弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1原判決主文第2項中,社会保険庁長官が控訴人に対して平成20年7月
15日付でした,亡Aを受給権者とする通算老齢年金に係る未支給保険給付
の不支給処分の取消しを求める請求を棄却した部分を取り消し,上記不支給
処分を取り消す。
2訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを2分し,その1を控訴人の負担
とし,その余を被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1主文第1項同旨
2訴訟費用のうち,上記不支給処分の取消請求に係る部分は,第1,2審と
も,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要等
1本件は,昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法(以下「旧
厚年法」という。)の通算老齢年金の受給権者であった亡Aが失踪宣告によっ
て死亡したものとみなされたことから,亡Aの配偶者である控訴人が,厚生年
金保険法(以下「厚年法」という。)37条1項の規定に基づき,亡Aの通算
老齢年金の未支給保険給付(以下「本件未支給保険給付」という。)の請求を
したところ,社会保険庁長官から,亡Aの死亡の当時,亡Aと生計を同じくし
ていたとはいえないとの理由で不支給処分を受けた(以下「本件不支給処分」
という。)ため,その取消しを求めた事案である。
原審が控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。なお,控訴人は,
原審において,本件不支給処分の取消請求のほか,①被控訴人に保管されてい
る年金の個人加入記録原簿にある控訴人の情報に誤りがあるとして,情報の加
入とこれと矛盾する情報の取消し及び原簿訂正証明書の交付を求め,また,②
社会保険事務所職員等の違法行為により精神的苦痛を被ったとして国家賠償
法1条1項に基づき損害賠償請求をしたところ,原審は,上記①の請求に係る
訴えを却下し,②の請求を棄却したが,控訴人は,①及び②の請求については
不服申立ての対象としていない。
なお,平成22年1月1日から日本年金機構法(平成19年法律第109号)
が施行され,日本年金機構が設立されたが,本件訴訟は,日本年金機構に承継
されるものではない(同法附則12条1項,日本年金機構法施行令附則2条参
照)。ただし,同法の施行前に社会保険庁長官がした保険給付の裁定その他の
処分は,厚生労働大臣がした裁定その他の処分とみなされることになった(同
法附則73条)。
2関係法令の概要は,以下のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」
欄の「第2事案の概要」の「1関係法令等の概要」(原判決3頁19行目
から同11頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決4頁8行目の末尾に,「すなわち,昭和60年法律第34号附則63
条は,「大正15年4月1日以前に生まれた者又は施行日の前日において旧厚
生年金保険法による老齢年金の受給権を有していた者については,新厚生年金
保険法第3章第2節並びに附則第8条,第15条及び第28条の3の規定を適
用せず,旧厚生年金保険法中同法による老齢年金,通算老齢年金及び特例老齢
年金の支給要件に関する規定並びにこれらの年金たる保険給付の支給要件に
関する規定であってこの法律によって廃止され又は改正されたその他の法律
の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)は,これらの者について,
なおその効力を有する。」旨定めている。」を付加する。
3本件の前提事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「2
前提事実」(原判決11頁7行目から同14頁18行目まで)に記載のとおり
であるから,これを引用する。
4争点及びこれに対する当事者の主張
(1)控訴人の未支給保険給付の受給権の有無(争点1)。
争点1に係る当事者の主張の概要は,以下に当審における主張を付加する
ほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「4当事者
の主張の概要」の「(3)争点(3)について」(原判決17頁7行目から同19
ページ19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
ア控訴人
(ア)厚年法37条2項の規定に基づく主張
老齢厚生年金の請求は,受給権者からの申請主義をとっており,その
支給は「2か月生き抜いた後に,その2か月分を翌月15日ころに支給
する」という後払いの原則によっているため,被保険者が例えば4月8
日に死亡した場合,2月分及び3月分の老齢厚生年金が未支給年金とな
る。その者に係る遺族厚生年金受給権者は,厚年法59条各項により認
定されるが,2月分及び3月分は死者名義の年金であって,特別な規定
がない限り,遺族厚生年金の受給権者になったばかりの者は請求ができ
なくなることから,制度上必然的に生じる事態に対応するために,厚年
法37条が設けられたものであると解すべきである。そして,厚年法
37条2項に「前項の場合において」とあるのは,遺族厚生年金の受給
権者が未支給保険給付の受給権者である旨を規定しているものと解す
るべきである。本件認定基準は,遺族年金受給資格に係る認定基準であ
って未支給の保険給付に係る認定基準ではない。控訴人は,亡Aの遺族
として遺族厚生年金の受給権者に該当するから,亡Aの死亡の当時亡A
と生計を同じくしていたか否かを論ずるまでもなく,当然に亡Aの未支
給保険給付の受給権が認められる。
(イ)厚年法37条1項の規定に基づく主張
仮にその者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたこと(生計同
一要件)を要するとしても,失踪宣告を受けたというだけで,夫婦間の
実態を調査することなく,生計同一要件がないとすることは著しく不当
である。法律上の妻が夫と別居している場合を想定すると,やむを得な
い理由による別居ともいえず,経済的援助もなく,音信や訪問もないと
いう場合には離婚同然の状態にあるといえるが,これ以外であれば生計
同一要件は認められるべきである。失踪宣告を受けても合理的限定的な
「死亡の当時」ということはないから,行方不明となった当時の夫婦関係
に基づき,行方不明となる3年前程度の実態に即して生計同一か否かを
判断すべきであり,離婚同然の状態に至っていなければ生計を一つにし
ていると解するべきである。亡Aが行方不明となった平成7年▲月から
の7年間を見てみると,生死不明である以上別居はやむを得ないといえ
る。また,控訴人は亡A名義の家に住み,亡Aの不在者財産管理人を相
手方とする家庭裁判所の審判によって,自宅及び別荘の地代や固定資産
税,水道代等の支払いを受けていたものであり,控訴人は年間20万円
余の国民年金のみが固定収入であったことから,昭和63年までは亡A
名義の預金であった夫婦預金を原資とする保険金や年金を拠り所とし
て何とか生活を続けることができたものであり,亡Aから経済的援助を
受けていたことと同視されるべきである。そして,離婚同然の状態であ
れば,行方不明者を捜索することなどしないはずであるが,控訴人は,
長女とともに,また,家庭裁判所を通じて,亡Aの捜索に尽力した。こ
のことは,精神的なつながりに係る行為として評価されるべきである。
以上によれば,控訴人は亡Aと生計を同一にしていたというべきであ
る。
イ被控訴人
(ア)厚年法による保険給付を受ける権利は,同法1条の目的に照らし,
権利の移転性が原則として否定されており(厚年法41条1項参照),
一身専属性を有するもので,相続の対象外であると解されている(民法
896条ただし書)。厚年法37条1項の規定に基づく未支給保険給付
制度は,遺産相続的見地からではなく,受給権者の死亡当時,その者と
生計を同じくしていた者の社会保障の見地から,一身専属的な権利であ
る未支給保険給付の支給を認めたものである。生計とは,暮らしを立て
るための手立てであり,生計同一関係とは,居住関係及び消費生活関係
という両面から,生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を同一
にするといえる場合を指すというべきである。
(イ)厚年法37条1項の文言及び失踪宣告制度の趣旨からすると,控訴
人が,亡Aの死亡の当時,亡Aと生計を同じくしていたか否かは失踪期
間満了時を基準として認定するべきである。厚年法59条1項は,生計
維持要件の充足性の認定時を「失踪の宣告を受けた被保険者であった者
にあっては,行方不明となった当時。」として読み替えている。この読
替規定は,昭和46年法律第72号による厚年法の改正によってされた
ものであり,受給要件の緩和を図ったものである。当時の「厚生年金保
険法関係想定問答」には,普通失踪のように失踪日から7年経過して時
点で死亡したものとみなされるものについては,死亡当時では,7年間
以上も行方不明となっているので,被保険者でなくなっていたり,また,
生計維持の関係がない等が一般的であり,遺族年金が支給されないこと
になるため,このような事態を解消するため,失踪者の場合は,被保険
者資格や生計維持関係を行方不明時点で認定することとするものであ
ると説明されている。一方,上記厚年法改正以後においても,厚年法3
7条1項については,同法59条のような読替規定が置かれることがな
かったことからすると,厚年法37条1項は,失踪宣告を受けた受給権
者との間に生計同一関係があることをおよそ想定していないと解する
べきである。このように解すると,遺族厚生年金の生計維持要件中の生
計同一要件の判断と未支給保険給付の生計同一要件の判断時点に差異
が生ずるが,遺族厚生年金と未支給保険給付の目的及び内容等の差異に
照らし合理的であるといわなければならず,また,同要件が,配偶者等
であることに加えて課されている趣旨からすると,離婚同然の状態に至
っていなければ足りると解することは相当でない。
(ウ)本件認定基準は厚年法37条1項の生計同一要件に当たる場合を
具体化したものであり,本件未支給保険給付においても適用されるべき
である。亡Aは,平成14年▲月▲日をもって普通失踪宣告により死亡
したものとみなされたものであり,生死が7年間も明らかではなかった
以上,亡Aと控訴人が生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を
同一にしていたとはいえないというべきであり,本件認定基準によって
も生計同一関係があるといえないことは明らかである。すなわち,亡A
は,同年▲月ころ,これ以上頼らないでほしいなどと記載したはがきを
控訴人に送りつけた後ほどなくして失踪し,その後7年間生死不明の状
態にあったものであるから,生活共同体として一体的に消費生活を営み
家計を同一にする関係にあったとはいえない。また,控訴人が亡Aとの
夫婦預金の一部を預け替え,平成15年ころまでそれを生活費の一部に
当てていた事実があったとしても,同預金は控訴人が昭和56年ころに
財産分与ないし慰謝料の趣旨で受け取ったものから生活費を支出して
いたというにすぎないから,これをもって生計を同一にしていたという
ことにはならない。さらに,控訴人は,亡Aの不在者財産管理人を選任
した上,これを相手方として平成10年に婚姻費用分担の審判を受け,
年間約28万円の支給等を受けているようであるが,これは,亡A名義
及び亡Aと控訴人の共有名義の不動産を維持するため,亡Aの残置財産
から支弁することが認められたものにすぎない。したがって,このよう
な形で婚姻費用の分担を受けているからといって,生死が7年間も明ら
かでない亡Aと控訴人が生活共同体として一体的に消費生活を営み家
計を同一にしているとはいえない。
したがって,控訴人には未支給年金の受給権は認められない。
(2)本件不支給決定は行政手続法に違反するか否か(争点2)
ア控訴人
本件認定基準によって生計同一性を判断し本件不支給処分をしたので
あれば,同基準は,審査基準として行政手続法5条に基づき作成及び公表
されるべきであるところ,これがなされていない。また,本件不支給処分
においては,同基準に沿った処分理由が示されていない。本件不支給処分
は,行政手続法1条の目的に反し,同5条及び8条に違反する。
イ被控訴人
上記アの主張はいずれも争う。控訴人は本件認定基準が記載された書面
を平成15年7月28日に受領している。また,本件不支給処分において
提示すべき理由としては甲7に記載の程度で足りる。
第3当裁判所の判断
1争点1について
(1)通算老齢年金の未支給の保険給付の受給を請求することができる者につ
いて
通算老齢年金は,大正15年4月1日以前に生まれた者で,複数の年金制
度に加入し,各制度の加入期間が1年以上に達するものの,当該各制度から
個別に老齢年金を受給することができないといったような場合に,当該各制
度の加入期間を通算することにより受給資格要件を付与し,当該各制度から
加入期間に比例した額の支給を行う老齢年金をいうものである(旧厚年法第
3章第2節の2)。通算老齢年金制度は,昭和60年法律第34号により廃
止されたが,同法律附則63条は,「大正15年4月1日以前に生まれた者
又は施行日の前日において旧厚生年金保険法による老齢年金の受給権を有
していた者については、新厚生年金保険法第3章第2節並びに附則第8条、
第15条及び第28条の3の規定を適用せず、旧厚生年金保険法中同法によ
る老齢年金、通算老齢年金及び特例老齢年金の支給要件に関する規定並びに
これらの年金たる保険給付の支給要件に関する規定であつてこの法律によ
つて廃止され又は改正されたその他の法律の規定(これらの規定に基づく命
令の規定を含む。)は、これらの者について、なおその効力を有する。」と
定め,大正15年4月1日以前に生まれた者等について経過措置を設けた。
亡Aは大正14年▲月▲日生まれであるから,上記経過規定が適用され,
「旧厚生年金保険法中同法による老齢年金、通算老齢年金及び特例老齢年金
の支給要件に関する規定並びにこれらの年金たる保険給付の支給要件に関
する規定であつてこの法律によつて廃止され又は改正されたその他の法律
の規定」が依然として適用されることになる。ただし,上記経過規定は「新
厚生年金保険法第3章第1節」の適用を排除していないから,通算老齢年金
の受給権者が死亡した場合にだれが未支給の保険給付の支給を請求できる
かについては,現行の厚生年金保険法37条により判断されることになると
いうべきである。
(2)厚年法37条1項は,「保険給付の受給権者が死亡した場合において,
その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったもの
があるときは,その者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹であっ
て,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは,自己の名で,
