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○ 主文
一 被告が原告に対し昭和四〇年一二月二四日付でした昭和三九年三月一日より昭
和四〇年二月二八日までの事業年度以降の青色申告書提出承認の取消処分の取消し
を求める訴えを却下する。
二 被告が原告に対し昭和四一年九月五日付でした昭和三八年三月一日より昭和三
九年二月二九日までの事業年度の青色申告書提出承認の取消処分を取り消す。
三 被告が原告に対し昭和四一年九月八日付でした昭和三八年三月一日より昭和三
九年二月二九日までの事業年度分法人税の再更正処分および重加算税賦課決定処分
を取り消す。
四 被告が原告に対し昭和四一年九月八日付でした昭和三九年三月一日より昭和四
〇年二日二八日までの事業年度分法人税の再更正処分および重加算税賦課決定処分
のうち所得金額二、六〇六、三四〇円をこえる部分を取り消す。
五 被告が原告に対し昭和四四年四月三〇日付でした昭和四〇年三月一日より昭和
四一年二月二八日までの事業年度分法人税の更正処分および重加算税賦課決定処分
を取り消す。
六 被告が原告に対し昭和四四年四月三〇日付でした昭和四一年三月一日より昭和
四二年二月二八日までの事業年度分法人税の更正処分のうち所得金額二、五七九、
七二九円をこえる部分および重加算税賦課決定処分を取り消す。
七 被告が原告に対し昭和四四年四月三〇日付でした昭和四二年三月一日より昭和
四三年二月二九日までの事業年度分法人税の更正処分のうち所得金額「五三三、九
九五円から昭和四一年三月一日より昭和四二年二月二八日までの事業年度分法人税
の更正処分の一部取消しにともない地方税法にもとづき計算しなおした同事業年度
にかかる地方税の額を差し引いた金額」をこえる部分および重加算税賦課決定処分
を取り消す。
八 原告のその余の請求を棄却する。
九 訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。
○ 事実
第一 申立て
一 原告
(昭和四三年(行ウ)第一一八号)
(一) 被告が原告に対し昭和四〇年一二月二四日付でした昭和三九年三月一日よ
り昭和四〇年二月二八日までの事業年度以降の青色申告書提出承認の取消処分を取
り消す。
(二) 被告が原告に対し昭和四一年九月五日付でした昭和三八年三月一日より昭
和三九年二月二九日までの事業年度の青色申告書提出承認の取消処分を取り消す。
(三) 被告が原告に対し昭和四一年九月八日付でした次の各処分を取り消す。
1 昭和三八年三月一日より昭和三九年二月二九日までの事業年度分法人税の再更
正処分および重加算税賦課決定処分
2 昭和三九年三月一日より昭和四〇年二月二八日までの事業年度分法人税の再更
正処分および重加算税賦課決定処分
(昭和四六年(行ウ)第九号)
(四) 被告が原告に対し昭和四四年四月三〇日付でした次の各処分を取り消す。
1 昭和四〇年三月一日より昭和四一年二月二八日までの事業年度分法人税の更正
処分および重加算税賦課決定処分
2 昭和四一年三月一日より昭和四二年二月二八日までの事業年度分法人税の更正
処分および重加算税賦課決定処分
3 昭和四二年三月一日より昭和四三年二月二九日までの事業年度分法人税の更正
処分および重加算税賦課決定処分
(右両事件を通じ)
(五) 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
(一) 原告の日の訴えにつき、
1 (一次的に)右訴えを却下する。
2 (二次的に)原告の請求を棄却する。
(二) 原告の(二)ないし(四)の各請求につき、同請求をいずれも棄却する。
(三) 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 主張
一 原告の請求原因
(一) 原告は法人税の確定申告書を青色申告書により提出することにつき所轄税
務署長の承認を受けていたものであるが、被告は原告に対し、昭和四〇年一二月二
四日付で昭和三九年三月一日より昭和四〇年二月二八日までの事業年度(以下、昭
和三九事業年度という。)以降の青色申告書提出承認を取り消す処分をし(以下、
本件昭和三九年事業年度以降の取消処分という。)、さらに、昭和四一年九月五日
付で昭和三八年三月一日より昭和一二九年二月二九日までの事業年度(以下、昭和
三八事業年度という。)の青色申告書提出承認を取り消す処分をした(以下、本件
昭和三八事業年度の取消処分という。)。
(二) 原告のした法人税の確定申告およびこれに対する被告の更正処分等の経緯
は次のとおりである(なお、原告は更正処分等に対しそれぞれ法定期間内に異議申
立てや審査請求をしたが、異議決定や裁決において更正処分等に変更を加えなかつ
たものは、すべて次の各表より記載を省略した。)。
<略>
(三) 本件昭和三八事業年度の取消処分および本件昭和三九事業年度以降の取消
処分(以下、両処分を合わせて本件各取消処分ともいう。)の各通知書にはその理
由として「法人税法第一二七条第一項第三号に掲げる事実に該当すること」と記載
されているだけで、同号に該当する具体的事実が記載されていない。したがつて、
右各取消処分には理由不備の違法がある。さらに、原告には法人税法一二七条一項
三号に該当する事実がないので、右各取消処分はこの点からも違法である。
(四) 昭和三八および昭和三九事業年度の各再更正処分ならびに昭和四〇ないし
昭和四二事業年度の各再更正処分(以下、これらの処分を合わせて本件各(再)更
正処分ともいう。)の通知書にはいずれも更正の理由が付記されていない。ところ
で、右(三)に述べたとおり、本件各取消処分は違法として取り消されるべきであ
るから、本件各(再)更正処分は青色申告書に係る更正ないし再更正ということに
なり、いずれも理由を付記しなければならないことになる。したがつて、本件各
(再)更正処分はこの点において違法である。
また、本件各(再)更正処分は、原告の所得金額に属さないものを原告の所得金額
に含めてなされたものであつて、実体的にも違法である。
(五) さらに、本件各取消処分および本件各(再)更正処分は、いずれも違法な
調査にもとづいてなされたものであるから、違法である。すなわち、被告は、昭和
四〇年九月四日身分証明書を所持しない署員を原告方へ差し向け、金庫の検査をす
るなど違法な調査をしたのを皮切りに、その後長期間にわたり調査をしたのである
が、その調査方法たるや原告およびその取引先の各帳簿書類の調査をして原告の取
