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平成25年3月21日判決言渡
平成24年(行ケ)第10363号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年2月19日
判決
原告株式会社D・F・Sliquor
&entertainment
訴訟代理人弁護士三澤隆行
被告オーガスタナショナル
インコーポレイテッド
訴訟代理人弁護士中村稔
田中伸一郎
相良由里子
弁理士井滝裕敬
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が無効2012-890014号事件について平成24年9月14日にし
た審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,被告の請求に基づき原告の商標登録を無効とした審決の取消訴訟である。
争点は,本件商標が,他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標(商
標法4条1項15号)に該当するか,である。
1特許庁における手続の経緯
(1)原告は,本件商標権者である。
【本件商標】
・登録第5404022号
・出願日:平成21年3月4日
・登録査定日:平成22年5月25日
・登録日:平成23年4月8日
・指定役務
第35類:ゴルフに関するフランチャイズ事業の運営及び管理
第41類:インドアゴルフ練習場の提供,パターゴルフ場の提供,ゴルフ
練習施設の提供,ゴルフに関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,
ゴルフのマナーの関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,ゴルフ
の教授の為のセミナーの企画・運営又は開催,ゴルフを内容とするゲーム
機械器具を備えた遊技場の提供に関する情報の提供及び助言,ゴルフ用具
の貸与
第43類:飲食物の提供
(2)被告は,本件商標の登録無効審判を請求した(無効2012-89001
4号)。特許庁は,平成24年9月14日,本件商標を無効とする旨の審決をし,そ
の謄本は平成24年9月25日原告に送達された。
(3)被告は,本件審判において,商標法4条1項15号,19号及び7号該当
を主張したが,原告は被告の主張に対し何ら答弁しなかった。
2審決の理由の要点
「Augusta」又は「オーガスタ」の語は,本件商標の登録出願時及び査定
時において,被告が経営するゴルフ場である「AugustaNational
GolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の略称として,
また,被告の業務に係るゴルフ場に関連する役務を表すものとして,我が国の取引
者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。
そして,本件商標は,その構成中,「Augusta」の欧文字部分が独立して
着目され得るものであって,本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務との関連
性及び取引者,需要者の共通性等を勘案すれば,商標権者が本件商標をその指定役
務に使用した場合,これに接する者に,該文字部分から,被告の業務に係る「Au
gustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・
ゴルフ・クラブ)を連想させ,当該役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的
に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所につい
て混同を生じさせるおそれがあるものということができる。
したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に違反して登録されたものであ
るから,他の無効理由について論及するまでもなく,商標法46条1項1号により,
その登録を無効とすべきものである。
第3原告主張の審決取消事由
以下の理由により,本件商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の判
断には誤りがある。
1「Augusta」は周知著名商標ではない
「Augusta」(オーガスタ)は,ゴルフの世界的大会であるMASTERS
が開催される土地の名称として周知であった(著名であったとはいえない。)。しか
し,以下に理由を述べるとおり,「Augusta」又は「オーガスタ」の語が,本
件商標の登録出願時及び査定時において,米国ジョージア州オーガスタに所在し,
被告が経営するゴルフ場であって,マスターズ・トーナメントが開催される「Au
gustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・
ゴルフ・クラブ)の略称として,また,このゴルフ場において提供される被告の業
務にかかる役務を指すものとして,我が国のゴルフに関連する商品又は役務の取引
者・需要者の間で広く認識されるに至っていた事実はない。
(1)原告は,被告の名称及び被告経営に係るゴルフ場である「Augusta
NationalGolfClub」の名称を知らなかった。原告は,「MAS
TERS」ゴルフ大会が開催される土地の名称である「Augusta」にちなん
で本件商標の登録申請をした。
(2)米国ジョージア州オーガスタには,被告経営のゴルフ場以外に土地の名称
である「Augusta」の語を冠したゴルフ場がある。また,オーガスタには「A
ugusta」の語を冠したゴルフ場以外のゴルフ関連施設建物が多数あり,「Au
gusta」の語を付した新聞雑誌もある。
(3)被告の経営する「AugustaNationalGolfClu
b」は後発のゴルフ場であるため,既設のゴルフ場との差別化のために名称に「N
ational」を付加した名称にしたものである。「AugustaNatio
nalGolfClub」の略称は,頭文字として「ANGC」となるのが通
常であるが,本件商標には,頭文字も「National」の文字も使用されてい
ない。
(4)株式会社の商号は,商標法4条1項8号の「他人の商号」に該当し,株式
会社の商号から株式会社の文字を除いた部分は同号の「他人の名称の略称」に該当
するところ,登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社な
る文字を除いた略称を含むものである場合には,その商標は,当該略称が他人たる
株式会社を表示するものとして著名であるときに限り登録を受けることができない
(最高裁昭和57年11月12日判決・民集36巻11号2233頁)。そうすると,
被告の商号「オーガスタナショナルインコーポレイテッド」及び被告経営のゴ
ルフ場「AugustaNationalGolfClub」の略称は「A
ugustaNational」である。「Augusta」は「Augusta
NationalGolfClub」の略称ではない。
2「混同のおそれ」はない
(1)上記のとおり,「Augusta」又は「オーガスタ」の語が,本件商標
の登録出願時及び査定時において,被告が経営するゴルフ場である「August
aNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・
クラブ)の略称として,また,このゴルフ場において提供される被告の業務にかか
る役務を指すものとして,我が国において周知著名な商標であったことはない。ま
た,「混同のおそれ」は,被告が我が国で業務を営んでいる場合に適用されるところ,
被告が,我が国において,「AugustaNationalGolfClu
b」の名称で業務を営んだ事実はない。よって,本件商標は,被告の業務にかかる
役務と混同を生ずるおそれはない。
(2)「Augusta」は,マスターズ・トーナメントが開催される土地の名
称であるから,「指定役務等の『提供の場所』を普通に用いられる方法で表示する商
標」(商標法26条1項3号),又は「指定役務等の『提供の場所』について慣用さ
れている商標」(商標法26条1項4号)である。すなわち,本件商標の「Augu
sta」の文字は,ゴルフ大会であるマスターズ等の役務の「提供の場所」として
普通に用いられ,又は慣用されている商標であるから,本件商標は被告の業務にか
かる役務と混同を生ずるおそれはない。
3「Augusta」の商標の効力は本件商標には及ばない
上記のとおり,「Augusta」は,マスターズが開催される土地の名称である
から,「指定役務等の『提供の場所』を普通に用いられる方法で表示する商標」(商
標法26条1項3号),又は「指定役務等の『提供の場所』について慣用されている
商標」(商標法26条1項4号)に該当し,その効力は本件商標には及ばない。
第4被告の主張
1周知著名であることにつき
(1)「Augusta」(オーガスタ)は「AugustaNationa
lGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の略称とし
て周知著名であり,オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブがマスターズ・トー
ナメントを主催していることも周知著名である。
(2)現在,世界において4大ゴルフ・トーナメントといわれるゴルフ・トーナ
メントがあり,「マスターズ・トーナメント」,「全米オープン」,「全英オープン」,
「全米プロ選手権」がそれである。「マスターズ・トーナメント」はゴルフに関心を
持つ人々の間で知らぬ者がいないほどに周知著名であり,「マスターズ・トーナメン