その未支給の保険給付の支給を請求することができる。」と定める。また,
同3項は,「第1項の場合において,死亡した受給権者が死亡前にその保険
給付を請求していなかったときは,同項に規定する者は,自己の名で,その
保険給付を請求することができる。」と定める(なお,厚年法による保険給
付を受ける権利は,権利の移転性が原則として否定されており(厚年法41
条1項参照),一身専属性を有するもので,相続の対象外であると解されて
いるのであり,厚年法37条の規定に基づく未支給保険給付制度は,遺産相
続的見地からではなく,受給権者の死亡当時受給権者と生計を同じくしてい
た者の生活保障の見地から認められたものと解される。)。
したがって,本件では,①控訴人が死亡した受給権者の死亡の当時におい
て配偶者であったといえるかどうか,②控訴人が死亡した受給権者の死亡の
当時その者と生計を同じくしていたといえるか(生計同一要件)の2点が検
討されなければならない。
ところで,本件は,受給権者である亡Aが失踪宣告を受けて死亡したとみ
なされた事案であるところ,このような場合には,「その者の死亡の当時そ
の者と生計を同じくしていたもの」という厚年法の文理に照らし,失踪宣告
によりAが死亡したとみなされる時点当時において,生計同一要件を充足し
ているか否かが判断されるべきである(このことは,厚年法において,遺族
厚生年金の受給権者については,「被保険者又は被保険者であった者の配偶
者,子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者又は被保険者であった者の
死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明
となった当時)その者によって生計を維持したものとする。」旨定められて
いて,「その者によって生計を維持した」という生計維持要件は,「被保険
者又は被保険者であった者の死亡の当時」において判断することを原則とし
ながら,被保険者であった者が失踪宣告を受けた場合には,例外として,行
方不明となった当時において判断するという特則(読替規定)が置かれてい
ることとの対比からしても明らかであるというべきである。)。
なお,同条2項の「前項の場合において」というのは,1項の「保険給付
の受給権者が死亡した場合において」の部分を受けるものであり,同条2項
は,遺族厚生年金の受給権者である妻が死亡した場合に,被保険者又は被保
険者であった者の子(遺族厚生年金の受給権者である妻の子ではなく,した
がって,1項の「その者の子」には含まれない者)についても,一定の要件
を充足すれば,妻の遺族厚生年金に係る未支給の保険給付を請求することが
できることを規定しているものに過ぎないから,同条2項の存在は,上記解
釈を左右するものではない。
したがって,本件においては,亡Aが死亡したとみなされる時点である平
成14年▲月▲日当時の事実関係に照らし,控訴人が亡Aの配偶者に当たる
といえるか,また,亡Aと生計を同じくしていたといえるかについて,以下
検討する。
(3)証拠(甲22,23,83(ただし,下記認定に反する部分を除く。))
及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア控訴人と亡Aは,昭和31年12月27日に婚姻し,長男,次男,長女
の3人の子を儲けた。婚姻当時,両者はともに公立学校の教員をしていた
が,控訴人は昭和39年11月に退職した。亡Aは,昭和61年3月の定
年まで引き続き教員をしていた。亡Aは,土地を賃借し,住宅ローンを組
んで借地の上に家を建て,そこに両者は居住していた。また,両者は,昭
和50年には共有名義で山小屋(別荘)を建て,これを所有していた。
イその後,亡Aの暴力が原因で,控訴人から夫婦関係調整の調停が申し立
てられ,その調停の場で,Aが自宅を出て別居することが話し合われた。
その結果,控訴人と亡Aは,昭和56年7月1日,亡Aが自宅を出る形で
別居し,以後亡Aは,別の場所に長男と居住するようになり,住民票も別
にされた。ただ,当時,両者の間に離婚しようという意思まであったわけ
ではない。
ウ控訴人は,上記自宅に,次男とは昭和61年10月ころまで,長女とは
平成11年2月ころまで,それぞれ進学,就職等による転居期間を除いて,
ともに居住し続けた。他方,亡Aは,別居後も,自宅の固定資産税及び地
代,控訴人と共同使用していた山小屋の固定資産税,管理費用等を一人で
負担し続けた(これは後記の亡Aが行方不明になる時点まで続いた。)。
また,亡Aは,別居時にあった夫婦名義の郵便定額貯金及び公社債預貯金
(額面合計867万円。以下これを「本件夫婦預金」という。)もすべて
控訴人の管理に任せ,控訴人がこれを引き出し,費消することを認めた。
控訴人は,本件夫婦預金を生活費に一部充てたほか,本件夫婦預金を原資
にして保険料を支払い,養老保険及び個人年金保険に加入した。その結果,
控訴人は,平成5年6月には満期保険金として約285万円,平成12年
11月には据置保険金として約137万円をそれぞれ受領し,平成6年か
ら平成15年までの10年間,毎年8月にそれぞれ約50万円の私的年金
の支払を受けた。
エまた,亡Aは,昭和56年8月から昭和57年3月まで,控訴人名義の
預金口座に毎月約12万円を振り込むなどした。また,同年4月からは,
次男及び長女名義の預金口座に毎月合計約20万円を,昭和59年4月か
らは長女名義の預金口座に毎月16万5000円を振り込んだ。
オ亡Aは,昭和61年3月に勤務先を定年退職したが,退職に際して,控
訴人に対して「年金生活になって収入が半分になって大変だ。何かあった
らいってきてください。」と伝え,いったん長女名義の預金口座への振込
みをやめたが,長女及び控訴人の要請を受け,長女名義の預金口座に,自
己の退職年金のうち昭和61年から平成6年分の加給年金額に相当する
約180万円を,平成4年3月から平成6年8月までの間に分割して振り
込んだ。
カ控訴人は,亡Aとの別居後,月額2万円ないし6万円程度の家庭教師の
アルバイト収入を得ていたなどのほかは,さしたる収入はなかった。なお,
控訴人は,平成5年9月以降,年額約20万円の老齢基礎年金を受給して
いる。
キ控訴人と亡Aは,山小屋が老朽化したことから,平成3年から4年にか
け,約1100万円をかけて共同で新たに山小屋を建築し,両名の共有名
義とした。亡Aは登記手続の一切を控訴人に委任し,不動産取得税を納付
した。
ク亡Aは,平成7年▲月に行方不明となった。控訴人は,亡Aを不在者と
する不在者財産管理人選任の申立てをし,平成9年4月10日に,亡Aの
不在者財産管理人(以下「亡A管理人」という。)が選任された。
ケ控訴人は,亡A管理人を相手方として,横浜家庭裁判所に婚姻費用分担
の審判を申し立てたところ,平成10年10月29日,横浜家庭裁判所は,
控訴人と亡Aは同居中種々の確執があって不仲になったものであるが,控
訴人が婚姻費用の分担請求を放棄ないし喪失したと推認すべき事情はう
かがわれないこと,むしろ,亡Aが別居後,自宅と山小屋の固定資産税,
地代,修繕費,山小屋の管理費用等の諸費用を分担することを約束し,不
在者となるまでは分担してきたという事情があることなどを考慮して,不
在者である亡Aは,婚姻費用の分担として,過去に控訴人が負担した修繕
費20万3730円を直ちに支払うほか,自宅及び山小屋の固定資産税,
地代,管理費用,水道料,修繕費等に相当する年額28万7600円を,
別居解消又は婚姻解消に至るまで,毎年12月末日限り支払えとの審判を
した。その結果,控訴人は,亡A管理人から,上記婚姻費用の支払を受け
てきた。
コなお,控訴人は,亡Aが死亡したとみなされる平成14年▲月時点にお
いても,上記自宅に居住していた。
(4)以上の事実を前提に以下検討する。
ア控訴人が厚年法37条1項の配偶者に当たるといえるか
本件では,亡Aに別居後内縁関係にある者がいたことをうかがわせる証
拠はないところ,控訴人と亡Aが別居してから亡Aが失踪宣告により死亡
したものとみなされる時点まで約21年が経過しているが,別居時に控訴
人と亡Aが離婚しようとする意思まで持っていたわけではなく((3)イ),
控訴人は別居後も亡A名義の自宅に居住し続け,亡Aは,行方不明になる
までは控訴人が居住していた自宅の固定資産税及び地代,控訴人も使用し
ていた山小屋の固定資産税,管理費用等を一人で負担し((3)ウ),また,
平成6年8月ころまでは控訴人と同居する子名義の預金口座等に相当額
の金員を送金していたものである((3)エ,オ)。また,控訴人と亡Aは
共同で山小屋を建てたりするなどしていた((3)キ)。そして,亡Aが行
方不明になった後も,亡Aの法定代理人である亡A管理人(なお,家庭裁
判所が選任した不在者の財産管理人は,亡Aの法定代理人である(民法2
8条参照)。)が相当額の婚姻費用を負担し続けてきたのである((3)ケ)
から,亡Aが行方不明になった平成7年▲月当時はもとより,亡Aが死亡
したものとみなされた平成14年▲月▲日の時点においても,控訴人とA
との婚姻関係が実態を失い,形骸化していて,事実上の離婚状態にあった
とみることは相当でないというべきである。したがって,控訴人は,亡A
が死亡したものとみなされた平成14年▲月▲日の時点において,厚年法
37条1項所定の配偶者であったと認めるのが相当である(なお,この点
は,被控訴人も争わないところである。)。
イ生計同一要件充足の有無
次に,控訴人が,亡Aが法的に死亡したものとみなされた平成14年▲
月▲日の時点において生計同一要件を充足するか否かについて検討する。
生計を同じくするとは,消費生活上の家計を一つにしていると認められ
る状況にあることを指すものであり,夫婦の場合では,同居して,夫婦そ
れぞれが得た収入及び支出を合わせて共同に計算して,生活している状況
にあることがその典型ということができる。しかし,必ずしも同居してい
ることは絶対の要件でなく,例えば夫が単身赴任して別居している場合で
も,夫婦それぞれが得た収入・支出を合わせて共同に計算し,婚姻費用を
分担しあって生活していると評価できるなら,消費生活上の家計を一つに
しており,生計を同じくすると評価できるというべきである。さらに,た
とえば夫が勝手に別居したが(民法770条1項2号にいう「悪意の遺棄」
に当たるケース),家庭裁判所において夫が妻に相当額の婚姻費用を支払
うよう命じられて,夫がそれを履行し,妻がそれにより生活しているよう
な場合も,夫と妻の収入,支出を合わせて共同に計算し,婚姻費用を分担
しあっているとみることができるから(家庭裁判所の婚姻費用分担の審判
においては,通常,夫と妻それぞれの収入,支出を総合勘案して分担額が
決められる。),生計を同じくするという要件を充足するというべきであ
る(すなわち,生計を同じくしているかどうかは,法的,規範的な要素を
含めて判断すべきものであるから,夫が単身赴任している例のように夫が
自主的に婚姻費用を負担しているか,それとも夫が民法760条の婚姻費
用分担義務に基づき強制的に婚姻費用を分担させられているかという違
いを殊更重視すべきでないのである。)。また,夫が従来の住所を去るに
当たり(たとえば海外に長期滞在した場合,従来の住所との関係では夫は
不在者ということになる。民法25条参照),財産の管理人を置き(なお,
同法25条,28条参照),同人に従来の住所地に残された財産の中から
妻への相当額の婚姻費用の支払を委任し,それが財産管理人により履行さ
れていたところ,夫が死亡したという場合を考えると,この場合も,夫死
亡当時,夫と妻は生計を同じくしていたと評価できることは明らかである
(なお,財産管理人は夫の代理人であるから,財産管理人が婚姻費用を支
払っていたということは,法的には不在者である夫が妻に婚姻費用を支払
ったと評価されるものである。)。
ところで,本件は,夫が従来の住所を去って容易に帰来する見込みがな
いことから,家庭裁判所において,財産管理人が選任され,さらに,同人
を相手方として,従来の住所に残された亡Aの財産の負担において控訴人
に対する婚姻費用の分担が命じられ,財産管理人がそれに従って控訴人に
婚姻費用を支払ってきたというものである((3)ク,ケ)。そして,家庭
裁判所が選任した不在者の財産管理人は不在者の法定代理人の地位にあ
るから,財産管理人が婚姻費用を支払ったということは,法的には不在者
であるAが控訴人に婚姻費用を支払ったと評価されるのである。しかも,
上記事実関係((3)カ,ケ)によると,支払われていた婚姻費用の額が控
訴人の生計に占める割合は決して少なくないものであったということが
できる(なお,この婚姻費用は,亡A所有の自宅及び亡Aと控訴人の共有
の山小屋の固定資産税,地代,管理費用,水道料,修繕費等に充てること
が想定されているものであるが,自宅等を使用しているのは専ら控訴人で
あるから,これは,結局,控訴人の生活維持の趣旨のものということがで
きるのである。)。そうすると,亡Aが法的に死亡したとみなされる平成
14年▲月▲日当時において,控訴人と亡Aとは生計を同じくしていたと
評価できるというべきである(なお,上記の,不在者が任意に選任した財
産管理人が婚姻費用を支払っているケースと本件との違いは,不在者の意
思で選任された財産管理人が婚姻費用を支払っているか,裁判所が選任し
た財産管理人が裁判所の審判に従って婚姻費用を支払っているのかの点
にすぎないところ,上記のように,生計を同じくするかどうかは,法的,
規範的な要素も含めて判断されるべきものであるから,不在者の意思を殊
更に重視するのは相当でないのであり,不在者が選任した財産管理人が婚
姻費用を支払っているケースと本件とは同じというべきである。)。な
お,Aが,法的に死亡したとみなされる平成14年▲月▲日当時において,
現実には従来の住所地とは別の場所で生存し,別途生計を立てて生活して
いた可能性がないわけではないが,その点の立証はない(行方不明になっ
た直後に亡Aは死亡していたというような可能性もあるのである。)。ま
た,仮にそうであったとしても,従来の住所地に残されたAの財産の中か
ら相当額の婚姻費用の分担がされているのであるから,この点は,控訴人
と亡Aが生計を同じくしていたという判断の妨げにならないというべき
である。
したがって,本件では,亡Aが死亡したものとみなされる平成14年▲
月▲日当時において,亡Aと控訴人は生計を同じくしていたと認定するの
が相当である。なお,このように解することは,受給権者の遺族の生活の
保障を図るという厚年法37条の立法趣旨に適合するものといえる。
2結論
したがって,争点2について判断するまでもなく,本件不支給処分は違法で
あるから取り消されるべきであるところ,これを棄却した原判決は失当であ
り,本件控訴は理由がある。よって,原判決を取り消すこととし,主文のとお
り判決する。
東京高等裁判所第9民事部
裁判官宇田川基
裁判官北澤純一
裁判長裁判官大坪丘は,転補につき,署名押印することができない。
裁判官宇田川基
(原裁判等の表示)
主文
1本件訴えのうち,被告に保管されている年金の個人加入記録原簿にあ
る原告の情報に関して「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共
