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平成17年(行ケ)第10510号審決取消請求事件
平成18年4月17日口頭弁論終結
判決
原告株式会社イケハタ
訴訟代理人弁護士城山康文,中島麻里,大橋岳人,弁理士石戸久子
被告成幸工業株式会社
被告丸藤シートパイル株式会社
被告ライト工業株式会社
上記被告3名訴訟代理人弁護士松尾和子,奥村直樹,弁理士大塚文昭
被告破産者株式会社国土基礎破産管財人山本賢治
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
「特許庁が無効2004-80234号事件について平成17年5月10日にし
た審決を取り消す」との判決。。
第2事案の概要
本判決においては「撹拌「攪拌「かく拌」を「かく拌」に統一したほか,書証等を引用する,」」
場合を含め,公用文の用字用語例に従って表記を変えた部分がある。
本件は原告の有する連続壁体の造成工法に係る本件特許後記の請求項1,「」()
について,被告らが無効審判請求をしたところ,特許庁は,当該請求項に係る発明
は引用刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たも
のであるとしてこれを無効とするとの審決をしたため,原告がその取消しを求めた
事案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)本件特許(甲6)
特許権者:株式会社イケハタ(原告)
発明の名称:連続壁体の造成工法」「
特許出願日:平成元年3月30日(特願平1-79591)
設定登録日:平成6年9月26日
特許番号:第1875289号
(2)本件手続
審判請求日:平成16年11月18日(無効2004-80234号)
訂正請求日:平成17年2月4日(以下「本件訂正」といい,本件訂正後の明細
書(甲10)を「本件明細書」という)。
審決日:平成17年5月10日
審決の結論:訂正を認める。特許第1875289号の請求項1に係る発明に「
ついての特許を無効とする」。
審決謄本送達日:平成17年5月20日(原告に対し)。
2本件発明の要旨(本件訂正後のもの。以下「本件発明」という。請求項2以
下の記載は省略する)。
【請求項1】先端付近より硬化液を吐出しながら回転するオーガを回転域が一部重
複するように複数基並列し,かつ,その並列を回動可能にかつオーガ支持部によっ
てその基部から伸縮可能に支持した削孔機を用い,削孔機による硬化液の吐出と回
転とで連通した複数本からなる立坑を地盤に削孔すると同時に削孔土砂と硬化液と
をかく拌混合してこれら混合物からなる壁体造成材料を立坑内に打設し,この壁体
造成材料の打設後に削孔機による硬化液の吐出と回転とを維持して壁体造成材料を
かく拌混合しながら削孔機を立坑から引き上げ,壁体造成材料が硬化する前にこの
立坑に一部重複しかつ削孔機のオーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動
により0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔すると同時に壁体
造成材料を打設し,壁体造成材料が打設された立坑を連続させてその壁体造成材料
を硬化させることを特徴とする連続壁体の造成工法。
3審決(甲7)の要旨
審決は,以下のとおり,上記訂正を認めた上で,本件発明は,後記刊行物1,2
記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであると判断した。
(1)請求人ら(被告ら)の主張及び証拠方法
ア主張
本件発明は,後記刊行物1,2記載の発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができ
たものである。
イ証拠方法(以下の証拠番号は,本訴の証拠番号と同一)。
甲1(以下「刊行物2」という:柱列式地下連続壁工法」176~224頁[6.3TS。)「,
P工法,6.4SMW工法,昭和58年1月31日,鹿島出版会発行]
甲2以下刊行物1という:基礎工4月号1981.4(Vol.9,NO.4)36~43頁高(「」。)「」,[
知市神田ポンプ場築造工事に伴う大深度ソイルセメント連続壁工法,総合土木研究所発行]
甲3:特開昭55-142826号公報
甲4:特開昭60-119820号公報
甲5:特開昭61-38017号公報
甲6:本件特許公報
(2)引用発明
ア刊行物1(甲2)に記載された発明
「先端付近より硬化剤を吐出しながら回転するオーガを回転域が一部重複するように3本連
結した削孔機を用い,削孔機による硬化剤の吐出と回転とで連通した3本からなる立坑を地盤
に削孔すると同時に削孔土砂と硬化剤とをかく拌混練してこれら混合物からなる壁体造成材料
を立坑内に打設し,この壁体造成材料の打設後に削孔機による硬化剤の吐出と回転とで壁体造
成材料をかく拌混練しながら削孔機を立坑から引抜き,壁体造成材料が硬化する前にこの立坑
に一部重複しかつ削孔機の回転により0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削
孔すると同時に壁体造成材料を打設し,壁体造成材料が打設された立坑を連続させてその壁体
造成材料を硬化させる連続壁体の造成工法(以下「刊行物1発明」という)」。
イ刊行物2(甲1)に記載された発明
(ア)「先端付近よりセメントミルクを吐出しながら回転するオーガを回転域が一部重複す
るように4軸並列し,かつその並列を回動可能にした削孔機を用い,削孔機によるセメントミ
ルクの吐出と回転とで連通した4本からなる立坑を地盤に削孔すると同時に削孔土砂とセメン
トミルクとをかく拌混合してこれら混合物からなる壁体造成材料を立坑内に打設し,この壁体
造成材料の打設後に削孔機によるセメントミルクの吐出と回転とで壁体造成材料をかく拌混合
しながら削孔機を立坑から引き上げ,壁体造成材料が硬化する前にこの立坑に一部重複しかつ
削孔機の回転により0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔すると同時に壁
体造成材料を打設し,壁体造成材料が打設された立坑を連続させてその壁体造成材料を硬化さ
せる連続壁体の造成工法(以下「刊行物2発明A」という)。」。
(イ)「先端付近よりセメント溶液を吐出しながら回転するオーガを回転域が一部重複する
ように3軸並列した削孔機を用い,削孔機によるセメント溶液の吐出と回転とで連通した3本
からなる立坑を地盤に削孔すると同時に削孔土砂とセメント溶液とをかく拌混合してこれら混
合物からなる壁体造成材料を立坑内に打設し,この壁体造成材料の打設後に削孔機によるセメ
ント溶液の吐出と回転とを維持して壁体造成材料をかく拌混合しながら削孔機を立坑から引き
上げ,壁体造成材料が硬化する前にこの立坑に一部重複しかつ削孔機の回転によりさらに次の
立坑を削孔すると同時に壁体造成材料を打設し,壁体造成材料が打設された立坑を連続させて
その壁体造成材料を硬化させる連続壁体の造成工法(以下「刊行物2発明B」という)。」。
(3)刊行物1と本件発明の対比
ア一致点
「先端付近より硬化液を吐出しながら回転するオーガを回転域が一部重複するように複数基
並列した削孔機を用い,削孔機による硬化液の吐出と回転とで連通した複数本からなる立坑を
地盤に削孔すると同時に削孔土砂と硬化液とをかく拌混合してこれら混合物からなる壁体造成
材料を立坑内に打設し,この壁体造成材料の打設後に削孔機による硬化液の吐出と回転とで壁