引内容(仕入高や売上高など)を把握するという方法をとらず、これらについては
形式的に一部の調査をしたのみで、当初よりもつぱら原告の代表者やその家族個人
の預金調査を行ない、これを原告の簿外預金であると決めつけるという方法をとつ
たものであつて、違法である。
(六) 本件各(再)更正処分が違法であるから、これに付随してなされた本件各
重加算税賦課決定処分も違法である。
(七) よつて、本件各取消処分、本件各(再)更正処分および本件各重加算税賦
課決定処分の取消しを求める。
二 被告の本案前の主張
本件昭和三九事業年度以降の取消処分に対しては原告から不服申立がなされておら
ず、かつ、不服申立ての前置を経ないことについての正当な理由も存しない。した
がつて、右取消処分の取消しを求める訴えは、国税通則法(昭和四五年法律第八号
による改正前、以下同じ。)八七条に定める不服申立ての前置を経ていない点にお
いて不適法であるから、却下さるべきである。
三 請求原因に対する被告の答弁および主張
(一) 請求原因(一)および(二)の事実はいずれも認める。同(二)の事実の
うち、本件各取消処分の通知書に記載されている理由が原告主張のとおりであるこ
とは認めるが、その余は争う。同(四)の事実のうち、本件各(再)更正処分の通
知書にいずれも理由が付記されていないとの点を除くその余の部分はすべて争う。
同(五)および(六)の事実および主張は争う。
(二) 本件各取消処分の適法性について
(1) 理由付記の程度
法人税に関する青色申告書提出承認の取消処分の通知書に付記すべき理由の程度
は、法人税法一二七条二項の文理からしても、また、同条項の立法趣旨や右処分の
性質からしても、同条一項各号のいずれに該当するかを記載すれば足りると解すべ
きである。したがつて、本件各取消処分の理由付記は適法である。
(ア) 一般に、法が一定の行政処分について理由の付記を要求する趣旨は、処分
庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相
手方に知らせて不服の申立てに便宜を与えることにあるか、どの程度の記載をなす
べきかは、処分の性質と理由付記を命じた法令の規定の趣旨・目的に照らして決す
べきである。
(イ) 法人税法一二七条二項は、青色申告書提出承認の取消しの通知書にはその
取消しの処分の基因となつた事実が同条一項各号のいずれに該当するかを付記しな
ければならない旨規定し、同項各号は取消事由として具体的な事実を列記してい
る。
右条文の規定の仕方は、租税法の分野における他の処分についての理由付記に関す
る規定の仕方とその趣きを異にしている。すなわち、青色申告書に係る更正処分の
場合には、「更正通知書にその理由を付記しなければならない」と規定しており
(法人税法一三〇条二項)、単に理由を付記すべき旨を抽象的に規定しているのみ
で、その付記の程度についてはなんら規定していない。また、異議決定および裁決
の場合は、異議決定書または裁決書には「理由を付記し、・・・・・・・・・右理
由においては、その維持される処分を正当とする理由が明らかにされていなければ
ならない」旨規定しており(国税通則法〔昭和四五年法律第八号による改正後〕八
四条四、五項、一〇一条一項)、理由付記の程度についても規定しているが、その
程度は青色申告書提出承認の取消しの場合に比して具体性を欠き、抽象的である。
このように、青色申告書提出承認の取消しの場合は、法は他の場合とは明らかに趣
きを異にし、理由付記の程度についてまで具体的に規定を設け、理由付記として必
要な記載事項を明示しているのである。すなわち、理由付記の程度としては法人税
法一二七条一項各号のいずれに該当するかを付記すれば足りると規定しているので
ある。
(ウ) 青色申告に係る更正処分との対比において、青色申告書提出承認の取消処
分の性質を考えるに、まず、前者は、納税者が帳簿書類にもとづいて提出した申告
書の課税標準等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたときその他課
税標準等がその調査したところと異なるときに、申告書にかかる課税標準等を更正
するものである。したがつて、右更正の場合は、税務官庁が当該納税者において記
帳した帳簿書類を尊重し、これにもとづいて所得の計算をする建前となつているの
に、それにもかかわらず右帳簿書類を信用しないのであるから、その信用しない理
由を帳簿の記載以上に信ぴよう力のある資料を摘示して説明することが必要とされ
るのである。そこで、その理由付記としては、いかなる勘定科目にいくらの脱漏が
あり、その金額はいかなる根拠にもとづくものかをその記載自体から了知できる程
度に明示しなければならないとされているのである。これに対して、右承認取消し
の場合は、帳簿書類の備付けとその記帳が法人税法一二七条一項各号所定の取消事
由に該当するものとして、青色申告書提出承認を取り消すものであつて、個々の具
体的数額が直接問題となるものではない。もともと、青色申告書提出の承認は、事
業年度開始の日までに所轄税務署長に法定の事項を記載した申請書を提出すること
により、通常与えられる建前になつている。すなわち、法人税法一二三条の却下要
件に該当しないかぎり、税務署長は右申請を承認しなければならないし、また、当
該事業年度終了の日までに当該申請の承認または却下がなかつたときは、当該申請
の承認があつたものとみなされるのである(同法一二五条)。しかしながら、納税
者において、全事業年度を通じ、法所定の帳簿書類を完備し、誠実に記帳を続け、
それにもとづく正しい会計処理と所得計算をするのでなければ、この帳簿書類に即
して課税標準等を算定することはもはや期待できないのであるから、そのような場
合には青色申告書提出の承認が取り消されるのもやむをえないといわなければなら
ない。このように、右承認取消しの場合は、信頼性のある帳簿書類を完備、記帳し
ていない納税者に対し、その帳簿書類の信頼性の欠如を理由に青色申告書提出承認
を取り消すものであり、個々の勘定科目や数額をその帳簿書類に直接関連させなが
ら逐一こくめいに摘示しなければならない必要性はまつたくないのである。
以上のとおり、両者はその性質を異にしているのであるから、その通知書に付記す
べき理由の程度も当然に異なり、後者の場合は前者の場合よりも理由が簡単であつ
てさしつかえないのである。
また、法人税法一二七条一項は、青色申告書提出承認の取消理由を一号から四号ま
での類型に分けて具体的に明文化し、この四つの類型のいずれかに該当するときで