済年金退職一時金支給期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取
り消し,原簿訂正証明書を交付すべき旨を命ずることを求める訴えの部
分を却下する。
2その余の訴えに係る原告の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1社会保険庁長官が原告に対して平成20年7月15日付けでした厚生年金
保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律により
復活した未支給年金の不支給処分を取り消す。
2被告は,被告に保管されている年金の個人加入記録原簿にある原告の情報に
関し,「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給
期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を原
告に交付せよ。
3被告は,原告に対し,90万円及びこれに対する平成21年1月29日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法(以下「旧
厚年法」という。)の通算老齢年金の受給権者であった亡Aが行方不明となり,
失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,亡Aの妻である原告
が,①厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)37条1項に基づき,亡
Aの通算老齢年金の未支給保険給付の請求をしたところ,社会保険庁長官か
ら,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたとはいえないとの理由で不
支給処分を受けたため,同処分の取消しを求めるとともに,②原告の年金記
録が記載されたいわゆるねんきん特別便(以下単に「ねんきん特別便」という。)
に,公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間が旧厚年法における脱
退手当金支給期間として記載されていたことから,原告の年金原簿上の情報に
誤りがあるとして,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行
政機関個人情報保護法」という。)27条,29条等並びに厚生年金保険の保
険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(以下「時効特例
法」という。)4条に基づき,「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退
共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入してこれと矛盾する情報を取り消
し(以下,上記情報の加入及びこれと矛盾する情報の取消しを併せて「本件訂
正」という。),原簿訂正証明書を交付すべき旨を命ずることを求め,さらに,
③上記保険給付を請求する手続及び年金記録の訂正を求める手続において
社会保険事務所職員等の不法行為により精神的苦痛を被ったと主張して,被告
に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,慰謝料90万円とこれに対する民法
所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1関係法令等の概要
(1)通算老齢年金
通算老齢年金は,大正15年4月1日以前に生まれた者で,複数の年金制
度に加入し,各制度の加入期間が1年以上に達するものの,当該各制度から
個別に老齢年金を受給することができないといったような場合に,当該各制
度の加入期間を通算することにより受給資格要件を付与し,当該各制度から
加入期間に比例した額の支給を行う老齢年金をいう(旧厚年法第3章第2節
の2)。通算老齢年金は,昭和60年法律第34号により同61年4月から
導入された基礎年金制度の下では,いずれの年金制度に加入しても,すべて
国民年金(老齢基礎年金)の受給資格期間になることから廃止されたが,一
定の条件を満たす者にあっては,通算老齢年金が支給される経過措置が設け
られている(昭和60年法律第34号附則63条)。
(2)未支給保険給付
ア保険給付の受給権者が死亡した場合において,その死亡した者に支給す
べき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは,その者の
配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹であって,その者の死亡の当
時その者と生計を同じくしていたもの(以下,受給権者と生計を同じくし
ているという要件を「生計同一要件」といい,そのような関係を「生計同
一関係」ということがある。)は,自己の名で,その未支給の保険給付の
支給を請求することができる(厚年法37条1項。なお,旧厚年法37条
1項も同様の規定である。)。
イ前記アの場合において,死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻
であったときは,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保
険者又は被保険者であった者の子であって,その者の死亡によって遺族厚
生年金の支給の停止が解除されたものは,同項に規定する子とみなす(厚
年法37条2項)。
ウ前記アの場合において,死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請
求していなかったときは,同項に規定する者は,自己の名で,その保険給
付を請求することができる(厚年法37条3項。なお,旧厚年法37条3
項も同様の規定である。)。
(3)遺族厚生年金
ア遺族厚生年金は,被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であった者で
あって,行方不明となった当時被保険者であった者を含む。)が,死亡し
た場合に,その者の遺族に支給する。ただし,死亡した者につき,死亡日
の前日において,死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期
間があり,かつ,当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除
期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは,
この限りでない(厚年法58条1項1号)。
イ遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者であ
った者の配偶者,子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者又は被保険
者であった者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあ
っては,行方不明となった当時)その者によって生計を維持したものとす
る(以下,被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持していた
という要件を「生計維持要件」といい,そのような関係を「生計維持関係」
ということがある。)。ただし,妻以外の者にあっては,次に掲げる要件
(省略)に該当した場合に限るものとする(厚年法59条1項)。
ウ前記アの規定の適用上,被保険者又は被保険者であった者によって生計
を維持していたことの認定に関し必要な事項は,政令で定める(厚年法5
9条4項)。
エ厚年法59条1項に規定する被保険者又は被保険者であった者の死亡
の当時その者によって生計を維持していた配偶者,子,父母,孫又は祖父
母は,当該被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者と生計を
同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)
以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他こ
れに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする(厚生年金保険法施行
令3条の10)。
(4)生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(昭和61年4月
30日庁保険発第29号社会保険庁年金保険部国民年金課長・社会保険庁年
金保険部業務第一課長・社会保険庁年金保険部業務第二課長から,都道府県
民生主管部(局)保険主管課(部)長・都道府県民生主管部(局)国民年金
主管課(部)長あて通知。以下「本件認定基準」という。)
ア総論
(ア)遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定については,生
計同一要件(後記イ)及び収入要件(後記ウ)を満たす場合に死亡した
被保険者又は被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定す
るものとする。ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実
態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこと
となる場合には,この限りでない。
(イ)未支給年金及び未支給の保険給付の支給対象者に係る生計同一関
係の認定については,生計同一要件(後記イ)を満たす場合に死亡した
被保険者又は被保険者であった者と生計同一関係があるものと認定す
るものとする。ただし,これにより生計同一関係の認定を行うことが実
態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこと
となる場合には,この限りでない。
イ生計同一に関する認定要件
(ア)配偶者に係る生計同一関係の認定に当たっては,次に該当する者
は,生計を同じくしていた者に該当するものとする。
a住民票上同一世帯に属しているとき
b住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき
c住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するとき
(a)現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を1つにしている
と認められるとき
(b)単身赴任,就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所
が住民票上異なっているが,次のような事実が認められ,その事情
が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を1つにする
と認められるとき
①生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること。
②定期的に音信,訪問が行われていること。
(イ)認定の方法
前記(ア)の事実の認定については,受給権者から別表1(省略)の書
類の提出を求め行うものとする。
ウ収入に関する認定要件
(ア)遺族厚生年金の受給権者に係る収入に関する認定に当たっては,次
のいずれかに該当する者は,厚生大臣の定める金額(年額850万円)
以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当す
るものとする。
a前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては,前々年の収
入)が年額850万円未満であること。
b前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては,前々年の所
得)が年額655.5万円未満であること。
c一時的な所得があるときは,これを除いた後,上記a又はbに該当
すること。
d上記のa,b又はcに該当しないが,定年退職等の事情により近い
将来収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満と
なると認められること。
(イ)認定の方法
前記(ア)の認定については,受給権者からの申出及び遺族厚生年金の
受給権者の状況に応じ次の書類の提出又は提示を求め行うものとする。
a前記(ア)a又はbに該当する者については,前年若しくは前々年の
源泉徴収票,課税証明書,確定申告書等収入額及び所得額を確認する
ことができる書類(以下省略)
b前記(ア)c又はdに該当する者については,前年若しくは前々年の
源泉徴収票若しくは課税証明書並びに当該事情を証する書類等
(5)行政機関個人情報保護法
ア27条(訂正請求権)
何人も,自己を本人とする保有個人情報(次に掲げるものに限る。)の
内容が事実でないと思料するときは,この法律の定めるところにより,当
該保有個人情報を保有する行政機関の長に対し,当該保有個人情報の訂正
(追加又は削除を含む。以下同じ。)を請求することができる。ただし,
当該保有個人情報の訂正に関して他の法律又はこれに基づく命令の規定
により特別の手続が定められているときは,この限りでない(1項)。
(ア)開示決定に基づき開示を受けた保有個人情報(1号)
(イ)2号及び3号省略
イ29条(保有個人情報の訂正義務)
行政機関の長は,訂正請求があった場合において,当該訂正請求に理由
があると認めるときは,当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達
成に必要な範囲内で,当該保有個人情報の訂正をしなければならない。
(6)行政手続法(以下「手続法」という。)
ア5条(審査基準)
(ア)行政庁は,審査基準(申請により求められた許認可等をするかどう
かをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準)を定め
るものとする(1項,2条8号ロ)。
(イ)行政庁は,審査基準を定めるに当たっては,許認可等の性質に照ら
してできる限り具体的なものとしなければならない(2項)。
(ウ)行政庁は,行政上特別の支障があるときを除き,法令により申請の
提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法
により審査基準を公にしておかなければならない(3項)。
イ6条(標準処理期間)
行政庁は,申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をす
るまでに通常要すべき標準的な期間(中略)を定めるよう努めるとともに,
これを定めたときは,これらの当該申請の提出先とされている機関の事務
所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければなら
ない。
ウ7条(申請に対する審査,応答)
