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平成25年3月25日判決言渡
平成24年(行ケ)第10077号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年1月30日
判決
原告エルジーディスプレイ
カンパニーリミテッド
訴訟代理人弁理士岡部讓
同岡部正夫
同脇村善一
同吉澤弘司
同三山勝巳
同口岳久
訴訟代理人弁護士向多美子
被告特許庁長官
指定代理人神悦彦
同森林克郎
同田部元史
同田村正明
主文
1特許庁が不服2010-22271号事件について平成23年10
月19日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
発明の名称を「有機発光素子」とする発明について,平成17年8月2日に特許
出願がされ(優先権主張平成16年8月2日,米国。以下「本願」という。)
(甲1),原告は,出願人から特許を受ける権利を譲り受けて,特許庁長官に対し,
出願人名義変更届を行い(甲7),平成22年5月10日,特許請求の範囲を変更
する旨の手続補正を行い(甲3),同月28日,拒絶査定を受けた。原告は,同年
10月4日,拒絶査定不服審判(不服2010-22271号事件)を請求すると
ともに,特許請求の範囲を変更する旨の手続補正(以下「本件補正」といい,同補
正後の本願に係る明細書を「本願明細書」という。)を行った(甲2)。特許庁は,
平成23年10月19日,本件補正を却下した上で,請求不成立の審決をし,同月
31日,その謄本が原告に送達された。
2特許請求の範囲
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下,同請求項に係る発明を
「補正発明」という。)は,以下のとおりである(甲2)。
「陰極,
有機エレクトロルミネセンス物質及び電荷輸送物質を含有する層,
電子受容物質を含有する層,
陽極キャッピング層,
陽極,及び
陰極の前もしくは陽極の後のシーケンスで設けられる基体,
を含み,
前記陽極キャッピング層は,Pd,Mg,又はCrを含む
有機発光素子。」
(2)本件補正前の,平成22年5月10日付け手続補正による補正後の特許請
求の範囲の請求項1(以下,同請求項に係る発明を「本願発明」という。)は,以
下のとおりである。
「陰極,
有機エレクトロルミネセンス物質及び電荷輸送物質を含有する層,
電子受容物質を含有する層,
陽極キャッピング層,
陽極,及び
陰極の前もしくは陽極の後のシーケンスで設けられる基体,
を含み,
前記陽極キャッピング層は,Pd,NPB,Mg,Cr又はSmを含む
有機発光素子。」
3審決の理由
(1)審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりであり,その要旨は,以下
のとおりである。
ア本件補正について
補正発明は,特開2003-178882号公報(甲4。以下「引用文献」とい
う。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項により,
特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであり,本件補正は却下
すべきである。
イ本願発明について
本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすること
ができたものであり,特許法29条2項により,特許を受けることができない。
(2)審決が認定した引用発明の内容,補正発明と引用発明の一致点及び相違点,
周知技術の内容は,以下のとおりである。
ア引用発明の内容
「陰極(901),無機導電層(902),有機化合物層(903),仕事関数
の大きい材料や正孔注入性を有する材料からなるバリア層(908),及び陽極
(909)からなり,有機化合物層は,電子輸送性の有機化合物である電子輸送層
(904),ブロッキング層(905),発光層(906)及び正孔輸送性の有機
化合物である正孔輸送層(907)の積層構造を有している有機発光素子。」(判
決注本判決では,「バリヤ層」について,「バリア層」の表記に統一した。)
イ一致点
「陰極,
有機エレクトロルミネセンス物質及び電荷輸送物質を含有する層,
陽極キャッピング層,
陽極,及び
陰極の前もしくは陽極の後のシーケンスで設けられる基体,
を含む
有機発光素子。」
の点。
ウ相違点
(ア)相違点1
補正発明は,電子受容物質を含有する層を有しているのに対して,引用発明は,
そのような層を有していない点。
(イ)相違点2
補正発明の陽極キャッピング層は,Pd,Mg,又はCrを含むのに対して,引
用発明のそれは,仕事関数の大きい材料や正孔注入性を有する材料からなるものの,
そのような物質を含まない点。
エ周知技術の内容
(ア)有機発光素子において,正孔注入障壁を減ずる等のために,正孔注入層の
ような電子受容物質を含有する層を設けることはごく普通に行われること(特開2
000-286054号公報(甲5。以下「文献1」という。)を参照としたもの。
以下「周知技術1」という。)。
(イ)有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,Crはよく知ら
れた材料であり,電極のバリア層として用いることも行われていること(特開20
02-216976号公報(甲6。以下「文献2」という。)を参照としたもの。
以下,「有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,Crはよく知ら
れた材料であること」を「周知技術2の1」,「Crが電極のバリア層として用い
ることも行われていること」を「周知技術2の2」といい,併せて「周知技術2」
という。)。
(ウ)正孔注入性を考慮して,陽極と隣接する層に陽極と同じ材料を含有させる
ことも,ごく普通に行われていること(以下「周知技術3」という。)。
(エ)Pdは,陽極材料としてよく知られた材料であること(以下「周知技術
4」という。)。
第3取消事由に関する当事者の主張
1原告の主張
審決には,一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1),周知技術2の認定の
誤り(取消事由2),容易想到性の判断の誤り(取消事由3),審判手続上の瑕疵
(取消事由4)があり,これらはその結論に影響を及ぼすから,違法であるとして
取り消されるべきである。
(1)一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1)
審決は,補正発明の「陽極キャッピング層」が陽極の一部又は陽極に隣接する層
であることから,引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャッピング層」に
相当するとして,補正発明と引用発明の一致点及び相違点を認定している。しかし,
審決の同認定には,以下のとおりの誤りがある。
引用発明では,有機化合物層を形成した後で,透明導電膜からなる陽極がスパッ
タリング法により形成されるため,陽極形成時に有機化合物層の表面に与えられる
ダメージを防止するために,有機化合物上に「バリア層」が設けられるのであり,
「バリア層」はダメージ防止層にすぎない。
これに対して,補正発明の「陽極キャッピング層」は,陽極形成時の課題とは無
