弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A同Bの弁護人沢登定雄の上告趣意第一点について。
 旧刑訴法第二八五条が公訴時効の中断事由の一つとして規定している公判の処分
中には、裁判長の公判期日の指定をも含むものと解すべきであつて(昭和六年(れ)
一三七一号事件昭和六年一二月一六日言渡大審院判決参照)しかも時効中断の効力
を生ずるためには、裁判長の公判期日指定の命令が被告人その他の者に告知される
ことを要しないのである。けだし、同条に規定する公訴時効の中断は、検察官、裁
判所若しくは裁判官の手続上の処分行為自体によつて行われるのであり、従つて裁
判長の公判期日指定の命令は、所論のように送達若しくは送達機関への交付を待た
ないでも命令書の作成によつてその処分行為の行われたことを知ることができるか
らである。記録によれば、本件については昭和二三年六月四日第一審判決が言渡さ
れ、その後六月以内である同年一二月一日原審裁判長において公判期日を昭和二四
年一月一一日午前九時と指定したことが明らかであるから、本件公訴の時効は中断
されているのである。それゆえ、原審には所論のような違法はなく論旨は理由がな
い。
 同第二点について。
 論旨前段は、原審が原判示のように被告人等の行為を戸別訪問と認定したのは重
大な事実の誤認であるというのであるが、このような事実上の主張は適法な上告理
由に当らないので採用することができない。
 また論旨後段は、原判示のように被告人等がC等十数名の居宅を歴訪したと認定
しただけでは犯罪事実の明示を欠くものであつて憲法上許されないというのである
が、原判示の程度に犯罪事実を記載すれば本件犯罪につき刑訴法上要請されている
罪となるべき事実の表示としては充分である。そして所論においては憲法云々と言
つているが、その主張の内容は純然たる刑訴法上の問題にとゞまるのであるから、
これをたゞちに憲法適否の問題として採り上げることはできない。
 よつて、本件上告を理由ないものと認め、旧刑訴法第四四六条に従い、主文のと
おり判決する。
 以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二五年四月二五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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