弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告Aの上記12号事件の訴えのうち,被告Bに10億1504万円を岐阜市に支
払うよう求める部分,同原告の上記25号事件の訴えのうち,Bに9億2800万円
を岐阜市に支払えとの請求を怠ることの違法確認を求める訴え及び被告Cに対する訴
え並びに原告Dの上記26号事件の訴えのうち,被告Bに6億7837万円を岐阜市
に支払うよう求める部分及び被告Cに対する訴えを,いずれも却下する。
2原告らの被告B及び被告岐阜市長Cに対するその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1原告Aの請求の趣旨
ア被告Bは,岐阜市に対し,金36億2504万円及びこれに対する平成12年7月
11日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
(12号事件)
イ被告岐阜市長Cが,Bに対し,9億2800万円を岐阜市に支払えとの請求を怠る
ことは違法であることを確認する。(25号事件)
ウ被告岐阜市長Cが,Bに対し,16億3000万円を岐阜市に支払えとの請求を怠
ることは違法であることを確認する(25号事件)。
エ被告Cは,岐阜市に対し,9億6720万円及びこれに対する支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え(25号事件)。
2原告Dの請求の趣旨
被告B及び被告Cは,岐阜市に対し,連帯して,24億9557万円及びこれに対す
る平成15年12月12日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
(22号事件,26号事件)
第2事案の概要
本件は,岐阜市民である原告らが,都市計画公園事業岐阜公園整備事業に伴う先行取
得用地の土地交換契約及び建物の物件移転補償費の支出について違法な財務会計行為が
あったとして,地方自治法242条の2第1項3号,4号に基づき,被告岐阜市長Cに
対する違法確認の訴えと,岐阜市長の職にあった被告B及び現在の岐阜市長である被告
Cに対し岐阜市への損害賠償を求めるものであり,原告Aは,土地交換契約によって1
0億1504万円,建物の物件移転補償契約によって26億1000万円の合計36億
2504万円の損害が岐阜市に生じたとして,被告Bに対しその全額を岐阜市に支払う
よう(請求の趣旨ア,被告岐阜市長Cに対し土地交換契約により生じた損害のうち9億)
2800万円を被告Bに支払えとの請求を怠っていることが違法であることの確認を(請
求の趣旨イ,被告岐阜市長Cに対し建物の物件移転補償契約により生じた損害のうち1)
6億3000万円を被告Bに支払えとの請求を怠っていることが違法であるとの確認を
(請求の趣旨ウ,被告Cに対し物件移転補償契約による損害9億6720万円を支払う)
よう(請求の趣旨エ,そして原告Dは,土地交換契約によって6億7837万円,物件)
移転補償契約によって18億1720万円の合計24億9557万円の損害が岐阜市に
生じたとして,被告B及び被告Cに対し,連帯して上記金額を支払うよう,それぞれ求
めた事案である。
1前提事実
(1)当事者
原告らは,岐阜市内に在住する市民である。
被告Bは,平成5年1月から平成14年1月11日まで,岐阜市長の職にあった者
である。
被告Cは,平成14年1月11日に被告Bが市長を退職した後,同年2月28日,
岐阜市長に就任した者である。
(弁論の全趣旨)
(2)土地交換契約関係について
岐阜市土地開発公社(以下,単に公社ということがある)は,平成12年7月10。
日,国から,岐阜市α××××番31,同β××××番4の土地(1万1000平方
メートル,以下「岐阜拘置支所跡地」ともいう)を,代金12億1000万円で買い。
受けた。
岐阜市土地開発公社は,同日,宗教法人Eとの間で,岐阜拘置支所跡地とE所有の
岐阜市γ××番地1の境内地(以下「旧E所有地」という)を交換することを合意し。
た(以下「本件土地交換契約」という。。)
岐阜市(市長C)は,平成15年3月28日,岐阜市土地開発公社から,旧E所有
地を12億8265万9475円で買い受け,同日,岐阜市土地開発公社に対し,岐
阜公園整備事業に係る先行取得用地の土地売買代金として,上記代金額を支払う旨の
支出負担行為及び支出命令を経て,同月31日,上記売買代金を支払った。
(甲イ1,2,乙1,弁論の全趣旨)
(3)物件移転補償契約関係について
ア岐阜市(市長B)は,平成12年7月10日,Eとの間で,旧E所有地に所在す
る建物の移転及びこれに伴い通常生ずる損失に対する補償金(以下「本件補償金」
という)として,25億9720万円を支払うことを合意した(以下「本件物件移。
転補償契約」という。。)
同契約において,本件補償金は,Eが適法な請求書を提出し,岐阜市がそれを受
理してから30日以内に,内金8億6200万円を支払い,Eが物件を収去して,
適式の請求書を提出し,岐阜市がそれを受理してから30日以内に補償金の内金7
億8000万円を支払い,残額の9億5520万円については別途支払うものとさ
