弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中四〇日を被告人に対する本刑に算入する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人奥村仁三及び被告人本人各提出の控訴趣意書にそれぞ
れ記載するとおりであるから、ここに、いずれも、これを引用する。
 第一、 各論旨のうち事実誤認又は法令違反の主張について、
 所論は、被告人は、原判示第一事実について強盗の犯意のなかつたのは勿論、強
盗を共謀した事実もない。
 すなわち、被告人らは銀行で現金を引き出している客から、その金を掻つ払ら
い、追跡してくる者に対しナイフを示してこれを脅し逮捕を免れ若くは逃走を容易
にするだけの意思であつて、暴行、脅迫を加えて金員を奪取する意思はなかつた。
従つて、共犯者のAが原判示Bに対し強盗を働いたとしても、被告人としては関知
するところではなかつた。更に、右Aも又強盗をしたものではない。蓋し、Aが金
員奪取の意思でBに対し原判示ナイフを押しつけたとしても、同人はそのナイフを
押し付けられていることを全然意識しなかつたものであるから、Aにおいても強盗
罪は成立しない。従つて、被告人としても強盗罪の責任を負うべきものではない。
仮りに、Aの行為が強盗になるとしても、その致傷の点については、被告人として
は認識がなかつたものであるから、この点について罪責を負うべきものでなく、又
その強盗の点も未遂である、というのである。
 そこで、本件記録並びに原裁判所が取り調べたすべての証拠を検討してみるの
に、被告人並びにA及びCが原判示第一事実について、共謀したところは、原判決
も示すように、被告人ら三名のうち、一人が鉄製棒をU字型に折り曲げたもの(証
第二号)を携えて、原判示D銀行E駅前支店北出入口の外で待ち、他の二人が同銀
行内に入り、そのうち一人がカウンターの上の金を掻つ払い(盗むこと)、追つて
くる者を刃渡り五糎米余の飛び出しナイフ(証第一号)で脅しながら後退して、他
の一人がその者が逃げ易いように北出入口のドアを開け、行内に入つた二人が出た
ら、外で待機していた者が該出入口ドアの取手に止め金をして、追つてくる者が外
に出られないようにし、その隙に被告人ら三名は附近の地下道に逃げ込み所期の目
的を遂げる、ということであつた。(原審公判調書中被告人並びにA、Cの各供述
記載、同人らの司法警察員及び検察官に対する各供述調書)ところで、原判決がこ
の点について判示するところは、被告人ら三名は前示の方法による強盗を共謀した
というのであつて、そこにいう強盗の意味は必ずしも明確なものとはいえないので
あるが、原判決も又その共謀の内容として、被告人ら三名が原判示飛び出しナイフ
を用いて相手方に暴行又は脅迫を加え、その反抗を抑圧して金員を強取することの
謀議を遂げた事実を挙げているものではなく、その前段の事実、すなわち、前示の
如く金員窃取後、逮捕を免れ若しくは逃走を容易にするため、その窃盗の現場で逮
捕に向つてくる者又は追つてくる者に対し右ナイフを示して脅す意思であつた事実
を承けているものであるから、原判決にいう強盗の意思とは、まさに、刑法二三八
条にいう準強盗の意思を意味するものと解すべきである。(仮りに、原判決が原判
示共謀の内容たる事実を、同法二三六条にあたるものと解した趣旨とすれば、法令
の適用を誤つたものというべきであるが、この点の違法は、未だ判決に影響を及ぼ
すこと明らかなものとは、いえない。)被告人ら三名の共謀にかかるところは、右
に見た如く準強盗にあたる事実であつた。さて、然し、右共謀に基いて、前記D銀
行E支店内のカウンターから現金を掻つ払う役割を担当したAは、原判示F、Bの
両名が収納係窓口附近のカウンターで現金一五〇萬円を整理しているのを認め、B
の左背後に近づき、同人の肩越しに右現金をひつたくつて盗もうと考えたが、Aは
Bらが感づいて騒ぎ立てたら、その盗取の目的を達することができないと思うと共
に、盗みに踏み切る決心がつかなかつたので、とつさに所携の前記飛び出しナイフ
をひらき、その刃先をBの腰の辺りに突きつけ、同人及びFに対し、騒わぐとBを
刺すぞ、という態度を示し、同人らを脅迫し、その反抗を抑圧して、右カウンター
上の現金を奪取すべく、右ナイフをBの左背部に突きつけ、更にその刃先を同人に
対し押しつけ、同時に左手を同人の肩越しに出して、前記現金を奪取しようとした
ところ、Bは自己の左背部に押しつけられたナイフを、背後からピストルでも擬せ
られているものと思い極度の恐怖の念に駆られて、右Aの左手が現金の方にのばさ