なければ取り消すことができないとしているのであるから、その取消処分の理由付
記の程度としては、どの条項(取消理由)で取り消されたのかを明示しさえすれ
ば、税務官庁の恣意は十分に抑制されることになり、また、納税者に対して不服申
立てのための便宜もつくされているものといえるのであつて、一般的に不利益処分
に関し理由付記を要求する法の趣旨にも十分合致しているのである。
このように、法人税法一二七条一項の立法趣旨は、取消処分を制限し、その取消理
由を類型化している建前を前提として、理由付記の程度としては該当条項のみで足
りることをまさに明定しているのである。
(2) 取消理由の存在
原告は、昭和三八年事業年度においてもまた昭和三九事業年度においても、その帳
簿書類に後記((三)(1)(ア)(イ)および(2)(ア)(イ))のように売
上・雑収入・仕入等の一部を計上せず、また、架空仕入を計上していたが、これら
の事実は法人税法一二七条一項三号に該当する。したがつて、本件各取消処分は同
条項号にもとづく適法なものである。(三) 本件各更正処分等の適法性について
(1) 昭和三八ないし昭和四二事業年度において、原告の申告所得金額を修正す
べき項目とその金額の内訳は次のとおりであるる。
(ア) 昭和三八事業年度
(加算)
(a) 売上計上もれ                一、五八七、一一〇円
(b) 雑収入計上もれ               一、七四一、五一三円
(c) 架空仕入                  五、一二四、九五二円
(d) 貸倒準備金勘定繰入否認額             七三、九九〇円
合  計                   八、五二七、五六五円
(減算)
(e) 仕入計上もれ                 四、二七二、〇一二円
(差引増加所得)                 四、二五五、五五三円
(イ) 昭和三九事業年度
(加算)
(a) 売上計上もれ                二、九六三、〇四九円
(b) 減価償却の償却超過額               四九、七五五円
(c) たな卸計上もれ                   七、八九六円
(d) 雑収入計上もれ                 二九九、九七九円
(e) 架空仕入                  一、九〇八、三七五円
(f) 倒準備金勘定繰入否認額            一〇〇、〇〇〇円
合  計                   五、三二九、〇五四円
(減算)
(g) 仕入計上もれ                二、二一三、三一五円
(h) 未払事業税認定損                五一〇、六六七円
(i) 貸倒準備金勘定戻入認容額             七三、九九〇円
合  計                  二、七九七、九七二円
(差引増加所得)                  二、五三一、〇八二円
(ウ) 昭和四〇事業年度
(加算)
(a) 雑収入計上もれ                 二七一、五六五円
(b) 受取配当のうち益金算入額              一、〇〇〇円
(c) 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額     五、三四五円
合  計                     二七七、九一〇円
(減算)
(d) 減価償却超過額の当期認容額            一五、八七一円
(e) 前期否認たな卸計上もれの当期認容額         七、八九六円
(f) 前期否認売上繰延計上額の当期認容額        三〇、三〇〇円
(g) 賃倒引当金戻入認容額              一〇〇、〇〇〇円
合  計                    一五四、〇六七円
(差引増加所得)                    一二三、八四三円
(エ) 昭和四一事業年度
(加算)
(a) 雑収入計上もれ                 一一三、六〇八円
(b) 受取配当のうち益金算入額                九〇〇円
(c) 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額     八、〇〇五円
(d) 価格変動準備金勘定繰入否認額           六六、五二九円
(e) 貸倒引当金勘定繰入否認額             四九、四〇〇円
(f) 賞与引当金勘定繰入否認額            一五八、五三二円
(g) 支払都民税の損金否認額              一八、五七〇円
(h) 支払事業税延滞金の損金否認額           二六、〇七〇円
合  計                   四四一、六一四円
(減算)
(i) 減価償却超過額の当期認容額            一〇、八〇八円
(j) 納税引当金から支出した事業税額          八三、七〇四円
(k) 未私事業税認定損                  七、三八〇円
合  計                      一〇一、八九二円
(差引増加所得)                   三三九、七二二円
(オ) 昭和四二事業年度
(加算)
(a) 売上計上もれ                  一四九、八四〇円
(b) 雑収入計上もれ                 一二二、一五七円
(c) 受取配当のうち益金算入額                九〇〇円
(d) 価格変動準備金勘定繰入否認額           一〇、八六三円
(e) 賃倒引当金勘定繰入否認額             六四、〇五二円
(f) 賞与引当金勘定繰入否認額            一八四、一五一円
合  計                    五三一、九六三円
(減算)
(g) 減価償却超過額の当期認容額             七、三六〇円
(h) 価格変動準備金戻入認容額             六六、五二九円
(i) 貸倒引当金戻入認容額               四九、四〇〇円
(j) 賞与引当金戻入認容額              一五八、五三二円
(k) 未払事業税認定損                 三〇、五〇〇円
合  計                     三一二、三二一円
(差引増加所得)                   二一九、六四二円
(2) 右(1)の各項目の明細は次のとおりである。
(ア) 昭和三八事業年度