れた。
(丙17,18)
イ岐阜市は,平成12年9月8日,Eに対し,本件補償金として8億6200万円
を,その支出負担行為,支出命令を経て支払った(丙18。ウ岐阜市は,同年1)
0月27日,Eとの間で,本件物件移転補償契約の支払方法を一部変更し,上記8
億6200万円を11億9230万円に変更し,3億3120万円の増額支出負担
行為をした上,同年11月17日,Eに対し,本件移転補償金として同額を支払っ
た。また,上記残額9億5520万円を6億2400万円に変更し,平成13年6
月27日,6億2400万円の支出負担行為をし,同日,Eとの間で,上記金員の
支払方法について協定書を締結し,協定締結後30日以内に適法な請求書を受理し
たときは,同受理の日から30日以内に内金4億3680万円を支払うこととし,
残額1億8720万円の支払方法についても同様に定めた上,同年7月23日,E
に対し,本件補償金として4億3680万円を支払い,平成14年3月29日,1
億8720万円を支払った(丙17,18。)
エ岐阜市は,平成15年3月25日,Eに対し,本件補償金として7億8000万
円を,同額の支出負担行為及び支出命令を経て支払った(丙17,18。)
2争点
(1)争点1…原告Aの請求ア,イについての被告B及び被告岐阜市長Cの本案前の主

(被告らの主張)
ア岐阜市監査委員は,原告Aの岐阜市に対する住民監査請求に対し,平成13年7
月16日,監査請求を棄却する旨の通知をしたが,その内容を検討すると,原告A
の請求の趣旨アに関して請求の当否の判断をしておらず,住民監査請求を却下する
内容となっている。
イすなわち,監査委員から原告Aに通知された「監査請求の結果について」と題す
る書面によれば,岐阜市長が,国から岐阜拘置支所跡地を取得する契約及び当該土
地と旧E所有地とを交換する契約を岐阜市土地開発公社に行わせたとの主張につい
,,ては国有財産売買契約及び土地交換契約は公社の職務行為に関する事項であって
地方自治法242条1項の住民監査請求の対象にならないとして監査の対象外とし
,,ているのであるから実質的な判断としては上記監査請求を棄却したものではなく
却下したものである。
ウまた,原告Aが,物件移転補償契約の不法・不当を主張する点について,監査委
員は,当該主張が損失補償基準及び損失補償基準細則に基づく積算が不当であるの
か,特殊部材の使用等に係る積算が高いのか等具体的な部分を特定するものではな
く,原告Aの主観に基づくものであり,採用できないとしているところ,これは,
対象とする財務会計行為を他の事項から区別し,特定して認識できないものとして
いるのであるから,監査委員の結論は,監査請求を却下したものであり,それを棄
却として実体判断をしたかのような表現をしたのは誤りである。
エまた,原告Aの,国有財産売買契約に2億4000万円が上乗せされて14億5
000万円とされ,土地交換契約に2億1000万円が上乗せされ14億2000
万円とされ,公社の契約外に4億5000万円が加算されたとの主張については,
監査委員は,それらは上記公社の職務行為であるから判断しないとしているのであ
り,これは,原告Aの住民監査請求を却下したものといえる。そして,上記監査結
果が,同原告の主張を旧E所有地の購入に必要となる将来の支出を差し止める趣旨
と善解して実体判断をしている点は,本件訴訟の対象ではない。
オ上記監査結果が,利用目的なき用地取得に国から13億5000万円の補助金が
交付されるとして議会をまやかしたとの原告Aの主張の当否について判断している
部分は,財務会計上の行為についての主張に対する判断ではなく,却下すべきもの
であった。
カ上記監査結果は,原告Aの,平成13年以降の物件移転補償費及び旧E所有地の
買戻しは,債務負担行為によって今後予定される支出であることを理由に4億80
00万円を除いた45億2000万円について,市長が市に賠償するよう勧告する
ことを求める旨の主張は理由がないと述べており,請求の根拠を欠くものとして却
下を内容とする判断をしている。
キこれらによれば,原告Aの住民監査請求は実質的に却下されているのであって,
同原告は,適法な住民監査請求を経ないで訴えを提起したことになるから,同原告
の訴えはすべて却下すべきである。
(原告Aの主張)
ア国から岐阜拘置支所跡地を取得し,旧E所有地との交換契約を岐阜市土地開発公
社に行わせた行為は,上記公社の職務行為であるが,それは岐阜市と公社との債務
補償契約に基づくものであるから,住民監査請求の対象となる。
イ監査委員は,利用目的があいまいな用地取得に国からの補助金13億5000万
円が交付されることを理由にして議会をまやかしたとの請求人Aの主張に対し,適
,,切な整備計画に従い補助金が交付されるものとの手続上の経緯を判断したのみで
利用目的があいまいな公示価格約5億円弱の土地を取得するために,その8倍もの
40億円もの公金を支出することは違法であるとする主張に対する監査を避けてい
る。
ウ公共用地の取得に伴う損失補償基準において,公共用地の取得は9条2項に,建
物の移転補償費は15条にそれぞれ基準が定められているところ,岐阜市は,上記
