弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人に対し本件不動産の持分権取得登記の抹消登記手続を命
じた部分を破棄する。
     右破棄部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     その余の部分に対する上告人の上告を棄却する。
     右棄却部分に関する上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人千森和雄の上告理由第一および第二について。
 本件不動産(原判決の引用する第一審判決添付目録記載の土地、建物を指す。以
下同じ。)は当初上告人および原審控訴人Dの共有に属するものであつたところ、
昭和一九年三月一日ころ上告人がその持分権を放棄し、その結果、右Dがその持分
権を取得して、右不動産の単独所有者となつたとする原審の認定判断は、原判決(
その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができないわけではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひ
つきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断および事実の認定を非難するか、また
は、独自の見解を主張するものであつて、採用することができない。
 しかしながら、職権をもつて審案するに、本件のごとく、すでに共有の登記のな
されている不動産につき、その共有者の一人が持分権を放棄し、その結果、他の共
有者がその持分権を取得するに至つた場合において、その権利の変動を第三者に対
抗するためには、不動産登記法上、右放棄にかかる持分権の移転登記をなすべきで
あつて、すでになされている右持分権取得登記の抹消登記をすることは許されないも
のと解すべきところ(大審院大正三年一一月三日決定、民事判決録二〇輯八八一頁
以下参照。)、原判文によれば、原審は、本件不動産につき右のごとき事実関係の
存在することを認定しながら、上告人に対し右不動産の持分権取得登記の抹消登記
手続を命じているのであるから、原判決中上告人に対し右登記手続を命じた部分は
不動産登記法の解釈適用を誤つたものというべきであり、かつ、この違法は原判決
の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
 してみれば、原判決中右部分は破棄を免れないが、その余の部分は正当であつて、
これに対する上告人の上告は棄却すべきである。
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁
判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

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