ト」が「マスターズ」と略称されていることは,原告の主張からみて争いのない事
実である。そして,4大ゴルフ・トーナメントのうち,マスターズ・トーナメント
だけは毎年「AugustaNationalGolfClub(オーガス
タナショナルゴルフクラブ)」で開催されるが,その他の3大ゴルフ・トーナ
メントは毎年違うゴルフ場で開催される。また,全米オープンが米国ゴルフ協会,
全英オープンが英国ゴルフ協会,全米プロが全米ゴルフ協会という全国組織の主催
であるのに対し,マスターズ・トーナメントはオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・
クラブという一プライベートクラブ主催のトーナメントであり,マスターズ・トー
ナメントとオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブは極めて強くて深い,不可分
な関係を有している。
「マスターズ・トーナメント」を主催しているのが「オーガスタ・ナショナル・
ゴルフ・クラブ」であることは周知著名であり,ゴルフないし「マスターズ・トー
ナメント」に関連して「オーガスタ」というときは必ず「オーガスタ・ナショナル・
ゴルフ・クラブ」を意味しているのであって,「オーガスタ」は「オーガスタ・ナシ
ョナル・ゴルフ・クラブ」の略称として広く用いられている。この結果,「オーガス
タ」といえば「マスターズ」,「マスターズ」といえば「オーガスタ」という,深く
強い結びつきをもってこれら二つの言葉はゴルフに関心を持つ人々の間に浸透して
いる。それ故,「マスターズ」が周知著名であることにより,「オーガスタ」がその
主催者として周知著名であり,「オーガスタ」が「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・
クラブ」の略称であることも周知著名である。ゴルフに関心を持つ人々の間では,
「マスターズ・トーナメント」又は「マスターズ」といえば「オーガスタ・ナショ
ナル・ゴルフ・クラブ」あるいは「オーガスタ」と結びついて想起され,ときには
「マスターズ」と「オーガスタ」が同義語として使用されることさえある。
(3)週刊誌等で,「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」が「オーガス
タ」と略称されていることは,枚挙にいとまがない。ゴルフに関心を持つ人々は,
これらの記事に触れ,「オーガスタ」を「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」
の略称として承知している。すなわち,「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」
が「オーガスタ」と略称されていることが周知著名である。
また,昭和47年(1972年)以来,マスターズ・トーナメントはTBSテレ
ビによって我が国で毎年放送されているが,その際,マスターズ・トーナメントが
「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」で行われていることは繰り返しアナ
ウンスされるし,「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」というフルネームで
アナウンスすることは冗長なので,「オーガスタ」という略称で呼ぶことが普通であ
る。
(4)①原告が被告経営に係るゴルフ場の名称「AugustaNation
alGolfClub」(オーガスタナショナルゴルフクラブ)を知って
いるかどうかは,商標法4条1項15号の成否とは関係がない。なお,原告がマス
ターズ・トーナメントがゴルフの世界的大会であることを知っており,インドアゴ
ルフ練習場を提供する役務等に関し本件商標を登録出願し,ゴルフに関し強い関心
を持っている以上,マスターズ・トーナメントをオーガスタ・ナショナル・ゴルフ
クラブが主催していることを知らなかったはずはない。
②ジョージア州オーガスタに「AugutaCountryClub」
(オーガスタ・カントリー・クラブ)と称するカントリー・クラブが1899年(明
治32年)以来存在することは事実である。しかしながら,このクラブの会員はほ
とんどオーガスタ又はその近傍の在住者であって,このクラブの存在はオーガスタ
在住およびその近傍に住居をもつ者以外には全くといってよいほど知られていない。
いわば,オーガスタという特定の地方のローカルなゴルフ・クラブである。それ故,
ゴルフに関心を持つ人々は,日本人でも欧米人でも,「オーガスタ」といえば,必ず
「マスターズ・トーナメント」を主催する「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・ク
ラブ」を想起するのである。このような名称のカントリー・クラブが存在すること
と本件商標が商標法4条1項15号に該当するかどうかは関係ない。