関係であり,Pd,Mg,又はCrを含むことにより,輝度安定性の向上等,有機
発光素子の1つ以上の特性を向上させるために用いられる。
したがって,引用発明の「バリア層」と補正発明の「陽極キャッピング層」では,
有機発光素子に設けられた目的,効果及びその機能が異なり,引用発明の「バリア
層」は補正発明の「陽極キャッピング層」に相当しない。
なお,本願明細書の記載によると,補正発明においては,「各陽極キャッピング
層の特徴,すなわち材料,2種以上の材料がある場合の材料濃度,層厚,層数等に
ついて」選択することによって,輝度安定性を向上させているのであって,「陽極
キャッピング層」が「輝度安定性の向上」という目的,効果,機能をもつことは明
らかである。
(2)周知技術2の認定の誤り(取消事由2)
審決は,文献2から,「有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,
Crはよく知られた材料であり,電極のバリア層として用いることも行われている
こと」(周知技術2)を認定する。しかし,審決の同認定には,以下のとおりの誤
りがある。
文献2には,石英ガラス等からなる基板1上に,例えばクロム(Cr)膜等の金
属膜2をスパッタリング法によって形成し,その上に金属膜2を構成する金属材料
の酸化膜か又はCrの酸化膜である緩衝薄膜3を形成することが記載されている。
しかし,文献2の緩衝薄膜層3aは,通常,多結晶構造として表面粗さが大きく成
膜される金属膜に対して,この金属膜を構成する金属材料の酸化膜の方が,その表
面粗さが小さく成膜されるため,金属材料層2aの表面粗さを低減させる目的で設
置されたものであり,緩衝薄膜層と金属材料層によって下部電極を構成しているに
すぎない。したがって,文献2の緩衝薄膜層はバリア層には該当せず,審決が,緩
衝薄膜層を電極のバリア層であるとして,周知技術2を認定したのは,誤っている。
また,文献2は,Crが陽極として用いられることを記載しているのであって,
発光素子の材料一般について記載したものではない。したがって,文献2から,
「有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,Crはよく知られた材
料であること」(周知技術2の1)を認定することはできない。
(3)容易想到性の判断の誤り(取消事由3)
ア相違点1について
審決は,周知技術1から,引用発明に電子受容物質を含有する層(以下「電子受
容層」という。)を設けることは,当業者が適宜容易になし得る事項であると判断
する。しかし,審決の同判断には,以下のとおりの誤りがある。
補正発明は,「陽極キャッピング層」と「電子受容層」とを組み合わせたことに
より,本願明細書の表1ないし表5,表7ないし表9に示されているように,従来
と比べて飛躍的に有機発光素子の輝度安定性を向上させたものである。引用発明及
び周知技術1のいずれにも,陽極キャッピング層と電子受容層を組み合わせること
について記載・示唆はなく,そのことにより有機発光素子の輝度安定性が向上する
ことについても,何らの技術的示唆はない。
したがって,相違点1に係る構成は,本願優先日当時,当業者が引用発明から容
易に想到し得るものではない。
イ相違点2について
審決は,周知技術2ないし4から,引用発明の陽極キャッピング層に相違点2に
係る構成を採用することは,当業者が容易になし得る事項であると判断する。しか
し,審決の同判断には,以下のとおりの誤りがある。
前記のとおり,引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャッピング層」に
相当するものではないから,引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャッピ
ング層」に相当するという前提で相違点2を認定し,その容易想到性を判断するこ
とは,前提において誤りがある。
また,前記のとおり,文献2の緩衝薄膜層3aは,バリア層には当たらず,引用
発明と文献2記載の発明を容易に組み合わせることはできない。仮に,当業者が,
引用発明と文献2記載の発明を組み合わせたとしても,それは,ダメージ防止層と
表面粗さ低減層の組合せにすぎず,有機発光素子の輝度安定性の向上については何
ら技術的示唆がなく,補正発明に容易に想到し得るものではない。
さらに,引用発明と文献2記載の発明とでは,陽極の材料が異なり,当業者が引
用発明と文献2記載の発明とを容易に組み合わせることはできない。
補正発明では,輝度安定性の向上等,有機発光素子の1つ以上の特性を向上させ
る目的で,陽極キャッピング層にPd,Mg,又はCrを含む構成を採用したので
あって,仕事関数の大きい材料としてPd,Mg,又はCrを採用したのではない。
したがって,仮に,有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,Cr
はよく知られた材料であるとしても,そのことから引用発明に基づいて補正発明に
容易に想到し得るとはいえない。
引用発明では,陽極とバリア層の材料が異なり,当業者が,引用発明に「陽極と
隣接する層に陽極と同じ材料を含有させる」という周知技術3を組み合わせること
は容易ではない。のみならず,補正発明は,「陽極と隣接する層に陽極と同じ材料
を含有させる」技術を採用していない。
ウ補正発明の効果について
審決は,補正発明全体の効果が引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範
囲のものであって格別なものではないと判断する。しかし,審決の同判断には,以
下のとおりの誤りがある。
補正発明は,「陽極キャッピング層」にPd,Mg,又はCrを含む構成にした
ことにより,表1の実施例I-2及び3,表2の実施例Ⅱ-2,表3の実施例Ⅲ-
2ないし4,表4の実施例Ⅳ-2ないし4,表5の実施例Ⅴ-2ないし4,表7の
Ⅶ-2及び3,表8のⅧ-5,並びに表9のⅨ-2に示すように,従来と比べて大
幅に輝度安定性を向上させたものである。
(4)審判手続上の瑕疵(取消事由4)
審決は,引用発明と周知技術1ないし4を組み合わせて,補正発明の構成に至る
のは容易であると判断する。しかし,審決の指摘する技術は,周知技術とはいえず,
審決の判断は,審判手続において通知した拒絶理由とは実質的に異なった理由によ
るものであるから,新たな拒絶理由通知を発し,出願人に意見を述べる機会を与え
るべきであり,その点を怠った審判手続には瑕疵がある。
ア周知技術1について
審決は,文献1の正孔注入制御促進層に関する記載を参照することによって,周
知技術1を認定している。しかし,「正孔注入制御促進層」は文献1に係る発明の
特徴となる技術的事項であり,この文献のみで,周知技術1の周知性が認定できる
ものではない。
この点,被告は,周知技術1は乙1に記載されていると主張する。しかし,乙1
の,「有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子における」「正孔注入層」に
「電子受容物質」を「添加して増感させることもできる。」との記載は,乙1の発
明の特徴となる技術的事項に関するものであり,乙1の当該記載によって,周知技
術1が当業者に周知であるとはいえない。
審決は,周知技術1の根拠として挙げた文献に記載された事項が周知ではないの
にもかかわらず,引用発明と文献1に記載された発明を組み合わせて容易に想到し
