弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人相原良市の上告理由第一点について。
 所論は、原判決が先ず本件係争山林が上告人主張のとおり宮崎県北諸県郡a村大
字b字cd番のe山林にあたるか否かの判断をなし、然る後にこれが被上告人主張
の同字f番のgおよび同番のh山林にあたるか否かの判断をなしたのは、審理判断
の順序を誤まり、理由不備もしくは理由そごの違法あるを免れないという。しかし、
原判決は、その判断の順序の当否は別として、結局、その挙示の各証拠により認定
した判示各事実に基づいて、本件係争山林の一部が被上告人主張にかかる被上告人
所有の前記f番のgおよび同番のh山林にあたると判示しているのであり、右認定
事実に照せば、原判決の右判断は首肯するに足りる。本件係争山林が前記d番のe
山林ではないとの原判決の判示は、単に傍論的記載に過ぎないものということがで
きるから、論旨は採るに足りない。
 また所論は、原判決が、一方において前記d番のe山林の払下を受けた者が訴外
Dであると認定しながら他方においてその払下を受けた者が上告人であると認定し
ているのは、理由そごの違法あるを免れないという。しかし、右山林の払下を受け
た者が上告人である旨の原判示は、訴外Dと記載すべきものを上告人と誤記したに
過ぎないことが、原判文自体から容易に認められるところであり、従つて、論旨は
前提を欠くに帰するから、採用できない。
 次に所論は、証人Eの証言を採用した原判決を非難する。しかし、証人の証言中
に真実にそわない部分があるからといつて、その証言のすべての部分について信憑
性がないとすることはできず、その証言中のどの部分を措信するかは、事実審裁判
所の専権に属するところである。論旨は要するに、原審のなした証拠の取捨判断の
非難に帰するから、採用できない。
 さらに所論は、原判決には本件係争山林の隣接地関係の認定について字図の記載
と全く異なる結論を導き出すのに理由を付さなかつた違法があるという。しかし、
字図の記載と現地の実況とが隣接地関係について符合しないこともあり得ないこと
ではなく、本件については、原判決挙示の証拠に照せば、本件係争山林について字
図の記載と異なる原審の事実認定は首肯するに足り、なんら理由不備の違法はみと
められないから、論旨は採用できない。
 また所論は、原判決の認定した判示f番のgおよび同番のh山林と同d番のe山
林との境界線が正当であれば、官有林と民有林との境界線にあたる同線上に境界標
が存在しなければならないのに、これが存在しないことからみても、原判決は認定
を誤まり、理由不備の違法を犯したことが明らかであるという。しかし、境界標の
存在しないことを以て直ちに右境界線の認定を違法と断ずることはできず、論旨は
結局、原審の事実認定を非難するに帰すから、採用できない。
 その他論旨は、原審の認定しない事実を主張し、或は独自の見解に立つて、原判
決の事実認定・証拠の取捨判断を非難するに過ぎないから、採用できない。
 同第二点について。
 原判決が字図の記載と異なる事実認定をなしたことについて理由不備の違法があ
る旨の論旨の理由のないことは、前記第一点に対する判断において説示したとおり
である。
 また、不動産登記簿の記載は、必ずしも権利関係の実態と合致するものではない
から、本件係争山林の権利異動について、被上告人本人の一審における供述が登記
簿の記載とそごしていたからといつて、直ちに右供述を目して虚偽ということはで
きない。
 さらに、原審の認定によれば、登記簿上二畝歩に過ぎない判示f番のgおよび同
番のh山林が実測一町歩余になる結果を来すとしても、必ずしも右認定が経験則に
反するものとはいい難く、かえつて、原判決挙示の証拠関係に照せば原判決の所論
事実認定は、すべて首肯するに足りる。
 その他論旨は、るる述べるが、いずれも原審の認定しない事実を主張し、或は独
自の見解に立つて、原判決の事実認定・証拠の取捨判断を非難するに帰するから、
採用できない。
 同第三点について。
 所論は、原判決には当事者の申し立てない事項について判決をした違法があると
いうが、原審における被上告人の弁論の経過に徴すれば、被上告人の本訴における
請求は、原判決別紙添付図面の(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)
(9)(10)(11)(12)(13)(14)(15)(16)(1)の各点
を順次連結する線で囲繞された地域について、これが自己の所有に属することの確
認を求める趣旨であることが明らかであり、従つて、原判決には所論違法なく、論
旨は採用できない。
 同第四点について。
 所論は、原判決は民訴法三七八条二二八条に違反するという。しかし、被上告人
の本訴請求は、前記第三点に対する判断に説示のとおり、前記のような特定の地域
が自己の所有に属することの確認を求めているものであつて、その範囲について、
なんら明確を欠くところはない。論旨は、被上告人の請求ないしはこれに対する原
判決の判断を正解しなかつたことに基づくものであつて、採用できない。
 同第五点について。
 所論は、境界確定の訴はその本質上非訟事件に属し、従つて、非訟事件手続法に
よれば、裁判所において職権を以て証拠調を施行すべきであるのに、原審は、職権
証拠調をしなかつた結果事実認定判断を誤つたものという。しかし、本訴は本件係
争山林について所有権確認を求めるものであつて、境界確定を求めるものではなく、
従つて、論旨は前提を誤つたものであるから、採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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