弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主    文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事    実
第1 当事者の求めた裁判
(原告)
1 被告は,原告に対し,634万6454円及びこれに対する平成12年8月2
9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
(被告)
  主文と同旨。
第2 当事者の主張事実
(原告の請求原因)
1 原告は,一般乗用旅客自動車運送事業等を目的とする会社である。
2 被告は,埼玉県川口市を行政区域とする普通地方公共団体である。東日本旅客
鉄道株式会社武蔵野線東川口駅(東川口駅という。)南口広場(本件広場とい
う。)は,被告が市道として認定し,被告が維持,管理する道路である。
3(1) 原告は,平成7年12月20日,被告の建設部道路維持課(道路維持課とい
う。)に赴き,A次長及びB課長補佐に対し,原告が本件広場にタクシーを乗り入
れて構内営業をすることを認めるよう申し入れた。これに対し,A次長及びB課長
補佐は,原告に対し,東川口駅前タクシー協議会(駅前タクシー協議会という。)
に入会し,同協議会の承認を貰えたら,本件広場への乗り入れを認めると言明し
た。
(2) 被告が道路管理者として管理している市道の一部である本件広場は,営業許可
を受けているタクシー会社であれば,乗り入れて良いはずである。被告が,駅前タ
クシー協議会に入会している特定の業者のみに乗り入れを許可していることは法の
下の平等を定めた憲法14条に違反するものである。また,公正取引委員会は,タ
クシー乗り場への乗り入れ制限について,事業者団体が非会員の乗り入れを阻止す
ることは独占禁止法8条1項5号所定の競争に対する取引妨害に該当する違法行為
であるとの見解をとっている。原告の乗り入れ許可申し入れに対し,被告のA次長
及びB課長補佐が駅前タクシー協議会に入会し,その承認を貰えたら,本件広場へ
の乗り入れを認めると言明したことは,駅前タクシー協議会に入会して承認を得ら
れなければ乗り入れを認めないということであって,違法な公権力の行使に該当す
る。
4(1) 原告は,平成8年12月5日,被告の道路維持課C課長補佐から,東川口に
営業所を開設すれば,本件広場への乗り入れが可能となり,東川口駅構内営業がで
きると言われた。原告としては,被告の対応に納得できない部分もあったが,客か
ら早く構内営業ができるようにして貰いたいとの要望があったことから,東川口に
営業所を開設することを決定し,平成11年8月27日,関東運輸局埼玉陸運支局
長から川口営業所開設の認可を受け,同年11月に川口市ab丁目c番d号に川口営業
所を開設した。そこで,原告は,同年11月8日,被告のD道路維持課長に対し,
本件広場への乗り入れを認めるよう申し入れたところ,D課長は,他のタクシー事
業者からも乗り入れの要望があり,埼玉高速鉄道の工事中で,車両が本件広場に集
中するので,事故防止,安全な交通を確保できないとの理由で乗り入れを拒否し
た。
(2) しかし,原告が被告の指示に従って東川口に営業所を開設した上,本件広場へ
の乗り入れ許可を申し入れたのであるから,D課長が述べた(1)の拒否理由は理由に
なっていない。また,本件広場に設けられたタクシープール(本件タクシープール
という。)は20台分であるところ,現実には最大7台しか乗り入れておらず,原
告が乗り入れても支障のない状態であったのであるから,D課長の乗り入れ拒否は
違法であり,これも違法な公権力の行使に該当する。
5 原告は,被告の公権力の行使に当たる公務員であるA次長,B課長補佐及びD
課長の前記行為により,川口営業所を開設しながら,本件広場にタクシーを乗り入
れることができなかったものであり,川口営業所に所属する従業員の給与として,
平成11年12月分(同年11月16日から同年12月15日までの分)103万
0953円,平成12年1月分(平成11年12月16日から平成12年1月15
日までの分)128万3100円,同年2月分(同年1月16日から同年2月15
日までの分)212万5790円,同年3月分(同年2月16日から同年3月15
日までの分)190万6611円の合計634万6454円を支出して,同額の損
害を被った。
6 よって,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金63
4万6454円及びこれに対する不法行為の日の後である平成12年8月29日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求める。
(請求原因に対する被告の認否)
1 請求原因1の事実は認める。
2 請求原因2の事実は認める。