得ると判断しているのであり,既に通知した拒絶理由とは異なった理由を拒絶理由
としているというべきである。
イ周知技術2について
審決は,文献2から,周知技術2を認定している。
しかし,前記のとおり,文献2の緩衝薄膜層3aは,金属材料層2aの表面粗さ
を低減するために設置されたものであり,緩衝薄膜層と金属材料層によって下部電
極を構成しているにすぎないから,バリア層とはいえない。また,文献2では緩衝
薄膜をCrの酸化物にする点が発明の特徴点であることからすれば,文献2をもっ
て,周知技術2の周知性を裏付けることはできない。
この点,被告は,周知技術2の1は乙2及び3に,周知技術2の2は乙3及び4
に記載されていると主張する。
しかし,乙2には「高仕事関数の性質を持つ他の材料」として「Cr」が例示さ
れており,乙3にはバリア層の材料として「Cr」が挙げられており,乙4には混
合層に使用可能な金属酸化物の金属として「Cr」が挙げられているが,これらは
乙2ないし4に記載された発明の特徴となる技術的事項であり,これらの記載から,
周知技術2の1や周知技術2の2が当業者に周知であるとはいえない。
したがって,審決は,周知技術2の根拠として挙げた文献に記載された事項が周
知ではないにもかかわらず,引用発明と文献2に記載された発明を組み合わせて容
易に想到し得ると判断しているものであり,既に通知した拒絶理由とは実質的に異
なった理由を拒絶理由としているというべきである。
ウ周知技術3,4について
審決は,「正孔注入性を考慮して,陽極と隣接する層に陽極と同じ材料を含有さ
せることも,ごく普通に行われている」周知技術(周知技術3)であり,しかも,
「Pdは,陽極材料としてよく知られた材料である」(周知技術4)としているが,
審決では,このことを示す何らの文献も開示していない。周知技術3,4は普遍的
な原理でも,当業者にとって極めて常識的・基礎的な事項でもない。
この点,被告は,周知技術3は乙4に,周知技術4は乙1及び2に記載されてい
ると主張する。しかし,乙4の「金属酸化物材料」の記載のみから,乙4では「I
TO」層を陽極として扱っているとすることはできない。乙4中の周知技術3に関
する記載は,乙4に記載された発明の特徴となる技術的事項であり,乙4から周知
技術3が周知であるとはいえない。また,乙1には,「有機EL素子の陽極に使用
される導電性材料」として「パラジウム」が挙げられており,乙2には,「第二電
極25」に用いる材料として「Pd」が挙げられているが,これらも,乙1,2に
記載された発明の特徴となる技術的事項であり,乙1及び2から周知技術4が周知
であるともいえない。
したがって,審決は,周知技術3,4として記載された事項が周知ではないにも
かかわらず,引用発明と周知技術3,4を組み合わせて容易に想到し得ると判断し
ているものであり,拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たるものとい
うべきである。
2被告の反論
(1)一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1)に対して
補正発明の「陽極キャッピング層」と引用発明の「バリア層」は,「陽極に隣接
している」か又は「陽極の一部」である点,すなわち陽極に非常に近い位置関係に
ある点で一致していることから,引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャ
ッピング層」に相当するといえる。
有機EL素子(装置)の技術分野において,「陽極キャッピング層」の語は,そ
の技術内容を示していない。本願明細書には,「陽極キャッピング層」に関して,
実施形態が記載されるのみであり,また,「陽極キャッピング層」を構成する物質
について,隣接する層の物質と無関係に,多くの物質名が挙げられ,「陽極キャッ
ピング層」の輝度安定性の向上等の原理(メカニズム)についての記載は一切ない。
したがって,本願明細書の記載からは,「陽極キャッピング層」の構成が,電子受
容層及び陽極の間にある,「Pd,Mg又はCr」等の特定の物質を含んだ層等に
限定されていると解することはできず,また,「輝度安定性の向上等のために用い
られ(る)」との記載のみでは,その構成を特定することはできない。
本願明細書には,「陽極キャッピング層」に用いる物質として,「Au(金)」
や「銅フタロシアニン(Cu-Pc)」が挙げられているが,引用文献にも,引用
発明の「バリア層」に用いる物質として,仕事関数の大きい「金」や正孔注入性を
有する「Cu-Pc」が挙げられており,補正発明の「陽極キャッピング層」とし
て用いる物質の技術的意義の観点から,補正発明と同様に電子受容層(正孔輸送
層)と陽極との間にある引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャッピング
層」に相当するといえる。
以上のとおり,本願明細書には「陽極キャッピング層」の輝度安定性の向上等の
原理(メカニズム)についての記載がなく,その具体的な目的,効果や機能が特定
されていない以上,目的,効果及び機能において一致することを確認することなく,
補正発明と引用発明との一致点を認定することに誤りはない。引用発明の「バリア
層」も,補正発明の「陽極キャッピング層」と同様に「Au」や「Cu-Pc」が
用いられ,完成した素子構造の陽極と正孔輸送層との間に在る層であることから,
輝度安定性の向上等の機能を有する蓋然性が高い。
(2)周知技術2の認定の誤り(取消事由2)に対して
文献2の記載のとおりであり,周知技術2の1の認定に誤りはない。
(3)容易想到性の判断の誤り(取消事由3)に対して
ア相違点1について
原告は,相違点1に関し,補正発明は,「陽極キャッピング層」と「電子受容
層」とを組み合わせたことにより,本願明細書の表1ないし表5,表7ないし表9
に示されているように,有機発光素子の輝度安定性を向上させたものであると主張
する。
しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。
本願明細書の表1ないし表9によって示されている有機EL素子は,いずれも電
子受容層を備えたものであり,表1ないし9によって示されている効果が,「陽極
キャッピング層」と「電子受容層」を組み合わせたことにより生じるものであると
いうことはできない。
周知技術1は当業者に周知のものであり,引用発明においても,陽極と正孔輸送
層の間にあるバリア層が仕事関数の大きいAu等で構成され,陽極の一部とみなす
こともできることから,電極からの電荷の注入効率を高めるために,周知技術1を
適用して電子受容層を設けるとすることは,当業者が容易に想到し得る。
イ相違点2について
前記のとおり,引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャッピング層」に
相当する。
有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,Crはよく知られた材
料である(周知技術2の1)。引用文献には,引用発明の「バリア層」に用いられ
る材料として,仕事関数の大きな物質が挙げられており,引用文献の実施例で「バ
リア層」に金が用いられているのは,その一例である。したがって,周知技術2の
1を勘案して,引用発明の「バリア層」に仕事関数の大きい材料であるCrを選択