体造成材料を混合しながら削孔機を立坑から引き上げ,壁体造成材料が硬化する前にこの立坑
に一部重複し,かつ,0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔すると同時に
壁体造成材料を打設し,壁体造成材料が打設された立坑を連続させてその壁体造成材料を硬化
させる連続壁体の造成工法」。
イ相違点
「相違点1:本件発明では,オーガを「その並列を回動可能にかつオーガ支持部によってそ
の基部から伸縮可能に支持し,そして,一部重複し「かつ削孔機のオーガの並列の回動及び」,
オーガ支持部の伸縮と回動により」0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔
するよう構成しているのに対して,刊行物1発明においては,オーガが「その並列を回動可能
かつオーガ支持部によってその基部から伸縮可能」とするような構成を有しているかどうかの
明示がなく,次の立坑を,一部重複して,0度を含む所定の角度を介在させてさらに削孔する
点が開示されているものの,オーガの並列の回動及び伸縮により削孔するかどうか明確でない
点。
,,,相違点2:壁体造成材料の打設後に削孔機を立坑から引き上げるのに際し本件発明では
「削孔機による硬化液の吐出と回転とを維持して壁体造成材料をかく拌混合しながら」引き上
げるのに対して,刊行物1発明においては「削孔機による硬化剤(硬化液)の吐出と回転と,
で壁体構成材料をかく拌混練(混合)しながら」引抜く(引き上げる)ものの,硬化剤(硬化
液)の吐出と回転とを「維持して」行うかどうか明確でない点」。
(4)相違点についての判断
ア相違点1について
「刊行物2発明Aによると「先端付近よりセメントミルクを吐出しながら回転するオーガ,
を回転域が一部重複するように4軸並列し,かつその並列を回動可能にした削孔機を用い,削
孔機によるセメントミルクの吐出と回転とで連通した4本からなる立坑を地盤に削孔すると同
時に,削孔土砂とセメントミルクとをかく拌混合してこれら混合物からなる壁体造成材料を立
坑内に打設し,この壁体造成材料の打設後に削孔機によるセメントミルクの吐出と回転とで壁
体造成材料をかく拌混合しながら削孔機を立坑から引き上げ,壁体造成材料が硬化する前にこ
の立坑に一部重複しかつ削孔機の回転により0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立
坑を削孔すると同時に壁体造成材料を打設し,壁体造成材料が打設された立坑を連続させてそ
の壁体造成材料を硬化させる連続壁体の造成工法」が,公知の技術手段として開示されてい。
る。
この刊行物2発明Aは,いわゆる「TSP工法,特にその中の「4軸ソイルセメント柱列」
工法」として知られているものであり,本件発明におけるような,いわゆる「SMW工法」と
は,その名称を異にするものである。しかし,TSP工法の4軸ソイルセメント柱列工法も,
SMW工法も,柱列式地下連続壁工法の一つとして知られているものであり,名称の違いはあ
るものの,技術的には両者とも,土留め・止水工事等において地盤中に壁体を連続して造成す
る工法である点において,実質的に同様の作業を行う工法である。
さらに,本件発明のような連続壁体の造成工法において,オーガを,その支持部によって機
器の基部から回動及び伸縮可能に支持した機器を使用して行なうことは,甲3~5などに見ら
れるとおり,本件出願前広く知られた周知技術にすぎない。
してみると,刊行物2発明Aに示された「先端付近よりセメントミルクを吐出しながら回転
するオーガを回転域が一部重複するように4軸並列し,かつその並列を回動可能にした削孔機
を用い」て「立坑に一部重複しかつ削孔機の回転により0度を含む所定の角度を介在させて,
さらに次の立坑を削孔すると同時に壁体造成材料を打設」するとの技術手段,および上記周知
技術を,刊行物1発明における「立坑に一部重複しかつ削孔機の回転及び伸縮により0度を,
含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔すると同時に壁体造成材料を打設」すると
の作業を達成するために適用して,本件発明におけるように構成することは,刊行物1発明と
刊行物2発明A及び周知技術とが連続壁体の造成という同様の作業を行うものであって技術的
に関連性が強い点,さらに,その適用を阻害する特段の要因もない点を考慮すると,格別顕著
な困難性も見出すことはできず,当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである。
被請求人は,答弁書(10~19頁「(5-1)相違点1について」の項)において,上記周知
技術として挙げられた甲3~5に開示されたものはいずれもくい打ち機であり,本件発明とは
分野が異なる旨,反論している。しかし,これらの周知技術は,造成される連続壁体の構成に
違いは認められるものの,いずれも連続壁体の造成に用いられ,かつ,アースオーガにより削
孔を行うものである点で共通の分野に属するものであることが明らかであり,本件発明がその
ような周知技術の適用を阻害する特段の要因は何等認められないから,被請求人のこの主張に
は理由がなく,採用できない」。
イ相違点2について
「刊行物2発明Bによると「先端付近よりセメント溶液を吐出しながら回転するオーガを,
回転域が一部重複するように3軸並列した削孔機を用い,削孔機によるセメント溶液の吐出と
回転とで連通した3本からなる立坑を地盤に削孔すると同時に削孔土砂とセメント溶液とをか
く拌混合してこれら混合物からなる壁体造成材料を立坑内に打設し,この壁体造成材料の打設
後に削孔機によるセメント溶液の吐出と回転とを維持して壁体造成材料をかく拌混合しながら
削孔機を立坑から引き上げ,壁体造成材料が硬化する前にこの立坑に一部重複しかつ削孔機の
回転によりさらに次の立坑を削孔すると同時に壁体造成材料を打設し,壁体造成材料が打設さ
れた立坑を連続させてその壁体造成材料を硬化させる連続壁体の造成工法」が,公知の技術。
手段として開示されている。
この刊行物2発明Bは,本件発明と同様の,いわゆる「SMW工法」に関するものであり,
刊行物2発明Bに示された「壁体造成材料の打設後に削孔機によるセメント溶液(硬化液),
の吐出と回転とを維持して壁体造成材料をかく拌混合しながら削孔機を立坑から引き上げ」る
との技術手段を,刊行物1発明における「壁体造成材料の打設後に削孔機による硬化剤(硬,
化液)の吐出と回転とで壁体造成材料をかく拌混練(混合)しながら削孔機を立坑から引抜き
()」,,引き上げとの作業を達成するために適用して本件発明におけるように構成することは
その適用を阻害する特段の要因もない点を考慮すると,格別顕著な困難性も見出すことはでき
ず,当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである」。
ウ作用効果について
「全体として,本件発明における効果の点においても,刊行物1,2に記載された事項及び
周知技術から当業者であれば予測することができる程度のことであって,格別顕著なこととは
いえない」。
(5)結論
「本件発明は,刊行物1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明
をすることができたものである」。
第3原告の主張の要点
1取消事由1(相違点1の認定判断の誤り)
(1)相違点の看過
審決は「刊行物1発明においては,…オーガの並列の回動及び伸縮により削孔,
するかどうか明確でない点」のみを相違点1と認定している。