3 請求原因3の(1)の事実については,原告が平成7年末から平成8年初めにかけ
てのころ,被告に対し,本件広場(本件タクシープール)へのタクシー乗り入れに
ついて相談したこと及び被告の職員が原告に対し,駅前タクシー協議会の存在等を
説明したことは認めるが,その余の事実は否認する。
 同3の(2)の主張は争う。
4 請求原因4の(1)の事実については,被告の職員が原告に対し,東川口に営業所
を開設すれば本件広場への乗り入れが可能となるとか,同駅構内営業ができると言
ったことは否認する。原告が平成11年8月27日,関東運輸局埼玉陸運支局長か
ら川口営業所開設の認可を受けたこと,原告が同日以降被告に対し,本件タクシー
プールへの乗り入れを口頭で申し入れたこと及び被告が「埼玉高速鉄道工事のため
車両関係が南口に集中するので,工事期間中は乗り入れを自粛していただきたい。
工事が終了した段階で乗り入れを検討する。」と回答して,その要望に応じなかっ
たことは認める。その余の事実は知らない。
 同4の(2)の主張は争う。
5 請求原因5の事実は否認し,主張は争う。
(被告の主張)
1(1) 平成6年4月1日に,任意団体である駅前タクシー協議会が設立され,同年
7月ころ,駅前タクシー協議会の会員と被告との間で,「東川口駅前交通広場にお
けるタクシーの乗り入れ営業に関する協定」(本件協定という。)が締結された。
駅前タクシー協議会及び本件協定の目的は,駅前タクシー協議会の会員が①東川口
駅前広場内において交通事故防止その他の安全対策を行うこと,②指定場所の清掃
等を行うこと,③配車について輸送秩序の維持を図ること等により,東川口駅前広
場の安全,美化,輸送秩序を確保,維持することにあった。
(2) 東川口駅前広場は,被告が所有し,市道として認定して維持,管理の責任を負
う公共の広場であるから,被告には,同広場の円滑かつ安全な交通を維持すべき責
任がある。そこで,被告は,東川口駅前広場の安全,美化,輸送秩序の維持等の目
的で,タクシー事業者が東川口駅前広場に乗り入れるに際しては,駅前タクシー協
議会への加入を勧めていたのである。
2 東川口駅には,南口広場(本件広場)と北口広場とがあり,このうち,北口広
場及びその周辺道路は,平成7年8月から埼玉高速鉄道の新設工事のため,全く使
用できない状況となった(ただし,平成11年3月31日までは路線バスのみが一
部使用していた。)。そのため,駅利用者送迎用の一般車両,スクールバス,路線
バス等が本件広場に集中していた。
3 本件広場のタクシープールのタクシー許容台数は,平成3年に本件広場を道路
として供用し始めたときから20台であり,平成6年7月当時の本件広場へのタク
シー乗り入れ申請が確認されたタクシー台数は17台であり,平成7年12月26
日に更に3台の乗り入れ申請が確認され,既に許容台数である20台の乗り入れを
承認済みであった。
4 原告は,平成7年末から平成8年初めころにかけて,被告に対し,本件タクシ
ープールへの乗り入れについて相談をするようになった。被告は,タクシー事業者
が本件タクシープールに乗り入れるに際しては,本件広場の美化,輸送秩序の維持
等の目的のため,被告との本件協定締結及び駅前タクシー協議会への加入を勧める
という行政指導を行っていることを説明した。
5 平成8年に入り,埼玉高速鉄道の新設工事が本格化していた。同年5月ころ,
原告は,被告に対し,本件広場(本件タクシープール)へのタクシー乗り入れを申
し入れた。しかし,被告は,以下の理由から,原告に対し,本件広場へのタクシー
乗り入れの自粛を求めた。すなわち,原告から申し入れがあった当時は,埼玉高速
鉄道新設工事により,路線バス,スクールバス,一般送迎車等で混雑して,本件広
場に交通が集中していたところ,本件タクシープールへの乗り入れ台数は乗り入れ
可能台数の上限である20台に達していた。工事中の北口広場を使用できない状況
下において,上記許容台数を超えるタクシーの乗り入れを承認すると,本件広場の
円滑かつ安全な交通を確保できない虞があったのである。更に,本件広場へのタク
シー乗り入れについては,原告からの要望が出される前に,埼京タクシー,八千代
交通,鳩ヶ谷タクシー及び個人タクシーなどから乗り入れの要望がなされており,
被告は,これらの業者に対しても乗り入れの自粛を求めていたのである。
6 また,被告は,原告が川口営業所開設の認可を受けた後においても,本件広場
へのタクシー乗り入れの自粛を求めたが,これも5と同様の正当な公益目的から出
た行政指導であり,何ら違法な公権力の行使とはいえない。
(被告の主張に対する原告の反論)
1 本件協定の7条は,駅前タクシー協議会に加入しなければならないと定めてお
り,そのように定めている以上,駅前タクシー協議会への加入を強制しているのと
同じである。
2 本件広場には20台収容可能なタクシープールのほかに,タクシー乗り場に2