また,オーガスタが土地の名称である以上,「オーガスタ」を冠したゴルフ関連
施設,新聞,雑誌等が存在することも当然であって,それらの事実も本件商標が商
標法4条1項15号に該当するかどうかとは関係ない。
③オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブは,ボビー・ジョーンズと共
同の建設者であったクリフォード・ロバーツがその建設を計画した当初から,オー
ガスタにおいてゴルフ場建設を支持することが期待された人々は極めて少数であっ
たばかりでなく,ボビー・ジョーンズの理想としてアメリカ全土から選りすぐった
人々を会員とするクラブを建設することにあったので,「National」という
文字を加えることにしたものである。かりに「AugutaCountryC
lub」(オーガスタ・カントリー・クラブ)が存在していなくても,そのような名
称ではいかにもローカルなカントリー・クラブという印象しか与えられないので,
このような名称を採用することはありえなかった。
また,「ANGC」という略称は,被告によってもメディア等によっても全く用
いられていない。
④原告が引用する裁判例は「株式会社」等法令の規定に沿って付されたも
のがある場合には,それらが付されたものが商標法4条1項8号所定の「他人の名
称」であって,付されていないものは「略称」であるとしているのみで,「略称」が
それに限定されるとは判示していない。我が国のマスコミ等において,被告ないし
被告と一体のゴルフ場が「Auguta」あるいは「オーガスタ」と言われている
以上,「Auguta」および「オーガスタ」は被告の略称である。
2「混同のおそれ」があることにつき
(1)「Augusta」ないし「オーガスタ」が「AugustaNati
onalGolfClub」(オーガスタナショナルゴルフクラブ)の略
称として周知著名であることは,上記のとおりである。また,商標法4条1項15
号の適用については,「他人」が我が国で事業を営んでいるかどうかは関係ない。本
件商標は,被告の経営に係るゴルフ場の略称である「Augusta」ないし「オ
ーガスタ」の名声に便乗しフリーライドし,あるいはあたかも被告と何らかの関係
があるように見せかけることによって,被告の事業と広義の混合を生じさせるもの
である。
(2)米国ジョージア州オーガスタに所在する企業や個人がその名称に所在地
の名称を関することは土地の名称を普通に使用することであり,非難されるべきこ
とではない。しかし,「Augusta」ないし「オーガスタ」が「Augusta
NationalGolfClub」(オーガスタナショナルゴルフクラ
ブ)の略称として周知著名であることは前記のとおりであり,このゴルフクラブの
所在地にちなんで「Augusta」ないし「オーガスタ」の語を日本で営業する
ゴルフ関連の役務に使用するために採用したとしても,それは主観的な意図にすぎ
ず,商標法4条1項15号の適用を免れる理由とはならない。
3商標法26条1項3号,4号の適用につき
日本で本件商標を指定役務に使用することは,役務の提供の場所がジョージア州
オーガスタでない以上,本件商標に商標法26条1項3号が適用されることはない。
また,商標法26条1項4号は,指定役務について慣用されている商標について
規定しているものであって,「Augusta」ないし「オーガスタ」は指定役務に
ついて慣用されている商標ではないから,本件商標に上記規定が適用されることは
ない。
第5当裁判所の判断
1本件商標は,前記のとおり,上部に月桂樹様の装飾図形の内側にゴルフスイ
ングをする人物の上半身をシルエット状に描いた図形を表し,その下部に,「Aug
ustaClub」の欧文字を太く大きく表し,さらにその下に「GOLFB
AR・オーガスタクラブ」の文字を「AugustaClub」の欧文字に比べ
小さく表した構成から成るものである。そして,本件商標は,その構成中にゴルフ
スイングをする人物を描いた図形が表示されていること,「AugustaClu
b」の欧文字部分が顕著に大きく表されていること,「Club」の語が「政治・社
交・娯楽,あるいは学校の課外活動で,共通の目的によって集まった人々の団体。
また,その集合所。(会員制の)バー・娯楽場。」を意味すること(広辞苑第六版),
「Club」の語が,上記の意味において,片仮名表記だけでなくアルファベット
文字としてもよく知られた英語であって,自他役務の識別機能を有しないか,極め
て弱いものといえるものであることに照らすと,本件商標は,全体として,看者に
対し,「AugustaClub」という名称のゴルフに関する団体又はバーない
し娯楽場(ゴルフの関係ではゴルフ場)を想起させるものであり,また,上記のと
おり,「AugustaClub」の欧文字部分は顕著に大きく表されていること
に照らすと,本件商標は,そのうちの「Club」以外の「Augusta」の文
字部分が独立して識別力を有するものである。