行政庁は,申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査
を開始しなければならず,かつ,申請書の記載事項に不備がないこと,申
請書に必要な書類が添付されていること,申請をすることができる期間内
にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件
に適合しない申請については,速やかに,申請をした者(以下「申請者」
という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め,又は当該申
請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
エ8条(理由の提示)
(ア)行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場
合は,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示さなければならない
(1項本文)。
(イ)前記本文に規定する処分を書面でするときは,同項の理由は,書面
により示さなければならない(2項)。
オ9条(情報の提供)
(ア)行政庁は,申請者の求めに応じ,当該申請に係る審査の進行状況及
び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければなら
ない(1項)。
(イ)行政庁は,申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ,申請書
の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に
努めなければならない(2項)。
2前提事実
本件において前提となる事実は,以下のとおりである(当事者間に争いのあ
る事実は,各末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により認定した。)。
(1)当事者等
亡Aは,大正14年▲月▲年生まれの男性であり,旧厚年法による通算老
齢年金の受給権者であった。亡Aは,平成7年▲月に行方不明となり,同1
5年6月27日,失踪宣告の裁判が確定して,同14年▲月▲日をもって死
亡したものとみなされた。(甲18,20,22)
原告(昭和▲年▲月▲日生まれ)は,昭和31年12月27日に亡Aと婚
姻の届出をした者であるが,同56年7月1日に亡Aと別居し,住民票上の
住所を異にしていた。(甲20,22)
(2)遺族共済年金に関する訴訟
ア原告は,地方公務員等共済組合法の遺族共済年金の給付を受けるため,
平成15年9月16日,公立学校共済組合に対し,遺族共済年金の決定請
求書を提出したが,同組合は,同月26日,原告が亡Aの遺族に該当しな
いものと認定し,原告の請求を棄却する旨の処分をした。そこで,原告は,
公立学校共済組合審査会の審査請求を経た上,同組合に対し,同処分の取
消しと同組合の担当職員の不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を求める
訴訟を東京地方裁判所に提起した。(甲22。以下「前回訴訟」という。)
イ東京地方裁判所は,前回訴訟につき,前記処分を取り消し,損害賠償請
求を棄却する旨の判決をした。これに対し,原告及び公立学校共済組合の
双方が東京高等裁判所に控訴したところ,東京高等裁判所は,平成19年
5月31日,原判決を一部変更し,前記処分を取り消した部分についての
控訴は棄却したものの,原告の損害賠償請求については一部につき理由が
あるものとして認容する旨の判決を言い渡し,同判決はそのまま確定し
た。(甲22)
(3)亡Aの通算老齢年金及び遺族厚生年金の請求に係る経緯
ア原告は,平成20年1月11日,社会保険庁長官に対し,亡Aの通算老
齢年金についての裁定請求書及び未支給保険給付請求書並びに遺族厚生
年金についての裁定請求書を提出した。(乙6ないし8)
イ社会保険庁長官は,平成20年7月10日,同月15日付けで,上記ア
の通算老齢年金の未支給保険給付の請求につき,これを不支給とする旨の
決定(以下「本件不支給処分」という。)をした。
ウ原告は,本件不支給処分を不服として,平成20年8月11日,東京社
会保険事務局社会保険審査官(以下「社保審査官」という。)に対して審
査請求をしたが,社保審査官は,原告の審査請求は旧厚年法37条1項の
規定自体に対するものであり,審査事項以外の趣旨のものであるから不適
法であるとし,同年10月9日付けで上記審査請求を却下する旨の決定を
した。(甲2,乙9)
しかし,保険給付に関する処分に不服があるときは,社会保険審査官に
対する審査請求をすることができるところ(厚年法90条1項),証拠(乙
9)によれば,原告の審査請求は,旧厚年法37条1項の規定自体の不服
をいうものではなく,本件不支給処分の違法をいうものであると認められ
るから,同請求は保険給付に関する処分についてのものとして適法なもの
である。
エ原告は,平成20年10月17日,上記ウの却下決定を不服として,社
会保険審査会(以下「社保審査会」という。)に対して再審査請求をした。
(甲9)
オ原告は,平成21年1月19日,再審査請求から3月を経過しても社保
審査会が裁決を行わなかったため,本件不支給処分の取消し等を求める本
件訴えを提起した。(乙10,当裁判所に顕著な事実)
カ社保審査会は,平成21年4月30日,上記再審査請求を棄却する旨の
裁決をした。(乙10)
(4)原告の年金記録に係る確認申立てに係る経緯
ア原告のねんきん特別便は平成20年3月10日付けで作成されて原告
に送付されたが,これには,原告が公立学校共済組合から退職一時金を受
け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が,旧厚年法の脱退手
当金支給期間とされ,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以
後期間)」と記載されていた。原告は,足立社会保険事務所(以下「足立
事務所」という。)に対し,上記記載の訂正等を求めたが,足立事務所は,
社会保険事務所ではねんきん特別便の再発行を行うことはできないため,
上記記載は,共済組合による退職一時金支給期間を含むものとして,「厚
生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えてもらいたい旨を伝えた。そ
こで,原告は,平成20年8月26日,自らの年金記録の訂正を求めて,
年金記録に係る確認申立書(甲16)を足立事務所に提出したが(以下,
この申立てを「本件年金記録確認申立て」という。),足立事務所の適用
課長B(以下「B課長」という。)は,同年11月12日になって本件年
金記録確認申立てに係る申立書を東京社会保険事務局に送付し,東京社会
保険事務局は,同月18日,年金記録確認東京地方第三者委員会(以下「第
三者委員会」という。)が設置されている東京行政評価事務所に対し,同
申立書を送付した。
イしかし,東京行政評価事務所は,本件年金記録確認申立ての内容は第三
者委員会の対象外のものであるとして,同年12月2日付けで東京社会保
険事務局に同申立書を返戻した。(甲17の1)
ウ東京社会保険事務局は,平成20年12月11日付けで足立事務所に本
件年金記録確認申立てに係る申立書を返戻し,足立事務所は,同月17日
付けで原告に同申立書を返戻した。(甲17の1及び2)
3争点
(1)本件訴えのうち,年金原簿につき本件訂正を行い原簿訂正証明書を交付
すべき旨を命ずることを求める部分が適法か。
(2)原告の年金原簿に事実と異なる記載がされているか。
(3)本件不支給処分が適法か。
(4)足立事務所職員等の行為が国家賠償法上違法であるか,違法であるとし
て,原告の損害額はいくらか。
4当事者の主張の概要
(1)争点(1)について
(原告の主張)
原告のねんきん特別便では,原告が公立学校共済組合から退職一時金の支
給を受けた期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が,旧厚年法の脱退手
当金支給期間とされ,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後
期間)」として記載されているから,原告の年金原簿にも同様の記載がされ
ているものと推測され,このような事実と異なる年金記録を訂正する必要が
ある。
したがって,本件訴えのうち,年金原簿につき本件訂正を行うこと及び原
簿訂正証明書を交付することを求める部分は,訴えの利益に欠けるところは
なく,適法である。
(被告の主張)
ア確かに,原告は,公立学校共済組合から退職一時金の支給を受けている
のみであり,旧厚年法の脱退手当金の支給は受けていないが,脱退手当金
支給期間又は退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間
は,いずれも,老齢基礎年金等の支給要件の特例に関する国民年金法附則
9条1項の適用について,合算対象期間(国民年金法附則7条1項)に算
入することができるから(昭和60年法律第34号附則8条5項柱書き,
同項7号及び同号の2),年金原簿の記載が脱退手当金支給期間とされて
いるか,退職一時金支給期間とされているかによって,原告の年金受給に
係る法的地位ないし権利に違いが生ずることはない。
イまた,社会保険業務センターの国民年金厚生年金保険年金給付関係業務
取扱要領では,合算対象期間に関する記録処理において,合算対象期間の
種別に応じて,「1」から「9」までのコードが設定されており,このう
ちコード「4」は,「脱退手当金支給期間又は退職一時金支給期間のうち
昭和36年4月1日以後の期間」とされている。そして,原告のねんきん
特別便において,退職一時金支給期間が「厚年脱退手当金支給期間(昭和
36年4月1日以後期間)」と記載されたのは,両者について同一コード
が設定され,これをねんきん特別便に反映する際に,両者を包含する趣旨
で「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と表示す
ることとしたものであり,これをもって,年金原簿に事実と異なる記載が
されていることを示すものとはいえない。
ウ以上によれば,本件訴えのうち,年金原簿につき本件訂正を行うこと及
び原簿訂正証明書を交付することを求める部分は,訴えの利益を欠く不適
法なものであって却下されるべきである。
(2)争点(2)について
(原告の主張)
原告は,昭和30年4月から同40年12月までの間,公立学校共済組合
の被保険者であったところ,公立学校を退職した際,同組合から退職一時金
を受領した。しかし,原告のねんきん特別便には,昭和36年4月から同4
1年1月までの期間が旧厚年法の脱退手当金支給期間のうち同36年4月
1日以後の期間として記載されていた。そうすると,原告の年金原簿には,
これと同様に事実と異なる記載がされていると考えられる。
(被告の主張)
前記(1)の被告の主張イ記載のとおり,原告のねんきん特別便の記載をも
って年金原簿に事実と異なる記載がされているということはできない。
(3)争点(3)について
(原告の主張)
ア亡Aが,失踪状況にあった7年の間に死亡したか否かは不分明である
し,死亡したとしてもその時点は不明なのであって,失踪宣告によって死
亡したものとみなされる日は社会秩序維持の必要から定められたものに
すぎず,亡Aについては合理的限定的な「死亡の当時」は存在しない。そ
して,被保険者が失踪宣告によって死亡したものとみなされる場合の生計
同一要件の判断においては,当該被保険者が行方不明になった当時の状況
を重視するのが社会保障の趣旨に合致する。
これを原告についてみるに,前回訴訟の判決では,亡Aが行方不明にな
った当時の状況に照らして,原告と亡Aとが離婚同然の状態にはなく生計
同一関係にあるものと認められた。そして,原告は,亡Aの失踪中も亡A
名義の住宅に無償で居住し続けており,しかも,原告が亡Aの不在者財産
管理人に対して申し立てた婚姻費用分担審判では,同管理人が原告に対し
て,①上記住宅の固定資産税及び地代,②長野県にある亡A及び原告
の共有名義の山小屋2棟の地代及び固定資産税,③定額の水道代,④
上記住宅及び山小屋の修理費年額3万円を支払うよう命じられており,原
告は,上記審判により得た金銭で上記の住宅及び山小屋2棟を維持してき
た。また,原告は,亡Aとの別居当時から原告と亡Aの預金を管理してお
り,家庭裁判所の許可を得て,生活費の不足分をそこから補填するととも
に,上記預金を原資とした私的年金を平成15年8月まで受給していた。
さらに,原告は,亡Aが失踪してから2年程度は長女と共に亡Aの捜索を
続け,横浜家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるとともに,
同管理人選任前に亡Aの預金を凍結した。加えて,亡Aの長男が亡Aの失
踪中亡Aの預金約1800万円を無断で引き出したため,原告は,亡Aの
相続人として,長男に対する損害賠償請求訴訟を提起し,勝訴判決を得た。
以上のとおり,原告は,亡Aの経済的援助を受けて生活し,その財産の
管理等を行ってきたのであるから,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じく
していたということができる。
イ厚年法37条2項は,死亡した被保険者に未支給保険給付がある場合,
遺族厚生年金の受給権者が未支給保険給付の受給権者である旨を規定し
ていると解すべきである。そして,原告は,亡Aの遺族として遺族厚生年
金の受給権者に該当するから,同項により,亡Aの未支給保険給付の受給
権者となる。
(被告の主張)
ア未支給保険給付に係る生計同一要件の認定事務は,本件認定基準に基づ
いて行われており,この認定基準によれば,原告のように,未支給保険給
付の請求者が配偶者であり,住民票上の住居を異にし,かつ,別居してい
る場合については,①単身赴任,就学又は病気療養等のやむを得ない事
情により住所が住民票上異なってはいるが,②生活費等の経済的援助又
は定期的な音信若しくは訪問が行われていて,③①の事情が消滅したと
きには,起居を共にし,消費生活上の家計を1つにすると認められるとき
に,生計同一要件を満たすものとされている。しかし,原告においては,
亡Aが失踪宣告により死亡したとみなされる時点である平成14年▲月
▲日当時,亡Aの生死不明の状態が7年間継続した後の時点であるという
事情の性質上,生活費等の経済的援助又は定期的な音信若しくは訪問が行
われていたと認めることはできない。また,亡Aが行方不明となった原因
は不明であり,かつ,その後7年間における亡Aの心情を推察する事情も
ない以上,住所が住民票上異なるに至る事情が消滅したときに,起居を共
にし,消費生活上の家計を1つにすることになることも想定することがで
きない。したがって,原告が亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしてい
たということはできない。
イ厚年法37条2項は,その規定文言に照らせば,同条1項に規定する子
の意義に関する規定であって,遺族厚生年金の受給権者であることのみを
もって,未支給保険給付の受給を認める旨を規定したものでないことは明