しかしながら,本件発明は「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回,
動により0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立孔を削孔する」ものであ
り,本件明細書の第4図に示されるように,0度を含む所定の角度を介在させて次
の立孔を削孔する際に,ベースマシン(刊行物1発明の「杭打ち機」に相当)を毎
回移動することなしに「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動」を,
組み合わせることにより行うことができるという画期的な構成及び効果を有する。
これに対し,刊行物1発明には「0度を含む所定の角度を介在させて」次の立,
坑の削孔をする構成の記載はない。被告らが指摘する図9及び11を見ても,複数
の立坑の削孔が行われた順序や,削孔の工程は明らかではない。
また,刊行物1には「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動」につ
いての記載がない。被告らの指摘するとおり,刊行物1の図6(39頁)には
「3,280~3,130」との記載が存在するが,この記載がオーガ支持部の伸
縮を示すものかどうかは明らかではなく,単に固定値の許容範囲を記載したもので
ある可能性が高い。加えて,図6には,オーガの並列の回動や,オーガの並列の回
動とオーガ支持部の伸縮との組合せも示唆されていない。
仮に,図6の上記記載が何らかの伸縮を示すとしても,次の立坑の削孔に際して
利用できる伸縮であるかどうかは一切不明であり,その伸縮はオーガの並列の垂直
性の調整のためにしか用いることはできないと理解すべきである。図6には,オー
ガの並列を上部で支持しているブーム(車体最後部から左斜め上部に直線状に突き
出ている棒状の部材)の伸縮については一切記載されていないため「3,280,
~3,130」と記載された部分のみを伸縮したとしても,オーガの並列が垂直性
を失って斜めになるだけであり次の立坑の削孔に用いることはできないしたがっ,。
て,本件発明と異なり,日車三点式杭打ち機のオーガの伸縮の目的は,オーガの長
さと角度を微調整することによりオーガの垂直性度を確保することにとどまる。
さらに,刊行物1発明においては,毎回,杭打ち機移動と杭打ち機設置とを繰り
返さなければならない(刊行物1の表-3「SMW連続壁施工管理」42頁。表中
の「杭打ち機移動」から「杭打ち機設置」に向かう上向きの矢印が,削孔毎に杭打
ち機移動が必要であることを明示している。しかるに,審決は,刊行物1発明で。)
は,次の立坑の削孔にはベースマシンの移動を要する点を相違点として認定してい
ない。
以上のとおり,審決には相違点看過の誤りがある。
(2)相違点1の判断の誤り
ア刊行物2発明Aの認定の誤り
審決は,刊行物2発明Aに「削孔機の回転により0度を含む所定の角度を介在,
させてさらに次の立坑を削孔する」ことが公知の技術手段として開示されていると
認定した。
刊行物2の図6.55(185頁)によると,ベースマシンの旋回と回転式リー
ダーの回転が可能であるとしても,旋回も回転もある一点を中心とする円周運動で
あるから,ベースマシンの旋回と回転式リーダーの回転とを組み合わせても円弧状
にしか削孔できず,ベースマシンの移動を組み合わせなければ,連続線上に,又
は90度の角度を介して,次の立孔の削孔を行うことはできない。
したがって,審決の上記認定は誤りである。
イ周知技術認定の誤り
審決は,甲3~5に基づき,オーガの支持部によって機器の基部から回動及び伸
縮可能に支持した機器を使用して造成することは,本件特許出願時には周知の技術
であったと認定している。
しかしながら,甲3~5記載の発明は杭打ち機に関する発明であり,連続壁体の
造成工法である本件発明とは技術分野が全く異なる。また,甲3~5記載の発明は
単軸杭打ち機により1本の被圧入体を打設施工するものであるため,本件発明のよ
うな「オーガの並列の回動」は存在せず「立坑に一部重複して次の立坑を削孔す,
る」こともあり得ない。
しかも,甲3~5記載の発明は,オーガの伸縮の目的及びベースマシンの移動の
要否が本件発明とそれぞれ異なる本件発明は次の立坑を削孔するに際してオー,。,
ガ支持部の伸縮を行うものであるのに対し,甲3記載の発明では,被圧入体を土中
に垂直に打設するためにオーガ支持部が伸縮し,かつベースマシンの移動も不可避
であり,甲4記載の発明では,被圧入体を土中に打設するためにブームの伸縮動作
を行い,かつベースマシンの移動が不可避であり,甲5記載の発明では,ブームの
伸縮は,車両を次の施工位置に移動した後に,リーダーの垂直状態を保持する目的
でリーダーを調整するために行われるにすぎない。
審決は,本件発明と甲3~5記載の発明とのこのような相違点を考慮せず,甲3
~5の発明の構成・目的を十分に検討・説明することなく,安易に上記認定を行っ
たものであり,違法である。
ウ刊行物1発明と刊行物2発明A及び周知技術の組合せの阻害要因の存在
審決は,刊行物2発明A及び甲3~5に示された周知技術を刊行物1発明に組み
合わせることは,当業者が必要に応じて容易になし得たことであると判断した。
しかしながら,甲3~5記載の発明は単軸の杭打ち機であるのに対し,本件発明
,,は複数軸の連続壁の造成工法に関する発明であるから両発明は技術分野が異なり
共通の技術的課題も存在しない。単軸の杭打ち機である甲3~5記載の発明には,
本件発明が解決したような「一部を重複させて,0度を含む所定の角度を介在させ
て次の立坑を削孔する」という連続壁体の造成工法に関する技術的課題は存在し得
ず,また単軸の場合は,複数軸と異なり,連続壁体のシール性という技術的課題は
存在しない。
また,甲3~5記載の発明は単軸構造であり,複数軸構造の本件発明,刊行物1
発明及び刊行物2発明Aとは構成が全く異なる。単軸構造の場合にはオーガの並列
の回動という概念は存せず,立坑に一部重複して次の立坑を削孔することもないた
め,オーガ支持部の伸縮と回動の必要もない。
そもそも,甲5記載の発明ではオーガの並列の回動は取り得ない。甲5の特許請
求の範囲や第1図に記載された構成では,ブームヘッドの先端部材がリーダー内に
入り込むことが特徴とされるためリーダーを回動させることも不可能であるリー,。
ダーを回動させることができなければ,オーガの並列を回動させることは不可能で
ある。したがって,甲5記載の発明を複数軸構造の刊行物1発明や刊行物2発明A
と組み合わせることには大きな障害がある。
さらに,本件特許出願当時,次の立坑の施工位置への移動はタイヤやキャタピラ
によりオーガ支持部の基部を移動する方法が普及し,当業者は,その方法では移動
不可能な場所(180度に近いような急峻な折返しの角度を含む土地,段差のある
土地や隣地境界線が迫っていて踏み越えることができない土地)での連続壁の施工
は断念していた。原告のみがオーガの並列の回動とオーガ支持部の回動と伸縮とを
組み合わせることで,かかる土地でも連続壁の施工ができることに着想した。その
ような可能性に気付くことのなかった当業者が,組合せの必要性に気付くこともあ
り得なかったのであり,何ら具体的な根拠を述べることなく刊行物1発明と刊行
物2発明A及び周知技術とを組み合わせることが,必要に応じて容易になし得たと
する審決には,重大な誤りがある。
エ相違点1に係る構成の容易想到性
刊行物1発明も刊行物2発明Aも,次の立坑の削孔にはベースマシンの移動が必
要であり,刊行物1発明に刊行物2発明Aを組み合わせたところで,オーガ支持部