用地取得に際し,基準価格の2.5倍,建物移転補償費は基準価格の4倍余の通常
の社会常識を逸脱した用地の取得を行い,岐阜市に40億円余の債務負担を行わせ
たことは,地方自治法242条1項所定の長の財産の取得,債務その他の義務の負
担として,違法な財務会計行為を行ったことに該当する。
(2)争点2…原告Aの請求の趣旨エ及び原告Dの請求の趣旨に対する本案前の主張
(被告Cの主張)
アこれらは,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項
4号に基づき提起されたものと解されるが,同法242条1項の規定による住民監
査請求を経ていないので,不適法であり,却下されるべきである。
イこれらは,岐阜市長の財務会計行為に関して,私人である被告Cに対して支払を
求めるものであるが上記改正後の地方自治法242条の2第1項4号によれば当,「
該普通地方公共団体の執行機関又は職員」が被告適格を有し,私人である被告には
被告適格がないから不適法であり,却下されるべきである。
(原告Dの主張)
ア訴えの変更における新請求は,新訴の提起であるから,それ自体独立した訴訟要
件を備えなければならず,出訴期間についても訴え提起時を基準として判断するの
が原則であるが,訴えの変更前後の請求の間に在する関係から,変更後の新請求に
係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守にお
いて欠けるところがないと解すべき特段の事情があるときは,例外とされる。本件
では,監査請求の対象と,訴訟の請求原因事実に社会的同一性が認められるから例
外的な扱いがなされるべきである。
イ被告適格についても,本件は,上記改正前の法242条の2第1項4号前段によ
る請求であり,被告となるのは,違法な行為をした職員個人である。
(3)争点3…岐阜市土地開発公社の土地交換契約の違法について
(原告Aの主張)
ア被告Bは,岐阜市土地開発公社をして,平成12年7月10日,国から,岐阜拘
置支所跡地を,代金12億1000万円で買い受けさせた。
岐阜市土地開発公社は,同日,Eとの間で,岐阜拘置支所跡地と旧E所有地を等
価交換することを合意した。
イ公共用地取得に伴う損失補償基準9条の2は,地価公示法の規定により公示され
た標準値の価格を基準とする。
そこで,上記の土地について,平成12年度公示地価の価格を参照すると,岐阜
拘置支所跡地(1万1000平方メートル)は,15億9500万円(公示価格1
平方メートル当たり14万5000円)となる一方,旧E所有地(4833平方メ
ートル)は5億7996万円(公示価格1平方メートル当たり12万円で計算)に
過ぎないから,Eが負担すべき交換差金として,10億1504万円が生じている
ところ,上記のとおり,岐阜市は等価交換することを合意してしまった(なお,原
告Aは訴状及び平成13年10月4日付けの書面においてこのように主張し,後記
の建物に関する物件移転補償費26億1000万円との合計36億2504万円を
岐阜市に支払うよう被告Bに求めている。その後,原告Aは,平成15年1月10
日付け準備書面において,旧E所有地の公示地価は,1平方メートルあたり11万
3000円であり,岐阜拘置支所跡地の周辺の公示価格を参考にしても,14万2
500円となり,差額は10億1850万円である旨主張し,同年9月3日受付被
告変更を内容とする書面においては岐阜拘置支所跡地は14億7400万円公,,(
示地価13万4000円)であり,旧E所有地は5億4600万円(公示地価11
万3000円)であり,交換差額は9億2800万円になると主張しているが,請
求の趣旨アについての縮減はしていないので,当初の主張を維持しているものと理
解することとする。。)
ウ岐阜市長であった被告Bは,Eの意向を反映しなければならないとしても,上記
の交換契約は,各土地の評価について路線価格とかけ離れたものであり,当時の適
正価格をできるだけ上回らないように最善の努力をすべきであるにもかかわらず,
それに反している。
そもそも被告Bは,国有地が売り払いになることに目をつけ,平成7年にEと密
,()約を交わし上記補償基準を無視してEに10億円余路線価の300パーセント
を上乗せした利益の供与を約束したために上記の行為に及んだものである。
エ被告Bは,旧E所有地について,岐阜公園整備事業用地として,観光バス専用駐
車場に利用する旨主張するが,旧E所有地は,信号機のある角地で進入・出口が制
限されているし,法令規則上も不許可であること,また,大型観光バスの駐車場と
するのに食の提供や土産物売り場などの関連施設の整備が不可欠であるが,それら
は皆無であること,その他の観点からしても不適当な立地条件である。また,観光
バス16台のために同事業を行うことは,1台当たり2億5000万円余の支出を
することになり,経済的に著しく高額に過ぎる。
オまた,観光バス専用駐車場の計画に至る経緯をみても,被告Bは,平成8年,旧
E所有地に観光客誘致を目的に猿芝居小屋の建設を計画し,平成10年には信長の
館の建設を計画したがいずれも立ち消えになったのに,用地の取得のみを先行させ