らかである。
(4)争点(4)について
(原告の主張)
ア足立事務所総合相談室長C(以下「C室長」という。)の対応に関する
違法
(ア)C室長は,社会保険庁においては,受給権者が失踪宣告によって死
亡したものとみなされる場合には未支給保険給付を請求することはで
きないとの取扱いがされていることを知っていたはずである。そうする
と,原告が足立事務所を訪れて前回訴訟の判決や亡Aの失踪宣告等を伝
えた平成19年6月6日,原告が亡Aの年金について相談した同年9月
11日,又は,原告が亡Aの通算老齢年金の裁定請求書を提出した同2
0年1月10日のいずれかの時点において上記取扱いを原告に教示す
べきであったのであり,これを行わなかったC室長の対応は,手続法9
条に違反する。
(イ)原告が,平成20年7月7日に足立事務所を訪れ,C室長に原告の
未支給保険給付の請求が認められない理由を尋ねたところ,①失踪宣
告による死亡認定者に係る未請求分の老齢年金請求の取扱い(失踪宣告
により死亡したものとみなされた者については,その者の死亡当時に生
計を同じくする者が存在しないため,未支給年金を支払うことができな
いから,そのような場合には請求の裁定は行わず,請求の却下とする。)
が記載された文書(甲5の1)及び②根拠条文として厚年法37条及
び59条が記載された文書(甲5の2)を示した(以下,これらの文書
を併せて「本件説明文書」という。)。しかし,本件説明文書は,亡A
の死亡が認定されておらず,亡Aには死亡当時という特定の時期がない
のに,受給権者が特定の時期に死亡したことを前提とするものであるか
ら,本件説明文書を用いて理由を提示することは手続法8条に違反す
る。また,C室長は,本件説明文書を原告に黙読させ,それに対する原
告の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよう仕向けてお
り,このようなC室長の対応は,具体的な審査基準を定めてこれを公に
し,名宛人に意見陳述の手続を執らなければならないとする手続法5条
及び手続法第3章の各条に違反している。さらに,C室長は,本件説明
文書を原告に黙読させて処分通知に代え,文書による処分通知を求めた
のにこれを拒否しており,このようなC室長の対応は,手続法9条に違
反する。
(ウ)C室長は,原告の遺族厚生年金の申請において,当時76歳であっ
た原告の過去5年間の年収がいずれも850万円を超えるはずがない
にもかかわらず,平成14年度の課税証明書を提出するよう求め,これ
を提出することができないのであれば,過去5年分(同15年度から同
19年度までの5年間)の課税証明書をすべて提出するよう求めてお
り,このようなC室長の対応は,手続法9条に違反する。
イ本件不支給処分に関する違法
本件不支給処分は,原告の申請から約半年も経過した後に行われてお
り,手続法7条に違反している。また,その処分理由には亡Aの「死亡の
当時」という特定することのできない時期が記載されているとともに,厚
年法37条2項が記載されておらず,手続法8条に違反している。さらに,
本件不支給処分の理由が記載された社会保険業務センター所長から社保
審査官あての意見書(甲33)が,本件不支給処分から5箇月後に,しか
も,平成20年12月10日付けの再審査請求における公開審理の実施通
知(甲12)に同封された資料の中に密かに入れられる形で送付されてお
り,手続法8条に違反している。
ウ社保審査官の対応に関する違法
(ア)社保審査官は,原告の審査請求を不適法却下するまで約2箇月を要
しており,このような社保審査官の対応は,手続法7条に違反する。
(イ)社保審査官は,原告に送付した平成20年8月12日付け書面にお
いて,審査請求の件数が多いため審査決定書の謄本の送付まで相当日数
がかかるなどと述べており,そのような審査件数が多い時こそこれに対
応した処理期間を設定すべきであるのに,これをしなかったことは手続
法6条に違反している。
(ウ)社保審査官は,原告の審査請求を旧厚年法の規定自体に不服がある
旨を主張するものとして不適法却下したが,原告はそのような主張はし
ていないし,戸籍上の夫婦における生計同一要件を審査するに当たり事
実関係を調査せずに処分しており,手続法5条ないし8条に違反する。
エ社保審査会の対応に関する違法
(ア)社保審査会は,原告の再審査請求を受け付けてから同請求を受理す
るまで約1箇月を要しており,このような社保審査会の対応は,手続法
7条に違反している。
(イ)社保審査会は,標準処理期間を公開審理から3箇月程度とし,請求
者に対して「公開審理後2∼3か月後を目途に裁決書を送付している」
旨の通知を行っているが,このような処理期間の定め方は,申請の到達
から処分までの期間を定めるべきとする手続法6条と異なるものであ
るし,上記期間が公表されていない点も同条に違反している。
(ウ)社保審査会は,原告に対し,公開審理を行うときは当該公開審理日
の約半月前にあらかじめ別途通知する旨を知らせながら,実際には,公
開審理日の50日前に日程を連絡してきており,通知の仕方が

恣意的で
あり違法である。
(エ)再審査請求についての公開審理では,委員や参与の質問に簡潔に回
答するよう求め,それ以外の発言については許可を要するものとされて
おり,発言内容の記録の正確さに担保がなく,手続法第3章各条に違反
する。
オ原告の年金記録の訂正要求等への対応に関する違法
(ア)原告は,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年
4月1日以後期間)」と記載されている部分の訂正を求めたが,足立社
会保険事務所長(以下「足立事務所長」という。)は,上記記載の期間
は,原告が公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭
和36年4月1日以後の期間で間違いないとしながら,正しい内容を記
載したねんきん特別便を送付することもできないため,上記記載を,共
済組合の支給した退職一時金支給期間を含むということから,「厚生年
金脱退一時金等の支給期間」と読み替えてほしいとして訂正を拒否して
いる(甲15)。しかし,この足立事務所長の措置は,合理的な理由を
示して行われたものではないから,手続法8条に違反している。
(イ)原告は,平成20年8月26日に本件年金記録確認申立てをした
が,足立事務所のB課長は,何ら補正すべき箇所がなかったのに,原告
の申立書を約2箇月間も足立事務所に留め置き,同年11月12日にな
ってようやく東京社会保険事務局に送付した。このような足立事務所の
対応は,手続法7条に違反するものであり,また,年金記録に係る確認
申立てについて標準処理期間が公にされていない点で手続法6条にも
違反している。
(ウ)原告の本件年金記録確認申立てに係る申立書は,足立事務所から,
東京社会保険事務局を経由して平成20年11月18日に第三者委員
会に到達したものの,何らの応答及び処分もないまま,同年12月2日
に東京社会保険事務局に返戻され,足立事務所を経由して同月18日に
原告に届けられており,このような対応は,手続法5条及び第3章各条
に違反する。
カ原告の損害
以上のとおり,原告は,亡Aの未支給保険給付の請求手続及び年金記録
の確認手続において,足立事務所の職員等の違法行為により精神的苦痛を
被った。この精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,90万円が相
当である。
(被告の主張)
アC室長の対応に関する違法
(ア)原告は,平成19年6月6日,自らの老齢厚生年金の返納に関して
足立事務所を訪れたにすぎず,同日には,いまだ亡Aに係る通算老齢年
金の未支給保険給付の請求を行っていない。したがって,C室長におい
てこれを具体的に予見することはできないから,C室長において,原告
の未支給保険給付の請求に対する取扱いを原告に示す法的義務が生ず
ると解することはできない。また,未支給保険給付に関する厚年法37
条1項は,「死亡の当時」の意義について,厚年法59条1項と異なり,
「失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となっ
た当時」との読替規定がないことは法律上明らかであるから,原告の未
支給保険給付の請求の可否について,社会保険事務所において,殊更に
情報提供すべき必要性があるとも解されない。
(イ)C室長が,平成14年度の課税証明書の提出を求めたのは,亡Aが
同年▲月▲日付けで死亡とみなされているため,本来であれば,生計維
持要件のうちの収入要件の判断に当たって,同13年度又は同12年度
の課税証明書が必要となるところ,課税証明書の取得に関する実務上の
取扱いを踏まえて,原告が入手可能でかつ亡Aが死亡とみなされた時点
に最も近い同14年度の課税証明書の提出を求めたのである。そして,
前回訴訟の判決は,それ自体直ちに遺族厚生年金の請求のための要件充
足性の判断を拘束するものではないし,76歳の者の年収が850万円
を超えないとの経験則もない。したがって,C室長が,原告に対し,平
成14年度の課税証明書を要求したことは違法であるということはで
きない。
(ウ)C室長は,原告の意思を無視して原告が黙って引き下がるように仕
向けるような言動などはしておらず,原告に説明するために社会保険業
務センターから提供を受けた本件説明文書を示したにすぎない。
イ本件不支給処分に関する違法
(ア)確かに,本件不支給処分は,原告の請求から約半年後にされたもの
ではあるが,旧厚年法による年金給付に係る未支給年金の手続は,社会
保険事務所における当該年金給付の裁定手続のほかに,社会保険業務セ
ンターにおける未支給年金の支給手続を行う必要があるため,一般的な
老齢年金給付において裁定から支払までに要する期間よりも時間を要
するのである。また,原告の未支給保険給付の請求から本件不支給処分
に至る時期は,時効特例法の施行に伴い,届出の審査や年金の支払手続
のために社会保険事務所や社会保険業務センターが多忙を極めた時期
であったから,上記の点をもって違法であるということはできない。
(イ)本件不支給処分の通知には,本件不支給処分の理由として「受給権
者の死亡当時,受給権者と生計を同じくしていたものとは認められない
ため」と記載されており,本件不支給処分の処分理由としては,上記程
度の記載で十分である。したがって,本件不支給処分における理由の告
知につき手続法8条違反はない。
原告に対する公開審理の期日及び場所等の通知に,社会保険業務セン
ター所長から社保審査官あての原告の審査請求に対する意見書が同封
されていたのは,原告が平成20年10月17日付けで社保審査会に再
審査請求をしたことを受けて,社保審査官が社保審査会に関係資料とし
て送付したものを社保審査会を通じて原告に送付したものであって,密
かに入れられたものではないし,上記意見書が原告あてのものではない
ことや本件不支給処分から約5箇月後に送付されたものであることが
違法であるということもできない。
ウ社保審査官及び社保審査会の対応に関する違法
社保審査官及び社保審査会の裁決は,審査請求に対する行政庁の裁決
(手続法3条1項15号)として,手続法第2章から第4章までの規定が
適用されないから,社保審査官及び社保審査会の措置が手続法6条ないし
8条並びに手続法第3章の規定に違反するという原告の主張は失当であ
る。
なお,社保審査官は,原告の審査請求を法令の規定自体の適否に対する
不服をいうものであるとして不適法却下しているが,このような社保審査
官の解釈は相当なものということができるし,原告が再審査請求をして更
に原処分を争うことが可能であることも考慮すると,社保審査官が原告の
審査請求を不適法却下したことは違法と評価すべきものではない。
エ原告の年金記録の訂正要求等への対応に関する違法
(ア)原告の年金原簿の記載には誤りがない上,足立事務所長は,原告に
対し,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1
日以後期間)」と記載されている期間は,公立学校共済組合から退職一
時金を受け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間で相違な
いため,上記記載を「厚生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えて
もらいたい旨の回答文書を送付しており,必要な説明を行っているとい
うべきである。
(イ)確かに,本件年金記録確認申立てに係る申立書は,平成20年8月
26日に足立事務所に提出され,同年11月12日に東京社会保険事務
局に送付されている。しかし,当時,足立事務所では,年金記録に係る
確認申立書の受付後,申立てに係る記録の調査及び確認を行った上で東
京社会保険事務局に送付していたところ,本件年金記録確認申立てがさ
れた当時,年金記録に係る確認申立書が多数受け付けられ,申立てに係
る記録の調査及び確認に少なくとも4箇月以上の期間を要していたか
ら,上記事情をもって違法であるということはできない。
(ウ)原告が訂正を求める公立学校共済組合の加入期間の記録は,社会保
険庁ではなく,同組合において管理しているものであるから,第三者委
員会の審査の対象となるものではない。したがって,本件年金記録確認
申立てについて何らの応答がされないまま,その申立書が原告に返戻さ
れたことをもって,違法の評価を受けるべきものではない。
オ原告の損害
否認ないし争う。
第3争点に対する判断
1争点(1)について
(1)年金原簿訂正請求に係る訴えについて
原告は,被告に対し,行政機関個人情報保護法27条,29条等及び時効
特例法4条に基づき,自らの年金原簿につき本件訂正を行うよう求めている
ところ,原告が,本件訴えの提起に先立ち,行政機関個人情報保護法27条
に基づき,社会保険庁長官に対し,自己の年金原簿上の記録について本件訂
正を行うよう請求した事実はうかがわれないから,この訴えは,いわゆる非
申請型の処分の義務付けの訴えとして提起されたものであると解される。
ところで,行政機関個人情報保護法27条は,何人も,自己を本人とする
保有個人情報(行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した個人情報であ
って,当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして,当該行政機関が
保有しているものをいう(同法2条3項)。)で開示決定に基づき開示を受
けたもの等の内容が事実でないと思料するときは,同法の定めるところによ
り,当該保有個人情報を保有する行政機関の長に対し,当該保有個人情報の
訂正(追加又は削除を含む。)を請求することができると規定しており,同
法28条は訂正請求の手続を,また,同法29条は行政機関の長の保有個人
情報訂正義務をそれぞれ規定している。他方,行政事件訴訟法37条の2第
1項は,いわゆる非申請型の処分の義務づけの訴えを提起することができる
のは,①一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあ
り,かつ,②その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限る旨を
