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裁判例


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平成29年(行フ)第2号文書提出命令申立て却下決定に対する抗告審の変更決
定に対する許可抗告事件
平成29年10月4日第二小法廷決定
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1抗告代理人宮崎浩二の抗告理由のうち文書の所持者に関する点について
1記録によれば,本件の経緯等は,次のとおりである。
(1)香川県(以下「県」という。)の住民である相手方は,県議会の議員らが
平成25年度に受領した政務活動費の中に使途基準に違反して支出されたものがあ
るとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県知事に対し,上記の支
出に相当する金額について,当該支出をした議員らに不当利得の返還請求をするこ
とを求める訴えを本案事件(高松地方裁判所平成27年(行ウ)第11号)として
提起している。
本件は,相手方が,議員らが県議会の議長に提出した平成25年度分の政務活動
費の支出に係る領収書及び添付資料の写しのうち,原決定別紙「即時抗告申立書」
の別紙文書目録1記載の文書(いずれも領収書の写しである。以下「本件各領収
書」という。)について,議長の属する地方公共団体である抗告人を文書の所持者
として,文書提出命令の申立てをした事案である。抗告人は,本件各領収書に係る
文書の所持者は議長であり,抗告人に本件各領収書の提出義務はない旨主張してい
る。
(2)香川県議会政務活動費交付条例(平成13年香川県条例第4号。以下「本
件条例」という。)は,議員に対して政務活動費を交付することとしており,議員
は,議長に対し,政務活動費に係る収入及び支出の報告書に領収書その他の支出証
拠書類の写しを添えて,年度末日の翌日から起算して30日以内に提出しなければ
ならない旨(8条1項),議長は,議員から提出された報告書及び領収書等の写し
をその提出すべき期間の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなけ
ればならない旨(11条1項)を定めている。
(3)原審は,本件各領収書に係る文書の所持者は抗告人であるとした上,本件
各領収書のうち発行主体が法人又は団体であるもの(領収印の印影部分及び代表者
以外の担当者の氏名が記載された部分を除く。)について提出を命じ,その余の申
立てを却下すべきものとした。
2(1)裁判所は,文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは,文書の
所持者に対し,その提出を命ずるところ(民訴法223条1項),文書の所持者
は,文書提出命令によって,その文書を裁判所に提出すべき義務を負うこととな
る。そして,地方公共団体の機関が文書を保管する場合において,当該地方公共団
体は,当該機関の活動に係る権利及び義務の主体であるから,文書提出命令の名宛
人とされることにより,当該文書を裁判所に提出すべき義務を負い,同義務に従っ
てこれを提出することのできる法的地位にあるということができる。したがって,
地方公共団体は,その機関が保管する文書について,文書提出命令の名宛人となる
文書の所持者に当たるというべきである。
(2)本件において,議長は,地方公共団体の議事機関である議会を代表する者
であり,地方公共団体である抗告人に属する機関であることは明らかである。そし
て,議長は,本件条例の定めに従って,議員らから本件各領収書の提出を受けてこ
れを保存しているのであるから,議長の属する地方公共団体である抗告人は,議長
が保存している本件各領収書について,文書提出命令の名宛人となる文書の所持者
に当たる。
なお,本件の本案事件は,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,執行機
関である県知事に対して提起された訴訟であるところ,同号が普通地方公共団体の
執行機関又は職員を被告とすべき者と定めていることは,上記の判断を左右するも
のではない。
(3)以上によれば,抗告人が本件各領収書に係る文書の所持者に当たるとした
原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができな
い。
第2その余の抗告理由について
所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用
することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官菅野博之裁判官小貫芳信裁判官鬼丸かおる裁判官
山本庸幸)

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