することは,当業者が容易に想到し得たことである。そうすると,引用発明の「バ
リア層」に相違点2に係る構成を採用することは,当業者が容易になし得ることで
あり,審決の判断に誤りはない。
この点,原告は,補正発明では,輝度安定性の向上等,有機発光素子の1つ以上
の特性を向上させるために,陽極キャッピング層にCrを含む構成を採用したので
あり,仕事関数の大きい材料としてCrを採用したのではないと主張する。
しかし,相違点2の容易想到性は,引用発明において「バリア層」にCrを用い
るという構成に想到することが容易か否かで判断されるのであって,仕事関数の大
きい材料としてCrを採用したか否かは関係ない。
ウ補正発明の効果について
本願明細書の段落【0095】ないし【0120】及び表1ないし表9の記載か
ら,実施例及び比較例に用いられたサンプルは全て,陽極がITO(厚さ約200
nm),電子受容層がNPB+F4TCNQ(体積比9:1)(厚さ10nm),
陰極がMg+Ag(体積比9:1)(厚さ約120nm)であり,表1ないし表9
から読み取れる効果は,上記のような特化したケースにのみ当てはまる作用効果で
あるといえる。これに対して,補正発明は,「陽極」,「電子受容層」及び「陰
極」を上記のものに限定していない。よって,表1ないし表9から読み取れる効果
が,上記のものには限定されない「陽極」,「電子受容層」及び「陰極」を備えた
補正発明の有機発光素子に一般化された作用効果であるということはできない。
また,本願明細書の表1ないし表9は,陽極キャッピング層が「Pd,Mg又は
Cr」を含むことによる効果を示すものではない。表1からは,輝度安定性向上と
いう作用効果は陽極キャッピング層に「Au」が含まれる場合に奏する作用効果で
あるということもできる。そして,他の実施例(表2ないし表9)においても,陽
極キャッピング層に「Pd」を含む場合の作用効果を示すものは記載されていない
から,本願明細書には,陽極キャッピング層に「Pd,Mg又はCr」を含むこと
により,輝度安定性向上の効果を奏することを示す記載はない。
そうすると,本願明細書の表1ないし表9から認められる効果は,補正発明の奏
する効果とはいえず,むしろ,引用発明から予測し得る範囲内の効果であるといえ
る。したがって,補正発明の効果は格別のものではないとした審決の認定に誤りは
ない。
(4)審判手続上の瑕疵(取消事由4)に対して
周知技術1は文献1のほか乙1にも,周知技術2の1は文献2のほか乙2及び3
2にも,周知技術2の2は乙3及び4に,周知技術3は乙4に,周知技術4は乙1
及び2に記載されており,いずれも周知技術であると認められる。
周知技術は,文献等を例示するまでもなく,当業者であれば当然知っているはず
の事項であるから,意見書提出又は補正の機会を与えなくとも,出願人に対して,
反論の機会を奪ったことにはならない。審決に審判手続上の瑕疵はない。
第4当裁判所の判断
1事実認定
(1)本願明細書の記載
本願明細書には,以下の記載がある(甲1)。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】有機発光素子(OLED)は,ディスプレイの用途における有望な
技術である。フルカラーディスプレイの用途では,性能に優れた赤色,緑色,青色
OLEDが望まれる。・・・従って,本発明の実施形態の課題でもあるが,多様な
商業用途に利用できるようにするため,各色,特に青色発光OLEDの輝度安定性
を更に向上させる必要がある。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】本願明細書において「輝度安定性」又は「安定性」は,OLEDの
発光時間の長さを意味する。特に明記しない限り,「輝度安定性」に関する値はO
LEDの半減期を時間単位で表したものである。半減期とは,初めのバーンイン期
間後,発光強度が50%に低下するまでの時間の長さである。」
「【0014】・・・陽極キャッピング層(及び「陽極キャッピング領域」)は
「陽極」の一部とみなすこともできる。また,実施形態によっては,電子受容層を
「発光領域」の一部としているものもあれば,電子受容層を「陽極キャッピング領
域」の一部としているものもある。なお,OLED領域の名称は便利な分類体系で
あるが,本発明はある層を1つの領域の一部あるいは別の隣接領域の一部とみなす
といった任意の指定に何ら限定されない。
【0015】本発明の各実施形態は,OLEDの構成において,陰極,エレクト
ロルミネセンス層,電子受容層,陽極キャッピング層及び陽極の一般的シーケンス
(これを「一般的シーケンス」と呼ぶ)を変更することなく,エレクトロルミネセ
ンス層,電子受容層及び陽極キャッピング層の前後にそれぞれ挿入される1層以上
の付加的な層を含む。基体は陰極の前もしくは陽極の後に設けることができる。例
えば,2層の陽極キャッピング層を設けた実施形態では,両陽極キャッピング層に
挟持されるように電子受容層を配置してもよい。この場合,電子受容層の前に付加
的な陽極キャッピング層が存在するが,電子受容層はエレクトロルミネセンス層の
後,陽極キャッピング層は電子受容層の後にあるため,一般的シーケンスは侵害さ
れない。」
「【0043】
2.電子受容層
実施形態において,電子受容物質を含有する電子受容層は,陽極キャッピング層
とエレクトロルミネセンス層との間の正孔注入障壁を減ずる正孔注入層とみなして
もよい。実施形態では,電子受容層はエレクトロルミネセンス層と接触する。電子
受容層は1種以上の電子受容物質から構成できる。」
「【0049】陽極キャッピング領域
1.陽極キャッピング層
実施形態において,1層以上の陽極キャッピング層は,輝度安定性の向上等,本
発明のOLEDの1つ以上の特性を向上させるために用いられる。実施形態におい
て,陽極キャッピング層は,電子受容層及び陽極の少なくとも一方に接触する。実
施形態において,1層以上の陽極キャッピング層は,有機及び/又は無機の1種以
上の好適な物質で構成される。・・・
【0050】陽極キャッピング層に用いる好適な無機物質として,例えば無貴金
属を含有する物質,及び金属を含有しない無機物質が挙げられる。・・・
【0051】無機金属を含有する物質として,・・・元素金属(Mg,Cr,A
u,・・・等),金属合金(Mg-Ag合金,Li-Al合金,Au-Pd合金,
Au-Pt合金,Pt-Pd合金,Pd-Ag合金等)が挙げられる。」
「【0055】陽極キャッピング層に用いる好適な有機物質として,例えば芳香
族第三級アミン誘導体,インドロカルバゾール誘導体及びポルフィリン誘導体等の
正孔輸送物質が挙げられる。具体的には銅フタロシアニン,・・・。」
「【実施例】
【0095】下記実施例において,OLEDの構成は,以下の通りである:基体
/陽極/1層以上の陽極キャッピング層/電子受容層/発光領域の1層/発光領域
のもう1層/陰極。
【0096】下記実施例において,複数の層が存在する場合,層を左から右に読
む際,1番目に記載される層は他層よりも陽極に近い位置にあるものとする。例え
ば,「グループIの発光領域の層:NPB(600)/AlQ3(750)」の場
合,NPB層はAlQ3層より陽極に近い。
【0097】かっこ内の数字は,層厚を示す(単位Å)。コロンで分けられた数
字(例えば,1:1)は材料比率を示す(体積比)。
【0098】以下の用語について説明する。
「ITO」:インジウムスズ酸化物。
