処したが,本件公訴事実1については,
後記第2の2のような罪数判断に基づき,管轄違の判決を言い渡した。
第2 検察官の控訴趣意に対する判断
1 論旨
  論旨は,要するに,原判決は,本件公訴事実中の売春防止法10条1項の罪
(以下,便宜的に「売春契約罪」という。)と児童福祉法34条1項6号違反の罪
(以下,便宜的に「児童淫行罪」という。)は併合罪の関係に立つと解すべきであ
るから,本件公訴事実1(売春契約罪)については,家庭裁判所にこれを審理す
る管轄がないとして,管轄違の判決を言い渡したが,本件公訴事実1の売春契約
罪と同3の児童淫行罪は牽連犯であると解すべきであるから,原判決には判決
に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり,原判決は,その誤りに基
づいて不法に管轄違の判断をしたものである,というのである。
2 売春契約罪と児童淫行罪の罪数関係に関する原判断の要旨
  原判決は,前記両罪の罪数関係について,「人に売春させることを内容とする
契約をすることと,満18歳に満たない児童に淫行させる行為をすることとは,そ
れぞれ保護法益も異なるし,犯罪の構成要件もまったく異なっていて,互いに一
般的・類型的に他方を必要とする関係にもない。両者の間に客観的・類型的な手
段・結果の関係があるものとは到底解されず,たまたま児童との間に売春させる
ことを内容とする契約を締結したうえ,その支配力を利用して売春を周旋するの
に応じさせて淫行させたからといって,両者は併合罪の関係に立つとみるべきも
のである。」と判断している。なお,原判決は,前記両罪以上に密接な関係がある
と考えられる売春契約罪と売春防止法6条1項の罪(以下,便宜的に「売春周旋
罪」という。)が併合罪の関係に立つと解されるのが一般である(大阪高裁昭和4
6年3月2日判決・刑裁資料229号160頁等)として,この点も前記判断を裏付け
るものであるとしている。
3 当裁判所の判断
  そこで,所論にかんがみ検討すると,本件公訴事実1の売春契約罪と同3の
児童淫行罪は牽連犯であると解するのが相当であり(大阪高裁平成11年9月1
7日判決・家裁月報52巻4号48頁),これと異なる原判決の罪数判断は是認す
ることができない。
  すなわち,関係証拠によれば,本件公訴事実1の売春契約罪及び同3の児童
淫行罪に係る事実関係として,原判示売春クラブの従業員をしていた被告人が,
同クラブの経営者乙と共謀の上,平成13年10月31日ころ,神奈川県厚木市内
の同クラブ事務所において,A子(昭和59年10月15日生,当時17歳)との間
で,同女に売春をさせる契約をして(なお,同クラブでは,性交までするスペシャ
ルコースと性交類似行為等にとどまるヘルスコースが設けられており,同女に対
し,このような営業システムの説明がなされている。),同女を雇い入れたこと,被
告人は,その時点でA子が18歳であると思っていたこと,その後,被告人らはA
子が17歳であることを知ったが,同女を売春婦として稼働させ続けたこと,被告
人は,乙及び同クラブの従業員丙と共謀の上,同年12月9日と同月10日の2回
にわたり,同県伊勢原市内の原判示各ホテルにおいて,同クラブに電話をかけて
きた男性遊客2名を相手として,A子に売春(淫行)をさせたことが認められる。
  ところで,数罪間に罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となる関係
があり,しかも具体的に犯人がかかる関係においてその数罪を実行した場合に
は,前記数罪は牽連犯として科刑上一罪の関係にあると解すべきところ(最高裁
昭和24年12月21日大法廷判決・刑集3巻12号2048頁,同32年7月18日第
一小法廷判決・刑集11巻7号1861頁,同44年6月18日大法廷判決・刑集23
巻7号950頁等参照),児童との間で,当該児童に売春をさせる契約をした場合
は,まさに当該児童に売春(淫行)をさせることが契約内容として予定されている
(当該児童にとっては,売春をすることが契約上義務付けられている。)のであっ
て,その後,当該児童に売春(淫行)をさせることは,前記契約をしたことの通常
の結果というべきものであるから,このような売春契約罪と児童淫行罪とは罪質
上通例手段結果の関係にあるものと解するのが相当であり,これと異なる原判
決の前記判断は首肯することができない。本件においては,前記のとおり,原判
