弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役壱年に処する。
     但し本判決確定の日より参年間右刑の執行を猶予する。
     訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人逸見惣作の陳述した控訴趣意は記録に編綴の同弁護人及び被告人各名義の
控訴趣意書の記載と同一であるから茲に引用する。
 弁護人名義の控訴趣意第一、二点について。
 記録を調査するに、原審は第三回公判期日に証人Aを尋問し、同第四回公判期日
に検察官は証拠書類としてAに対する検察官作成の供述調書の取調を請求したのに
対し弁護人は其の証拠調の請求に異議があると述べ次いで検察官は右供述調書を刑
事訴訟法第三百二十一条第一項第二号後段の書証として取調を請求すると述べ裁判
官は右供述調書について証拠調をする旨の決定を宣し、同第五回公判期日に右の証
拠調をした<要旨第一>旨の記載があることは明らかである。しかして刑事訴訟法第
三百二十一条第一項第二号後段の規定により証拠とすることが出来る書
面については検察官は必ずその取調を請求したければたらたいことは同法第三百条
の明定しているところであるが其の取調請求は証人尋問の期日内でなければならた
いというが如き規定は存しないのであつて斯る要件を具備している書面については
検察官に自由裁量の余地を与えず取調の請求をたすべき義務を負わしめたに過ぎな
い。しかる把本件においては前記のとおり検察官は原審第四回公判期日に弁護人の
同意を条件として其の取調を請求したところ弁護人は其の証拠調の請求に異議があ
ると述べたので刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号後段の書類として其の取調
を請求しているのであるからこの点の訴訟手続に関して<要旨第二>は何等の違法も
存しない。次いで右取調請求に係る書面につき原審は刑事訴訟規則第百九十条第二
項による弁護人の意見聴取の手続を履践した旨の記載がないのでその意
見を聴取せず直ちに証拠調をする旨の決定をした、ことを窮知しえられるが弁護人
より之に対し直ちに適法な異議を申立てた形跡が存しないのであるから右訴訟手続
の瑕疵は治癒されたものと認めるべきであるからこの点に関する所論も採用の限り
でない。おお弁護人の同意を条件として証拠調を請求した際弁護人が其の請求に異
議があると述べたとしても其の後前記の如く刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二
号後段の書証として証拠調を請求した際改めて適法な異議を申立ない限り前段の異
議は其の後の請求に対し効力が及ぶものでないこと明らかであるから後者の請求に
対し証拠調をする旨の決定をする前とれにつき異議申立に対する決定をしないのは
当然であつてこの点に関する所論も採用の限りでない。次に原審は前記Aに対する
検察官の供述調書を取調べる旨の決定をする前幾多の証拠を取調べ既に同供述調書
は刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号の各要件を具備していると認めうる情況
にあることを推認しえたことを窮われるのであるから所論のようた調査もせず漫然
証拠調をして採証した違法があるということは出来たい。従つてこの点に関する所
論も採用しない。以上のとおりであるから論旨は到底認容の限りでない。
 同第三点について。
 原審第四回公判調書を通覧するに検察官は証第一ないし第二十六号の書類を証拠
物として取調を請求し弁護人は其の書類を証拠とすることに同意し、証拠調の請求
に異議がないと述べ裁判官は証拠調をする旨の決定を宣し次いで検察官は各証拠物
を順次展示して裁判所に提出した旨の記載があることを確認しうるのであつてこれ
らの書面は証拠物として大部分書面の意義が証拠となる性質を有するものと推認さ
れるのであるから其の取調方式はその部分については刑事訴訟法第三百七条に則つ
てなすべきであること明らかである。しかし原判決は之等の証拠物について直接証
拠とし事実認定の資料として採用していないのであるから右訴訟手続に法令違背が
あつたとして原判決破棄の事由となすことは出来ない。なお原審第三回公判調書に
よれば証人Aを尋問中証第十六号に該当する雑記帳を示していること及び原判決の
記載によれば右征言を有罪事実認定の証拠としていることは執れも明らかであるが
右証人に示した証第十六号は同人が被告人に渡した金額を記載してある帳博に該当
するという丈であつてその記載に基き内容の尋問に立入つている訳でもない。斯る
証言を採つたからといつて証第十六号の証拠調手続の法令違背が判決に影響を及ぼ
したものと断ずることは妥当でない。論旨は理由がない。
 被告人名義の控訴趣意中原判示第二事実は認めずとの点について。
 所論は原判決中第二事実については事実誤認であるとなすものと解するので原判
決を調査しこの点に関する挙示の証拠を綜合して考察するに同事実は優に認定しう
るのであり記録を精査するもこの点に関し原判決には事実誤認を窺うべき事由はな
い。論旨は理由がない。
 弁護人の控訴趣意第四点及び被告人の其の余の控訴趣意について。
 記録を仔細に調査し所論の事情を斟酌考量するに原判決の量刑は重きに失する不
当があると認めるねでこの点で原判決は破棄するを相当とする。論旨は理由があ
る。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十一条に則り原判決を破棄し、同法第
四百但書に基き当裁判所において更に次のとおり判決をなすべきものとする。
 原判決の確定した事実に法律を適用するに被告人の各所為は刑法第二百五十三条
に該当するところ右は同法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十
条により最も重いと認める原判示第二の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で
被告人を懲役壱年に処すべきところ情状刑の執行を猶予するを相当と認め同法第二
十五条に則り本判決確定の日より参年間右刑の執行を猶予すべく、訴訟費用は刑事
訴訟法第百八十一条第一項により被告人の負担たるべきものとして主文のとおり判
決する。
 (裁判長裁判官 大野正太郎 裁判官 松村美佐男 裁判官 蓮見重治)

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