た末,とりあえず観光バス専用駐車場とすることにしたものに過ぎず,合理性がな
い。
カよって,被告Bが,岐阜市土地開発公社に行わせた土地交換契約は,公社の職務
行為ではあるが,岐阜市との債務補償契約に基づくものであり,かかる財務会計行
為は,地方自治法138条の2,地方財政法4条に反し違法であり,債務不履行な
いし不法行為に基づき,被告Bは,岐阜市に対し,本来生ずべき交換差金である1
0億1504万円について損害賠償責任を負う(請求の趣旨ア。)
また,被告Bは,上記のとおり,平成12年7月10日,岐阜市土地開発公社に
指示し,国から同日買い受けた岐阜拘置支所跡地を,旧E所有地と等価交換させ,
岐阜市に10億1504万円の損害を発生させた。
それにもかかわらず,被告岐阜市長CがBに対し,上記損害の(一部である)9
億2800万円の損害賠償請求及び遅延損害金の請求の行使を怠ることは違法であ
るから,その違法確認を求める(請求の趣旨イ。)
(原告Dの主張)
ア岐阜市土地開発公社は,平成12年7月10日,Eとの間で,岐阜拘置支所跡地
と旧E所有地を等価交換することを合意した。
イしかしながら,上記契約締結時における各土地の鑑定評価は,いずれも1平方メ
ートル当たり約11万円であり,Eが負担すべき交換差金6億7837万円が生じ
ている。
すなわち,岐阜拘置支所跡地の価格は,平成12年分の路線価,時点修正率から
すると,1平方メートル当たり11万8318円であり,旧E所有地は,1平方メ
ートル当たり10万8127円であるから,いずれも1平方メートル当たり11万
円として計算すると,岐阜拘置支所跡地が12億1000万円(1万1000平方
メートル)となり,旧E所有地が5億3163万円(4833平方メートル)であ
るから,交換差金6億7837万円が生じている。
被告Bは,この交換差金の徴収を故意に怠り,Eに対し,この交換差金を密かに
交付し,岐阜市の財産に6億7837万円の損害を生じさせた。
よって,被告B及び被告Cは,債務不履行ないし不法行為に基づき,岐阜市に対
し,連帯して6億7837円の損害賠償義務を負う(これと,後記の物件移転補償。
費18億1720万円の合計24億9557万円が原告Dの請求の趣旨欄記載の請
求となる)。
(被告らの主張)
旧E所有地は,公共事業のために取得する土地であり,その土地の価格は,国の
「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱,損失補償取扱要領」及び「公共用地の
取得に伴う損失補償基準,同細則」の規定に基づき算定したものである。
公共用地の取得に伴う損失補償基準第8条及び第9条は,取得する土地に対して
は,正常な取引価格をもって補償するものと定めており,また,都市計画区域の土
地を取得する場合には,第9条の2により,地価公示法により公示された公示価格
と標準地の価格を基準とする。または「損失補償取扱要領」別記一第10条第2項,
により,国土利用計画法施行令第9条に規定する,都道府県知事が調査した基準値
の標準価格と,標準地の評価格を比較する,とされている。
岐阜市は,平成10年1月,以上の基準により鑑定評価された不動産鑑定評価額
である平方メートル当たり30万円を基礎として,平成10年からE街区の民有地
の買収を行った。本件旧E所有地についても,岐阜市は,平成12年4月に「公共
用地の取得に伴う損失補償基準細則」別記一第8条第1項に基づき,鑑定評価の標
準地の評価格から「土地評価事務処理細則」第4条第1項に定める土地価格比準表
により,画地の個別的要因を加味し「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」別,
記一第14条第1号の規定に基づき,時点修正をして算定した額をもって,E側と
交渉に当たるよう岐阜市土地開発公社に指示し,最終的に上記契約が締結されたも
のである。
この補償額の算定は,岐阜公園整備事業に必要な旧E所有地以外の土地の不動産
鑑定書(丙10)を基に行っているが,この鑑定評価書は,地価公示法8条の「不
動産鑑定士は,都市計画区域内の土地について鑑定評価を行う場合において,当該
土地の正常な価格を求めるときは,同法6条の規定による公示価格を規準としなけ
ればならない」という規定に従い算定されたものであるので,公示価格により算定
された評価といえることから,この土地を旧E所有地における土地評価事務処理要
領5条にいう標準地とし,その価格である平方メートル当たり30万円を標準地価
格とし,損失補償基準第3条の規定及び土地評価事務処理細則7条に基づき,契約
締結の時まで価格を算定するため,公示価格の対前年変動率(時点修正)を乗じ,
さらに損失補償基準第9条及び土地評価事務処理細則4条に基づき,この標準地と
旧E所有地について土地価格形成上の要素(個別的要因)を比準表により補正し,
算定したものである。
具体的には,標準地価格(30万円)×時点修正(0.838)×画地条件(非
公開)>1平方メートル当たりの契約妥結額(24万2900円)となったもので
あり,契約額は,24万2900円×4979.45平方メートル=12億095
0万8405円としたものである。