示売春クラブの従業員であった被告人が,同クラブ関係者1名又は2名と共謀の
上,被害児童との間で,同児童に売春をさせる契約をした上,その契約関係に基
づき,同児童をして,遊客2名を相手に売春(淫行)をさせたのであるから,このよ
うな売春契約罪と児童淫行罪とは刑法54条1項後段の牽連犯の関係にあるとい
うべきである(なお,前記契約の時点において,被告人が被害児童は18歳であ
ると思っていたことは,前記の罪数判断に影響するものではない。)。これに対
し,原判決は,売春契約罪と児童淫行罪とでは保護法益及び構成要件が異なる
ことを理由として,両罪は併合罪の関係に立つとしているが,判例が牽連関係を
肯定している各罪の保護法益及び構成要件の相違に照らしても,原判決が指摘
する点は,直ちに牽連関係を否定する理由にはならないというべきである。また,
原判決は,売春契約罪と売春周旋罪が併合罪の関係に立つと解されていること
との均衡を根拠として挙げているが,前記両罪が併合罪の関係に立つのは,そ
のいずれもが売春をさせるための手段であって,その間に罪質上通例手段結果
の関係があるとはいえないと解されるからである。したがって,この点も前記の罪
数判断を左右するものではない。
  そうすると,本件公訴事実1の売春契約罪と同3の児童淫行罪は牽連犯であ
ると解すべきところ,これらを含めた本件公訴事実に係る数罪(ただし,後記第3
のとおり,本件においては児童買春等処罰法違反の罪は成立しないと解され
る。)は刑法54条1項に規定する関係にあり,最も重い児童淫行罪の刑により処
断すべき場合に該当する(後記第4の「法令適用」の項参照)から,少年法37条
2項により本件公訴事実1の売春契約罪についても家庭裁判所が管轄を有する
というべきである。これに対し,売春契約罪と児童淫行罪はおよそ牽連犯にはな
らないとの罪数判断に基づき,本件公訴事実1について管轄違の判決を言い渡
した原判決は,前記両罪に関する罪数関係についての法律の解釈適用を誤り,
その結果,不法に管轄違を言い渡したものといわざるを得ない。検察官の論旨は
理由があり,原判決(被告人に関する部分)は全部について破棄を免れない。
第3 職権による判断
職権により調査すると,原判決は,罪となるべき事実において,本件公訴事実2
及び同3と同旨の事実を認定し,児童淫行罪及び売春周旋罪のほかに児童買春
等処罰法5条の罪(以下,便宜的に「児童買春周旋罪」という。)の成立を認め,
これらを科刑上の一罪として取り扱い,児童淫行罪の懲役刑及び児童買春周旋
罪(同法5条2項)の罰金刑で処断することとして,被告人を懲役1年2月及び罰
金50万円に処したことが明らかである。
 【要旨1】ところで,児童買春周旋罪が成立するためには,周旋行為がなされた
時点で,被周旋者において被害児童が18歳未満の者であることを認識している
必要があると解するのが相当である。すなわち,児童買春周旋罪は,児童買春
をしようとする者とその相手方となる児童の双方からの依頼又は承諾に基づき,
両者の間に立って児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成
立するものであり,このような行為は児童買春を助長し,拡大するものであること
に照らし,懲役刑と罰金刑を併科して厳しく処罰することとしたものである。このよ
うな児童買春の周旋の意義や児童買春周旋罪の趣旨に照らすと,同罪は,被周
旋者において児童買春をするとの認識を有していること,すなわち,当該児童が
18歳未満の者であるとの認識をも有していることを前提にしていると解されるの
である。実質的に考えても,被周旋者に児童買春をするとの認識がある場合と,
被周旋者が前記のような児童の年齢についての認識を欠く結果,児童買春をす
るとの認識を有していない場合とでは,児童買春の規制という観点からは悪質性
に差異があると考えられる。もっとも,このように解することについては,客観的に
は児童の権利が著しく侵害されているのに,周旋者が児童の年齢を18歳以上で
あると偽ることにより児童買春周旋罪の適用を免れることになって妥当ではない
との批判も考えられるが,このような場合でも周旋者を児童淫行罪や売春周旋罪
により処罰をすることが可能であるし(なお,児童の年齢や外見によっては,そも
そも18歳以上であると偽ることが困難な場合も考えられる。),前記のような児童
買春の周旋の意義や児童買春の規制という観点からすると,被周旋者におい
て,前記のような児童の年齢についての認識を有しているか否かは,やはり無視