「NPB]:N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニルベン
ジジン
「AlQ3」:トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム/トリス
(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム/トリス(8-ヒドロキシキノリナト)
アルミニウム
「F4TCNQ」:テトラフルオロ・テトラシアノキノジメタン
「CuPc」:銅フタロシアニン(この有機金属化合物を有機物質とみなす)
「BH2」:第三級ブチルで置換した9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニ
ルエテニル)フェニル]アントラセン(TBADN)
「BD2」:第三級ブチルで置換したペリレン
「Rub」:5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン(Rubren
e)
【0099】全グループ(グループI乃至IX)の全てのOLEDは,真空下
(5×10-6トル),UVオゾンクリーニング法により予めクリーニングを施し
たITO被覆ガラス基体上に物理蒸着することにより製造された。全てのデバイス
は共通の陽極(厚さ約200nm/ITO)と陰極(厚さ約120nm/Mg及び
Ag(体積比9:1))を備えている。
【0100】特に明記しない限り,「輝度安定性比率(対比較例)」と題した列
の設定値は以下に基づいて算出された。
初期輝度(Lo):AC駆動/平均順電流密度=約31.25mA/cm2初期
電圧(Vo):比較実施例の初期電圧と比べて差異が約5V以内
【0101】輝度安定性試験は,平均順電流密度を約31.25mA/cm2と
したAC駆動電流を使用し,窒素雰囲気下でOLEDを動作させ,フォトダイオー
ドを用いて装置輝度の逓減をモニタリングすることにより実施した。約20時間の
初期バーンイン期間の後,Loから10%減衰するまでの経過時間を記録した。Lo
=100cd/m2から10%減衰するまでの時間を,上で測定したLoから1
0%減衰するまでの時間をもとに下記関係式に基づいて計算した。
Lo=100cd/m2から10%減衰するまでの時間=(上で測定されたLoか
ら10%減衰するまでの時間)×(上記で測定されたLo)/100
【0102】輝度安定性比率(対比較例)は,「本発明の例示的デバイスから得
られたLo=100cd/m2から10%減衰するまでの時間」を「陽極キャッピ
ング層を設けない点を除いて全て同じ条件の比較実施形態のOLEDから得られた
Lo=100cd/m2から10%減衰するまでの時間」で除することで得られる。
【0103】
グループI実施例(エレクトロルミネセンスカラー:緑色)
グループIの発光領域の層:NPB(600)/Al03(750)
【0104】【表1】(別紙1(本願明細書)表1のとおり)
【0105】
グループII実施例(エレクトロルミネセンスカラー:緑色)
グループIIの発光領域の層:NPB(200)/NPB+AlQ3(1:1)
(800)/AlQ3(200)
【0106】【表2】(別紙1(本願明細書)表2のとおり)
【0107】
グループIII実施例(エレクトロルミネセンスカラー:緑色)
グループIIIの発光領域の層:NPB(600)/AlQ3(750)
【0108】【表3】(別紙1(本願明細書)表3のとおり)
【0109】
グループIV実施例(エレクトロルミネセンスカラー:緑色)
グループIVの発光領域の層:NPB(600)/AlQ3(750)
【0110】【表4】(別紙1(本願明細書)表4のとおり)
【0111】
グループV実施例(エレクトロルミネセンスカラー:緑色)
グループVの発光領域の層:NPB(600)/AlQ3(750)
【0112】【表5】(別紙1(本願明細書)表5のとおり)
【0113】
グループVI実施例(エレクトロルミネセンスカラー:緑色)
グループVIの発光領域の層:NPB(600)/AlQ3(750)
【0114】【表6】(別紙1(本願明細書)表6のとおり)
【0115】
グループVII実施例(エレクトロルミネセンスカラー:青色)
グループVIIの発光領域の層:NPB(300)/NPB+BH2+BD2
(49:49:2)(300)/BH2(50)/AlQ3(250)
【0116】【表7】(別紙1(本願明細書)表7のとおり)
【0117】
グループVIII実施例(エレクトロルミネセンスカラー:青色)
グループVIIIの発光領域の層:NPB(300)/BH2(300)/A
lQ3(300)
【0118】【表8】(別紙1(本願明細書)表8のとおり)
【0119】
グループIX実施例(エレクトロルミネセンスカラー:白色)
グループIXの発光領域の層:NPB(300)/NPB+BH2+Rub(4
9:49:2)(300)/BH2(300)/AlQ3(300)
【0120】【表9】(別紙1(本願明細書)表9のとおり)」
(2)引用文献の記載
引用文献には,以下の記載がある。引用文献中の図9は,別紙2(引用文献)図
9のとおりである。(甲4)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,一対の電極間に有機化合物を含む膜(以下,
「有機化合物層」と記す)を設けた素子に電界を加えることで,蛍光又は燐光が得
られる発光素子を用いた発光装置に関する。」
「【0002】
【従来の技術】本発明でいう発光素子とは,電界を加えることにより発光する素
子である。その発光機構は,電極間に有機化合物層を挟んで電圧を印加することに
より,陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機化合物層中で
再結合して,励起状態の分子(以下,「分子励起子」と記す)を形成し,その分子
励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光するといわれている。」
「【0013】
【発明が解決しようとする課題】従来では,仕事関数の小さい材料として特に元
素周期律の1族又は,2族に属する元素の単体もしくはこれを含む化合物を用いて,
陰極と有機化合物層との界面に陰極バッファー層が形成されていた。」
「【0016】そこで,本発明では発光素子の作製において,これまでのように
陰極バッファー層を形成した場合に生じる問題を解決すべく,その代わりとなる新
たな層を形成し,陰極からの電子の注入性を向上させると共に作製上の問題を解決
するための手段を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明では,陰極と有機化合物層との界面にこれ
までの陰極バッファー層の代わりに金属元素と非金属元素との組み合わせからなり,
かつ導電性を有する無機化合物を用いて無機導電層を形成し,さらに前記無機化合
物は,陰極材料よりも仕事関数が小さいことを特徴としている。」
「【0154】なお,図9(A)に示す発光素子は,陰極901,無機導電層9
02,有機化合物層903,バリア層908,及び陽極909からなり,有機化合
物層903は,電子輸送層904,ブロッキング層905,発光層906,正孔輸
送層907の積層構造を有している。なお,赤色発光を示す発光素子を構成する材
料及び膜厚について図9(B)に示し,緑色発光を示す発光素子を構成する材料及