の伸縮をオーガの並列の回動及びオーガ支持部の回動と組み合わせて,0度を含む
所定の角度を介在させて次の立坑を削孔する構成とはならない。刊行物2発明Aに
よれば,コーナー部への削孔が可能かのようであるが(図6.55,ベースマシ)
ンの移動を組み合わせなければ,連続線上に又は90度の角度を介して,次の立坑
の削孔を行うことはできない。ベースマシンの旋回と回転式リーダーの回転が可能
であったとしても,旋回も回転もある一点を中心とする円周運動であるから,ベー
スマシンの旋回と回転式リーダの回転とを組み合わせても円弧状にしか削孔できな
いことは明らかである。また,審決の認定する周知技術は「オーガを,その支持,
部によって機器の基部から回動及び伸縮可能に支持した機器を使用して行う」こと
のみであり,甲3~5記載のオーガ支持部の伸縮は,0度を含む所定の角度を介在
させて次の立坑の削孔のために利用されるのではない。
被告が周知技術を立証するものとして本訴において提出したカタログ(乙1)及
び陳述書(乙2)は,審判手続において提出されていないものであるから,かかる
周知技術を理由として無効原因を主張することは許されず,また時機に後れた攻撃
防御方法である。さらに,乙1記載の発明は,本件特許出願当時の周知技術という
こともできない。
したがって,刊行物1発明に刊行物2発明Aと本件審決の認定した周知技術とを
適用したとしても,相違点1を克服することはできない。
オ予測困難な顕著な効果の看過
「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動」は,直線や様々な角度の
施工ラインに沿った立坑の施工移動が可能となるという優れた効果を奏する。刊行
物2発明Aではベースマシンの移動可能範囲内でしか次の立坑を削孔できないが,
本件発明では,隣地境界線の位置やコーナー部の角度(介在させる角度)にかかわ
らず,完全に硬化していない立坑にベースマシンを乗り上げることなく次の立坑を
削孔できる。現場でオーガ支持部とリーダを寝かせた状態で組み立てる必要のある
刊行物1発明の日車三点式杭打機と異なり,オーガ支持部の伸縮により狭い面積で
も組み立て可能な本件発明では,狭小地や傾斜地,屋内での施工も可能である。
審決は,本件発明が,刊行物1発明,刊行物2発明A等から予測し得ない優れた
効果を奏することを看過している点で違法である。
2取消事由2(相違点2の認定判断の誤り)
(1)刊行物2発明Bの認定の誤り
審決は,刊行物2発明Bは「削孔機によるセメント溶液の吐出と回転とを維持し
て壁体造成材料をかく拌混合しながら削孔機を立坑から引き上げ」るものであると
認定した。
しかしながら,刊行物2には,三軸錐の回転によるかく拌も,オーガの回転を維
持しながら十分なかく拌を行うのでなければ達成できない目的についても記載され
ていない。他方,図6.52(184頁)の「④ターニング(かく拌」欄にオー)
ガスクリューの上下動作図中にオーガスクリューの上下動を示す図と上げ下(「」「
げ「上げ」の記載がある)が図示されていることや,図6.85(211頁)や」
図6.86(212頁)の「引抜きかく拌」との記載,掘削造壁工の手順について
の「計画深度まで三軸錐先端が到達した後,約3m程度をゆっくりと三軸を上下さ
せ,土砂とセメント溶液の混合を強化させた後」との記載(212頁2~3行)を
総合すると「引抜きかく拌」とはオーガの回転ではなく上下動作によるかく拌を,
意味すると理解すべきである。
したがって,審決の上記認定は誤りである。
(2)相違点2の判断の誤り
審決には,刊行物1発明に誤った刊行物2発明Bの構成を適用して相違点2の克
服を認定した点に誤りがある。また,審決は,相違点2に係る構成が顕著な作用効
果を有する点を看過している。したがって,相違点2に関する審決の判断は,誤り
である。
第4被告らの主張の要点
1取消事由1(相違点1の認定判断の誤り)に対して
(1)相違点の看過
原告は刊行物1の表-3SMW連続壁施行管理42頁に基づき刊行物1,「」(),
発明では,毎回杭打ち機移動と杭打ち機設置とを繰り返さなければならないと主張
するが,同表は,毎回杭打ち機移動と杭打ち機設置工程を経なければならないこと
を必ずしも示すものではなく,単に杭打ち機設置から杭打ち機移動までのワン・サ
イクルを表示しているにすぎない。また,刊行物1の図2,9,11には,オーガ
の並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動により行う旨の明示的な記載はないと
しても,連続壁体を0度のみでなく,45度,90度などの様々な角度で造成する
ことが記載されている。さらに,図-6側面図(39頁)にベースマシンの旋回中
心とオーガ支持柱との距離が可変の値で示されていることに照らすと,この多軸混
練オーガ機は,本件発明と同様の伸縮,回動が可能であり,それにより連続壁が造
成されるものと理解できる。
(2)相違点1の判断の誤り
ア刊行物2発明Aの認定の誤り
本件特許請求の範囲には「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動に
より0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立孔を削孔する」旨の記載があ
り,また,本件明細書の第4図についての説明中には「立孔6の施行移動に対し,
ては,削孔機4の基部(本体ベースマシン等)44からのオーガ支持部(クレーン
等)45の伸縮で対応することができる(4頁下から5~3行)との記載が存在」
。,,するしかし明細書にはそれ以上の具体的な構成ないし機構は記載されておらず
オーガ支持部(基部)の移動が不要であるという明示の記載もない。結局,次の立
孔を削孔する仕組みは,当業者の技術常識により必要に応じて選択し得るものであ
る。
イ周知技術認定の誤り
原告は,審決は,本件発明と甲3~5記載の発明との相違点を十分に考慮せず,
周知技術の認定をしたと主張するが,杭打ち工法にしても,地中連続壁造成工法に
しても,地中内をスクリューにより削孔して,建設工事の基礎をつくるという点で
共通し,また削孔作業を能率的・効率的に進めるという課題も共通することは明ら
かであり,技術分野は同じである。
オーガが単軸構造であっても,複数軸構造であっても,ブームの伸縮動作を次の
立坑の削孔に用いることは可能である。甲3~5は,ブームの伸縮が次の立孔の削
孔に転用できることを当然の前提として,垂直方向の力にもこれを応用することが
できるということを記載していると考えられる。
甲3記載の発明にあっては,ブームの伸縮動作により,オーガの垂直な昇降が可
能であることは明らかであり,同様の技術が打設に利用できることを否定する記載
はない。甲4には「水平方向に360度回転する事と,ブームの伸縮することに,
より地盤上の堀進,打ち込みをする位置,方向を選ばずして施工できる(2頁左。」
下欄10~12行)との記載があり,被圧入体を土中に垂直に打設する技術が,次
の立孔の削孔に転用可能であるということが明示されている。甲5記載の発明は杭
,,,打ち機にかかり確かに車両を次の施工位置に移動させてはいるがブームの旋回
ブームの長さ,傾斜角度を変えることが可能である。
以上によれば,ブームの伸縮動作等において,本件発明と異なる点があるとして
も,甲3~5記載の技術は本件発明に応用できることは明らかである。
したがって,審決の認定に誤りはない。
ウ刊行物1発明と刊行物2発明A及び周知技術の組合せの阻害要因の存在
原告は,刊行物2発明A及び甲3~5に示された周知技術を,刊行物1発明に組