(4)争点4…物件移転補償契約に基づく公金支出の違法について
(原告Aの主張)
ア岐阜市(岐阜市長B)は,平成12年7月10日,Eとの間で,岐阜市γ××番
1号に所在する建物の移転及びこれに伴い通常生ずる損失に対する補償金として,
26億1000万円を支払うことで合意した。
イこれは,岐阜市の公園整備事業に不必要な物件移転補償費であり,地方自治法1
38条の2,地方財政法4条1項に反する違法な財務会計行為であり,これによっ
て26億1000万円の全額が岐阜市の損害となった。
ウまた,公共用地取得に伴う損失補償基準第15条,16条に違反し,通常の4倍
もの価格になり,違法な財務会計行為である。
すなわち,物件移転補償費等の内訳書(丙4)によれば,総床面積は4661平
方メートルであるから,物件移転補償費26億円は,1平方メートル当たりの単価
が55万8000円と計上したことになるが,調査がなされた平成9年当時の単価
としては異常に高額であるし,補償契約は調査時点から3年が経過しており,公共
用地の取得に伴う損失補償基準16条によれば,時点修正がなされてないし,現価
率による減額もなされていない。
エ仮に物件移転補償費が必要でも,構外再築法による場合,価格の基準は,平成1
2年7月10日契約時の同種同等の建物の推定再建築費であり,仮にE建物全部が
非木造であったとしても,屋内の神殿部分を除いては,学校・公民館と同等のもの
で,1平方メートル当たり17万円が適正である。
E建物は昭和46年に建築されたものであり,築後33年の非木造の耐用年数は
90年,現在価格は30パーセント減であるから,1平方メートルは約12万円で
ある。
運用差損失・取り壊し工事を含め,おおむね推定再建築費の95パーセント以内
であることが補償額相当額となるから,最上限に設定しても,1平方メートル当た
り金16万5000円とするのが相当であり,延床面積4559平方メートルを乗
ずると,金7億3628万円が相当な構外再築工法による補償費となる。
本件補償金は,金26億1000万円であるから,これが推定再建築価格の95
パーセントであるから,結局金27億0400万円になり,3.5倍に水増しした
ことになる。
オよって,不必要な物件移転補償費26億1000万円を支出したことは,地方自
治法138条の2,地方財政法4条1項に反する違法な財務会計行為に該当し,岐
阜市長の職にあった被告Bは,債務不履行ないし不法行為により,岐阜市に対し,
合計26億1000万円の損害賠償義務を負う(請求の趣旨ア。)
,,,また被告Bが上記のとおり違法な物件移転補償契約を締結した結果岐阜市は
平成12年9月4日に8億6200万円を,同年11月17日に3億3120万円
を,平成13年7月9日に4億3680万円を支出したが,これらは岐阜市の損害
であり,被告市長Cが,Bに対し,債務不履行ないし不法行為に基づき上記金員の
損害賠償請求及びこれに対する遅延損害金の請求の行使を怠ることは違法であるこ
との確認を求める(請求の趣旨ウ。)
また,被告Cは,違法な物件移転補償契約に基づく契約金の支払いを拒否すべき
であったにもかかわらず,平成14年3月1日に1億8720万円,平成15年2
月24日に7億8000万円の公金を支出し,岐阜市に合計9億6720万円の損
害を発生させた。原告は,岐阜市に代位し,被告Cに対し,債務不履行ないし不法
行為に基づき,上記金員の損害賠償請求及びこれらの支払済みに至るまで年5分の
割合による遅延損害金の支払いを請求する(請求の趣旨エ。)
(原告Dの主張)
ア当時岐阜市長であった被告Bは,平成12年7月10日,Eとの間で,教会移転
補償費を25億9720万円とする移転補償契約を締結することで合意した。
(),,,岐阜市被告Bが市長在職時はEに対し同年9月8日に8億6200万円
同年11月17日に3億3120万円,平成13年7月23日に4億3680万円
を支払い,合計16億3000万円を支払った。
イところが,被告らが,国の承認を受けた教会建物の移転補償費は7億8000万
円であった。
公共用地の取得に伴う損失補償基準16条は「取引事例のない取得する建物その,
他の工作物に対しては,当該建物その他の工作物の推定再建設費を,取得時までの
経過年数及び維持保存の状況に応じて減価した額をもって補償するものとする」と。
規定しており,建物の移転に伴い木造の建物に代えて耐火建築物を建築したり,ま
たは建物の床面積を拡大したりして既設の施設の拡張改善に要する費用は補償しな
いと規定しているところ,本件物件移転補償契約においては,建築後30年以上も
経過した教会建物の延床面積合計4559.71平方メートル(渡り廊下,階段,
車庫を含む)の移転補償費を1平方メートル当たり56万9597円としているの
である。住宅金融公庫の平成12年4月1日時点の調査による都道府県別標準建設
費の1平方メートル当たりの単価は,コンクリート建物が1平方メートル当たり1
3万3900円となっており,これが取得する建物の推定再建設費の標準単価であ
る。4559.71平方メートルに13万3900円を乗じた価格は6億1054
万5169円となり,取り壊し費用1億5000万円と合算すると,国が承認した