び膜厚について図9(C)に示し,青色発光を示す発光素子を構成する材料及び膜
厚について図9(D)にそれぞれ示す。」
「【0162】なお,本実施例における発光素子の構造では,有機化合物層90
3を形成した後で,透明導電膜からなる陽極909がスパッタリング法により形成
される。そのため,陽極909形成時に有機化合物層903の表面に何らかのダメ
ージが与えられる。そこで,本実施例では,有機化合物層903上にバリア層90
8を設けることにより有機化合物層903に与えられるダメージを防止する。
【0163】なお,バリア層908を形成する材料としては,金,銀といった仕
事関数の大きい材料や正孔注入性を有するCu-Pc等を用いることができる。」
(3)文献1の記載
文献1には,以下の記載がある(甲5)。
「【従来の技術】
・・・
【0004】このような有機EL素子においては,駆動電圧を低下させ,発光効率
を高めるために,電極からの電荷の注入効率を向上させることが求められている。
注入効率の向上には,電極とEL層との間に正孔注入層または電子注入層を用いる
ことが有用であることが知られ,さらに陽極からの正孔の注入と,陰極からの電子
の注入のバランスを図ることもなされている。」
(4)文献2の記載
文献2には,以下の記載がある(甲6)。
「【0015】まず,図1(1)に示すように,石英ガラス等からなる基板1を
洗浄した後,この基板1上に,金属膜2を形成する。ここでは,例えばクロム(C
r)膜等のように仕事関数が高く,陽極として用いられる金属膜2をスパッタリン
グ法によって形成する。・・・
【0016】尚,仕事関数の高い金属膜2としては,Crの他に,モリブデン
(Mo),タングステン(W),タンタル(Ta),ニオブ(Nb),ニッケル
(Ni),白金(Pt)等からなるものであっても良い。
【0017】以上のようにして得られた金属膜2は,その材質及び成膜方法に関
わらず結晶構造が多結晶構造となり,その表面荒さが大きく表面に突起を有するも
のになる。
【0018】そして,この金属膜2の形成に引き続き,本発明の特徴となる緩衝
薄膜3の形成を行う。この緩衝薄膜3は,金属膜2を構成する金属材料の酸化膜で
あるか,またはCrの酸化膜であることとする。だたし,この緩衝薄膜3は,金属
膜2と共に下部電極の一部を構成するものとなるため,この緩衝薄膜3が金属膜2
を構成する金属材料の酸化膜である場合には,以降の工程で形成する有機層よりも
導電性が高い必要があり,そのなかでもできるだけ導電性の高い材料であることが
好ましい。そこでここでは,金属膜2上に,クロムの酸化物からなる緩衝薄膜3を
形成することとする。」
「【0038】この発光素子10においては,下部電極4の構成を,クロムから
なる金属材料層2a上にクロムの酸化物からなる緩衝薄膜層3aを積層した二層構
造としている。ここで通常は,多結晶構造として成膜される金属膜2よりも,この
金属膜2を構成する金属材料の酸化膜の方が,その表面状態がより滑らかに成膜さ
れる。特に,クロムの酸化物は,電極として用いたられるどの金属材料膜よりもそ
の表面粗さを小さく保って成膜される。
【0039】しかも,金属材料層2aを構成する金属の酸化物のうち有機層より
も導電性の高い材料や,特に酸化物の中でも導電性の高いクロムの酸化物によって
緩衝薄膜層3aを構成することで,この緩衝薄膜層3aが下部電極として機能する
ようになる。
【0040】このため,表面層を構成する緩衝薄膜層3aによって,金属材料層
2aの表面の面粗さが緩和された下部電極4が構成されることになる。したがって,
この下部電極4と,有機層6を介してこの下部電極4上に設けられた光透過性上部
電極7との間隔の面内均一性が確保される。
【0041】この結果,下部電極4と光透過性上部電極7との間に電界集中箇所
が発生し難くなり,漏れ電流の発生を防止することが可能になると共に,極度の電
界集中によるダークスポットの発生を防止することが可能になり,安定した発光効
率を維持できる上面発光型の発光素子を得ることが可能になる。」
2一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1)について
(1)補正発明について
補正発明は,ディスプレイの用途における有望な技術である有機発光素子(OL
ED)につき,多様な商業用途に利用できるようにするため,各色,特に青色発光
OLEDの輝度安定性(OLEDの半減期(初めのバーンイン期間後,発光強度が
50%に低下するまでの時間の長さ)を時間単位で表したもの)を更に向上させる
必要があるという課題があったことから,この課題を解決するために,陰極,有機
エレクトロルミネセンス物質及び電荷輸送物質を含有する層,電子受容層,陽極キ
ャッピング層,陽極,及び陰極の前もしくは陽極の後のシーケンスで設けられる基
体,を含む有機発光素子において,前記陽極キャッピング層は,Pd,Mg,又は
Crを含むとの構成を採用した発明である。
前記の本願明細書の記載によると,補正発明に係る有機発光素子は,基本的には,
陰極,有機エレクトロルミネセンス物質及び電荷輸送物質を含有する層,電子受容
層,陽極キャッピング層,陽極の順で配列されていると認められる。
(2)引用発明について
引用文献には,一対の電極間に有機化合物を含む膜(有機化合物層)を設けた素
子に電界を加えることで,蛍光又は燐光が得られる発光素子を用いた発光装置に関
して,従来,陰極と有機化合物層との界面に形成されていた陰極バッファー層の代
わりに,金属元素と非金属元素との組合せからなり,導電性を有し,陰極材料より
も仕事関数が小さい無機化合物を用いて無機導電層を形成することにより,陰極か
らの電子の注入性を向上させるとともに作製上の問題を解決することができる旨記
載されている。
引用発明は,無機導電層が形成された有機発光素子に関する発明であり,その内
容は,第2の3(2)アのとおりである。引用発明に係る有機発光素子は,陰極,無
機導電層,有機化合物層,バリア層,及び陽極の順で構成されており,有機化合物
層は,電子輸送層,ブロッキング層,発光層,正孔輸送層の積層構造を有している。
そして,引用文献の記載によると,引用発明では,有機化合物層を形成した後に陽
極がスパッタリング法により形成されることから,陽極形成時に有機化合物層の表
面に与えられるダメージを防止するために,「バリア層」は,有機化合物と陽極と
の間に設けられ,金,銀等の仕事関数の大きい材料や正孔注入性を有するCu-P
c(銅フタロシアニン)等の材料から形成される。
(3)判断
補正発明に係る特許請求の範囲では,「陽極キャッピング層」について,「Pd,
Mg,又はCrを含む」ことが特定され,他の限定はない。
ところで,本願明細書の記載によれば,補正発明の「陽極キャッピング層」は,
輝度安定性の向上等,OLEDの1つ以上の特性を向上させる目的で設けられるも
のである。補正発明に係る有機発光素子において,「陽極キャッピング層」は,基
本的には電子受容層と陽極との間に配列され,陽極の一部とみなすこともできるも
のであり,1層以上存在し,「陽極キャッピング層」が電子受容層及び陽極の少な
くとも一方に接触している実施形態が示されている。電子受容層と「陽極キャッピ
ング層」との間,「陽極キャッピング層」と陽極との間に1層以上の付加的な層が
挿入される場合も含まれる。
これに対し,引用発明における「バリア層」は,陽極形成時に有機化合物層の表