2「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ
ナショナル・ゴルフ・クラブ)が,マスターズ・トーナメントが開催されるゴルフ
場であって,「Augusta」(オーガスタ)がオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・
クラブの略称として著名であるかについて判断する。
(1)証拠(各項目の末尾に掲記〔枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨によれば,
次の事実を認めることができる。
①被告は,米国法人であって,アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタに
所在するゴルフ場である「AugustaNationalGolfClu
b」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)を経営している。(弁論の全趣旨)
②現在,世界の男子ゴルフ界においては,「マスターズ・トーナメント」,
「全米オープン」,「全英オープン」,「全米プロ選手権」が4大ゴルフ・トーナメン
トとされている。マスターズ・トーナメントは,毎年,被告の主催により,オーガ
スタ・ナショナル・ゴルフ・クラブにおいて開催され,本件商標の出願及び査定当
時,世界的なゴルフ大会として日本においても一般に広く知られている。(乙2~5)
③オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブは,本件商標の出願日前まで
に,マスターズ・トーナメントの記事と相まって,あるいはそれ自体で,「週刊ゴル
フダイジェスト」,「月刊ゴルフダイジェスト」,「ゴルフダイジェストチョイス」,
「ALBATROSS-VIEW」といったゴルフ専門誌,「Number」など
のスポーツ誌のほか,「週刊ダイヤモンド」,「週刊新潮」,「YomiuriWee
kly」,「週刊東洋経済」などの一般誌において,例えば,見出しや記事中の文章
として,「今年のオーガスタの印象はとにかくグリーンが硬くて早いです。」(乙12
の10),「改造されたオーガスタを回ったエルスが・・・とコメントするほどタフ
なセッティングになった今年のマスターズ」(乙12の14),「世界中のゴルファー
が一度はプレーしてみたいと憧れるオーガスタ・ナショナルGC.・・・今から78
年前に完成したマッケンジーの理想を重ねたコース。マッケンジーを知れば本当の
オーガスタが見えてくる。」,「オーガスタの完成を見ずに“理想のコース”と断言し
た遺作」(乙12の37),「クラブとボールの進歩。個人の技術の進歩。肉体の進化
等が,オーガスタのコースレイアウトを易しくしていた。」(乙17の5),「オーガ
スタのグリーンは,テレビでは分からないけど,思いのほか小さく,しかも起伏が
激しく波打ってさえいる。」(乙17の8),「一番観たいのはマスターズプレーし
たいのはオーガスタ」(乙20の3),「オーガスタの改造は選手への新たな挑戦状」
(乙20の6),「オーガスタは少ないメンバーで構成されるクラブだそうだ。」(乙
20の13)のように,「オーガスタ」との表示をもって,継続して多数紹介されて
いる。(乙12~20)。
また,マスターズ・トーナメントの模様は,昭和47年(1972年)から録画
で,昭和51年(1976年)以降は衛星生中継で,日本において毎年テレビで放
映されているところ,そのテレビ放送のパンフレットでは,トーナメントが開催さ
れるオーガスタ・ナショナルゴルフ・クラブを「マスターズ,4月○日から○日
までオーガスタにて開催」のように,「オーガスタ」の表示をもって継続的に紹介し
ている。(乙10,21)
④さらに,上記雑誌には,「NEWオーガスタ出場全選手」(乙12の3),
「マスターズを見よう!オーガスタTV観戦ガイド」,「マスターズのために調整
してきた。・・・オーガスタで勝てるかって。もちろんそのつもりさ!」(乙12の
30),「マスターズ特集オーガスタを制したパーシモン図鑑」(乙12の33),
「オーガスタは,1978年以来9度目の挑戦となる。」(乙17の3),「4月,と
いえばマスターズだ。・・・観客を味方につけないとオーガスタで勝つのは難しい。」
(乙20の8)といった文章が掲載されているが,これらの文脈における「オーガ
スタ」は「マスターズ・トーナメント」を意味するものとして使用されている。
(2)上記によれば,「オーガスタ」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時
において,マスターズ・トーナメントが開催される米国ジョージア州オーガスタ所
在の被告が経営するゴルフ場である「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」
の略称として,また,マスターズ・トーナメントなど,被告経営の上記ゴルフ場に