規定するところ,前記のとおり,保有個人情報の訂正については行政機関個
人情報保護法27条に基づく請求が第1次的な方法として定められている
が,原告が本件訴えの提起に先立ち同条に基づいて自己の年金原簿上の記録
につき本件訂正を行うよう請求した事実はうかがわれないのであるから,そ
の義務付けを求める本件訴えは,上記②の「その損害を避けるため他に適当
な方法がないとき」との要件を満たさない不適法な訴えといわざるを得な
い。
(2)年金原簿訂正証明書交付請求に係る訴えについて
原告は,自己の年金原簿上の記録につき本件訂正を行うことの義務付けを
求めるとともに,本件訂正を行った旨の原簿訂正証明書を交付するよう求め
る義務付けの訴えを提起しているところ,この証明書交付の義務付けの訴え
が抗告訴訟として適法であるというためには,その対象とする行為である上
記原簿訂正証明書交付行為が行政事件訴訟法3条2項所定の「行政庁の処分
その他公権力の行使に当たる行為」すなわち処分に該当することが必要であ
る。そして,この処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち,
その行為によって,直接に国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定す
ることが法律上認められているものをいうものと解される(最高裁判所昭和
37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻
8号1809頁参照)。
しかし,年金原簿の訂正証明書の交付について定めた法律上の規定が存在
することはうかがわれず,これが国民の権利義務に影響を及ぼすものとも認
められないから,年金原簿の訂正証明書を交付する行為は処分であるという
ことはできない。したがって,その義務付けを求める訴えは,不適法な訴え
といわざるを得ない。
2争点(3)について
(1)厚年法37条1項は,未支給保険給付の請求をすることができる者につ
き,受給権者の死亡の当時,その者と生計を同じくしていた者であることを
要する旨規定するところ,亡Aは,平成7年▲月に行方不明となり,失踪宣
告により同14年▲月▲日をもって死亡したものとみなされたのであるか
ら(前提事実),原告が,同日までの7年間にわたって行方不明であった亡
Aと死亡したものとみなされた当時において生計を同一にしていたといえ
ないことは明らかである。
(2)原告は,亡Aは社会秩序維持の必要から失踪宣告によって死亡したもの
とみなされたにすぎず,合理的限定的な「死亡の当時」は存在しないなどと
して,厚年法37条1項の規定する「死亡の当時」は,受給権者が失踪宣告
により死亡した場合には行方不明になった当時の状況を重視して判断すべ
きであると主張する。
しかし,厚年法59条1項が,遺族厚生年金の受給権者である遺族の範囲
につき,被保険者又は被保険者であった者の配偶者等であって,被保険者又
は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持したものと
しつつ,生計維持関係の有無の基準時について,「失踪の宣告を受けた被保
険者であった者にあっては,行方不明となった当時」として別段の定めを設
けているのに対し,同法37条1項は,生計同一関係の有無の基準時につい
て,単に受給権者の死亡の当時とするのみで,受給権者が失踪宣告を受けて
死亡したものとみなされる場合について遺族厚生年金の場合のような別段
の定めをしていない。このような同一法律中に存する両規定の文言等に照ら
すと,同法37条1項により未支給保険給付を請求する場合における生計同
一関係の基準時は,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場
合であっても,その死亡の当時であると解するのが相当である。そして,失
踪宣告制度の趣旨は,不在者の生死不明の状態が永続した場合には,不在者
の財産及び身分に関し利害関係を有する者の地位を不安定な状態にするこ
とになるため,対世的かつ画一的に不在者を死亡したものとして取り扱って
財産上及び身分上の法律関係を確定させる点にあるところ,このような失踪
宣告の制度趣旨に照らすと,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみな
される場合には,厚年法37条1項の規定する「死亡の当時」は,死亡とみ
なされる失踪期間満了時をいうものと解するのが相当である。
このように解すると,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされ
る場合,遺族厚生年金では,生計維持関係を行方不明当時で判断するため,
同年金が支給される余地があるのに対し,未支給保険給付では,生計同一関
係を死亡したものとみなされた当時で判断することになるため,支給が認め
られないことになる。しかし,遺族厚生年金は,被保険者又は被保険者であ
った者が死亡した場合にその死亡によって生計の維持に支障を来すことと
なる遺族の生活の安定を図ることを目的としたものであり,被保険者等の収
入に依拠して生計を維持していた遺族が,原則として老齢厚生年金の報酬比
例の年金の額の4分の3に相当する額の支給を受ける権利を自らの権利と
して取得するのに対し,未給付保険給付は,受給権者が死亡した場合にその
遺族を保護することを目的とするものではあるものの,単に受給権者と生計
を同じくしていたにすぎない遺族が,受給権者が給付を受けていない限度に
おいて受給権者の権利を承継取得するにとどまるものである。このような遺
族厚生年金と未支給保険給付のそれぞれの目的,内容等に照らすと,遺族厚
生年金は,未支給保険給付に比して,より遺族の保護を指向するものという
ことができるから,遺族厚生年金においてのみ遺族の保護の見地から生計維
持要件を緩和する措置が採られているには合理的な理由があるということ
ができる。
したがって,原告と亡Aの生計同一関係の有無については,亡Aの死亡の
当時,すなわち,亡Aが死亡したとみなされる平成14年▲月▲日当時の状
況に照らして判断されるべきであり,原告の上記主張は採用することができ
ない。
(3)また,原告は,厚年法37条2項が遺族厚生年金の受給権者が未支給保
険給付の受給権者である旨を規定するものであることを前提として,原告
は,亡Aの「遺族」(厚年法59条1項)に当たり遺族厚生年金の受給権者
であるから亡Aの未支給保険給付の受給権者でもあると主張する。
しかし,厚年法37条2項は,死亡した保険給付の受給権者が遺族厚生年
金の受給権者である妻であった場合の未支給保険給付を請求することがで
きる者の範囲に関する規定であって,死亡した受給権者の配偶者が,当該受
給権者に支給すべき未支給保険給付を請求する場合について規定している
ものでないことはその規定上明らかであるから,原告の上記主張は,前提を
欠くものであって,採用することができない。
(4)さらに,原告は,亡Aの失踪後も亡Aの経済的援助によって生活してい
たなどとして,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたと主張する。
確かに,原告が,亡Aの失踪中も,亡A名義の住宅に無償で居住し続けて
いたこと,原告が,亡Aの不在者財産管理人を相手方として婚姻費用分担審
判を申し立て,同審判においては,同管理人が原告に対し,①上記住宅の
固定資産税及び地代,②長野県にある亡A及び原告の共有名義の山小屋2
棟の地代及び固定資産税,③定額の水道代,④上記住宅及び山小屋の修
理費年額3万円を支払うよう命じられており,原告は,上記婚姻費用分担審
判により得た金銭で亡A名義及び亡Aと原告の共有名義の不動産を維持し
ていたことが認められる(甲23,弁論の全趣旨)。しかしながら,亡Aの
生死が7年間も明らかでない以上,失踪宣告により死亡とみなされた当時に
おいて原告と亡Aとが一体的に消費生活を営み家計を同一にすることは想
定し得ないし,上記支出は,亡Aが失踪中であるものの,いまだ原告との間
の婚姻関係が継続していることから,原告の生活に必要な費用の一部を亡A
の残置財産から支弁することが認められたものにすぎないというべきであ
る。そうすると,上記事情をもって原告が亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同
じくしていたということはできない。
また,原告は,亡Aとの別居当時から原告と亡Aの預金を管理し,生活費
の不足分を上記預金から補填するとともに,上記預金を原資とした私的年金
を平成15年まで受給していたことが認められるが(甲22),前記のとお
り,亡Aの生死が7年間も明らかでない以上,失踪宣告により死亡とみなさ
れた当時において原告と亡Aとが一体的に消費生活を営み家計を同一にす
ることは想定し得ず,上記の各事情も,亡Aが失踪中であるものの,いまだ
原告との間の婚姻関係が継続していることに基づき亡Aが失踪する前の財
産状態を維持することが承認されているにすぎないものであるというべき
であるから,上記事情をもって原告が亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じく
していたということはできない。
さらに,原告は,亡Aと生計を同じくしていたことを基礎付ける事情とし
て,亡Aが失踪してから2年程度長女とともに亡Aの捜索を続け,横浜家庭
裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て同管理人選任前に亡Aの預金
を凍結したこと,亡Aの長男が亡Aの失踪中に亡Aの預金約1800万円を
無断で引き出したため,亡Aの相続人として,長男に対する損害賠償請求訴
訟を提起し,勝訴判決を得たことを主張するが,これらの事情は,原告が亡
Aと婚姻関係にあったことから行方不明となった亡Aの所在を明らかにす
るよう努めるとともに,その財産の不当な流出を防止しようとしたものにす
ぎず,これらをもって原告が亡Aと亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくし
ていたということはできない。
(5)以上によれば,原告は,亡Aの死亡の当時,亡Aと生計を同じくしてい
たということはできず,これを前提としてされた本件不支給処分は適法であ
る。
3争点(4)について
(1)認定事実
前提事実に証拠(甲1ないし6,9,13,15,16,22,26,3
3,39,46,乙3ないし9,11ないし14,16,17[枝番がある
場合には枝番を含む。])及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認め
られる。
ア亡Aの通算老齢年金及び遺族厚生年金の請求に係る経緯等
(ア)原告は,平成19年6月6日,足立事務所を訪れ,C室長に対し,
原告自身の老齢厚生年金等に関する相談を行ったが,その際,時効特例
法の施行が決定したら電話するよう依頼した。そこで,C室長は,同年
7月9日,原告に架電して時効特例法の施行を伝えた。
(イ)原告は,平成19年9月11日,足立事務所を訪れ,C室長に対し,
亡AがD株式会社に勤務していたことがあるなどとしてその厚生年金
の受給権の有無について相談し,昭和21年3月1日から同22年3月
31日まで東京都所在の同社に勤務したとの内容で亡Aに係る厚生年
金保険の被保険者加入期間照会申出書を提出した。また,C室長は,同
日,原告から,遺族共済年金と原告自身の老齢厚生年金との支払調整に
ついて質問を受けたため,平成19年7月に選択届が処理され,同年1
0月分から支払額の半額ずつを返還することになっていることなどを
説明した。
(ウ)前記(イ)の照会申出書は,平成19年9月20日に資格照会を担当
する文京分室の記録管理係に送付されたものの,しばらく回答がされな
かったことから,原告は,足立事務所に対して前記照会に対する回答の
有無を確認した。これに対し,C室長は,同年10月22日,原告に対
し,「連絡が遅くなり申し分けありません。資格(記録)確認の件数が
非常に多いため,回答まで3,4ヶ月かかっている状況です。申し分け
ありませんが,もう少しお待ちいただくようお願いいたします。」との
書面をファックスで送付し,同年12月にも原告から回答を急ぐよう求
められたため,原告にD株式会社の所在した区を千代田区,中央区及び
港区と特定してもらった上,再度,文京分室に対して照会を行ったとこ
ろ,亡Aにつき厚生年金保険の被保険者加入期間が存在することが判明
した。そこで,足立事務所長は,原告に対し,同年12月14日付けで,
亡Aが昭和21年3月11日から同22年9月9日までの間,D株式会
社を事業所とする厚生年金保険の被保険者であった旨を回答し,さら
に,上記以外にも,亡Aが,同61年4月1日から同62年4月1日ま
での間,新宿区教育委員会教育指導課を事業所とする厚生年金保険の被
保険者であったことが判明したことから,足立事務所長は,原告に対し,
平成19年12月25日付けで,そのことを原告に回答した。
(エ)亡Aに係る厚生年金保険の被保険者加入期間が判明したことから,
原告は,C室長に対し,遺族厚生年金の受給手続を進めるよう依頼した。
そこで,C室長は,平成20年1月9日,原告に対し,遺族厚生年金の
請求に必要な書類等が記載された文書を送付したが,同文書には,遺族
年金の請求に必要な書類として戸籍謄本や住民票等のほか,平成14年
度の課税証明書が必要である旨が記載されており,同年度の課税証明書
が取れない場合には,現在取れるものすべてが必要となる旨が付記され
ていた。原告は,同月11日,足立事務所を訪れ,遺族厚生年金の裁定
請求書並びに亡Aに係る通算老齢年金についての裁定請求書及び未支
給保険給付請求書を提出した。その際,原告は,生計維持要件のうちの
収入要件については前回訴訟の判決で明らかであるから課税証明書は
不要である旨を述べたが,C室長から,同年度の課税証明書は必要であ
り,これを提出することができないのであれば,過去5年分の課税証明
書がどうしても必要である旨を告げられたため,前回訴訟で提出した同
年度の課税証明書の写しを提出した。
(オ)C室長は,平成20年2月4日,亡Aに係る通算老齢年金の裁定請
求書を社会保険業務センターに進達した。しかし,当時,同センターは,
同19年7月に成立し施行された時効特例法に基づく新たな業務であ
る届書の審査や支払手続に加え,同年12月から開始されたねんきん特
別便の送付に伴う業務等を行っていたため,通常の業務に相当の遅れが
生じていた。そのため,上記裁定には相当な時間を要し,また,遺族厚
生年金についても,同20年2月7日に受給権発生日を同14年▲月▲
日とする裁定が行われたものの,遺族共済年金との支給調整が必要であ
り,この処理は,同センターにおいて行われるものであったため,同年
金の支払はいまだ行われていない状態であった。上記のような状況を踏
まえ,C室長は,同20年2月9日,原告に対し,原告の請求に係る各
年金の処理につき,遺族厚生年金は入力済みであるが共済年金との連絡
調整が必要であるためいまだ決定されておらず,昨年8月の人がまだ処
理されていない状況であること,通算老齢年金についても同様に時間が
かかる予定であることなどを記載した文書をファックスで送付した。
(カ)原告は,遺族厚生年金として,平成20年3月14日,同14年1