台分の駐車スペースがあり,合計で22台が乗り入れ可能である。被告は,22台
分のスペースがあるのに,乗り入れを許可しなかったのである。
第3 証拠関係
 証拠の関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、
これをここに引用する。
          理    由
1 請求原因1及び2の各事実は当事者間に争いがない。
2 本件紛争の経緯について
後掲各証拠によると,本件紛争の経緯は次のとおりであると認められ,その認定を
覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告は,平成2年11月15日,都市計画街路事業に基づき,東川口駅南口に
本件広場を開設し,本件広場のロータリー中央部分にタクシーを20台収用するこ
とのできる本件タクシープールと一般車両用の駐車スペース(6台分)を設置し,
歩道に接してタクシー乗車場1台分及び降車場1台分を設置した。被告は,平成3
年3月13日,道路区域変更により本件広場を道路として認定し,供用を開始し
た。(甲第8号証,乙第1号証ないし第3号証,第7号証,証人Dの証言)
(2) 被告は,川口市内の駅利用者から,被告が管理しているタクシー乗降場におけ
るたばこの吸い殻の投げ捨て等が多いとの意見が寄せられていたことから,平成6
年ころ,タクシー事業者に対し,駅前広場の美化に努めてもらう組織の立ち上げを
呼びかけた。しかして,同年4月1日に,有限会社ヤジタ交通(ヤジタ交通とい
う。)及び全埼玉個人タクシー事業協同組合(個人タクシー組合という。)によ
り,本件広場内における交通事故防止その他の安全対策を行うこと,指定場所の清
掃等を行うこと及びタクシー配車について輸送秩序の安全を図ること等により,本
件広場の安全,美化,輸送秩序を確保し,これを維持することを目的として駅前タ
クシー協議会が設立され,その会長にはヤジタ交通社長のX(X会長という。)が
就任した。(甲第9号証,乙第2,3号証,証人Dの証言)
(3)ア 被告は,平成6年7月ころ,駅前タクシー協議会の会員であるヤジタ交通及
び個人タクシー組合との間で,本件広場を含む東川口駅前広場におけるタクシーの
乗り入れ営業に関して,各別に本件協定を締結した。本件協定は,駅前広場の管理
に関する被告の条例,規則その他要綱等が制定されるまでの暫定的なものであっ
て,本件協定においては,タクシー事業者は駅前広場内でタクシーの乗り入れ営業
を行うときは,被告の指定する申請書により,承認を得なければならないこと(1
条),被告は,タクシー事業者から申請があった場合は駅前広場の機能を考慮し,
必要な台数の乗り入れを確認するものとすること(2条),タクシー事業者は,駅
前広場内で客の乗降及び客待ちをするときは,被告の指定した場所で行うものとす
ること(3条),タクシー事業者は,乗り入れに関し,①駅前広場内おいては,交
通事故防止その他安全対策を行うこと,②指定場所の清掃を行うこと,③配車につ
いては,利用者の利便の向上を考慮し,輸送秩序の維持を図ることを遵守しなけれ
ばならないこと(4条),指定場所はタクシーの待機に支障のない場合,一般車の
通行も可能であるものとすること(5条),この協定の有効期間は,駅前広場の管
理に関する被告の条例,規則その他要綱等が制定されるまでの間とすること(6
条),タクシー事業者は,被告の乗り入れ営業承認を得た場合には,上記4条所定
の事項を遵守するために設立された駅前タクシー協議会に加入しなければならない
こと(7条)等が定められている。(甲第13号証,乙第2,3号証,証人Dの証
言)
イ 被告は,そのころ,本件協定に基づき,ヤジタ交通及び個人タクシー組合から
乗り入れ申請のあった合計17台(ヤジタ交通16台,個人タクシー組合1台)に
ついて,乗り入れを承認して,その台数を確認した。それ以降,被告は,タクシー
事業者が本件広場に乗り入れて構内営業を行う場合には,本件協定の締結と駅前タ
クシー協議会への加入を慫慂する行政指導を行ってきた。(乙第2,3号証,証人
Dの証言)
ウ 被告は,その後平成7年12月26日,個人タクシー組合の申請を受けて,更
に3台のタクシーの乗り入れを承認して,これを確認した。そのため,乗り入れを
承認したタクシーの台数は,本件タクシープールの収容可能台数上限の20台に達
した。(乙第2,3号証,証人Dの証言)
(4) 被告は,平成7年7月19日,日本鉄道建設公団に対し,埼玉高速鉄道線及び
同線東川口停車場建設(この工事を本件建設工事という。)を目的として,東川口
駅北口広場の占用許可を発し,東川口駅北口広場及びその周辺道路は,平成7年8
月から本件建設工事のため,使用できない状況となった。そのために,駅利用者送
迎のための一般車両,スクールバス,路線バス等が線路を夾んだ反対側の本件広場