おいて提供される被告の業務に係る役務を表すものとして,日本のゴルフに関連す
る商品又は役務の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認める
ことができる。
原告は,「Augusta」(オーガスタ)はマスターズ・トーナメントが開催さ
れる土地の名称であって,オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として
周知著名であったものではないなどと主張する。しかし,「Augusta」(オー
ガスタ)が土地の名称であること,ジョージア州オーガスタに被告経営のゴルフ場
以外に「Augusta」の語を冠したゴルフ場や新聞が存在すること,日本国内
及び海外に「Augusta」又は「オーガスタ」の語を含むゴルフ・トーナメン
ト,不動産会社,飲食店,医療クリニック等が存在すること(甲1~42)は上記
認定を左右するものではない。原告が援用する判例は,被告の役務が著名でない場
合にその適用が問題となりうるのであり,被告の役務が著名である以上,その適用
は問題外である。
3本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務は,いずれもゴルフに関連する
役務であるから,役務の内容,質,用途,提供の用に供する物等を共通にする関連
性が高いものであって,かつ,その取引者,需要者を共通にするものと認めること
ができる。
4(1)前記認定によれば,「オーガスタ」及びその英語表記である「Augu
sta」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,被告が経営するゴル
フ場であるオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として,また,被告の
主催するマスターズ・トーナメントを意味するものとして,日本の取引者・需要者
の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。そして,本件商標は,全体
として,「AugustaClub」という名称のゴルフに関する団体又はバーな
いし娯楽場(ゴルフ場)を想起させるものであって,その構成中,「Augusta」
の欧文字部分が独立して着目され得るものであるところ,本件商標の指定役務と被
告の業務に係る役務がいずれもゴルフに関するものであるという高い関連性及び取
引者,需要者の共通性等に照らせば,商標権者が本件商標をその指定役務に使用し
た場合,これに接する者に,「Augusta」の文字部分から,被告が経営するオ
ーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブを連想させ,当該役務を被告自身あるいは
被告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのよ
うに,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということができる。
(2)原告は,「混同のおそれ」は,被告が我が国で業務を営んでいる場合に適
用されるところ,被告が,我が国において,「AugustaNationalG
olfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の名称で業務を営
んだ事実はないなどと主張する。しかし,商標権者が本件商標をその指定役務に使
用した場合,被告の業務にかかる役務と混同を生じるおそれがあることは前記のと
おりであって,被告が「AugustaNationalGolfClub」
(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の名称で日本において業務を営んで
いないことは,上記判断を左右するものではない。
なお,原告は,「Augusta」は商標法26条1項3号及び4号に該当するか
ら,「Augusta」の商標の効力は本件商標には及ばないと主張する。しかし,
そもそも,審判請求人である被告は,「Augusta」(オーガスタ)が被告の商
標であると主張しているものではなく,審決もそのような認定はしていない。原告
の上記主張は前提において誤りがあり,採用することができない。
(3)したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に違反して登録されたも
のであって,これと同旨の審決の判断に誤りはない。
第6結論
以上より,原告の主張する取消事由は理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩月秀平
裁判官
真辺朋子
裁判官
田邉実

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