移転補償費7億8000万円が妥当な数字であることがわかる。
ウそうすると,7億8000万円が適正な物件移転補償費であり,岐阜市は,被告
Bが市長として在職している間だけでも合計16億3000万円を支払ったから,
8億5000万円の過払いであり,被告Bは,岐阜市に同額の損害を与えたことに
なる。被告Bは,違法な財務会計行為により,岐阜市に損害を与えたことから,債
務不履行ないし不法行為に基づき,岐阜市に対し,8億5000万円についての損
害賠償義務を負う。
エその後,岐阜市(市長C)は,Eに対し,物件移転補償契約に基づき,平成14
年3月29日に1億8720万円を,平成15年3月25日に7億8000万円を
支払い,この合計9億6720万円も過払いとなり,被告B及び被告Cは,岐阜市
に同額の損害を与えたことになる。
オ平成14年2月28日に岐阜市長に就任した被告Cは,上記の物件移転補償契約
が違法な財務会計行為に該当するから,それに基づいて被告Bが市長在職中に支出
した8億5000万円について,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償請
求しなければならないにもかかわらず,その行使を違法に怠っている。
カよって,被告B及び被告Cは,連帯して,岐阜市に対し,上記エ,オ記載額の
合計18億1720万円の損害賠償をしなければならない(これと,上記争点3の。
原告Dの主張にかかる土地の交換差金6億7837万円を合計した24億9557
万円が,原告Dの前記請求の趣旨欄記載の請求である)。
(被告らの主張)
ア岐阜公園整備事業にとって必要なものは土地であるが,旧E所有地には支障とな
る建物などが存在していたため,これを除去し,更地にする必要があった。
イ建物等の移転料は,公共用地の取得に伴う損失補償基準第28条1項の規定によ
り,移転先に建物等を移転するのに通常妥当と認められる移転工法の認定を行い,
移転先に当該移転工法により移転するのに要する費用を補償するものであり,建物
等を取得する目的ではないため,移転先地に従前の建物と同種,同等の建物を建築
することが合理的と認められるので,公共用地の取得に伴う損失補償基準細則第1
5条1項1号の規定により,構外再築工法を採用したものである。
また,建物等の調査及び補償金額の積算は,専門の補償コンサルタント業者に委
託したものであり,その内容は,建物の再築費用のみならず,買収土地上にある建
物の解体費用,工作物移転費用,立竹木移転費用,移転雑費,動産移転料,祭し料
など全ての費用を含んだものであり,これらの補償額の補償項目,算定方法は公共
用地の取得に伴う損失補償基準細則第15条1項1号及び5号,第16条,20条
ないし22条に規定されている。
本件補償金額は,以上により算定した項目の数量と,損失補償算定標準書の建物
補償標準単価,見積等を積算根拠にして算定されたものであり,これをもって土地
と同様にE側と交渉に当たり,最終的に合意に至り,契約を締結したものである。
ウ原告は,岐阜市が,損失補償基準の適用を誤っているように主張するが,建物補
償は,通常,損失補償基準第28条1項により,移転補償が原則とされており,原
告のいう損失補償基準16条は,特殊なケース(事業者自らが建物等を使用する目
的で建物等を取得するとき,建物等の移転が物理的に困難である場合において,当
該建物等の所有者から買い取り請求があるときなどに適用されるもの)であり,例
外として規定されているものである。
第3争点に対する判断
1争点1(原告Aの請求の趣旨ア,イについての本案前の主張)について
原告Aの住民監査請求は,本件土地交換契約の違法を主張するものと,本件物件移転
補償契約の違法を主張する部分に大別できるところ,それぞれ適法な住民監査請求があ
ったといえるかどうかを検討する。
(1)本件土地交換契約の違法を主張する部分について
ア前記前提事実と証拠(甲イ2,甲ロ47,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,以
下の事実が認められる。
岐阜市土地開発公社は,平成12年7月10日,Eとの間で,岐阜拘置支所跡地
と旧E所有地を交換することで合意し,旧E所有地の価格を12億0950万84
05円,岐阜拘置支所跡地の価格を12億1000万円と評価して,差額(交換差
金)49万1595円をEが岐阜市土地開発公社に支払うこととした。
なお,岐阜市(市長C)は,平成15年3月28日,岐阜市土地開発公社から,
旧E所有地を12億8265万9475円で取得し,同日,岐阜市から岐阜市土地
開発公社に対して,岐阜公園整備事業に係る先行取得用地の土地売買代金として,
,12億8265万9475円を支払う旨の支出負担行為及び支出命令がなされた上
同月31日,上記代金が公社に支払われた。
原告Aは,平成13年5月28日,岐阜市監査委員に対し,住民監査請求をし,
同請求は同年6月1日受理されたが,同年7月16日,同監査請求は棄却された。
原告Aは,同年8月7日,被告Bに対し,平成14年法律第4号による改正前の地
方自治法242条の2第1項4号による損害賠償請求の訴えを提起した(原告Aの