面に与えられるダメージを防止するため,有機化合物と陽極との間に設けられるも
のであり,金,銀等の仕事関数の大きい材料や正孔注入性を有するCu-Pc等の
材料から形成される。
以上によると,引用発明の「バリア層」は,陽極形成時のダメージ防止の目的で
設置されるものであるのに対し,補正発明の「陽極キャッピング層」は,輝度安定
性の向上等,OLEDの1つ以上の特性を向上させる目的で設けられるものであっ
て,両発明では,上記各構成を採用した目的において相違する。引用発明の「バリ
ア層」は,上記設置目的から,陽極と有機化合物層との間に,これらに接して設置
されるものであると認められる。陽極と「バリア層」の間,又は「バリア層」と有
機化合物層の間に別の層が存在する場合には,その層が有機化合物層の表面に与え
られるダメージを防止する効果を奏することから,そのような層に重複して「バリ
ア層」を設ける必要性はない。これに対し,補正発明の「陽極キャッピング層」は,
陽極と電子受容層との間にあり,陽極に接している場合を含むが,陽極と接するこ
とに限定されるものではない。また,引用発明の「バリア層」を形成する材料は,
金,銀等の仕事関数の大きい材料や正孔注入性を有するCu-Pc等であるのに対
し,補正発明の「陽極キャッピング層」は,Pd,Mg,又はCrを含むことを必
須とする。
以上のとおり,引用発明の「バリア層」と補正発明の「陽極キャッピング層」と
は,その設置目的や技術的意義が異なり,設置位置も常に共通するものではなく,
材料も異なることからすると,引用発明における「バリア層」が補正発明における
「陽極キャッピング層」に相当するとは認められない。
(4)被告の反論に対して
被告は,有機EL素子(装置)の技術分野において,「陽極キャッピング層」の
語は,その技術内容を示していないこと,本願明細書には,「陽極キャッピング
層」に関して,実施形態が記載されているのみであること,「陽極キャッピング
層」の輝度安定性の向上等の原理(メカニズム)についての記載は一切ないことな
どから,本願明細書の記載を参照しても,その構成を特定することはできないこと
を前提として,本願明細書には,「陽極キャッピング層」に用いる物質として,
「Au」や「銅フタロシアニン」が挙げられており,引用文献にも,引用発明の
「バリア層」に用いる物質として,仕事関数の大きい「金」や正孔注入性を有する
「Cu-Pc」が挙げられていることなどから,補正発明と同様に電子受容層(正
孔輸送層)と陽極との間にある引用発明の「バリア層」は補正発明の「陽極キャッ
ピング層」に相当するといえると主張する。
しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。
本願明細書には,「陽極キャッピング層」に好適な物質として複数の有機・無機
物質が例示され,「陽極キャッピング層」の輝度安定性の向上等の原理(メカニズ
ム)についての記載はない。しかし,補正発明は,実施例の実験結果に基づき,本
願明細書に例示された物質のうち,その効果が確認できるPd,Mg,又はCrを
含むことを「陽極キャッピング層」の要件としていることが認められる。これに対
し,引用発明の「バリア層」の材料として例示されている仕事関数の大きいAgは,
本願明細書に陽極キャッピング層の材料として例示されていない上,本願明細書の
比較例Ⅵ-2及びⅥ-3によると,陽極キャッピング層にAgを使用した場合,輝
度安定性が低下することが確認される。してみると,引用発明において「バリア
層」に適している材料が,補正発明において「陽極キャッピング層」の材料として
適していないことが示されている。
以上によれば,補正発明における「陽極キャッピング層」の材料は,引用発明に
おける「バリア層」の材料とは相違すると理解でき,前記のとおり,引用発明にお
ける「バリア層」と補正発明における「陽極キャッピング層」とは,その設置目的
が相違し,設置位置も必ずしも同じではないことからすると,引用発明における
「バリア層」が補正発明における「陽極キャッピング層」に相当する(一致する)
と認定することはできない。
(5)小括
以上のとおり,補正発明における,Pd,Mg,又はCrを含む陽極キャッピン
グ層は,引用発明における,仕事関数の大きい材料や正孔注入性を有する材料から
なるバリア層と相違する。補正発明の「陽極キャッピング層」と引用発明の「バリ
ア層」とが一致することを前提とした審決の補正発明と引用発明の一致点及び相違
点の認定には,誤りがある。
3周知技術2の認定の誤り(取消事由2)について
(1)文献2に記載された発明の内容
前記の文献2の記載によると,文献2に記載された発明は,基板上に金属膜を形
成し,その上に緩衝薄膜を形成した上で,有機層,光透過性上部電極を形成する発
光素子に関する発明である。金属膜は,表面粗さが大きく,表面に突起を有するた
め,金属膜の上に金属膜より表面粗さの小さい緩衝薄膜を形成することにより,下
部電極と,有機層を介して下部電極上に設けられた光透過性上部電極との間隔の面
内均一性が確保され,下部電極と光透過性上部電極との間に電界集中箇所が発生し
難くなり,漏れ電流の発生を防止することが可能になるとともに,極度の電界集中
によるダークスポットの発生を防止でき,安定した発光効率を維持できる発光素子
を得ることができる。金属層は,クロム(Cr)等のように仕事関数が高い物質で
形成され,緩衝薄膜は,金属膜2を構成する金属材料の酸化膜か,Crの酸化膜で
形成される。
(2)周知技術2の1について
前記のとおり,文献2には「例えばクロム(Cr)膜等のように仕事関数が高く,
陽極として用いられる金属膜2をスパッタリング法によって形成する。」「尚,仕
事関数の高い金属膜2としては,Crの他に,・・・」と記載されている。また,
特表2002-516459公報(乙2)は有機発光ダイオード素子に関する発明
が記載された公報であるが,同公報中には,電極と有機積層体との間に配置される
高仕事関数材料の薄層の材料として,高仕事関数の性質を持つ「Cr」が例示され
ている。特開平10-144957公報(乙3)は,有機電界発光ダイオードに関
する発明が記載された公報であるが,同公報中には,有機領域と陽極との間に位置
する「バリア層」を形成する仕事関数の高い材料の一つとして,「Cr」が挙げら
れている。
以上によると,「有機発光素子に用いられる仕事関数の大きい材料として,Cr
はよく知られた材料であること」(周知技術2の1)は,本願優先日当時,当業者
によく知られた事項であると認められる。
(3)周知技術2の2について
前記のとおり,引用発明において「バリア層」は,陽極形成時に有機化合物層の
表面に与えられるダメージを防止するため,有機化合物と陽極との間に設けられる
ものであるのに対し,文献1における「緩衝薄膜層」は,表面粗さが大きく,表面
に突起を有する金属膜の上に金属膜より表面粗さの小さい緩衝薄膜を形成すること
により,下部電極と光透過性上部電極との間隔の面内均一性を確保するものである。
引用発明の「バリア層」と文献1に記載された「緩衝薄膜層」とは,設置される目
的,その効果が異なり,「緩衝薄膜層」を「バリア層」に相当するものであると認
めることはできない。したがって,文献2から,「Crが電極のバリア層として用
いることも行われている」との事実を認めることはできず,周知技術2の2が,本
願優先日当時,当業者によく知られた事項であると認めることはできない。
また,上記のとおり,特開平10-144957公報(乙3)には,有機領域と
