弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人西垣義明の上告理由第一及び第二について
 一 本件訴訟は、被上告人が上告人に対して原判決別紙物件目録記載の各土地(
面積合計一六九五・八六平方メートル。以下「本件土地」という。)につき賃借権
を有することの確認を求め、上告人が反訴請求として、本件土地の賃貸借の終了を
理由にその明渡し等を求めるものであるが、原審の確定した事実関係の概要は、次
のとおりである。
 1 被上告人の代表者であるDは、本件土地の南側に隣接する同人の所有地(面
積合計七三三・八七平方メートル。以下「園舎敷地」という。)において幼稚園を
経営していたところ、周辺に団地が造成されるなどして園児の増加が見込まれたた
め園舎を増設することとしたが、これにより右幼稚園の運動場がなくなるため、そ
の用地として、上告人の父である亡Eから本件土地を賃借した(以下、これを「本
件賃貸借」という。)。本件賃貸借の契約締結の時期は、昭和四一年五月ころ以降
の日である。Dは、右賃借後、自己の費用により本件土地を幼稚園の運動場として
整備し、これを園舎敷地と一体的に使用してきた。
 その後、昭和四八年に被上告人が設立されて本件土地の賃借権を承継し、昭和五
一年にEが死亡して上告人が賃貸人の地位を承継した。また、被上告人は、昭和四
八年三月、園舎敷地に鉄骨陸屋根二階建ての新園舎(床面積六一一・二二平方メー
トル)を建築した。
 2 本件賃貸借の成立に当たり、権利金等が授受された形跡はなく、EとDとの
間において昭和四四年三月二六日に作成された土地賃貸借契約公正証書によれば、
本件賃貸借の目的は運動場用敷地、期間は二年とされていた。その後、昭和四九年
三月二九日、本件賃貸借の期間を昭和五一年三月二七日までとする土地賃貸借契約
公正証書が作成され、さらに、昭和五五年二月七日には右期間を昭和五九年四月四
日までとする調停が、昭和五九年一〇月一一日には右期間を平成元年三月三一日ま
でとする調停がそれぞれ成立し、これらにより本件賃貸借の更新がされた。なお、
昭和五五年二月七日の調停成立の際には、本件賃貸借の期間を昭和五九年四月四日
までと定めるものの、その時点で双方話合いの上更新することに異議がない旨の念
書が被上告人に差し入れられた。
 3 被上告人の幼稚園の園児数は、昭和四九年以後増加し、昭和五二、三年ころ
までは一二クラス、九八〇名であったが、その後減少し、平成二年当時は七クラス
であった。文部省令等により定められている幼稚園設置の基準によれば、一二クラ
スの場合に必要な運動場の面積は一一二〇平方メートル、七クラスの場合は七二〇
平方メートルである。
 二 原審は、右事実関係の下において、本件賃貸借は、本件土地の上に建物を所
有することを目的とするものではないが、隣接の園舎敷地における建物所有の目的
を達するためにこれと不可分一体の関係にある幼稚園運動場として使用することを
目的とするものであるから、借地法の趣旨に照らし、同法一条にいう「建物の所有
を目的とする」ものというべきであるとし、本件賃貸借がされた当時、園舎は木造
二階建ての建物であったから、その存続期間は同法二条一項により三〇年となると
ころ、原審の口頭弁論終結時までに右期間が満了していないことが明らかであると
して、被上告人の本訴請求を認容し、上告人の反訴請求を棄却すべきものと判断し
た。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のと
おりである。
 原審の確定した事実関係によれば、本件賃貸借の目的は運動場用敷地と定められ
ていて、上告人と被上告人との間には、被上告人は本件土地を幼稚園の運動場とし
てのみ使用する旨の合意が存在し、被上告人は現実にも、本件土地を右以外の目的
に使用したことはなく、本件賃貸借は、当初その期間が二年と定められ、その後も、
公正証書又は調停により、これを二年又は四年ないし五年と定めて更新されてきた
というのであるから、右のような当事者間の合意等及び賃貸借の更新の経緯に照ら
すと、本件賃貸借は、借地法一条にいう建物の所有を目的とするものではないとい
うべきである。なるほど、本件土地は、被上告人の経営する幼稚園の運動場として
使用され、幼稚園経営の観点からすれば隣接の園舎敷地と不可分一体の関係にある
ということができるが、原審の確定した事実関係によれば、園舎の所有それ自体の
ために使用されているものとはいえず、また、上告人においてそのような使用を了
承して賃貸していると認めるに足りる事情もうかがわれないから、本件賃貸借をも
って園舎所有を目的とするものということはできない。
 以上と異なる原審の判断には借地法一条の解釈適用を誤った違法があり、右違法
は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があ
り、上告人のその余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、
更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    三   好       達
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    高   橋   久   子
            裁判官    遠   藤   光   男

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