み合わせることは,当業者が必要に応じて容易になし得ることではないと主張する
が,甲3~5記載の周知技術がこれらの発明と技術分野として共通することは明ら
かであり,オーガが1機の単軸構造であっても,刊行物1発明や刊行物2発明Aと
共通の技術的課題を有していることは疑問の余地がない。まして,刊行物1発明に
は,図-6側面図に見られるように,本件発明を開示しているとさえいえるような
技術が開示されている。
エ相違点1に係る構成の容易想到性
原告は,刊行物1発明に刊行物2発明Aと審決の認定した周知技術とを適用して
も,相違点1を克服することはできないと主張するが,本件発明の特徴が「オーガ
の並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動により0度を含む所定の角度を介在さ
せてさらに次の立孔を削孔する」ものであるとしても,本件発明のように具体的な
メカニズムの明らかでない抽象的な構成は,当業者が必要に応じてなし得た程度の
ものである。
また,本件特許出願以前に,春日機動開発株式会社が,クレーンにより3軸タイ
プのオーガを搭載して連続土留壁を削孔する工法及び装置を使用して工事をしてお
り(乙1,2,クレーンタイプのマシンを用いた多軸ソイル工法は,周知の技術)
であった。
オ予測困難な顕著な効果の看過
本件発明の作用効果は,刊行物1発明,刊行物2発明A等から予測し得る範囲内
のものである。
2取消事由2(相違点2の認定判断の誤り)に対して
(1)刊行物2発明Bの認定の誤り
原告は,刊行物2の「引抜きかく拌」とはオーガの回転ではなく上下動作による
かく拌を意味すると主張する。
しかしながら刊行物2211頁下から3行~212頁4行の記載によれば3,(),
軸錐先端が計画深度まで到達した後,ゆっくりと3軸を上下させ,土砂とセメント
溶液の混合を強化させた後,さらにセメント溶液の吐出を継続しながら,決められ
た引上げ速度をもって3軸錐を引き上げる旨の記載がある。この場合,オーガの回
転を維持しながら十分なかく拌を行うのでなければ,目的を達し得ない。
(2)相違点2の判断の誤り
原告は,審決が刊行物2発明Bについて誤った構成を適用したと主張するが,刊
行物2発明Bの認定について審決に誤りがないことは,上記のとおりである。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(相違点1の認定判断の誤り)
(1)相違点の看過
審決は,相違点1として「刊行物1発明においては,オーガが「その並列を回,
動可能かつオーガ支持部によってその基部から伸縮可能」とするような構成を有し
ているかどうかの明示がなく,次の立坑を,一部重複して,0度を含む所定の角度
を介在させてさらに削孔する点が開示されているものの,オーガの並列の回動及び
伸縮により削孔するかどうか明確でない点」と認定した。すなわち,審決は,刊。
行物1発明の構成として,①オーガの並列が回動可能かどうか,②並列されたオー
ガがオーガ支持部によりその基部から伸縮可能となっているかどうかを相違点とし
て認定した上で,その当然の帰結として,③次の立坑をオーガの並列の回動及び伸
縮により削孔するかどうか明確でない点を相違点と認定したものと理解できる。
ア原告は,刊行物1発明には「0度を含む所定の角度を介在させて」次の立坑
の削孔をする構成の記載はないのであるから,審決がこの点を相違点と認定しな
かったのは違法であると主張する。
(ア)まず,本件特許に係る請求項1の「0度を含む所定の角度を介在させて」
,()「,との上記記載の意味について本件明細書甲10にはこの重複削孔の際には
オーガ41,42,43の並列が回動可能であることを利用して,先の立坑6に対
して次の立坑6を所定角度介在させるようにする。この角度は,第4図に示すよう
に,施行ラインLが直線の場合には0度となり,直角の場合には90度となる」。
(4頁下から8~5行)と記載されている。これによれば「0度を含む所定の角,
」,。度を介在させてとは施行ラインが直線を形成する場合も含むものと認められる
(イ)これを前提として,刊行物1(甲2)の記載について,検討する。
刊行物1には,特殊多軸混練オーガ機を使用した連続壁体の造成工法であるソイ
ルアスファルトセメント連続壁工法(SMW工法)について「SMW工法とは,,
特殊多軸混練オーガ機にて現場土砂S(Soil)を削孔するに際し,その先端よりセメ
ントミルク,特殊アスファルト乳液,ベントナイト液等の混合液を吐出させて,原
位置において混合かく拌M(Mixing)を行い,1エレメントの土留壁体W(Wall)を完
成させる工法である。壁体の連続性は,各エレメント壁の完全連続施工により達成
される(39頁左欄6~13行)と説明され,さらに「SMW連続壁出来高」と。」
題する図-9(43頁)には,8月25日から9月5日までの期間において,ほぼ
直線(0度)又は90度の所定の角度をなす連続壁が造成された状況が図示されて
いる。
(ウ)刊行物1の上記記載及び図面によれば,刊行物1には,複数基のオーガを
有する掘削機を用い,一つの立坑と次の立坑とを0度を含む所定の角度を介在させ
て連続的に削孔し,連続壁体を造成する工法が記載されているものと認められる。
これに対し,原告は,上記図-9には不自然な点もあり,複数の立坑の削孔が行わ
れた順序や削孔の工程が不明であると主張するが,同図は,SMW工法により実際
に造成された連続壁を日付に沿って記載したものであると認められ,その連続壁の
削孔の順序や工程が不明であるということはできず,同図にことさら虚偽の事実を
記載したと認めるに足る事情も認められない。したがって,同図記載の連続壁の削
孔の順序や工程が不明であるとの原告の主張は採用し得ない。
イ原告は,刊行物1発明では,毎回,杭打ち機の移動と設置とを繰り返さなけ
ればならないが,審決がこの点を相違点と認定しなかったのは誤りであると主張す
る。
しかしながら,本件特許請求の範囲には「…壁体造成材料が硬化する前にこの,
立坑に一部重複しかつ削孔機のオーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動
により0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔すると同時に壁体
造成材料を打設し,…」と記載されているにすぎず,次の立坑の削孔に当たっての
()。,削孔機の基部本体ベースマシン等の移動の要否について何ら記載がないまた
本件特許請求の範囲には,施工区域の広さや状況,オーガ支持部の長さ,オーガの
回動や伸縮の程度等については何ら限定されていないのであるから,ベースマシン
の移動が必要となる場合も当然含み得るものと考えられる。したがって,ベースマ
シンの移動を要しないことが本件発明の構成要件となるとの原告の主張は,特許請
求の範囲の記載に基づかないものであるといわざるを得ない。
仮に,本件明細書の「施行ラインLに沿った立坑6の施行移動に対しては,削孔
機4の基部(本体ベースマシン等)44からのオーガ支持部(クレーン等)45の
伸縮で対応することができる(4頁下から5~3行)との記載を参照し,本件特」
許請求の範囲の「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動により…次の
立坑を削孔する」との記載が,オーガ支持部の伸縮によりカバーし得る範囲内で,
削孔機の基部の移動が不要であることを含意すると理解したとしても,相違点とし