れてきたのを見ながら、同人の行動を制止することを断念して息を殺していたが、
原判示の如くBの右横に立つていたFがAの左手が現金の方にのびてきたのを見て
金を盗まれると思い、とつさにその現金をカウンターの方に押しやると同時に、A
がひらいたナイフがピカッと光るのを見てとつて、大声をあげて同銀行警備員Gが
駈け出したために、Aは身の危険を感じ、あわててその場を逃げ出した事実を、認
定できるのである。(原判決引用のAの司法警察員及び検察官に対する各供述調
書、原審第三回公判調書中の証人B、同Gの各供述記載、Fの司法巡査に対する供
述調書)従つて、右BがAに前記の如くナイフをその左背部に押しつけられたこと
を全然覚知しなかつたとの弁護人の論旨は採るを得ない。以上の次第であつて、前
示被告人らの準強盗の共謀に基いて、共犯者Aが現実に実行したところは、原判決
が認定したとおりBに対し暴行を加え、その反抗を抑圧して現金を奪取する強盗の
行<要旨>為であつた。ところで、このように準強盗を共謀した共犯者の一人が、他
の者に諮ることなく強盗行為に及</要旨>んだ場合であつても、その共謀にかかる
ところも又強盗を以て論ぜられるものである以上、その共謀にかかるところと実行
行為との間に、その共同意思実現の態様としては異るところがあつても、両者は共
に強盗罪としての刑法的評価に服するわけのものであるから、現実にその実行行為
としての強盗を行わなかつた他の共犯者全員について又強盗罪の成立があるものと
いうべきである。されば、被告人も又前記Aが前示被告人らとの共謀に基いてした
強盗について、当然その責めを負うべきものであつて、この点に関する論旨は理由
がない。そして、この場合、Aのした強盗行為によりBに原判示傷害の結果を生ぜ
しめた以上、(この事実も又原判決引用の証拠で優に認定できるところである。)
被告人において、右傷害の点についての認識を欠いていたとしても、同人がAらと
の強盗の共同正犯としての罪責を負うべきものである以上、いわゆる結果的加重犯
としての右Aのした強盗致傷罪について又被告人もその罪責を免れることのできな
い筋合である。次に又、強盗致傷罪の成立について、その強盗の未遂、既遂を問わ
ないことは勿論である。弁護人のその余の論旨は原審の措信しなかつた証拠に基く
独自の主張であつて採用できない。記録を精査しても、原判決の判示第一事実に関
する事実の認定に誤認のかどあるものとは認められず、従つて又事実誤認を前提と
する法令違反の主張も理由がない。
 (なお。弁護人奥村仁三の控訴趣意第一点は、Cに対する控訴趣意書(同人は控
訴を取下げた。)を引用しているが、同弁護人は当審における右両名の共同弁護人
であり、しかも、被告人に対する控訴趣意書は、Cが控訴を取下げる前、同人のた
め当審に提出された控訴趣意書を引用して当審に提出されているのであるから、控
訴趣意書としての方式の違背はないものと認めた。)
 第二、各論旨のうち量刑不当の主張について、
 所論に徴し、本件記録及び原裁判所が取り調べたすべての証拠を検討すると、被
告人らのした原判示第一の犯行は、銀行を利用して一挙に大きな金員の奪取を計画
した極めて悪質なものであり、しかも、その主謀者は被告人であり、被告人らは予
め事に備えて周到に計画し、原判決も摘示するように本件D銀行E支店だけでな
く、その前に、二、三の銀行を検分し、その実行の機会をうかがつていること、C
やAを本件犯行に引き入れたのも被告人であること、被告人の原判示第二の二、三
の詐欺、恐喝も又計画的かつ悪質なものであること、被告人は、昭和三三年一月東
京都内において時計の万引を働き起訴猶予処分をうけた前歴があるのに、その後も
堅実な勤労生活を厭い。殆んど徒食してその日を過し、同三五年二月名古屋市内に
出てきた後もE駅裏の売春のポン引として過していたもので、その間情婦と同棲し
生活態度も放縦であつたこと、その他被告人の経歴等諸般の情状を勘案すれば、原
判決が情状酌量して量定した五年の科刑を更に重きに過ぎ不当なものであるとする
ことは、とうていできない。論旨はいずれも採るを得ない。
 よつて、本件控訴は理由がないので刑訴法三九六条に則りこれを棄却することと
し、刑法二一条により当審における未決勾留日数中四〇日を被告人に対する本刑に
算入し、当審における訴訟費用(国選弁護人支給分)は、刑訴法一八一条一項但し
書に従い被告人をして負担させないこととする。
 よつて主文のとおり判決した。
 (裁判長判事 影山正雄 判事 谷口正孝 判事 中谷直久)

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