(a) 売上計上もれの明細は別表一のとおりである。同表のうち東京相互銀行立
川支店におけるA名義の日掛積金は、原告の現金売上のなかから簿外の預金にした
ものであり、その余はすべて原告が同表小切手類振出人等欄に記載のものらに対す
る売掛代金として同人らから受領した小切手等を簿外預金としたものである。これ
らはいずれも原告の簿外売上、すなわち売上計上もれにあたる。
(b) (i)昭和三八年一二月一〇日に原告所有の小平市<以下略>所在、木造
モルタルトタン葺二階建居宅兼店舗(通称P8)につき従来の賃借人訴外Bより訴
外株式会社サンエーに賃借人の名義変更(賃借権譲渡)をしたのにともない、原告
がBより名義書替料として受領した一、五〇〇、〇〇〇円が計上もれとなつてお
り、(ii)昭和三八年一二月分から昭和三九年二月分まで株式会社サンエーから
受領した家賃収入は月当り一二五、〇〇〇円であるのに、原告は月当り一〇〇、〇
〇〇円として計上しており、差引月当り二五、〇〇〇円、期中合計七五、〇〇〇円
が計上もれであり、さらに、(iii)別表二記載の各預金は原告の簿外預金であ
るところ、これより生じた当期中の受取利息合計一六六、五一三円(その明細は同
表記載のとおり。)は原告の雑収入に計上すべきものである。以上(i)(ii)
(iii)の合計一、七四一、五一三円が当期における原告の雑収入の計上もれで
ある。(c)架空仕入の明細は別表三のとおりである。同表記載の各普通預金へ振
り込まれた小切手はいずれも原告より小高商店ほか四店に対する仕入原材料代の支
払いとして振り出されたものであるが、右仕入先の五店へは交付されず、同表記載
のとおりCおよびD名義の各普通預金に振り込まれたものであり、いずれも架空仕
入である。
(d) 貸倒準備金勘定繰入否認額は、昭和三八事業年度以降原告の青色申告書提
出承認を取り消したため、青色申告法人にかぎり認められた貸倒準備金勘定への繰
入額の損金処理を否認したものである。
(e) 仕入計上もれの明細は別表四のとおりである。
(イ) 昭和三九事業年度
(a) 売上の計上もれは警察学校への五、〇四六円および多摩身体への二五、二
五八円の合計三〇、三〇四円の売上の繰延計上額のほか、別表五のとおりである。
同表の内容は別表一に関し述べたところ(前記(ア)(a))と同趣旨である。
(b) 減価償却の償却超過額四九、七五五円は、ボンベの減価償却の償却超過額
である。
(c) たな卸計上もれ七、八九六円は、プロパンガスの期末たな卸の計上もれで
ある。
(d) 雑収入の計上もれは、(i)昭和三九年三月分の株式会社サンエーから受
取家賃が一二五、〇〇〇円であるが、原告は一〇〇、〇〇〇円を計上したのみであ
り、その差額二五、〇〇〇円が計上もれであり、(ii)原告の簿外預金からの受
取利息合計二七四、九七九円(その明細は別表六のとおり。)も計上もれである。
(e)架空仕入の明細は別表七のとおりである。同表の内容は別表三に関し述べた
ところ(前記(ア)(c))と同趣旨である。
(f) 貸倒準備金勘定繰入否認額一〇〇、〇〇〇円は、前記(ア)(d)と同趣
旨である。
(g) 仕入計上もれの明細は別表八のとおりである。
(h) 昭和三八事業年度分を昭和三九事業年度分と同時に再更正処分するにとも
ない、地方税法(昭和二五年法律第二二六号)の規定にもとづき計算される昭和三
八事業年度分の事業税を認定損とすべきである。
(i) 貸倒準備金勘宕戻入認容額は、昭和三八事業年度以降原告の青色申告書提
出承認を取り消したため、同事業年度より繰り越した貸倒準備金勘定の益金算入処
理を否認したものである。
(ウ) 昭和四〇事業年度
(a) 雑収入計上もれ二七一、五六五円は、原告の簿外預金からの当該事業年度
における受取利息の合計である。
(b) 受取配当のうち益金算入額一、〇〇〇円は、租税特別措置法(昭和四五年
法律第三八号による改正前。以下同じ。)四二条の二第一項にもとづき、次のとお
り計算したものである。
受取配当 4.000円×25%=1、000円
(c) 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額五、三四五円は、法人税法
(昭和四三年法律第二二号による改正前。以下同じ。)四〇条にもとづくものであ
る。
(d) 減価償却超過額の当期認容額一五、八七一円は、昭和三九事業年度におい
て更正したボンベの減価償却超過額(前記(イ)(b))を当期において認容した
額である。
(e)、(f)前期の更正において否認した額(前記(イ)(a)(c))を当期
で認容したものである。
(g) 前期の更正において否認した貸倒引当金(旧称、貸倒準備金)勘定繰入額
(前記(イ)(f))を当期益金として戻入処理をしていたので、益金から除くべ
きものである。
(エ) 昭和四一事業年度
(a) 雑収入計上もれは、前記(ウ)(a)と同一理由による。
(b) 受取配当のうち益金算入額は、前記(ウ)(b)と同一理由により、次の
とおり計算したものである。
受取配当 3、600円×25%=900円
(c) 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額は前記(ウ)(c)と同一
理由による。
(d) 価格変動準備金勘定繰入否認額は、原告が青色申告法人に該当しないた
め、青色申告法人にのみ認められる価格変動準備金勘定繰入額の損金算入を否認し
たものである(租税特別措置法五三条参照)。
(e) 貸倒引当金勘定繰入否認額は、右(d)と同趣旨の理由によるものである
(法人税法五二条参照)。
(f) 賞与引当金勘定繰入否認額は、右(d)と同趣旨の理由によるものである
(法人税法五四条参照)。
(g) 支払都民税の損金否認額は、原告が法人税法上損金の額に算入できない都
民税を仮払勘定から振り替えて損金処理をしていたので、これを否認したものであ
る(法人税法三八条二項三号参照)。
(h) 支払事業税延滞金の損金否認額は、右(g)と同趣旨の理由による(法人
税法三八条二項四号参照)。
(i) 減価償却超過額の当期認容額は、前記(ウ)(d)と同一の理由による。
(j) 納税引当金から支出した事業税額は、法人税法上損金の額に算入する事業
税を利益処分により積み立てた納税引当金をもつて支出していたので、これを損金
として認容したものである。
(k) 未払事業税認定損は、前記(イ)(h)と同趣旨の理由による。
(オ) 昭和四二事業年度
(a) 売上計上もれは、小平市立第一小学校ほか四件に対する売上額の繰延計上
額である。