ては「オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動により…次の立坑を削孔
する」ことを認定すれば足りるのであって,ベースマシンの移動の要否を相違点と
して認定する必要はないことになる。審決は「オーガの並列の回動及びオーガ支持
部の伸縮と回動により…次の立坑を削孔する」との点を相違点1として認定してい
るのであるから,審決が相違点を看過したということはできない。
,「」ウ原告は刊行物1にはオーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動
の記載がないと主張するしかしながら審決は前記のとおりこの点を相違点1。,,,
として認定しているのであるから,相違点看過をいう原告の主張には理由がない。
エ以上によれば,審決が相違点を看過したとの原告の主張には,理由がない。
(2)相違点1の判断の誤り
ア刊行物2発明Aの認定の誤り
原告は,刊行物2記載の削孔機のオーガの並列が回動可能であることは認めるも
のの,刊行物2には「削孔機の回転により0度を含む所定の角度を介在させてさら
に次の立坑を削孔する」ことは開示されていないと主張する。
(ア)そこで,検討するに,刊行物2(甲1)には,以下の記載が存在する。
(a)「6.3TSP工法
6.3.1まえがき
…鋼管内の土を排土せずにセメントとベントナイトを成分とするセメントミルクとかく拌
混合したソイルセメントを造成,あるいは鋼管(ケーシング)を用いずオーガーロッドのみで
孔内の土とセメントミルクをかく拌混合してソイルセメントを造成し,これを連続させ柱列と
する山止め壁,止水壁を構築するTSP工法を開発した。…TSP工法は,ソイルセメント
パイルを1本ずつ造成するシングルソイルセメント柱列工法,ソイルセメントパイルを4本同
時に造成する4軸ソイルセメント柱列工法…に分けることができる(176頁左欄21行。」
~177頁11行)
(b)「6.3.34軸ソイルセメント柱列工法
4軸ソイルセメント柱列工法は,4本のオーガロッドで4本のソイルセメントパイルを同時
に造成できる画期的な工法である(183頁8~11行)。」
(c)「(1)施工法
4軸ソイルセメント柱列工法の施工順序を図6.52に示す。削孔順序は,図6.53に示
すように,飛び石施工法と連続施工法とがある。…連続施工法は,削孔軸が4軸で,従来の1
軸に比較して剛性が高まったため可能になった工法である。連続施工法では,先に施工された
ユニットとの結合がソイルセメントの強度発現が小さいうちにラップ施工されるため,ソイル
,。」セメントパイル柱列は一体となりユニット間の止水性は飛び石施工法に比べて優れている
(184頁8~17行)
(d)「①近接障害物との接近距離について
4軸ソイルオーガマシンは,図6.54に示すようにオーガマシンの前面と削孔軸芯間寸法
は240mmと小さく,450mm厚さの柱列施工時以外は,オーガマシンの前面は柱列の外側面よりも
施工敷地内に入っている。このように敷地境界ぎりぎりに山止め壁の施工が可能なことは,市
,。街地における地下階の敷地面積を有効に利用でき市街地での工事には大きな威力を発揮する
②コーナー部の施工について
コーナー部の施工は図6.55に示すように,ベースマシンの旋回と回転式リーダーの回転
を組み合わせることによって敷地内での施工が可能である(同186頁3~11行)。」
(イ)刊行物2の図6.53(穿孔順序,185頁)には,施工ラインがほぼ「」
直線(0度)及び90度を形成して連続的に壁体が形成される様子が図示されてお
り,さらに図6.55(コーナー部の施工,同頁)には,施工ラインがほぼ直線「」
(0度)及び90度を形成して連続的に壁体が形成される様子が図示されているこ
とに加え,ベースマシンKH180が4軸ソイルオーガ機を支持する回転式リーダ
をベースマシンの回転中心で旋回可能に支持するとともに,4軸ソイルオーガ機が
回転式リーダにより回転可能に支持されている構成が示されている。
(ウ)刊行物2の上記記載及び図面によれば,刊行物2には「0度を含む所定の,
角度を介在させてさらに次の立坑を削孔する」ことが開示されているとともに,そ
のような削孔が,回転式リーダにより支持された4軸ソイルオーガ機からなる削孔
機の回転と,回転式リーダを支持するベースマシン本体の回転により行うことが図
示されていることが認められる。したがって,刊行物2には「削孔機の回転によ,
り0度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔する」ことが記載され
ているということができる。
(エ)これに対し,原告は,刊行物2の図6.55記載の4軸ソイルオーガマシ
ンは,ベースマシンの移動を組み合わせなければ,次の立孔の削孔を行うことはで
きず,ベースマシンの「旋回」と回転式リーダの「回転」とを組み合わせても円弧
状にしか削孔できないのであるから,刊行物2発明Aでは,削孔機の回転により,
連続線上に又は90度の角度を介して,次の立孔の削孔を行うことはできないと主
張する。
しかしながら,本件発明に係る連続壁体の造成工法にはベースマシンの移動を要
しないとの原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであることは,
前記判示のとおりである。
また「コーナー部の施工は図6.55に示すように,ベースマシンの旋回と回,
転式リーダーの回転を組み合わせることによって敷地内での施工が可能である」。
との上記記載によれば,図6.55は,コーナー部の施工を行う際に,ベースマシ
ンの旋回と回転式リーダの4軸ソイルオーガ機の回転によりコーナー部の施工がで
きることを示す図であることは明らかである。実際のところ,図6.55を精確に
検討し,ベースマシンを旋回したときの同図の回転式リーダの位置と4軸ソイル
オーガ機の位置を対応させれば,ベースマシンの移動を要することなく,ベースマ
シンの旋回と回転式リーダの回転を組み合わせることによりコーナー部の施工を行
い得ることが認められる。
さらに審決の削孔機の回転によりとの上記記載は本件特許に係る請求項1,「」,
の「オーガの並列の回動…により」との記載に対応したものであり,次の立坑を削
孔するに当たり,ベースマシンの移動を要する場合をことさらに除外した趣旨とは
理解できない。刊行物2において「0度を含む所定の角度を介在させてさらに次,
の立坑を削孔する」に当たり,削孔機を支持する回転式リーダの回転に加え,ベー
スマシンの旋回や移動が必要となる場合があるとしても「削孔機の回転により0,
度を含む所定の角度を介在させてさらに次の立坑を削孔する」との審決の認定に誤
りがあるということはできない。
したがって,刊行物2発明Aの認定の誤りをいう原告の主張には理由がない。
イ周知技術認定の誤り
審決は「連続壁体の造成工法において,オーガを,その支持部によって機器の,
基部から回動及び伸縮可能に支持した機器を使用して行うことは,甲3~5などに
見られるとおり,本件出願前広く知られた周知技術にすぎない」と認定し,原告。
はこの認定の誤りを主張する。審決の「オーガを,その支持部によって機器の基部
から回動及び伸縮可能に支持した機器を使用して行う」との記載の意味は必ずしも
明確ではないが,要は,ベースマシン本体の基部から回動及び伸縮可能なオーガ支
持部を備えたベースマシンを使用して連続壁体を造成することが周知技術であると
の意味と理解できる。
(ア)審決の認定した周知技術が甲3~5に記載されているかどうかについて検
討する。
甲3記載の発明は「クレーン本体に対して俯仰する主ブーム及びこれに対して,