することができない事情である。
 以上を前提として,本件について検討すると,関係証拠によれば,被告人らは
被害児童を原判示の遊客3名に引き合わせるに当たり,同児童の年齢を告げて
おらず,また,当時17歳の同児童がその外見から18歳未満であることが明らか
な状況にあったともいえないことが認められるのであり,参考人として取調べを受
けた前記遊客らの司法警察員に対する各供述調書謄本(甲21,23,26,33,
34)の内容にも照らすと,前記遊客らが被害児童が18歳未満の者であるとの認
識を有していたとは認められず(なお,当審における事実取調べの結果によれ
ば,前記遊客らについては,児童買春をしたことの容疑による立件がなされてい
ないことが認められる。),この点について,原判決が前記と異なる事実認定をし
ているとは認められない。したがって,本件では,被周旋者である前記遊客らが
前記のような児童の年齢に関する認識を欠いているので,被告人らについて児
童買春周旋罪は成立しないというべきである。
 そうすると,原判決は,児童買春等処罰法5条の解釈適用を誤って児童買春周
旋罪(同法5条2項)の成立を認め,被告人に対して罰金刑を併科したものであ
り,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,この点でも
原判決は破棄を免れない。
第4 破棄自判
 よって,弁護人の控訴趣意(量刑不当の主張)に対する判断を省略し,刑訴法3
97条1項,380条,378条1号により原判決中被告人に関する部分を破棄する
こととする。【要旨2】ところで,本件では法令適用の誤りと不法に管轄違を言い渡
したことが破棄理由となっているところ,後者を理由として原判決を破棄する場合
について,同法398条は事件を原裁判所に差し戻さなければならないと規定して
いるが,同条は,原審が不法に管轄違を言い渡したこととの関係で,事件につい
て実体審理を尽くしていないことを前提とした規定であると解するのが相当であ
る。原審記録によれば,原審において,被告人は本件公訴事実をすべて認め,
検察官請求証拠がすべて取り調べられ,情状に関する証人尋問や被告人質問も
実施され,論告・弁論でも売春をさせる契約をした点について言及されるなど,前
記の点を含めた本件公訴事実全体について実体審理が尽くされていると認めら
れるから,このような場合には同法398条の適用はないというべきである。さら
に,売春をさせる契約をした点について,原判決は事実を認定していないが,当
審において,この点を中心とした被告人質問がなされている。このような原審及
び当審における審理状況等に照らすと,被告事件について直ちに自判すること
が可能かつ相当であると認められる。
 そこで,同法400条ただし書を適用して,更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は,乙が神奈川県厚木市ab丁目c番d号所在のeマンションf号室に事務
所を置き,「E」等の名称を用い,客の求めに応じて売春婦をホテル等に派遣する
形態で営業していた売春クラブの従業員をしていたものであるが,
1 乙と共謀の上,平成13年10月31日ころ,前記eマンションf号室において,
A’子ことA子との間に,同女をして,ホテル等において,不特定の男客を相手に
対償を受けて性交させ,その対償を同女と分配取得する旨を約し,もって,人に
売春をさせることを内容とする契約をし,
2 乙及び前記売春クラブの従業員丙と共謀の上,A子(昭和59年10月15日
生,当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,
 (1) 平成13年12月2日,同月4日及び同月7日の3回にわたり,いずれも同市
gh番地のi所在のJ荘K号室において,遊客のBに各現金1万5000円の対償を
供与させた上,A子が18歳に満たない児童であることを知らないBにA子を引き
合わせ,Bを相手に陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をさせ,
 (2) 同月9日,同県伊勢原市lm番地所在のホテルFにおいて,遊客のCに現金
3万5000円の対償を供与させた上,A子が18歳に満たない児童であることを知
らないCにA子を引き合わせ,Cを相手に性交をさせ,
 (3) 同月10日,同市no番地所在のホテルGにおいて,遊客のDに現金2万50