陽極との間に位置する「バリア層」を仕事関数の高い材料の一つである「Cr」で
形成することが記載されているが,乙3の「バリア層」は,有機発光ダイオードの
製造中に,蒸着した電極材料が有機物皮膜へ拡散するのを防止するための層であり,
引用発明の「バリア層」とは,設置される目的が異なる。
特開2000-276950公報(乙4)には,有機EL素子などの電極等とし
て使用される透明導電薄膜において,低抵抗,高透過率,低面粗度という課題を解
決するため,ITOを用いた透明導電性層と,その上に形成される金属酸化物層と,
これら二つの層の間にITOと金属酸化物とを含む混合層を備える構成とし,混合
層及び金属酸化物層に金属酸化物としてクロム(Cr)の酸化物が使用可能である
ことが記載されている。上記混合層及び金属酸化物層も,引用発明の「バリア層」
とは,設置される目的が異なる。
以上によると,文献2並びに乙3及び4から,「Crが電極のバリア層として用
いることも行われていること」(周知技術2の2)が,本願優先日当時,当業者に
よく知られた事項であると認めることはできない。
(4)小括
以上のとおり,周知技術2の1は,本願優先日当時,当業者によく知られた事項
であると認められるが,審決が,周知技術2の2が,本願優先日当時,当業者によ
く知られた事項であるとした認定には誤りがある。
4容易想到性の判断の誤り(取消事由3)について
(1)相違点1について
前記のとおり,引用発明における「バリア層」は,有機化合物層を形成した後,
陽極形成時に有機化合物層の表面に与えるダメージを防止する目的で,有機化合物
と陽極との間に設けられるものであり,その設置目的からすると,「バリア層」は,
陽極と有機化合物層との間に,これらに接して設置されるものであると認められる。
陽極と「バリア層」の間,又は「バリア層」と有機化合物層の間に別の層が存在す
る場合には,その層が有機化合物層の表面に与えられるダメージを防止する効果を
奏することから,そのような層に重複して「バリア層」を設ける必要性はない。し
たがって,引用発明においては,陽極と有機化合物層との間に「バリア層」以外の
層が存在することは予定されていないというべきである。
ところで,前記の文献1によれば,本願優先日当時,有機発光素子において,駆
動電圧を低下させ,発光効率を高めるために,陽極とEL層との間に,正孔注入層
を設けるとの技術常識が存在したことが認められる。しかし,陽極とEL層との間
に正孔注入層を設けるとの技術常識が存在したからといって,有機化合物層を形成
した後,陽極形成時に有機化合物層の表面に与えるダメージを防止する目的で,
「バリア層」を設けるとの引用発明の技術に,有機発光素子に正孔注入層を設ける
との課題・目的において異なる技術を組み合わせることが,容易であったというこ
とはできない。
したがって,補正発明の相違点1に係る構成に至るのは容易ではなく,この点の
審決の判断には誤りがある。
(2)相違点2について
ア審決は,引用発明における「バリア層」が補正発明における「陽極キャッピ
ング層」に相当するとして相違点2を認定した上で,相違点2が容易想到であると
判断したが,前記のとおり,容易想到性の判断の前提とした相違点2の認定内容に
は誤りがある。そこで,以下では,相違点2を「補正発明は,Pd,Mg,又はC
rを含む陽極キャッピング層が存在するのに対して,引用発明は,仕事関数の大き
い材料や正孔注入性を有する材料からなるバリア層が存在する点。」とした上で,
容易想到性の有無を判断する。
補正発明においては,本願明細書の表1ないし表9のとおり,陽極キャッピング
層にPd,Mg,又はCrを含む構成とすることにより,陽極キャッピング層を設
けない比較例又は陽極キャッピング層にPd,Mg,Cr以外の物質を使用した比
較例と対比して,輝度安定性向上の効果が生じていることが示されている。これに
対し,引用文献や文献1及び2には,有機発光素子にCrを含む層を設けることに
より輝度安定性が向上することにつき,何の記載も示唆もない。
したがって,補正発明の効果は,引用発明が有する効果とは異質の効果であり,
引用発明や周知技術から当業者が予測し得ない効果であると認められ,補正発明は,
当業者が容易に想到し得ない発明であるといえる。
イこの点について,被告は,本願明細書の実施例及び比較例に用いられたサン
プルは全て,陽極がITO(厚さ約200nm),電子受容層がNPB+F4TC
NQ(体積比9:1)(厚さ10nm),陰極がMg+Ag(体積比9:1)(厚
さ約120nm)のものであり,また,「陽極キャッピング層」に「Pd」を含む
場合の作用効果を示すものは記載されていないことなどから,本願明細書の表1な
いし表9に示された効果が,補正発明が奏する効果であるとはいえないと主張する。
しかし,以下のとおり,被告の主張は失当である。
確かに,本願明細書の実施例及び比較例で用いられた有機発光素子(OLED)
は,全て,陽極がITO(厚さ約200nm),電子受容層がNPB+F4TCN
Q(体積比9:1)(厚さ10nm),陰極がMg+Ag(体積比9:1)(厚さ
約120nm)である。しかし,例えば,比較例Ⅰ-1,Ⅳ-1及びⅤ-1はいず
れも陽極キャッピング層がないのに対し,実施例Ⅰ-2はAu:Pd(厚さ0.5
nm)からなる陽極キャッピング層を設けたものであるが,比較例Ⅰ-1に比べ,
輝度安定性比率が3.5に,実施例Ⅳ-2はCr(厚さ0.7nm)からなる陽極
キャッピング層を設けたものであるが,比較例Ⅳ-1に比べ,輝度安定性比率が3
6.4に,実施例Ⅴ-2はMg(厚さ5nm)からなる陽極キャッピング層を設け
たものであるが,比較例Ⅴ-1に比べ,輝度安定性比率が18.6に,いずれも向
上している。一方,比較例Ⅵ-1は陽極キャッピング層がないのに対し,比較例Ⅵ
-2はAg(厚さ0.7nm)からなる陽極キャッピング層を設けたものであるが,
比較例Ⅵ-1と比べた輝度安定性比率は0.36であり,輝度安定性が低下してい
る。これらの結果によると,陽極,電子受容層,陰極を上記の構成とすることと,
輝度安定性の向上との関係は不明であるが,少なくとも,補正発明は,陽極キャッ
ピング層が「Pd,Mg又はCr」を含むことにより,輝度安定性が向上するとい
う効果を奏すると認めることができる。
以上によれば,「Pd,Mg又はCr」を含んだ陽極キャッピング層を設けるこ
とによって,輝度安定性が向上することが確認でき,補正発明は,輝度安定性が向
上するという効果を奏すると認められる。
(3)小括
以上のとおり,補正発明の相違点1に係る構成に至ることが容易であるとはいえ
ず,また,補正発明の効果は,引用発明や周知技術から当業者が予測し得ない効果
であり,引用発明に接した当業者が補正発明に到るのは容易でない。したがって,
補正発明が容易想到であるとした審決の判断には,誤りがある。
5結論
以上のとおり,原告主張の取消事由には理由があり,審決には,結論に影響を及
ぼす誤りがある。
よって,その余の点を判断するまでもなく,審決は,違法であるとして取り消す
べきであるから,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
小田真治
別紙1(本願明細書)表1
表2
表3
表4
表5
表6
表7
表8
表9
別紙2(引用文献)図9

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