2月分から同20年1月分までとして8万8831円の支払を受け,ま
た,同年4月15日には同年2月及び3月分として6533円の支払を
受けた。そして,同年6月13日には,同年4月分及び5月分として6
533円の支払を受けるとともに,同19年7月6日に施行された時効
特例法により給付されることとなった同14年▲月分から同年11月
分までとして1万9900円の支払を受けた。
(キ)社会保険庁長官は,平成20年3月6日付けで,亡Aに係る通算老
齢年金の裁定を行い,社会保険業務センター所長は,同年4月15日付
けで,亡Aあてに「厚生年金保険支給額変更通知書」(甲1)を送付
し,これを受けて,足立事務所は,同月14日,亡Aに係る通算老齢年
金につき,未支給保険給付請求書を進達した。
(ク)しかし,その後も亡Aに係る通算老齢年金が支給されなかったた
め,原告から何度も問い合わせがされ,これを受けたC室長においても,
社会保険業務センターに同年金の支給を督促していたところ,平成20
年7月,同センターから,失踪宣告により死亡したものとみなされる亡
Aについては未支給保険給付が認められない旨の回答を受け,ファック
スで本件説明文書の送付を受けた。そこで,C室長は,同月7日,原告
に本件説明文書を示して,亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の
請求は認められない旨を説明した。これに対し,原告は,足立事務所長
に対し,同月10日付けの内容証明郵便で,C室長から示された理由は
納得することができないので改めて未給付の通年老齢年金が支給され
ない理由等を記載した文書を1週間以内に送付するよう求めた。(甲
6)
(ケ)社会保険庁長官は,前記(キ)の通算老齢年金の裁定が誤りであった
として,平成20年7月10日,同裁定を取り消すとともに,同月15
日付けで本件不支給処分をした。
(コ)原告は,本件不支給処分を不服として,平成20年8月9日付けで
社保審査官に審査請求をしたが,社保審査官は,原告の審査請求は旧厚
年法37条1項の規定自体に対するものであり,審査事項以外の趣旨の
ものであるから不適法であるとして,同年10月9日付けで同請求を却
下する旨の決定をした。
(サ)原告は,平成20年10月17日,上記(コ)の決定を不服として,
社保審査会に対して再審査請求をした。
(シ)社保審査会委員長は,原告に対し,平成20年10月20日付け書
面で,同月17日に原告の再審査請求に係る請求書を受け取った旨を通
知したが,同書面には,原告の再審査請求の審理の予定につき,原告の
請求が受理することができるものであるかを審理した上,要件が整って
いるときは,原則として公開審理を行うが,公開審理を行うときには,
当該公開審理日の約半月前にあらかじめ別途通知する旨が記載されて
いた。その後,同委員長は,同年12月10日付け書面により公開審理
の期日及び場所等を原告に通知したが,この通知には,審査会が出した
結論は,裁決書で結果を知らせること,裁決書はおおむね公開審理後2
ないし3箇月後を目途に送付していることなどが記載されていた。な
お,上記通知には,社会保険業務センター所長から社保審査官あての原
告の審査請求に対する意見書が同封されており,同意見書には,旧厚年
法37条1項は,未支給保険給付は受給権者の死亡の当時受給権者と生
計を同じくしていた者は支給を請求することができるとされていると
ころ,原告は亡Aの死亡当時亡Aと生計を同じくしていた者と認められ
ないから,未支給保険給付を支給しないこととした旨が記載されてい
た。
(ス)原告は,平成21年1月19日,再審査請求から3箇月を経過して
も裁決がされなかったことから,本件不支給処分の取消し等を求める本
件訴えを提起した。他方,社保審査会は,同年4月30日,原告の再審
査請求を棄却する旨の裁決をした。
イ本件年金記録確認申立ての経緯等
(ア)原告のねんきん特別便は,平成20年3月10日付けで作成されて
原告に送付された。原告のねんきん特別便には,①昭和25年3月2
0日から同年11月1日までが厚生年金保険の加入期間として,②同
36年4月から同41年1月までが年金支給計算上の合算対象期間と
なる旧厚年法の脱退手当金支給期間のうち同36年4月1日以後の期
間として,③同41年4月から同56年1月までが年金支給計算上の
合算対象期間となる任意加入しなかった期間として,④同月19日か
ら同61年4月1日までが国民年金加入期間として,⑤同日から平成
3年8月15日までが国民年金加入期間としてそれぞれ記載されてい
た。
(イ)原告は,昭和30年4月1日から同40年12月31日まで公立学
校共済組合に加入し,同41年2月28日付けで退職一時金の支給決定
を受けこれを受給していたが,旧厚年法の脱退手当金の支給を受けたこ
とはなかった。しかし,社会保険業務センターにおいては,脱退手当金
支給期間及び退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期
間が同一コードで処理されていたため,原告のねんきん特別便では,共
済組合の退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が,
旧厚年法の脱退手当金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間
とされ,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」
と表示された。
(ウ)原告は,平成20年5月1日,ねんきん特別便に記載された加入記
録の内容に「もれ」や「間違い」があるとして,足立事務所に対し,昭
和56年4月1日から同57年3月31日までE高等学校に勤務して
いた旨を記載した年金加入記録回答票を提出したが,足立事務所は,平
成20年7月15日付けで,同校における昭和56年4月1日から同5
7年3月31日までの期間について,同校を事業所とした厚生年金保険
の加入がない旨を回答した。
(エ)原告は,平成20年7月31日,ねんきん特別便に記載された加入
記録の内容に「もれ」や「間違い」があるとして,足立事務所に対し,
昭和30年4月1日から同40年12月31日までF中学校に勤務し
公立学校共済組合に加入していたこと,同36年4月から同40年12
月までの期間の記載につき,厚生年金保険から脱退手当金を受け取って
いないことなどを記載した年金加入記録回答票等を提出した。
(オ)足立事務所長は,原告に対し,平成20年8月13日付け書面によ
り,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日
以後期間)」と記載されていることについて,当該期間は,原告が公立
学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和36年4月
1日以後の期間に相違ないが,社会保険事務所ではねんきん特別便の再
発行ができないこと,そのため,上記記載については,脱退手当金支給
期間が共済組合による退職一時金支給期間を含むことから「厚生年金脱
退一時金等の支給期間」と読み替えてもらいたい旨を伝えた。
(カ)原告は,平成20年8月26日,本件年金記録確認申立てに係る申
立書を足立事務所に提出したが,その当時,多数の年金関係の相談者が
社会保険事務所を訪れていたことなどから,社会保険事務所の事務に相
当な遅れが生じており,足立事務所においては,年金記録に係る確認申
立書を受け付けても,東京社会保険事務局に送付するまでに4箇月程度
を要する状況であり,原告の申立書も未処理の状態が続いていた。
(キ)B課長は,平成20年11月7日,足立事務所を訪れた原告と面談
し,本件年金記録確認申立てに係る申立書を直ちに第三者委員会に送付
すると伝え,同月10日に決裁をとって,事務連絡便のある同月12日
に東京社会保険事務局に送付し,その旨を原告に通知した。東京社会保
険事務局は,同月18日,第三者委員会の設置されている東京行政評価
事務所に同申立書を送付した。
(ク)東京行政評価事務所は,本件年金記録確認申立てに係る申立書は第
三者委員会の対象外の内容であるとして,平成20年12月2日付けで
同申立書を東京社会保険事務局に返戻した。東京社会保険事務局は,同
月11日付けで同申立書を足立事務所に返戻し,足立事務所は,同月1
7日付けでこれを原告に返戻した。
(2)C室長の対応に関する違法について
ア原告は,C室長が,平成19年6月6日,同年9月11日又は平成20
年1月10日のいずれかの時点において,受給権者が失踪宣告により死亡
したものとみなされる場合は未支給保険給付を請求することができない
旨を原告に教示しなかったことが手続法9条に反し違法であると主張す
る。
しかし,手続法9条は申請者の求めに応じて審査の進行状況及び当該申
請に対する処分の時期の見通しに関する情報を提供する努力義務を定め
るものであり,処分の内容に関わる情報を提供することを義務付けるもの
ではないから,C室長が原告に対し亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険
給付を請求することができない旨を教示しなかったことが同条に違反す
るということはできない。
この点を措くとしても,原告は平成19年6月6日,同年9月11日及
び同20年1月11日に足立事務所を訪れているところ,このうち,同1
9年6月6日には自らの老齢厚生年金に関して足立事務所を訪れたにす
ぎず(前記(1)ア(ア)),同年9月11日も亡Aの厚生年金保険の被保険
者加入期間の照会手続を行っているにすぎないのであり(前記(1)ア
(イ)),亡Aにつき年金給付を請求するか否か,請求するとしてもいかな
る保険給付を請求するかが明らかでない以上,上記両日において,C室長
に,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合は未支給保
険給付を請求することができない旨を教示すべき法的義務があったとい
うことはできない。また,原告は,同20年1月11日,足立事務所に亡
Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の請求書を提出しているものの
(前記(1)ア(エ)),請求書の提出を受けたにすぎない段階でその請求の
適否の見通しを述べることは行政の公正さを疑わしめることになるから,
この段階で受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合は
未支給保険給付を請求することができない旨を教示すべき法的義務があ
るということはできない。
イ原告は,本件説明文書は,亡Aの死亡が認定されておらず,亡Aには死
亡当時という特定の時期がないのに亡Aが特定の時期に死亡したことを
前提とするものであるから,C室長が本件説明文書を原告に示したことは
手続法8条に反すると主張する。
しかし,手続法8条は,拒否処分を行う場合にはその理由を同時に示さ
なければならないことを規定しているところ,C室長が本件説明文書を原
告に示して原告の請求が認められない旨を伝えた後,平成20年7月15
日付け書面によって本件不支給処分の通知が行われていること(前提事
実)からすると,C室長は,社会保険業務センターから失踪宣告により死
亡したものとみなされる亡Aについては未支給保険給付が認められない
旨の回答を受けて,正式な処分に先立ち事実上その旨を原告に伝えたにと
どまり,これが原告の請求に対する正式な処分を通知する趣旨で行われた
ものであるとは認められないから,その際にC室長が本件説明文書を示し
たことが手続法8条違反に当たるということはできない。
この点を措くとしても,前記2(2)のとおり,亡Aは失踪宣告によって
平成14年▲月▲日をもって死亡したものとみなされ,実際に死亡してい
るか否かにかかわらず,法律上は同日をもって死亡したものと取り扱うこ
とになるのであり,このことは未支給保険給付の請求においても異なるも
のではないから,本件説明文書の内容に原告主張のような不備があるとい
うことはできない。そうすると,C室長が原告の請求が認められない旨を
伝える際に本件説明文書を示したことが国家賠償法上違法であるという
ことはできない。
ウ原告は,C室長が,本件説明文書を原告に黙読させ,それに対する原告
の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよう仕向けたとし
て,このようなC室長の対応が手続法5条及び第3章各条に違反し違法で
あると主張する。
しかし,C室長が,足立事務所を訪れた原告に対して原告の未支給保険
給付の請求が認められない旨を伝える際,本件説明文書を示したことは前
記(1)ア(ク)のとおりであるが,C室長が本件説明文書を原告に黙読させ,
それに対する原告の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよ
う仕向けたことを認めるに足りる証拠はなく,原告の上記主張は採用する
ことができない。
エ原告は,C室長が本件説明文書を原告に黙読させて処分通知に代え,文
書による処分通知を拒否したとして,このようなC室長の対応が手続法9
条に違反し違法であると主張する。
しかし,手続法9条は申請者の求めに応じて審査の進行状況及び当該申
請に対する処分の時期の見通しに関する情報を提供する努力義務を定め
るものであり,処分の通知方法に関する義務を定めるものではないから,
原告の請求に対する処分の通知を文書で行わなかったことが手続法9条
違反に当たるとはいえない。
この点を措くとしても,前記イのとおり,C室長は,社会保険業務セン
ターから失踪宣告により死亡したものとみなされる亡Aについては未支
給保険給付が認められない旨の回答を受けて,正式な処分に先立ち事実上
その旨を原告に伝えたにとどまり,これが原告の請求に対する正式な処分
を通知する趣旨で行われたものであるとは認められないから,その際にC
室長が原告の請求に対する処分通知の文書を交付すべき義務を負うとい
うことはできず,上記文書を交付しなかったことが国家賠償法上違法であ
るということはできない。
オ原告は,当時76歳の原告が過去5年間に年収850万円を超えるはず
がないにもかかわらず,平成14年度の課税証明書を提出するよう求め,
これを提出することができないのであれば,過去5年分(同15年度から
同19年度までの5年間)の課税証明書をすべて提出するよう求めたこと
が違法であると主張する。
しかし,C室長は,亡Aが同14年▲月▲日をもって死亡したものとみ
なされるため,生計維持要件のうちの収入要件の判断資料としては,同1
3年度又は同12年度の課税証明書が必要であったが,課税証明書の取得
の困難性等を考慮し,亡Aが死亡したものとみなされた時点に最も近い平
成14年度の課税証明書の提出を求めたのであり(弁論の全趣旨),それ
がない場合には,その後の資料によって亡Aの死亡当時における原告の収
入の見込みを推断するほかないところ,その場合には,ある程度の期間に
わたる収入額を基礎とするのが相当であるから,C室長が過去5年間の課
税証明書の提出を求めることが不合理であるということはできない。ま
た,原告が当時76歳であったとしても,そのことから直ちに所得額が年
額850万円を超えないことが推認されるものではないし,前回訴訟の判