(b) 雑収入計上もれは、前記(ウ)(a)と同一理由による。
(c) 受取配当のうち益金算入額は、前記(ウ)(b)と同一理由により、次の
とおり計算したものである。
受取配当 3.600円×25%=900円
(d) 価格変動準備金勘定繰入否認額は、前記(エ)(d)と同一理由による。
(e) 貸倒引当金勘定繰入否認額は、前記(エ)(e)と同一理由による、
(f) 賞与引当金勘定繰入否認額は、前記(エ)(f)と同一理由による。
(g) 減価償却超過額の当期認容額は、前記(ウ)(d)と同一理由による。
(h) 価格変動準備金戻入認容額は、前期の更正において否認した価格変動準備
金勘定繰入額を当期益金として戻入処理をしていたので、これを益金から除いた。
(i) 貸倒引当金戻入認容額は、右(h)の同趣旨の理由による。
(j) 賞与引当金戻入認容額は、右(h)と同趣旨の理由による。
(k) 未払事業税認定損は、前記(イ)(h)と同趣旨の理由による。
(3) 前記(1)で述べた各事業年度の差引増加所得を原告の確定申告にかかる
所得金額(課税標準)に加算したものと本件各(再)更正処分における所得金額
(課税標準)を対照すれば次表のとおりである。
<略>
したがつて、本件各(再)更正処分はいずれも正当な課税標準(所得金額)の範囲
内でなされたものであるから、適法である。
また、前記(1)の(ア)(a)(b)(c)(e)、(イ)(a)(ただし、売
上繰延計上を除く。)(d)(e)(g)、(ウ)(a)、(エ)(a)、(オ)
(b)は、いずれも国税の課税標準の基礎となるべき事実の隠ぺいまたは仮装行為
に該当するので、本件各重加算税賦課決定処分も適法である。
(四) なお、原告は銀行預金の調査を基礎とする税務調査は違法であると主張す
るが、このような調査は租税実定法の解釈上何ら違法ではない。ことに、原告のよ
うに税務調査に非協力的な場合あるいは反面調査が困難な取引(現金取引、取引先
の証票がないときなど)について表見的に帳票を整備している場合等においては、
右のような調査によつて脱税の端緒を発見せざるをえないことは当然である。
四 本案前の主張に対する原告の答弁
本件昭和三九事業年度以降の取消処分に対して原告が不服申立手続をしていないこ
とは認める。それは原告の手落であつた。
五 被告の主張に対する原告の答弁および反論
(一) 被告の主張(三)(1)は争う。もつとも、被告主張の一部はこれを認め
るが、その明細は後記(二)のとおりである。
(二) (1)昭和三八事業年度
(ア) 売上計上もれについて
売上計上もれとして被告の主張する事実(三(三)(2)(ア)(a))はすべて
否認する。被告主張の小切手のうち原告の売掛代金として受領したものはほとんど
帳簿書類に計上してあり、その余のものは原告の代表者であるCが商工会の副会長
や市会議員をしているところから個人的に小切手の現金化を依頼され、同人の現金
と交換してやつたもので原告の売上とは関係がない(その明細は次表のとおりであ
る。)。また、A名義の日掛積金は、同人が子供の将来のためにその個人資金をも
つて積み立てたものであり、原告の売上とは関係がない。
(イ) 雑収入計上もれについて
雑収入計上もれとして被告が主張する事実のうち、家賃収入七五、〇〇〇円に関す
る部分(三(三)(2)(ア)(b)(ii))は認めるが、その余は争う。Bよ
り一、五〇〇、〇〇〇円を受領したのは、原告ではなく、原告の代表者であるC個
人である。すなわち、Cは、Bが国民金融公庫や多摩信用金庫等から融資を受ける
にあたり個人保証をしていたが、Bが事業に失敗し夜逃げするようにして立ち去る
にあたり、Cに今後の処理を頼み、謝礼(危険料を含む。)の趣旨で一、五〇〇、
〇〇〇円を渡していつたものである。したがつて、右一、五〇〇、〇〇〇円は原告
の雑収入ではない。なお、この一、五〇〇、〇〇〇円については、三か年にわたる
諸経費として二〇〇、〇〇〇円を控除し、一、三〇〇、〇〇〇円を三か年にわたる
Cの所得として同人において分割して所得税の修正申告をし、すでに納税ずみであ
る。次に、別表二記載の各預金はいずれも原告の簿外預金ではないから、その受取
利息は原告の雑収入とはならない。
(ウ) 架空仕入および仕入計上もれについて
架空仕入および仕入計上もれとして被告が主張する事実(三(三)(2)(ア)
(c)(e))はすべて否認する。原告には架空仕入も仕入計上もれもともにな
い。もつとも、原告が仕入先より商品を仕入れた場合に手持ちの資金(現金、普通
預金、当座預金)がないときは、一時Cやその妻Aの手持ち資金(現金、普通預
金、当座預金)より立替えて仕入先へ支払つておき、原告に資金ができた時に右立
替者へ小切手等で支払つたことはある。この場合、帳簿上の処理は(現金-仮受
金)(仕入-現金)(仮受金-現金または当座)とすべきであるが、原告のような
中小企業においては人手不足や経理上の知識不足から、中間を省略し、(仕入-現
金または当座)とし、仕入台帳上は立替者へ支払つた時に仕入代金を支払つたとい
う形で記載していたものである。また、立替金の返還は一回の立替金を数回に分割
したりあるいは数回の立替金を一括して支払つたりしているが、長期の期間をとつ
てみれば実際の仕入金額と立替金の返還として支払つた金額とは一致するはずであ
る。被告は右のような実情を無視し、一方では原告が立替金の返還として支払つた
ものを架空仕入とし、他方ではCらによる立替支払を仕入計上もれと主張している
のである。
ここで、被告が架空仕入や仕入計上もれと主張している具体的事実について右の事
情を明らかにすれば次のとおりである(なお、便宜上、昭和三九事業年度の分につ
いても合わせて説明する。)。
(a) 久保田材木店関係
(i) 架空仕入(別表三3791016)合計三、一二二、四一七円
(ii) 仕入計上もれ(別表四156101113171929)合計二、六〇
五、九一二円
右両者の合計金額が一致しないのは、原告と久保田材木店の取引が昭和三五年以来
のものであり、昭和三七事業年度以前のいわゆる仕入計上もれがあるためである。
(b) 大岩商店関係
(i) 架空仕入(別表三24813、同七251012)合計一、九六二、五二
五円
(ii) 仕入計上もれ(別表四27815162124283134、同八21
01112141718222333)合計一、一三〇、二七〇円
右両者の差額は現金にて支払つている。
(c) 小高商店関係
(i) 架空仕入(別表三151215)合計三四二、一七五円
(ii) 仕入計上もれ(別表四232530)合計二七五、七〇五円