に集中した。(乙第2,3号証,第8号証,第11号証,証人Dの証言)
(5) 原告は,保有営業車両125台,従業員280名,年商15億円(平成8年当
時)規模のタクシー事業者であるが,平成7年初めころ,岩槻市南部地区の客先か
ら,東京に出るには東武鉄道株式会社野田線岩槻駅を利用するよりも,東川口駅を
利用した方が便がよいので,原告も東川口駅に乗り入れて貰いたいとの要望があっ
た。原告は,同年10月ころ,岩槻市南部地区に無線待機車を2台配置していたこ
とから,この2台を東川口駅構内営業に振り向けることを考えた。(甲第12号
証,証人Yの証言)
(6) 原告の常務取締役Y(Y常務という。)は,平成7年12月20日,被告市役
所の道路維持課を訪れ,A次長及びB課長補佐に対し,本件広場に乗り入れたいの
だがどのような手続をすればよいかと尋ねた。B課長補佐は,Y常務に対し,被告
としては,本件広場の美化,輸送秩序の維持等のため,タクシー事業者が本件広場
に乗り入れるについては,被告と本件協定を締結するとともに,駅前タクシー協議
会に加入を勧めるという行政指導を行っているので,駅前タクシー協議会のX会長
にお願いをしてみてはどうかと教示した。(甲第12号証,乙第4号証,証人Yの
証言)
(7) そこで,Y常務は,そのころ,X会長に会って駅前タクシー協議会への入会を
申し入れたが,X会長はこれを拒絶した。そこで,原告は,平成8年1月16日,
駅前タクシー協議会に対し,東川口駅におけるタクシー利用者の輸送力確保と地域
の利用客の効率輸送を図るため同駅前広場へ乗り入れさせていただきたく,駅前タ
クシー協議会への加入を願い出る旨記載した「加入願い書」を提出して,駅前タク
シー協議会への加入を申し出た。しかし,駅前タクシー協議会は,同月29日,原
告に対し,東川口駅構内が埼玉高速鉄道の工事現場として使用されて,非常に狭く
なっており,これ以上の車両の乗降を増やすことは安全運転に支障を来すことにな
る等の理由で,原告の駅前タクシー協議会への加入を認めない旨の書面による回答
をした。(甲第9号証ないし第12号証,証人Yの証言)
(8) 東川口駅北口広場及び周辺道路における本件建設工事が平成8年に入って本格
化したため,本件広場に路線バス,浦和学院や浦和短期大学のスクールバス,一般
車両が集中するようになった。被告が本件広場の混雑状況を調査したところ,特に
朝夕のラッシュの時間帯は歩道の歩行者が多く,スクールバス等が本件広場に多く
集まる等したため,スクールバス利用の生徒達により歩道が混雑している状況が確
認され(特に午前7時30分ころが激しい。),近隣住民からも,本件広場の交通
安全が確保できず,大変危険であるとの苦情も寄せられた。そこで,被告として
は,最も交通混雑の激しい時間帯における混雑状況から判断して,本件広場におけ
る交通の安全を確保するためには,本件広場への新たなタクシーの乗り入れを承認
することは困難であるとの判断をしていた。(乙第2,3号証,第9,10号証,
証人Dの証言)
(9) 原告は,平成8年5月ころ,被告に対し,本件広場へのタクシーの乗り入れを
申し入れた。被告は,上記(8)の状況を考慮し,本件建設工事終了までの間は,事故
防止の観点から本件広場への新規乗り入れの自粛を求める必要があると考え,被告
担当者が原告に対し,本件広場へのタクシーの乗り入れを自粛するように求めた。
また,原告以外のタクシー事業者から同様の申し入れがあったが,被告は,その都
度,同様の理由により,乗り入れの自粛を求めていた。(乙第2,3号証,証人D
の証言)
(10) 原告は,平成8年8月23日ころ,被告に対し,被告が本件広場へのタクシ
ー乗り入れを承認しない理由について,電話で問い合わせた。これに対し,被告担
当者は,原告に対し,本件広場は,北口広場における本件建設工事のため,路線バ
ス,スクールバス及び一般送迎車等で混雑していること,本件タクシープールは2
0台分しかなく,事故防止の観点からすると,上記の状況が変わらなければ乗り入
れ台数を変更することは困難である旨説明して,原告の理解を求めた。(乙第2,
3号証,証人Dの証言)
(11) 原告は,午後10時以降に乗り入れてみてはどうかとのC課長補佐の示唆を
受け,代表取締役のZ(Z社長という。)が乗務員となって平成8年9月下旬の午
後10時以降に,本件広場にタクシーを乗り入れてみたところ,Z社長がヤジタ交
通の乗務員に取り囲まれて威圧を受けるというトラブルが発生した。原告は,同年
10月16日,被告に対し,上記トラブルの事実を報告するとともに,本件タクシ
ープール収容可能台数20台を超える台数について,乗り入れ承認をするようにし
て貰いたいと申し入れた。これに対し,被告は,トラブルの点については事実確認
をする旨,本件建設工事による状況を考えると,乗り入れ承認台数の増車は困難で
ある旨回答した。(甲第2号証,乙第2,3号証,証人D及び同Yの各証言)