決では,原告が公立学校共済組合との関係で地方公務員等共済組合法上の
遺族共済年金の受給権者である「遺族」に該当すると認定されているもの
の,これをもって,直ちに原告が厚年法上の遺族厚生年金の受給権者であ
る「遺族」に該当するとは認められない。これらの諸点を考慮すれば,C
室長が同14年度の課税証明書又は過去5年分の課税証明書の提出を求
めたことが国家賠償法上違法であるということはできない。
(3)本件不支給処分に関する違法について
ア原告は,本件不支給処分は,原告の申請から約半年も経過した後に行わ
れており,手続法7条に違反し違法であると主張する。
しかし,手続法7条は,申請に対する審査を遅滞なく開始すべきことを
規定しているところ,本件不支給処分は原告の申請から約半年後にされた
ものではあるものの(前提事実),原告が亡Aに係る通算老齢年金の未支
給保険給付の請求をした平成20年1月当時,社会保険業務センターは,
同19年7月に成立し施行された時効特例法に基づく新たな業務である
届書の審査や支払手続に加え,同年12月から開始されたねんきん特別便
の送付に伴う業務等を行うこととなっていたため通常の業務に相当な遅
れが生じていたこと(前記(1)ア(オ))を考慮すれば,本件不支給処分が
された時期につき手続法7条に違反し違法であるということはできない。
イまた,原告は,本件不支給処分の理由には,亡Aの「死亡の当時」とい
う特定することのできない時期が記載されるとともに,厚年法37条2項
が記載されておらず,本件不支給処分が手続法8条に違反し違法であると
主張する。
しかし,本件不支給処分には,「受給権者の死亡当時,受給権者と生計
を同じくしていたものとは認められないため。」という処分理由が付され
ているところ(甲7),前記2(2)で説示したとおり,未支給保険給付と
の関係においても,亡Aは平成14年▲月▲日に死亡したものとみなされ
るのであるから,その死亡時期は同日をもって特定されているというべき
であるし,厚年法37条2項は,受給権者が遺族厚生年金の受給権者であ
る妻であった場合の未支給保険給付を請求することができる者の範囲に
関する規定であって,死亡した受給権者の配偶者が当該受給権者の未支給
保険給付を請求する場合とは無関係のものである。そうすると,本件不支
給処分において提示された理由に原告主張のような不備があるというこ
とはできず,かえって,本件不支給処分において提示すべき理由としては
その程度の記載で足りるというべきである。したがって,本件不支給処分
が示した理由につき手続法8条に違反する違法があるということはでき
ない。
ウさらに,原告は,本件不支給処分の理由が記載された社会保険業務セン
ター所長から社保審査官あての意見書(甲33)が,本件不支給処分から
5箇月後に,しかも,平成20年12月10日付けの再審査請求における
公開審理の実施通知に同封された資料の中に密かに入れられる形で原告
に送付されたとして,本件不支給処分が手続法8条に違反すると主張す
る。
しかし,手続法8条は,拒否処分を行う場合にはその理由を同時に示さ
なければならないことを規定しているところ,社会保険庁長官は,原告に
対し,受給権者の死亡の当時,受給権者と生計を同じくしていたものとは
認められないとの理由で本件不支給処分が行われた旨を通知しており(甲
7),前記イにおいて説示したとおり,本件不支給処分において示すべき
理由としてはその程度の記載で足りるというべきである。そうすると,本
件不支給処分においては,処分と同時にその理由が示されているというこ
とができるから,上記意見書の送付は,手続法8条の要請によって本件不
支給処分の理由を提示するものであるとは認められない。したがって,上
記意見書が本件不支給処分から5箇月後に原告に送付されたことが手続
法8条に違反するものということはできず,上記意見書が原告あてでない
ことや再審査請求における公開審理の実施通知に同封されていたことが
上記判断を左右するものともいえない。
(4)社保審査官の対応に関する違法
ア原告は,原告の審査請求から裁決までに約2箇月を要したことが手続法
7条に違反する,審査件数が多いときに対応した処理期間を設定しなかっ
たことが手続法6条に違反する,原告の審査請求を不適法却下したことが
手続法5条ないし8条に違反すると主張する。
イしかし,手続法3条1項15号は,審査請求,異議申立てその他の不服
申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分については,手続法第2
章から第4章までの規定は適用しない旨を規定しているから,社保審査官
の裁決には,手続法6条ないし8条の規定は適用されない。
ウそして,原告が審査請求をした当時,多数の審査請求がされたために裁
決に相当日数を要する状態であったことからすれば(弁論の全趣旨),社
保審査官が審査請求から決定まで約2箇月を要したことが直ちに違法で
あるということはできないし,社保審査官において審査請求が多数である
ことに対応する処理期間を設定しなければならない義務があるとする法
的根拠は見当たらない。もっとも,社保審査官は,原告の審査請求が本件
不支給処分の違法をいうものとして適法な請求であるにもかかわらず,同
請求が旧厚年法37条1項の規定自体の不服をいうものであるとして不
適法却下しているが(前提事実),社保審査官の裁決に対しては社保審査
会への再審査請求という不服申立ての途が設けられているのであること
(厚年法90条1項)を考慮すれば,社保審査官が原告の審査請求を不適
法として却下したことが直ちに国家賠償法上違法であるということはで
きない。
エ以上のとおり,社保審査官の対応が国家賠償法上違法であるということ
はできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(5)社保審査会の対応に関する違法
ア原告は,原告の再審査請求を受理するのに約1箇月を要したことが手続
法7条に違反する,裁決までの期間が公開審理からの期間としてしか定め
られておらず,これが公表されていないことが手続法6条に違反する,公
開審理日の通知が恣意的にされており違法である,公開審理における発言
に制限が加えられていることが手続法第3章各条に違反すると主張する。
イしかし,手続法3条1項15号は,審査請求,異議申立てその他の不服
申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分については,手続法第2
章から第4章までの規定は,適用しない旨を規定しているから,社保審査
会の裁決には,手続法6条及び7条並びに第3章の規定は適用されない。
ウそして,社保審査会は,原告の再審査請求に係る請求書を平成20年1
0月17日に受け付け,その約1箇月後である同年11月27日に同請求
を受理していることが認められるものの(甲26),社保審査会は,再審
査請求としての要件を備えているかの要件審査を行って受理するか否か
を決定し,要件が整っているときに受理して内容の審理を進めることにし
ているのであり(甲10),請求の内容如何によっては受理までに相応の
日数を要すると考えられるから,原告の再審査請求に係る請求書を受け取
ってから同請求を受理するまで約1箇月を要したことが違法であるとい
うことはできない。また,社保審査会は,原告に公開審理の日程を知らせ
る通知に,公開審理後2ないし3箇月後を目途に裁決書を送付している旨
を記載していることが認められるが(前記(1)ア(シ)),社保審査会にお
いて申立書の到達から裁決までの期間を設定してこれを公表しなければ
ならない法的義務があるとする根拠は見当たらない。さらに,社保審査会
は,原告に対し,公開審理を行うときは当該公開審理日の約半月前にあら
かじめ別途通知する旨を知らせながら(甲10),実際には公開審理日の
50日前に日程を連絡したことが認められるものの(甲12),公開審理
の日程の連絡は,公開審理への参加の機会を保障する趣旨のものであると
解されるから,合理的な範囲内で通知予定日以前に日程の連絡を行うこと
は上記趣旨に合致するものであり,社保審査会の上記措置が国家賠償法上
違法であるということはできない。加えて,社保審査会が行った再審査請
求についての公開審理では,意見陳述は要点をまとめ簡潔に発言するよう
求めるとともに,委員や参与員の質問に対する回答以外の発言については
許可を要するものとされているが(甲12),公開審理においては,要領
を得た簡潔な発言を求めたり,発言に許可を要するものとすることは迅速
かつ充実した審理のための合理的な措置であって,かかる措置が違法であ
るということもできない。
エ以上のとおり,社保審査会の対応に違法な点があるということはでき
ず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(6)原告の年金記録の訂正要求等への対応に関する違法について
ア原告は,足立事務所長が,原告のねんきん特別便に,「厚年脱退手当金
支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されている期間につき,
原告が公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和3
6年4月1日以後の期間に間違いはないとしながら,共済組合による退職
一時金支給期間を含むということから,上記記載を「厚生年金脱退一時金
等の支給期間」と読み替えるよう求めて上記記載の訂正を拒否しており,
この足立事務所長の対応は,合理的な理由を示さずにされたもので,手続
法8条に反する違法なものであると主張する。
しかし,手続法8条は,申請に対する処分についての規定であるところ,
手続法にいう「処分」とは,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行
為をいい,「申請」とは,法令に基づき,行政庁の許可,認可,免許その
他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって,当該
行為に対して行政庁が認否の応答をすべきこととされているものをいう
とされている(手続法2条2号及び3号)。そして,ねんきん特別便は,
社会保険庁が同庁の管理している年金情報を被保険者とされている者に
知らせるものにすぎず,足立事務所長がねんきん特別便の訂正に応じない
ことが手続法所定の「処分」に当たるとはいえないから,足立事務所長の
上記対応が手続法8条に違反するものでないことは明らかである。
そして,足立事務所長は,原告に対し,ねんきん特別便の記載は社会保
険庁において決定されたことであること,社会保険事務所ではねんきん特
別便の再発行ができないことを理由として原告に対してねんきん特別便
の記載の読み替えを依頼しているところ(前提事実,甲15),ねんきん
特別便が社会保険庁で管理する年金情報を被保険者とされている者に通
知し,被通知者からの回答によって年金情報の正確性を確保することなど
を目的とするものであると考えられることに照らすと,厚生年金に係る年
金情報を社会保険庁において一元的に管理する必要があるから,第三者委
員会の審議を経て行われる総務大臣によるあっせん手続によらないで,ね
んきん特別便の記載の訂正を各社会保険事務所において個別に行うこと
はねんきん特別便の上記目的に反することになる。そうすると,足立事務
所長が原告に対して示した上記理由が不合理なものということはできず,
足立事務所長の上記対応が国家賠償法上違法であるということはできな
い。
イ原告は,足立事務所のB課長が,平成20年8月26日にされた本件年
金記録確認申立てにつき,何ら補正すべき箇所がなかったにもかかわら
ず,申立書を約2箇月間も足立事務所に留め置き,同年11月12日にな
ってようやく東京社会保険事務局に送付したことは手続法7条に違反す
るし,年金記録に係る確認申立てについての標準処理期間が公表されてい
ないことも手続法6条に反すると主張する。
確かに,B課長は,同年8月26日にされた本件年金記録確認申立てに
係る申立書を同年11月12日に東京社会保険事務局に送付したことが
認められるが,本件年金記録確認申立てがされた当時は,多数の年金関係
の相談者が社会保険事務所を訪れていたことなどから,社会保険事務所の
事務に相当な遅れが生じており,足立事務所においては,年金記録に係る
確認申立書を受け付けても,東京社会保険事務局に送付するまでに4箇月
程度を要する状況であったことが認められ(前記(1)イ(カ)),このよう
な本件年金記録確認申立て当時の状況に照らすと,B課長の上記対応が手
続法7条に反するものとまでいうことはできない。また,上記のとおり,
手続法6条が標準処理期間を公にしておかなければならないとしている
のは,申請をしようとする者あるいは申請者に対して秘密にしないとの趣
旨であって,その具体的方法も,提出先機関における備付けのほか,申請
者の求めに応じて提示することも許されるところ,原告が足立事務所に対
して標準処理期間を明らかにするよう求めるなどしたことは認められず,
他に年金記録の確認申立てに係る標準処理期間が公にされなかったこと
を認めるに足りる証拠はない。
ウ原告は,第三者委員会が,本件年金記録確認申立てについて何らの応答
及び処分もしないまま,申立書を東京社会保険事務局及び足立事務所を経
由して原告に返戻したことにつき,具体的な審査基準を定めてこれを公に
し,名あて人に意見陳述の機会を与えた上で処分と同時に理由を示すべき
であるとする手続法6条及び第3章各条に違反し違法であると主張する。
第三者委員会は,本件年金記録確認訂正申立ての内容が第三者委員会の
対象外の内容であるとして,その申立書を東京社会保険事務局及び足立事
務所を経由して原告に返戻しているが,原告が本件年金記録訂正申立てに
おいて訂正を求めている年金記録は,原告の公立学校共済組合に加入して
いた期間に関するものであり,この記録は同組合において管理するもので
あるから,社会保険庁においてその訂正に応ずる筋合いのものではない。
したがって,第三者委員会の上記対応が手続法6条及び第3章各条に違反
して違法であるということはできない。
第4結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件訴えのうち,
被告に保管されている年金の個人加入記録原簿にある原告の情報に関して「昭
和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情
報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を交付すべきこ
とを命ずることを求める部分は不適法であるから,これを却下することとし,
その余の訴えに係る原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,
訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文
のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官杉原則彦
裁判官品田幸男
裁判官角谷昌毅

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