00円の対償を供与させた上,A子が18歳に満たない児童であることを知らない
DにA子を引き合わせ,Dを相手に性交をさせ,
  もって,18歳に満たない児童のA子にB,C及びDを客として淫行をさせる行
為をするとともに,C及びDを客としてそれぞれ売春の周旋をした
ものである。
(証拠の標目)
 省略
(法令の適用)
 被告人の判示所為のうち,売春をさせる契約をした点は刑法60条,売春防止
法10条1項に,5回にわたり児童に淫行をさせた点は包括して刑法60条,児童
福祉法60条1項,34条1項6号に,2回にわたり売春の周旋をした点はいずれも
刑法60条,売春防止法6条1項に該当するところ,児童に淫行をさせた点の一
部(判示2の(2)及び(3))と売春の周旋をした各点は,それぞれ1個の行為が2個
の罪名に触れる場合であり,また,売春をさせる契約をした点と児童に淫行(性
交)をさせた点との間には手段結果の関係があるので,刑法54条1項前段,後
段,10条により結局以上を1罪として最も重い児童福祉法違反の罪の刑で処断
することとし,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役
1年2月に処し,刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中40日をその
刑に算入し,原審及び当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適
用して被告人に負担させないこととする。
(児童買春周旋罪を認定しなかった理由)
 本件公訴事実中の児童買春の周旋を業としたという点については,前記第3で
検討したとおり,被周旋者である遊客らにおいて,被害児童が18歳未満の者で
あることを認識していたとは認められないから,犯罪の証明がないことになる。な
お,前記の点は判示児童淫行罪及び売春周旋罪と観念的競合の関係にあるとし
て起訴されたものと認められるから,主文において特に無罪の言渡しをしない。
(量刑の理由)
 本件は,前記のとおり,売春クラブの従業員をしていた被告人が,同クラブ関係
者1名又は2名と共謀の上,被害児童を売春婦として雇い入れ,その後,同児童
が18歳に満たないことを知ったにもかかわらず,前後5回にわたり,3名の遊客
に対償を供与させた上,同児童が18歳に満たないことを告げないで,同児童を
引き合わせ,同児童をして,前記遊客らを相手に性交類似行為又は性交をさせ
たという売春防止法違反,児童福祉法違反の事案である。
 本件は,暴力団組員の乙が経営する派遣型の売春クラブを舞台とした職業的
犯行であり,未熟な児童を食い物にして利益を得ようとした動機に酌量の余地は
なく,被害児童に繰り返し淫行をさせたことでその心身に及ぼした悪影響も大き
く,犯情は悪質である。被害児童の保護者は被告人らの厳重な処罰を求めてい
る。
 被告人は,同種の営業に携わってきた経験を買われ,平成13年7月初旬から
前記売春クラブの営業に関与し,従業員の丙にノウハウを教えたほか,客からの
電話に対応したり売上表を作成するなど重要な役割を果たし(なお,丙が一時的
に同クラブからいなくなったときは,その業務全般を処理していた。),その見返り
として,同クラブの事務所があるマンション居室に無償で居住し,月に数万円の
金員を得ていたものであって,被告人の個別的犯情も良くない。加えて,被告人
は,窃盗,常習累犯窃盗,軽犯罪法違反(ピンクビラ貼り行為)等による多数の前
科(服役前科は6犯あり,このうち本件以前の平成13年7月に確定した道路交通
法違反,業務上過失傷害の罪による懲役6月の刑を平成14年9月に受け終わっ
ている。)を有することにも照らすと,被告人には規範意識が乏しいといわざるを
得ない。以上によれば,被告人の刑事責任は重いというべきである。
 他方,本件の主犯は共犯者の乙であること,被告人が事実関係を認め,反省
の態度を示していること,知人が被告人の更生に助力する意向であること等の被
告人のために酌むべき事情も認められる。
 以上の諸事情を総合考慮すると,被告人に対して主文の刑を科するのが相当
である。
 よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 村上光鵄 裁判官 山本哲一 裁判官 中里智美)

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