請求の趣旨ア。)
,,イ原告Aが上記監査請求において財務会計行為の違法について主張するところは
①岐阜市土地開発公社がEとの間で締結した土地交換契約が違法であること,②そ
,,れが岐阜市との債務補償契約に基づくものであって違法であること③岐阜市長が
岐阜市土地開発公社に対してEとの間で土地交換契約を締結させることが違法であ
ること,これらを骨子とするものである。
しかしながら,①については,岐阜市土地開発公社は岐阜市とは別個の法人格を
有する団体であり,その行為は住民監査請求の対象とならず,②については,債務
補償契約の時期,内容など,財務会計行為としての特定がされておらず,③につい
ても具体的な事実の特定を欠く上,財務会計行為に該当すべきものとは解されない
から,岐阜市土地開発公社がEとの間で土地交換契約を締結したことに関する原告
Aの上記住民監査請求は不適法なものというべきである。したがって,そのように
適法な住民監査請求を経ない住民訴訟の提起(原告Aの請求の趣旨アの内の被告B
に対して土地の交換差金の損害賠償を求める部分及び同原告の請求の趣旨イ)も法
242条の2第1項に反し,不適法である。
ウまた,原告Dが,岐阜市土地開発公社とEの上記土地交換契約の締結に際し,被
告Bが交換差金の徴収を故意に怠り,Eに対し,この交換差金を密かに取得させ,
岐阜市の財産に6億7837万円の損害を生じさせたと主張する部分も,上述した
,,ところと同様に岐阜市とは人格を異にする公社の行為を問題とするものであって
財務会計行為の違法を主張するものではなく,不適法といわなければならない(原
告Dの請求の趣旨のうち,被告B及び被告Cに対して土地の交換差金の損害賠償を
求める部分。)
(2)物件移転補償契約の不法・不当を主張する部分について
前記認定事実と証拠(甲イ7)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aが上記監査請求
において,物件移転補償契約の不法・不当について具体的な理由を主張したようには
窺われず,損失補償基準及び損失補償基準細則に基づく積算が不当であるというもの
か,特殊部材の使用等に係る積算が不当に高いとする趣旨か等,その具体的な理由は
必ずしも明らかではないが,これを善解してみれば,上記の基準等の解釈指針となる
べき地方自治法138条の2,地方財政法4条1項等に照らし,観光バスの専用駐車
場として使用するとしても,その必要性,相当性に欠けるもので不適当である旨を主
張し,その趣旨による財務会計行為の違法について監査請求をしたものと理解できな
いでもないから,その部分の監査請求については,これを不適法な監査請求とまでは
いえない。
(3)以上のとおり,原告Aの請求の趣旨アのうち,被告Bに対し,土地の交換差金1
0億1504万円の岐阜市への支払を求める部分及び請求の趣旨イは,適法な住民監
査請求を欠き,地方自治法242条の2第1項に反して不適法であり,原告Dの請求
の趣旨のうち,被告B及び被告Cに対し,土地の交換差金6億7837万円の連帯支
払を求める部分も,改正前の法242条の2第1項4号の対象とならず,不適法であ
る。2争点2(原告Aの請求の趣旨エ及び原告Dの請求の趣旨に対する本案前の主
張)について
(1)原告Aは,平成15年9月3日受付の書面をもって,被告岐阜市長Cに対し,B
及びCに対する損害賠償請求権の行使を怠ることについての違法確認と,被告Cに対
する損害賠償請求の追加的訴えの変更請求を行い(上記25号事件,上記原告Aの請
求の趣旨イないしエ,原告Dは,同年11月17日付けの書面をもって,それまで,)
平成14年3月22日付け訴えの変更申立書によって申し立てていた,被告Bに対す
る岐阜市への12億1697万円及びこれに対する平成14年3月26日から支払済
みまで年5分の割合による金員の支払請求の訴えを「被告B及び被告Cは,岐阜市に,
対し,連帯して,24億9557万円及びこれに対する平成15年12月12日から
支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え(上記原告D請求の趣旨のと
おり」と変更した。)。
(2)ところで,地方自治法は,平成14年法律第4号により改正され,同法242条
の2第1項4号の被告は,当該地方公共団体の執行機関又は職員と規定され,同法は
平成14年9月1日に施行された。上記改正後の4号請求の被告は,執行機関又は職
員であり,個人は被告適格を有しないことが明らかである。
原告らの上記各訴えの変更には,被告Cに対する訴えの追加的変更が含まれている
ところ,これらの訴えの追加的変更及び併合がなされたのはいずれも上記改正法が施
行された平成14年9月1日より後であり,改正後の上記4号請求によることが必要
と解され,個人としての被告Cには被告適格がない。
(3)そうすると,原告Aの被告Cに対する上記請求の趣旨エの訴え及び原告Dの上記
請求の趣旨記載の訴えのうち被告Cに対する部分は,いずれも不適法である。
3争点3について(岐阜市土地開発公社の土地交換契約の違法について)
既に争点1の判断において述べたとおり,土地開発公社とEとの間の土地交換契約に