(12) Y常務は,平成8年12月5日,被告市役所にC課長補佐を訪ね,本件広場
への乗り入れに関して相談した。C課長補佐は,Y常務に対し,東川口に営業所を
開設したらどうだろうか,ヤジタ交通ともう少し仲良く話し合って貰えないかと話
した。これに対し,Y常務は,調査をしないまま東川口に営業所を開設すれば云々
とのC課長補佐の物言いには不服であったが,原告内部で東川口に営業所を設置で
きるかどうかの検討を始めた。(甲第11号証,証人Yの証言)
(13) 原告は,平成9年10月29日,被告に対し,本件タクシープール20台分
が満車になっているのを見たことがない,本件タクシープールのほかに2台分のタ
クシー乗降場があるので,20台を超える台数の乗り入れ承認をして貰いたい,東
川口駅前広場の利用規程があるのであれば,示して貰いたいと申し入れた。これに
対し,被告は,同月31日,原告に対し,北口広場が本件建設工事中であるので,
駅利用者には不便をかけるが,危険性を考慮して乗り入れ承認台数を増やすことは
考えておらず,「武南タクシー協議会」等にも乗り入れ自粛をして貰っている,東
川口駅前広場の利用規程はないと回答した。(乙第2,3号証,証人D及び同Yの
各証言)
(14) 原告は,平成11年2月24日,被告に対し,駅前タクシー協議会との話し
合いの場を設定するように申し入れるとともに,それができないのであれば,被告
が本件広場への乗り入れを承認しないことが原因で,利用者が不便を被っていると
いうことを記載したビラを配ると述べた。(乙第2,3号証,証人Dの証言)
(15) 原告は,東川口に川口営業所を設置する方針を決定し,平成11年7月30
日,関東運輸局埼玉陸運支局長に対し,川口市ab丁目c番d号に川口営業所を設置
し,大宮営業所配置のタクシー17台のうちの3台を川口営業所に配置したいとの
一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更の認可申請をした。埼玉陸運支局長
は,同年8月27日,原告の上記申請を認可した。(甲第4号証,証人Yの証言)
(16) 原告は,上記認可を受けて,平成11年11月に川口営業所を開設した。し
かして,原告は,同月8日,被告に対し,川口営業所を開設して営業しており,利
用者から連絡が来ても構内に入れないのは困るので,本件広場へのタクシー3台の
乗り入れ,北口広場へのタクシー1台の乗り入れを承認して貰いたいと申し入れ
た。これに対し,被告は,事故防止,安全かつ円滑な交通を確保するという観点か
らして,また,他のタクシー事業者からも乗り入れの希望が出されているので,現
段階で1社のみに乗り入れを承認するのは困難であるとの回答をした。(乙第2,
3号証,証人Y及び同Dの各証言)
(17) 被告は,本件建設工事の進捗状況から見て,平成12年3月31日には本件
協定による暫定措置を終了させても支障はないものと判断し,平成11年12月2
2日,タクシー事業者を集めて,川口市内各駅前広場のタクシープールへの乗り入
れについての説明会を開催し,①現在,川口市駅前広場管理要綱(本件要綱とい
う。)を制定,施行するための準備をしていること,②本件要綱に,駅前広場のタ
クシープールを利用できる者は川口市を事業区域に含む道路運送法4条1項所定の
一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受けた者とする旨の規定を設けることを説明
した。この説明会には,原告も出席した。(乙第2,3号証,証人Y及び同Dの各
証言)
(18) 平成12年3月には,東川口駅北口広場周辺道路の県道部分について工事が
終了して解放されたことから,被告は,スクールバスの乗降場を本件広場から北口
広場の元の位置に戻させた。被告は,そのような状況についての見通しがついた同
月1日,関係者に対し,本件管理要綱を制定した旨及び本件管理要綱の施行により
本件協定が失効する旨を通知した。本件建設工事のうち,道路上の工事は同年4月
1日までには終了し,被告は,同日,本件管理要綱を施行した。本件管理要綱にお
いては,駅前広場のタクシープールを利用できる者は,川口市を事業区域に含む道
路運送法4条1項所定の一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受けた者とする,本
件タクシープールにおいて一般乗用旅客自動車運送事業を行う者は,次の事項に十
分配慮すること(次の事項:①駅前広場内においては,交通事故の防止その他安全
対策に務めること。②指定場所の清掃等を行い,環境美化の向上に務めること。③
タクシー利用者へのサービス等利便性の向上に努めること。④事業者間の輸送秩序
を図るとともに,協調性の保持に務めること。⑤事業者間及び利用者との問題等が
発生した場合は,事業者が誠意をもって解決に努めること。),この要綱に定める