伸縮若しくは俯仰回動する副ブームを備えたクレーン機の前記副ブームの先端に,
回転駆動機構にて回転されるオーガスクリューを備えたアースオーガの頭部を枢結
すると共に,前記アースオーガには被圧入物を並置して保持させ,前記アースオー
ガの掘削と前記クレーン機の各ブームの動作により該アースオーガと被圧入物とを
略垂直に土中へ推進し,所定深さに達すると被圧入物のみを土中に残存させてアー
スオーガを引き抜くようにしたことを特徴とする圧入工法(特許請求の範囲の請」
求項1)というものであり,さらに甲3には「トラック22の荷台部分に旋回機
構23を介してクレーン本体が設置され,該本体24には俯仰回動する主ブー
ム25が枢設されている(3頁右下欄4~7行)との記載がある。これらの記載」
によれば,甲3記載の発明の「主ブーム「副ブーム」はクレーン本体に設置され」
た「オーガ支持部」に相当し,トラック22の荷台部分の旋回機構を介して回動可
能であるとともに,副ブームは伸縮可能とされ,本件発明の「削孔機」に相当する
「アースオーガ」を支持するものということができる。そして,このような工法は
連続壁体を造成する際に用いられるものであるから,甲3には,ベースマシン本体
の基部から回動及び伸縮可能なオーガ支持部を備えた機器を使用することにより,
連続壁体を造成する工法が記載されていると認めることができる。
次に,甲4記載の発明は「…クレーン本体を360度平面上に廻転するごとく,
したホイールクレーンを使用し,クレーン本体には基部をクレーン車台に起伏自在
にブームを枢着し,このブームは長さの方向に伸縮自在に構成すると共に流体圧シ
リンダー装置により基部の枢着部を中心として起伏自在とし,このクレーン装置に
よりブーム上端に連結したアースオーガを介して打設すべき杭,掘進用のスパイラ
ルスクリューに流体圧で作用する起伏シリンダー装置により,ブーム伏進を促す押
圧力の垂直分力を与えると共に,ブームの長さをブーム挿込部を引込めることによ
り逐次縮小させ,垂直分力の垂直方向を維持させつつ杭打等を行うホイールクレー
ン杭打工法(特許請求の範囲)というものである。このような工法は連続壁体を。」
造成する際に用いられるものであるから,甲4にも,伸縮及び回動可能なブームを
備えたクレーン本体を使用することにより,連続壁体を造成する工法が記載されて
いるということができる。
さらに,甲5記載の発明は「ブームの先端であるブームヘッドに接続部材を介,
してリーダーを懸垂したものにおいて,上記接続部材をブームヘッドから突出して
先端がリーダー内に入り込む支持腕に形成するとともに,この支持腕先端をリー
ダーの中心軸線上に位置させ,かつ相互に前後並びに横方向の回動を可能として接
続してなるくい打ち機(特許請求の範囲)というものであり,さらに甲5には,」
「次の施工位置に移動する場合も,車両のターンテーブルによるブームの旋回並び
にブームを操作してその長さ,傾斜角度を変えるだけで容易に次の作業を開始する
ことができ(2頁左下7~10行)との記載がある。この記載によれば,甲5記」
載の発明も,回動及び伸縮可能なブームを備えた機器を使用して連続壁体を造成す
るものということができる。
(イ)以上によれば,ベースマシン本体の基部から回動及び伸縮可能なオーガ支
持部を備えた機器を使用することにより,連続壁体を造成することは,甲3~5に
示されているとおり,本件出願前に広く知られた周知技術であるということができ
る。これに対し,原告は,甲3~5記載の発明と本件発明とは,技術分野や目的等
が異なると主張するが,本件発明と甲3~5記載の発明の相違点は,甲3~5に例
示された周知技術の認定を左右するものではない(この点は,後記ウの組合せの阻
害要因の有無において検討する。。)
ウ刊行物1発明と刊行物2発明A及び周知技術の組合せの阻害要因の存在
原告は,甲3~5記載の発明と刊行物1発明,刊行物2発明A,本件発明とは,
技術分野,オーガの伸縮の目的,ベースマシンの移動の要否,オーガの軸数などが
異なるものであるから,甲3~5記載の発明と刊行物1発明等とを組み合わせるこ
とについては阻害事由が存在すると主張する。
(ア)しかしながら,甲3~5記載の発明は,オーガが単軸であるか複数軸であ
るかは相違するものの,刊行物1発明等と同様に,オーガを回転させて削孔し,地
中に矢板やH型鋼などを埋め込む工法に用いるものであるから,その技術分野は共
通しているということができる。原告は,甲3~5と刊行物1発明等とでは技術課
題が異なると主張するが,審決が適用しているのは,甲3~5に例示されている周
知事項であるから,この周知事項を刊行物1発明等に適用するに当たり,甲3~5
に記載された個々の技術課題と刊行物1発明等の技術課題までが共通しなければな
らないものではない。
(イ)原告は,甲3~5記載の発明は単軸構造であり,単軸構造の場合にはオー
ガの並列の回動という概念は存しないなどと指摘するが,甲3~5に例示された周
知技術は,オーガの支持部によって機器の基部から回動及び伸縮可能に支持した機
器を使用して壁体を造成するというものであり,この周知技術は,削孔機のオーガ
が単軸の場合も複数軸の場合も適用し得るものであるから,甲3~5記載の発明の
オーガが単軸であることは,甲3~5に例示された周知技術を刊行物1発明,刊行
物2発明Aに適用することを妨げる事由とはならないというべきである。
(ウ)原告は,本件発明等では次の立坑を削孔するに際してオーガ支持部の伸縮
を行うものであるのに対し,甲3~5記載のオーガの伸縮の目的はこれとは異なる
と主張する。しかしながら,甲3~5に記載されているオーガの伸縮は次の立坑を
削孔するに際しても利用できることは明らかであり,オーガの伸縮の目的が異なる
ことは,甲3~5に記載された周知技術を刊行物1発明,刊行物2発明Aに適用す
ることを妨げる事由とはならない。
(エ)原告は,ベースマシンの移動の要否も指摘するが,ベースマシンの移動が
必要であるからといって甲3~5に例示された周知技術を刊行物1発明刊行物2,,
発明Aに適用することが妨げられるものではない。
(オ)以上のとおり,甲3~5に例示された周知技術を刊行物1発明,刊行物2
発明Aに適用することについて,阻害事由があるということはできない。
エ相違点1に係る構成の容易想到性
原告は,刊行物1発明に刊行物2発明Aと審決の認定した周知技術とを適用して
も,相違点1を克服することはできないと主張する。
(ア)しかしながら,前記判示のとおり,審決は,刊行物1発明の構成として,
①オーガの並列が回動可能かどうか,②並列されたオーガがオーガ支持部によりそ
の基部から伸縮可能となっているかどうかを相違点として認定した上で,その当然
の帰結として,③次の立坑をオーガの並列の回動及び伸縮により削孔するかどうか
明確でない点を相違点と認定したものと理解できるところ,刊行物2には,オーガ
の並列が回動可能であり,オーガの並列の回動により削孔することが開示されてお
り,甲3~5には,オーガ支持部をマシンの基部から伸縮可能にし,オーガの伸縮
により削孔するとの周知技術が示されているのであるから,刊行物1発明に刊行
物2発明A,周知技術を適用することにより,本件発明の相違点1に係る上記①~
③の構成がいずれも充足されることは明らかである。
(イ)原告は,本件特許出願当時,タイヤやキャタピラにより移動不可能な場所
での連続壁の施工は断念していたのであるから,かかる土地でも連続壁の施工がで
きることに着想することは容易ではなかったと主張する。
,「,しかしながら刊行物2に敷地境界ぎりぎりに山止め壁の施工が可能なことは
市街地における地下階の敷地面積を有効に利用でき,市街地での工事には大きな威