ついての原告らの訴えは不適法というべきであるが,原告らの主張には,岐阜市と岐阜
市土地開発公社が平成15年3月28日に旧E所有地を12億8265万9475円で
購入し,それに基づき岐阜市が12億8265万9475円を支出したとの実質的な関
係の主張が含まれるようでもあるから,争点3について一応検討しておくこととする。
原告Dは,旧E所有地,岐阜拘置支所跡地の価格については,相続税の路線価により,
いずれも1平方メートル当たり約11万円と評価すべきである旨主張し,原告Aは,地
価公示法による標準公示価格によれば,旧E所有地の公示地価は1平方メートル当たり
11万3000円と算定すべきである旨主張しているところ,証拠(丙16,証人F)
及び弁論の全趣旨によれば,旧E所有地は,都市計画公園事業岐阜公園整備事業により
取得されたものであるから,当該土地の正常な取引価格を決定するときは,地価公示法
第6条の標準地の価格を基準としなけらばならないところ(公共用地の取得に伴う損失
補償基準8条,9条,9条の2,損失補償取扱要領10条2項,国土利用計画法施行令)
9条等においても,相続税路線価を基準とすることは定められておらず,また,原告A
の上記主張の算定根拠も必ずしも明らかではないから,これら原告らの主張を採用する
ことは困難であって,被告岐阜市長Cの上記の立証状況(丙16,証人F)と対比して,
なお上記交換契約に原告ら主張の違法があることを認めるには足りないというべきであ
る。
4争点4について(物件移転補償契約に基づく公金支出の違法について)
(1)原告Aの主張について
原告Aは,本件の建物の物件移転補償費は,公共用地取得に伴う損失補償基準第1
5条,16条に違反しており,通常の4倍もの価格であって,その支出は違法な財務
会計行為である旨主張するが,証拠(丙7,8,9,証人F)及び弁論の全趣旨によ
れば,原告Aの主張にかかる上記の規定は,既存の建物をそのまま取得して使用する
場合に適用される規定であり,本件では,旧E所有地に存在していた建物について,
事業者である岐阜市は自らが当該建物を取得することを予定せず,Eにおいてこれを
収去することとしていること,そのため,建物等の移転が必要になることから,岐阜
市は,公共用地の取得に伴う損失補償基準28条1項,同細則15条1項1号の規程
により,移転先まで建物等を移転するのに通常妥当と認められる移転工法の認定を行
い,これに要する費用をEに補償する必要があったこと,そして,本件物件移転補償
契約締結については,移転先地に従前の建物と同種,同等の建物を建築することが合
理的と認められたので,上記補償基準細則第15条1項1号の規定により,構外再築
工法を採用し,専門の補償コンサルタント業者に建物等の調査及び補償金額の積算を
委託して,その積算結果に基づき,本件補償金の金額を決定したこと,これらの諸事
情が認められる。
原告Aは,平成12年7月10日契約時の同種同等の建物の推定建築費は1平方メ
ートル当たり17万円と算定することが妥当であり,岐阜市がこれを上記の積算結果
等に基づいて1平方メートル当たり55万8000円と算定したことは誤りである旨
主張するが,原告Aの上記主張を裏付けるに足るほどの的確な証拠は見あたらず,岐
阜市の上記の補償金額の算定過程及び結果が違法であると認めるべき証拠はない。
(2)原告Dの主張について
原告Dは,Eの既存建物の移転費用について,岐阜市が国から承認を受けていた額
は7億8000万円であった旨主張し,これは住宅金融公庫の基準に照らしても裏付
けられる旨主張する。
しかしながら,住宅金融公庫の基準が損失補償基準として適当であるといえるかは
また別個の問題であり,上記公庫の基準に沿うものではないことから,それが直ちに
不当な補償額で違法であると断じることはできない。
また,証拠(甲ロ44)によれば,岐阜公園E建物移転補償工事についての全体設
計承認額は26億0400万円であり,これは平成12年度から平成14年度にわた
って支出することとされており,7億8000万円の公金支出は,平成14年度の物
件移転補償費としての事業費であり,これに照らして原告Dの上記主張は採用するこ
とができない。
第4結論
以上のとおりであって,原告Aの訴えは,請求の趣旨アのうち,被告Bに10億15
04万円を岐阜市に支払うよう求める部分及び請求の趣旨イ,エの各訴え,また原告D
の訴えは,同原告の請求の趣旨のうち,被告Bに6億7837万円を岐阜市に支払うよ
う求める部分及び被告Cに対する請求はいずれも不適法であるから却下し,その余の被
告B及び被告岐阜市長Cに対する原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,
訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判
決する。
岐阜地方裁判所民事第1部
裁判官倉田慎也
裁判官小林謙介
裁判長裁判官中村直文は,転補につき署名押印することができない。
裁判官倉田慎也

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