もののほか必要な事項は,市長が別に定めること,等の規定がなされている。(乙
第2,3号証,第6号証,証人Y及び同Dの各証言)
(19) 平成12年4月1日からは,本件管理要綱に定める川口市を事業区域に含む
道路運送法4条1項所定の一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受けた者であれ
ば,誰でも本件広場(本件タクシープール)を含む東川口駅前広場に乗り入れるこ
とが可能になったのであるが,原告は,同年10月18日から北口広場への乗り入
れを始めたものの,本件広場については,上記(11)のとおり,ヤジタ交通の乗務員
から威圧を受けたという経緯があったことから,新たなトラブルの発生を危惧し
て,自ら乗り入れを自粛している。(甲第14号証,証人Yの証言)
 以上の事実が認められる。原告は,A次長及びB課長補佐は平成7年12月20
日,駅前タクシー協議会に入会し,同協議会の承認を貰えたら,本件広場への乗り
入れを認めると言明したと主張し,証人Yは上記主張にそう証言をし,甲第11号
証及び第12号証にも同旨の記載があるが,上記各証拠は,前記認定事実及びその
認定に供した証拠関係に照らして,そのとおりには採用することができず,他に上
記主張事実を認めるに足りる証拠はない。
 証人Dは,道路維持課内で調査したところ,被告に対して東川口に営業所を設置
してはどうかとの話をした職員はいなかったと証言し,また,一般乗用旅客自動車
運送事業免許の権限は埼玉陸運支局長にあり,道路維持課の職員は事業免許の前提
となる事業区域や交通圏の区割りについては詳しい知識を持っていないから,被告
に対してどの場所に営業所を設置すればよいかということを発言することはあり得
ない旨証言し,乙第3号証の陳述書においても同旨の陳述をしている。しかし,問
題の点に関する証人Yの証言内容は,C課長補佐から「東川口に営業所を設置した
らどうだろうか,ヤジタ交通ともう少し仲良く話し合って貰えないか」という話が
あったというものであって,事業区域や交通圏の区割りを前提とする話ではなく,
しかも,証人Yの証言によると,Y常務はこれを東川口に営業所を設置すれば原告
が「川口市民」になるという意味合いで受け取ったというのであるから,その話の
趣旨は,問題の解決にはヤジタ交通との友好的な関係を築くことが有益であると考
えられるところ,友好関係を築くための一方策として,東川口に営業所を開設する
ことも考えられるのではないかという思いつき程度のものであったと理解されるの
である。そして,証人Yの上記証言内容は,自己の体験した事実を,そのときに自
分が感じ取ったことをも交えてありのままに証言しているものと認められるから,
措信するに足りるものと認められ,これを否定する趣旨の証人Dの上記証言部分及
び乙第3号証の記載部分は,そのとおりには採用することができない。
 一方,証人Yは,C課長補佐は東川口に営業所を開設すれば,本件広場への乗り
入れをさせることは可能であると言ったとも証言するが,C課長補佐の話が思いつ
き程度のものであったものと理解されることに加えて,前記認定の経緯により,当
時の被告の行政方針は,本件広場への乗り入れは,被告との間で本件協定を締結す
ることが前提であること,本件広場(本件タクシープール)の収容可能台数20台
の上限まで乗り入れ承認済みであり,交通の安全,輸送秩序維持の観点から,その
収容可能台数を超える台数の乗り入れを承認することは考えておらず,原告を含め
他のタクシー事業者からの乗り入れ申請に対しても,これらの事情を説明して自粛
を求めるというものであり,実際にもそのような方針で自粛を求めていたことの各
事実が認められることをも併せて考慮すると,C課長補佐がこの行政方針及び実際
の行政事務とは符合しない言動をするということは容易に考えられないから,同証
人の上記証言部分をそのとおりには信用することはできない。
3 請求原因3について
(1) 上記2に認定の各事実によると,被告の呼び掛けにより平成6年4月1日,本
件広場内における交通事故防止その他の安全対策を行うこと,指定場所の清掃等を
行うこと及びタクシー配車について輸送秩序の安全を図ること等により,本件広場
の安全,美化,輸送秩序を確保し,これを維持することを目的とする駅前タクシー
協議会が設立されたこと,被告は駅前タクシー協議会の設立を受けて,その構成員
との間で,タクシー事業者が駅前広場に乗り入れるには被告の指定する申請書によ
り被告の承認を得ることを要するものとする本件協定を締結したこと,本件協定に
は,タクシー事業者に対し,安全対策及び清掃の実施並びに輸送秩序の維持等の遵
守事項を定めるとともに,被告の乗り入れ承認を得たタクシー事業者は駅前タクシ
ー協議会に加入しなければならないと定められていること,それ以降,被告は本件