力を発揮する(186頁6~8行)と記載されているように,タイヤやキャタピ。」
ラで移動することが困難な場所での施工方法は,本件特許出願当時から技術課題と
して認識されていたものと認められる。
そして,甲4の「水平方向に360度廻転することと,ブームの伸縮することと
により地盤上の掘進,打ち込みをする位置,方向を選ばず施工できる。高所,低所
等段差ある場所でも,リーダー,支柱等を要しないので直ちに,任意に打込み等の
作業ができる(2頁左下欄10~15行)との記載,甲5の「次の施工位置に移。」
動する場合も,車両のターンテーブルによるブームの旋回並びにブームを操作して
その長さ,傾斜角度を変えるだけで容易に次の作業を開始することができ(2頁」
左下7~10行)るとの記載によれば,これらの刊行物には,タイヤやキャタピラ
で移動することが困難な場所では,ブームの回転や伸縮を活用することにより円滑
な施工ができることが示唆されているということができる。
そうすると,本件特許出願当時,タイヤやキャタピラにより移動不可能な場所で
の連続壁の施工は,当業者が技術課題として認識していた事柄であり,その対応策
としてオーガ支持部の回転や伸縮を利用することは,当業者であれば容易に想到し
得たことであるというべきである。
(ウ)原告は,刊行物1発明も刊行物2発明Aも,次の立坑の削孔にはベースマ
シンの移動が必要であると指摘するが,原告のかかる主張が本件特許の特許請求の
範囲の記載に基づくものといえないことは,前記判示のとおりである。また,仮に
「」オーガの並列の回動及びオーガ支持部の伸縮と回動により…次の立坑を削孔する
との構成が,オーガ支持部のカバーできる範囲内でベースマシンの移動なしに削孔
し得ることを意味するとしても,そのような構成が,刊行物1発明に刊行物2発明
A及び周知技術を組み合わせることにより容易に想到し得ることは,前記判示のと
おりである。
オ予測困難な顕著な効果の看過
原告は,相違点1が予期し得ない優れた効果を奏すると主張するが,原告が主張
する作用効果は,刊行物1発明に,刊行物2発明A,周知技術を組み合わせた構成
自体から得られる自明な作用効果にすぎないのであって,これらの刊行物等から予
期し得ない顕著な効果を奏するものということはできない。
カ以上によれば相違点1に係る構成は刊行物1発明に刊行物2発明A甲3,,,
~5に記載された周知技術を適用することにより,当業者が容易になし得た程度の
ことであるとの審決の判断に誤りがあるということはできない。
2取消事由2(相違点2の認定判断の誤り)
(1)刊行物2発明Bの認定の誤り
審決は,刊行物2発明Bは「削孔機によるセメント溶液の吐出と回転とを維持し
て壁体造成材料をかく拌混合しながら削孔機を立坑から引き上げ」るものであると
認定した。これに対し,原告は,刊行物2の図6.52(184頁)の「④ターニ
ング(かく拌」欄のオーガスクリューの上下動作の様子や「計画深度まで三軸錐),
先端が到達した後,約3m程度をゆっくりと三軸を上下させ,土砂とセメント溶液
の混合を強化させた後…212頁2~3行との記載等を総合すると図685」(),.
(211頁,図6.86(212頁)の「引抜きかく拌」との記載は,オーガの)
回転ではなく上下動作のみによるかく拌を意味すると主張する。
ア刊行物2には,この点に関し,以下の記載がある。
(a)「6.4.2SMW工法の特色
SMW工法に用いる施工機を,図6.66に示す。現在,一般的に使用されているものは3
軸オーガ機である。…
,,,④従来のオーガスクリューは掘削排土用のためのものであるが本機のスクリュー翼は
土砂とセメント溶液とを土中において混合かく拌するためのものであり,したがって混合かく
拌の効果を良好ならしめるよう,各形状の翼からなっている。…
この工法の特色を述べると次のとおりである。
(1)止水性が高い
,。SMW機の3軸は互いに逆回転をしながらロッド先端より土中にセメント溶液を注入する
土砂とセメント溶液は,かく拌翼によって十分に混合されるため,従来のこの種工法に比べ,
遙かに止水性の高い壁体を造成することができる(195頁2行~196頁1行)。」
(b)「6.4.7施工
…施工のフローチャートを図6.85に…示す。…
②掘削開始と同時に,グラウティングプラントで混合されたセメント溶液を三軸錐先端よ
り吐出させ,掘削工と併行して連続注入を行う。この場合,土質より計画された必要混合液が
深度に応じて土砂内に十分混合されるよう,掘削速度を調整する(通常1m/min)。
③計画深度まで三軸錐先端が到達した後,約3m程度をゆっくりと三軸を上下させ,土砂と
セメント溶液の混合を強化させた後,更にセメント溶液の吐出を継続しながら,決められた引
揚速度をもって三軸錐を引き上げる(通常1.5m/min)(211頁5行~212頁4行)。」
イそして,図6.85「施工のフローチャート」には「削孔→底部かく拌→,
引抜きかく拌」との記載があり,図6.86「施工順序模式図」には「1.削孔か
く拌2.底部かく拌3.引抜きかく拌」との記載がある。
ウ以上の記載及び図面によれば,刊行物2記載のSMW工法においては,オー
ガスクリューのかく拌翼の回転により土砂とセメント溶液との混合かく拌が行われ
るものと認められる。
原告は「計画深度まで三軸錐先端が到達した後,約3m程度をゆっくりと三軸,
を上下させ,土砂とセメント溶液の混合を強化させた後,更にセメント溶液の吐出
を継続しながら,決められた引揚速度をもって三軸錐を引上げる」との上記記載に
ついて引き抜く際はかく拌翼は回転していないことを意味すると主張するがゆっ,,
くりと三軸を上下する際も「土砂とセメント溶液の混合を強化させ,また三軸錐」
を引き上げる際も「セメント溶液の吐出を継続」するというのであるから,削孔機
を立坑から引き上げる際にもセメントと土砂を十分に混合させるため,かく拌翼の
回転は継続していると考えるのが自然である。
また,原告は,刊行物2の図6.52の記載にも言及するが,これは4軸ソイル
セメント柱列工法についての記載であり,SMW工法に関する刊行物2発明Bとは
異なるものであるから,この記載を根拠に審決の誤りを主張するのは失当である。
そうすると,図6.85「施工のフローチャート」の「引抜きかく拌」とは,そ
の字義どおり,オーガを引き抜く際に,スクリューのかく拌翼の回転を維持して,
土砂とセメント溶液とのかく拌を継続することを意味するというべきである。
したがって,審決の刊行物2発明Bの認定に誤りがあるということはできない。
(2)相違点2の判断の誤り
原告は,審決が刊行物1発明に誤った刊行物2発明Bの構成を適用したと主張す
るが,審決の刊行物2発明Bについての認定に誤りはないことは,上記のとおりで
ある。また,原告は,審決が相違点2の顕著な作用効果を看過したと主張するが,
相違点2の奏する作用効果は,刊行物1発明に,刊行物2発明Bを組み合わせた構
成自体から得られる自明な作用効果にすぎないのであって,これらの刊行物等から
予期し得ない顕著な効果を奏するものということはできない。
,。したがって相違点2についての審決の判断に誤りがあるということはできない
3結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がないので,原告の請求
は棄却されるべきである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官塚原朋一
裁判官高野輝久
裁判官佐藤達文

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