右両者の合計金額が一致しないのは、昭和三七事業年度にも被告のいわゆる仕入計
上もれがあるためである。
(d) (有)鈴木石炭関係
(i) 架空仕入(別表三614、同七3)合計三一〇、〇八〇円
(ii) 仕入計上もれ(別表四26、同八24)合計二一九、八八〇円
右両者の合計金額が一致しないのは、昭和三七事業年度および昭和四〇事業年度に
おいて被告のいわゆる仕入計上もれがあるためである。
(e) 林友燃料(株)関係
(i) 架空仕入(別表七1)三一、三三〇円
(ii) 仕入計上もれ(別表四22、同八71321)合計三六六、三三〇円
右両者の合計金額が一致しないのは、昭和三七事業年度および昭和四〇事業年度に
おいて被告のいわゆる架空仕入があつたためである。
(f) 八幡屋(E)関係
(i) 架空仕入(別表七8)一七一、〇〇〇円
(ii) 仕入計上もれ(別表四14、同八26)合計二七一、〇〇〇円
(g) 原ロ工業所(F、G、H、I)関係
(i) 架空仕入(別表七37911)合計六五六、〇〇〇円
(ii) 仕入計上もれ(別表八45891527)合計三二〇、〇〇〇円
右両者の合計金額が一致しないのは、昭和三七事業年度に被告のいわゆる仕入計上
もれがあるのとCらが現金にて仕入代金を立替払いしたのがあるためである。
(h) 荒井建設関係の架空仕入(別表三11)三〇〇、〇〇〇円、杉田屋商店関
係の架空仕入(別表七4)三〇、六〇〇円、(有)石森商店関係の仕入計上もれ
(別表四3)一〇〇、〇〇〇円、J関係の仕入計上もれ(別表四18)一〇〇、〇
〇〇円、K関係の仕入計上もれ(別表四27)一〇二、〇〇〇円、日昭電設(株)
関係の仕入計上もれ(別表四32)一〇、三〇〇円、(有)多摩自動車商会関係の
仕入計上もれ(別表八1)二〇、〇〇〇円はいずれも原告の仕入とは関係がない。
右のうち、K関係は宣伝費であり、(有)多摩自動車商会関係は修理代である。
(エ) 貸倒準備金勘定繰入否認額について
本件昭和三八事業年度の取消処分は違法であり取り消されるべきであるから、貸倒
準備金勘定繰入を否認することは許されない。
(2) 昭和三九事業年度
(ア) 売上計上もれについて
売上計上もれとして被告の主張する事実(三(三)(2)(イ)(a))のうち、
合計三〇、三〇四円の売上の繰延計上額は認めるが、その余はすべて否認する。昭
和三八事業年度について述べたところ(前記(二)(1)(ア))と同様であり、
その明細は次表のとおりである。
(イ) 減価償却の償却超過額について
減価償却の償却超過額として被告の主張する事実(三(三)(2)(イ)(b))
は認める。
(ウ) たな卸計上もれについて
たな卸計上もれとして被告の主張する事実(三(三)(2)(イ)(c))は認め
る。
(エ) 雑収入計上もれについて
雑収入計上もれとして被告が主張する事実のうち、家賃収入二五、〇〇〇円に関す
る部分(三目(三)(2)(イ)(d)(i)は認めるが、その余は争う。
(オ) 架空仕入および仕入計上もれについて
昭和三八事業年度に関し述べたとおりである(前記(二)(1)(ウ))。
(カ) 貸倒準備金勘定繰入否認額について
昭和三八事業年度に関し述べたところ(前記(二)(1)(エ))と同一である。
(3) 昭和四〇ないし四二事業年度
被告主張の事実のうち雑収入計上もれに関する部分(三(三)(2)(ウ)
(a)、(エ)(a)、(オ)(b))は、いずれも争う。
(4) 被告の主張事実三(三)(3)は争う。
(三) いわゆる簿外預金について
(1) Cらの貯蓄可能額について
被告は別表二および同六の各預金は原告の簿外預金であると主張し、原告がこれを
否認することは前記のとおりである。そこで、まず、Cらの貯蓄可能な金額につい
て述べるに、(ア)CがLより謝礼(危険料を含む。)として受領した一、五〇
〇、〇〇〇円(前記(二)(1)(イ))、(イ)Cが昭和三七年三月一二日訴外
Mに八〇〇、〇〇〇円を貸し付けていたところ、昭和三八年七月一四日に元本のう
ち五〇〇、〇〇〇円の返還を受けるとともに利息三〇〇、〇〇〇円の支払を受け、
その後昭和四〇年初までに元本のうち二〇〇、〇〇〇円が返還されたので、合計
一、〇〇〇、〇〇〇円、(ウ)Cの弟であるNの給料四二〇、〇〇〇円、退職金二
八〇、〇〇〇円、個人営業収益九〇〇、〇〇〇円、合計一、六〇〇、〇〇〇円、
(エ)CおよびA夫妻の二年間の収入金のうち貯蓄した二、六〇〇、〇〇〇円、
(オ)以上合計六、七〇〇、〇〇〇円に対する二年間の利子約一、二〇〇、〇〇〇
円、以上の総合計七、九〇〇、〇〇〇円のほか、C夫妻が結婚の媒介等をして謝礼
等を受領しており、これもCらの貯蓄可能金額に含まれるのである。
(2) 架空名義預金について
別表二および同六の各預金のうち利平名義以外のものは架空名義であるが、それは
原告の預金ではなく、CかAかNのいずれかの預金である。架空名義にしたのは、
預金額が五〇万円をこえる場合には利子税の関係上これを分割して架空名義の預金
口座を作るという金融機関の慣行に従い、各金融機関の指導を受けてこれをしたま
でであつて、もとより原告の資産を隠匿するためにしたものではない。
六 原告の反論に対する被告の再反論
(一) 原告主張の立替払等について
原告は、原告には売上計上もれも架空仕入も仕入計上もれもなく、売上については
ほとんどを帳簿書類に計上しており、それ以外の売上計上もれと被告において主張
するところのものはCが個人的に現金と交換してやつた小切手を入金したものであ
り、また、被告の主張する架空仕入および仕入計上もれは、原告に手持資金がない
場合に仕入先に対しCやAの手持資金(現金、普通預金、当座預金)から立替えて
支払つておき、原告に資金が出来た時に右立替者へ返還したことを指すものである
(もつとも、帳簿上の処理は中間を省略し、立替者へ返還した時に仕入代金を支払
つたという形で記帳している。)旨主張する。
しかしながら、次に述べる諸事実を総合して考えれば、原告はCらの預金口座を利
用し、これを操作することにより、すなわち右預金口座から仕入先へ支払つた実際
の仕入金額より多額の金額を右預金口座へ入金することにより架空の仕入金額を作
り出すとともに売上金額の一部を右預金口座へ入金してこれを隠ぺいし、簿外資産
を作つて租税の回避を図つたものといわざるをえない。
(1) 別表一および同五の各預金口座には個人のものとは考えられないような多
額の金額の異動があり、かつ、原告の売上先振出の小切手類の入金が数多くみられ
る。
(2) 原告の帳簿上その仕入代金の支払のために仕入先へ振り出したとされてい