広場へのタクシー乗り入れを希望するタクシー事業者に対しては,被告との間で本
件協定を締結すること及び駅前タクシー協議会への加入を慫慂していることが認め
られる。
(2) ところで,本件広場は,被告が管理する道路法所定の道路であるから,何人も
交通法規に従って自由に通行することができるし,川口市を含む交通圏を事業区域
とする一般乗用旅客自動車運送事業免許を受けたタクシー事業者であれば,誰でも
営業のための乗り入れすることができるものであることはいうまでもない。一方,
被告は,本件広場の道路管理者であると同時に,普通地方公共団体として,本件道
路の管理及び使用の権利の規制に関する事務を行うものであり(地方自治法2条3
項2号),国民の権利を不当に制限しない範囲で,本件道路を適正に管理し,もっ
て,防犯,防災,交通安全の保持等を通じて,地方公共の秩序を維持し,住民及び
滞在者の安全の保持に務めることを要求されているのである。しかして,前記2に
認定の経緯によると,被告が東川口駅前広場への乗り入れをしようとするタクシー
事業者と本件協定を締結することを慫慂し,本件協定に基づく申請により乗り入れ
の承認をしたタクシー事業者のみに乗り入れを認めることとしていた趣旨は,東川
口駅前広場における安全,美化及び輸送秩序を確保,維持し,適正な道路の管理と
円滑な交通の確保を図ることを目的として,公権力による行政権限の発動という方
法によるのではなく,輸送需要に応じ,道路運送事業の適正な運営と道路運送に関
する秩序確立,維持の担い手であるタクシー事業者の任意の協力を得ながら,上記
の指導,慫慂を行うという方法により,道路管理者及び普通地方公共団体としての
行政目的を実現しようとしたものにほかならないものと認めることができる。
 そして,被告がその行政施策に対する任意の協力を求めて,国民や事業者に対
し,一定の行為をするように慫慂,指導し,あるいは,自主的な規制を促したり一
定の行為の自粛を求めることにより,所期の行政目的を達成することは,それが公
権力の行使を背景とした事実上の強制にわたるものでない限り,もとより許される
ことであって,被告が近い将来に本件建設工事が施工されることを視野に入れつ
つ,本件建設工事による影響の収束と本件管理要綱の制定,施行までの暫定的な措
置として,本件協定の締結及びこれによる行政指導という方法をもって,東川口駅
前広場の適正な管理と円滑な交通の確保を図ろうとしたことは,住民や本件広場利
用者のニーズに応えたきめの細かい行政と評価することができ,本件協定締結の慫
慂等の具体的な行政指導の状況に照らしても,適切であったものということができ
るのである。
 しかして,B課長補佐が平成7年12月20日,Y常務に対し,タクシー事業者
が本件広場に乗り入れるについては,被告と本件協定を締結するとともに,駅前タ
クシー協議会に加入を勧めるという行政指導を行っているので,駅前タクシー協議
会のX会長にお願いをしてみてはどうかと教示したことは,上記の行政方針に基づ
いて行った行政指導であり,これをもって,違法な公権力の行使であるということ
はできない。なお,原告は本件協定を締結して被告の指定する申請書により乗り入
れ承認の申請をしたものではないから,B課長補佐の上記行為が,乗り入れ承認申
請の拒否あるいは乗り入れを承認しないと判断した行為に当たるものでないことは
いうまでもない。
(3) 原告は,B課長補佐が駅前タクシー協議会に入会してその承認を貰えたら本件
広場への乗り入れを認めると言ったことは,駅前タクシー協議会に入会して承認を
得なければ乗り入れを認めないということであり,本件協定には駅前タクシー協議
会に加入しなければならないと定められているから,被告の行政指導は違法な公権
力の行使であるとも主張する。しかしながら,B課長補佐が駅前タクシー協議会に
入会してその承認を貰えたら,本件広場への乗り入れを認めると言ったとの事実を
認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりである。また,本件協定がタクシー
事業者は駅前タクシー協議会に加入しなければならないと定めていることは原告の
主張するとおりである(前記2の(3)のア)が,本件協定は,タクシー事業者が「被
告の乗り入れ承認を得た場合には,駅前タクシー協議会へ加入しなければならな
い。」としているのであって,被告と本件協定を締結し,本件協定に基づき被告の
乗り入れ承認を得たタクシー事業者に対し,駅前タクシー協議会への加入を求めて
いるに過ぎず,駅前タクシー協議会への加入は乗り入れ承認の条件とはされていな
いのである。因みに,被告が本件協定において,乗り入れ承認を得たタクシー事業
者に対し,駅前タクシー協議会への加入を求めているのは,仮に,乗り入れ承認を
得たタクシー事業者間のトラブルが生じた場合には,交通の安全が害されるととも
