弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人吉本英雄の上告理由第一、二、七点について。
 原判決が、その挙示の証拠により、控訴人(上告人)は、昭和八年五月頃訴外D
から賃借りした本件土地上にある本件家屋を目的物として、訴外Eと通謀のうえ、
同人との間で仮装の売買契約を締結した事実を確定していることは、原判文(その
引用する第一審判文)上明らかであり、この事実を前提として、特別の事情の認め
られない本件では、右仮装売買により、本件家屋の所有権の譲渡とともに、本件土
地に対する賃借権の譲渡をも仮装したものと認めるべきであるとした原判示は正当
である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、所論は、右と異なつた見解に立
つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
 同第三、五点について。
 本件家屋の敷地である本件土地に対する賃借権を控訴人がEに対して仮装的に譲
渡することについてなんらの合意ないし取極めのなかつたことが窺われる旨の原判
示は、右譲渡について明示の意思表示がなかつた旨判示した趣旨と解すべきである。
しからば、右判示は、前記のとおり、原審が本件土地の賃借権についての仮装譲渡
を認めたこととはなんら矛盾するものではない。したがつて、原判決に所論の違法
はなく、所論は、ひつきよう、原判決を正解しないでこれを攻撃するに帰するから、
採用できない。
 同第四点について。
 所論は、原判決を正解しないでこれを攻撃するにすぎないから、採用できない。
 同第六点(一)について。
 控訴人が原審で本件賃借権の移転に関する虚偽表示の有無について所論の主張を
していることは、記録上、明らかであるが、原判決(その引用する第一審判決)が
右主張に対し判断していることも、所論冒頭引用の判文に照らし、明らかである。
所論は、ひつきよう、原判決を正解しないでこれを攻撃するに帰するから、採用で
きない。
 同第六点(二)について。
 上告人が、Dに対する本件土地賃借権を保全するため、同人の被上告人に対する
損害賠償請求権を代位行使することが許されないことは、民法四二三条の規定に照
らし、明らかであり、上告人が、原審で、所論賃借権の侵害を原因として被上告人
に対し所論の損害の賠償を求める請求をした形跡は認められない。したがつて、上
告人の所論損害金の支払いを求める請求を棄却した原判決は、結局、正当であり、
論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁半官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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