る原告振出の小切手が別表三および同七の各預金口座へ入金されており、また、原
告振出の小切手が埼玉銀行小平支店で現金化され、これが右預金口座へ入金されて
いる。
(3) 別表四および同八の各預金口座から仕入代金の支払がなされている。
(4) Cが個人的に現金換えの依頼を受けて現金と交換したのち小切手類を別表
一および同五の各預金口座に入金したものであれば、その現金の出所が明らかにさ
れなければならないのにそれがなされていない。
(5) Cらによる立替払とこれに対する原告の清算が常時行なわれているにもか
かわらず、これに関する記録が一切なされておらず、立替金の支払日と清算金の支
払日との間の間隔も一定しておらず、その金額も同一金額ではない(したがつて、
超過清算、たとえば一〇〇、〇〇〇円の立替払に対し一五〇、〇〇〇円の清算がな
されてもこれを明らかにすることが困難となる。)。
(6) 立替払に利用したと主張する預金口座とその清算のために原告振出の小切
手を入金した預金口座とを別にしている。
(7) 原告の仕入先であるOや久保田材木店の反面調査をしたところ、その原告
に対する売上高と原告の会計帳簿上の仕入高との間に大きな差異が認められ、原告
の仕入計上額には架空の上積み額がある。
(8) 東京相互銀行立川支店におけるC名義の普通預金口座とA名義・N名義の
当座預金口座との間に数多くの錯綜がみられる。
(9) 預金口座を転々と解約し、架空名義のものに移し変えている。たとえば、
東京相互銀行立川支店のC名義の普通預金口座を昭和三九年二月一七日解約し、そ
の解約金合計一、一一七、八三三円をもつて同日同支店においてPという架空名義
の普通預金口座を新規設定し、さらに同口座を同年一一月一四日解約したうえ、同
日その解約金合計二八五、三一〇円を同支店においてその前日新規設定されていた
Qという架空名義の普通預金口座に入金している。さらに、被告の本件に関する調
査の初日である昭和四〇年九月四日には右Q名義の普通預金口座(これには売上計
上もれ分を入金していた。)とA名義の当座預金口座(これは仕入計上もれ分の支
払に利用していた。)が解約されているという不自然な事実がある。
(10) 預金等の資産がC夫妻の個人所得から蓄積されたものと考えられないよ
うな多額な増加を示している。すなわち、昭和三八および昭和三九事業年度におけ
るCおよびその家族名義の資産の増加状況は別表九のとおりである。同表で明らか
なように、昭和三八事業年度における資産の増加額は六、五一〇、三八九円、昭和
三九事業年度におけるそれは四、二三九、四三一円である。ところで、C夫妻の当
時の収入は、被告に対し申告されたところによれば昭和三八年分の収入金額が合計
一、八七四、〇〇〇円(C一、六四三、六〇〇円、A二三〇、四〇〇円、昭和三九
年分の収入金額が合計一、六九六、〇〇〇円(C一、三三四、八〇〇円、A三六
一、二〇〇円)にすぎない。そして、右収入金額とCの社会的地位や扶養親族(子
供三人)等を考慮すれば、前記のように二事業年度の間に合計一〇、七四九、八二
〇円にものぼる資産を蓄積することは、C夫妻の個人所得だけからでは不可能とい
わざるをえない。この点に関し、原告は、C夫妻の二年間にわたる貯蓄可能額は、
七、九〇〇、〇〇〇円をこえる旨主張する(五(三)(1))。しかし、原告主張
の(ア)のBから一、五〇〇、〇〇〇円を受領したりは前記のとおりCではなく原
告であつて、それは原告の所得金額に含まれるべきものであるから、それをC夫妻
の貯蓄可能額に含めることは許されず、(ウ)のNの収入一、六〇〇、〇〇〇円
は、当時、同人は自ら事業を営んでおり、東京相互銀行立川支店に当座預金口座
(番号一一二)と普通預金口座(番号一六七二)を、多摩中央信用金庫小平支店に
普通預金口座を三口(番号二三二四、四九三八、六二九五)有していたのであるか
ら、これをC夫妻の預金口座に預金する必要はまつたく考えられず、(エ)のC夫
妻の貯蓄額二、六〇〇、〇〇〇円については、もしそのとおりであるとすれば、C
一家は昭和三八年および昭和三九年の二か年を租税公課の分をも含めて九七〇、〇
〇〇円で生活したことになり(C夫妻の二年間の収入金額は前記のとおり三、五七
〇、〇〇〇円であるから、これより原告主張の貯蓄額二、六〇〇、〇〇〇円を差し
引けば九七〇、〇〇〇円となる。)、これよりCが納めるべき所得税四四五、八七
〇円およびAが納めるべき所得税二五、四六〇円のみを控除してみても(このほか
固定資産税や保険料等も当然控除されるべきである。)、C一家は二か年を五〇
〇、〇〇〇円足らずで生活したことになり、原告の主張は失当もはなはだしいとい
わざるをえず、(オ)の利子約一、二〇〇、〇〇〇円については、別表九の預金を
もとに年利率を銀行預金の最高の五・五%、税率を租税特別措置法三条により五%
として計算すれば利息は八三〇、四一九円となることに照らし(この計算では無利
息である当座預金にも利息がつくという建前で計算してある。)、失当といわざる
をえない。
(11) なお、原告は、昭和四三事業年度(昭和四三年三月一日より昭和四四年
二月二八日までの事業年度)における剰余金計算書において被告が本件各再更正処
分に際し原告の簿外資産と認定した別表九の預金等を原告の資産に受け入れる会計
処理をした(簿外預金からの解約金はCに対する貸付金として処理された。)。右
会計処理は原告が自主的にこれをしたものであつて(簿外預金からの解約金につい
ては、被告が原告に対し右解約金額をCに対する認定賞与として源泉所得税を課税
することになる旨を連絡したところ、原告から右解約金額についてはCに対する貸
付金として処理するから認定賞与として源泉所得税を課税しないでほしい旨要請が
あり、原告は租税負担の軽減をはかつてCに対する貸付金として処理したものであ
る。)、このことは原告が本件各再更正処分における被告の簿外資産に関する認定
を自認したものといえるのである。
(二) A名義の日掛積金について
被告は東京相互銀行立川支店におけるA名義の日掛積金を原告の簿外預金と判断し
たのであるが、その理由は次のとおりである。
(1) 右日掛積金は毎日一、〇〇〇円ずつ現金をもつて積立てられているが、そ
の資金源についてはAの個人資金であるとの裏付けがない。同人の所得金額は、同
人の所得税の確定申告書によれば、昭和三八年分は二三〇、四〇〇円、昭和三九年
分は三六一、二〇〇円であるのに対し、昭和三八事業年度における積立金額は三六
六、〇〇〇円、昭和三九事業年度におけるそれは三六五、〇〇〇円であつて、所得
金額を上回る積立てができるはずはないのである。