に,本件協定の目的を達成することができなくなることから,業者間の円滑な関係
を構築し,維持して行こうとするものであると認められる(証人Dの証言)とこ
ろ,被告がそのような指導,慫慂を行うことは相当であって,その点に違法の廉が
あるとはいえない。
(4) また,原告は,被告が駅前タクシー協議会に入会している特定の業者のみに乗
り入れを許可していることは法の下の平等を定めた憲法14条に違反し,駅前タク
シー協議会が非会員の乗り入れを阻止することは独占禁止法8条1項5号所定の競
争に対する取引妨害に該当する違法行為であるとも主張する。しかしながら,被告
は,駅前タクシー協議会に加入している特定の業者のみに乗り入れを承認している
わけではなく,被告との間で本件協定を締結したタクシー事業者に対して,本件協
定に基づいて乗り入れを許可しているに過ぎないから,被告の行為が憲法14条に
違反するものとはいえない。また,仮に,駅前タクシー協議会の行為に独占禁止法
8条1項5号に該当すると評価される行為があるとしても,そのことの故に被告の
前記指導,慫慂行為が違法と評価されることにはならない。
(5) したがって,原告が請求原因3の(1)において主張する,B課長補佐がY常務
に対し,駅前タクシー協議会に入会し,同協議会の承認を貰えたら,本件広場への
乗り入れを認めると言明したとの事実は認められないのであり,B課長補佐が行っ
た前記行政指導も違法な公権力の行使に該当するということもできないから,同3
の(2)の主張は理由がない。
4 請求原因4について
(1) 前記2に認定の事実によると,C課長補佐は平成8年12月5日,本件広場へ
の乗り入れの相談に訪れたY常務に対し,東川口に営業所を設置したらどうだろう
か,ヤジタ交通ともう少し仲良く話し合って貰えないかと話したこと,原告は平成
11年8月27日,埼玉陸運支局長から川口営業所の設置に関する一般乗用旅客自
動車運送事業の事業計画変更の認可を受けたこと,原告はその認可を受けて同年1
1月に川口営業所を開設した上,同月8日,被告に対し,川口営業所を開設して営
業しているので,本件広場へのタクシー3台の乗り入れ,北口広場へのタクシー1
台の乗り入れを承認して貰いたいと申し入れたこと,これに対し,D課長が事故防
止,安全かつ円滑な交通を確保するという観点からして,また,他のタクシー事業
者からも乗り入れの希望が出されているので,現段階で1社のみに乗り入れを承認
するのは困難であるとの回答をしたことが認められる。
(2) しかして,D課長が(1)のように回答した行為は,公権力に基づく行政権限を
発動してした,原告の乗り入れ申請を認めないという処分等に該当するものではな
く(そもそも,原告は,本件協定を締結して被告の指定する申請書により,乗り入
れ承認の申請をしたわけではない。),原告の任意の協力による乗り入れの自粛を
求めた行政指導であると解されるところ,D課長は,川口駅前北口広場が本件建設
工事のため使用できない状況にあって本件広場に交通が集中しており,乗り入れ承
認済みの台数が乗り入れ可能台数の上限である20台に達していたことから,許容
台数を超えるタクシーの乗り入れを承認すると,本件広場の円滑かつ安全な交通を
確保できない虞があったこと,原告以外のタクシー事業者から寄せられていた乗り
入れ希望についても自粛を求めていたことから,原告に対しても自粛を求める行政
指導をしたものと認められる。そして,前記2に認定の経緯によると,その行政指
導の目的は正当であり,その方法も相当なものであったと認められ,これをもって
違法な公権力の行使であるということはできない。
 なお,証人Yは,本件タクシープールには,多いときでも6台程度しか待機して
いなかったと証言するが,仮に,そのとおりであったとしても,前記認定の状況下
における本件広場における交通の安全,円滑な交通の確保及び輸送秩序の確保,維
持のためには,最悪の状況を想定して対策を立てるのが当然であるから,同証人の
批判は当たらない。また,原告は,タクシー乗降場に2台分のスペースがあるか
ら,実際の許容台数は22台であると主張するが,待機場所であるタクシープール
と客を乗車させ,降車させる場所であるタクシー乗降場とでは,その目的及び機能
も使用の態様も異なるのであるから,上記主張は採用することができない。
(3) したがって,請求原因4の(2)の主張は理由がない。
5 結論
 以上の認定及び判断の結果によると,原告の本件請求は,その余の点について判
断するまでもなく理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決
する。
      さいたま地方裁判所第2民事部
           裁 判 官 渡   邉     等

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