(2) C一家の個人的な積立金としては、C名義で埼玉銀行小平支店に月掛四
〇、〇〇〇円、大生相互銀行所沢支店に月掛二〇、〇〇〇円の二口の定期積立てが
なされており、Cの社会的地位から勘案しても別に日掛一、〇〇〇円をする家計的
余裕に疑問がある。
(3) 右日掛積金は、満期となつた都度その満期額を架空名義の普通預金口座に
入金している。すなわち、昭和三九年四月二五日の満期額三六六、〇〇〇円を同日
P名義の普通預金口座に、昭和四〇年四月二六日の満期額三六六、〇一九円を同日
Q名義の普通預金口座にそれぞれ入金している。
(4) 原告においては毎日現金による売上が多く、かつ、売掛代金の回収がひん
ぱんに行なわれているので、売上収入金を除外することは容易な状況にあつた。
(三) Bから受領した一、五〇〇、〇〇〇円に関する所得税の修正申告について
原告は、Bから受領した一、五〇〇、〇〇〇円についてはすでにCにおいて所得税
の修正申告をし納税ずみである旨主張する。しかしながら、昭和三八年一二月九日
に一、五〇〇、〇〇〇円を受領しておきながら、正規の申告もせず、被告による本
件調査において発覚したため、急きよCの個人所得であるとして右金額を一、三〇
〇、〇〇〇円に圧縮したうえ、昭和三八年分所得税についての修正申告をするので
もなく、三か年に分割して修正申告することが何故適正であるか理解しがたい。ま
た、Cが右修正申告した所得金額がはたして右一、五〇〇、〇〇〇円なのか、それ
ともそれ以外の申告もれの所得の一部なのか不明である。
七 被告の再反論に対する原告の再々反論
被告は、原告が昭和四三事業年度の剰余金計算書において被告が本件各再更正処分
に際し原告の簿外資産と認定した別表九の預金等を原告の資産に受け入れる会計処
理を自主的にしたことにより、被告の右認定を自認したものである旨主張する。し
かしながら、原告が右のような会計処理をしたのは自主的にしたものではなく、被
告の懇請があつたためと行政処分はこれを取り消す判決があるまでは有効であると
の見解のもとに被告が毎事業年度の法人税に関し更正処分をするため、本件訴訟が
終了するま
で暫定的に被告の認定を尊重した会計処理をしたまでのことである。
第三 立証(省略)
○ 理由
第一 本件各取消処分の取消請求について
一 請求原因(一)の事実は当事者間に争いがない。
ところで、本件昭和三九事業年度以降の取消処分に対して原告が不服申立手続をし
なかつたことは当事者間に争いがなく、それが原告の手落であることは原告の自認
するところであつて、不服申立ての前置を経ないことについての正当な理由は見あ
たらない。してみれば、右取消処分の取消しを求める訴えは、国税通則法八七条一
項本文に違反し、その余の点を判断するまでもなく不適法であることが明らかであ
り、却下を免れない。
二 本件昭和三八事業年度の取消処分の通知書にはその理由として「法人税法第一
二七条第一項第三号に掲げる事実に該当すること」と記載されているだけであるこ
とは当事者間に争いがない。
そこで、このような処分の適否について判断する。
(一) 法人税法一二七条二項の文理
法人税法一二七条は一項において青色申告書提出承認の取消事由を一号から四号ま
での四つの類型に規定し、二項において右承認の取消処分をする場合には書面でそ
の旨を通知することおよびその書面には「その取消しの処分の基因となつた事実が
同項各号のいずれに該当するかを付記しなければならない」ことを規定している。
ところで、青色申告書にかかる更正処分(以下、青色更正処分という。)の場合は
「更正通知書にその更正の理由を付記しなければならない」と規定し(法人税法一
三〇条二項)、異議決定および裁決の場合は「理由を付」さなければならないと規
定していた(国税通則法七五条、行政不服審査法四一条一項、四八条。現行の国税
通則法八四条四、五項、一〇一条一項は異議決定および裁決の場合につき「理由を
付記し、・・・右理由においてはその維持される処分を正当とする理由が明らかに
されていなければならない」と規定している。)。
右に述べた理由付記に関する規定の仕方を比較すれば、青色申告書提出承認取消処
分(以下、青色承認取消処分という。)の方が青色更正処分や異議決定、裁決の場
合よりも付記理由の内容に関し具体的に規定していることは明らかである。すなわ
ち、青色承認取消処分の場合には「その取消しの処分の基因となつた事実が同項各
号のいずれに該当するか」を付記しなければならないと定められているのである。
しかしながら、このことから、右の「その取消しの処分の基因となつた事実が同項
各号のいずれに該当するかを付記しなければならない」ということは、文理上当然
に該当条項号を付記すれば足りると読むべきであると断定することは困難である。
何故なら、法人税法一二七条二項後段の文言がたとえば「その取消しが同項各号の
いずれによるものであるかを付記しなければならない」となつているような場合に
は、その文理上該当条項号を付記すれば足りることが明らかであるが、「その取消
しの処分の基因となつた事実が同項各号のいずれに該当するかを付記しなければな
らない」となつている場合には、取消処分の基因となつた具体的事実とその該当条
項号の両者を付記しなければならない趣旨であると読むことも文理上不可能ではな
いからである(もつとも、取消処分の基因となつた具体的事実とその該当条項号の
両者の付記を要する場合には、「その取消しの処分の基因となつた事実およびそれ
が同項各号のいずれに該当するかを付記しなければならない」と規定することによ
つてその趣旨を一義的に明らかにしうるわけであるが、そのように規定した場合に
かぎつて前記両者の付記が要求されると解すべき合理的理由は存在しない。)。
これを要するに、法人税法一二七条二項後段の文理解釈だけからでは、青色承認取
消処分の通知書に付記すべき理由が該当条項号のみで足りるのかそれともそのほか
に取消処分の基因となつた具体的事実の記載をも必要とするのかということは必ず
しも明らかではないといわなければならない。
(二) 立法の経過
青色申告制度が旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)にとり入れられたのは昭和
二五年法律第七二号により同法の一部が改正された時であるが、その際は同法二五
条八項の一号ないし五号において青色承認取消しの実体要件を規定するとともに、
同条九項において当該法人に右取消しを通知する旨を規定していたにとどまり、理
由付記に関する規定は設けられていなかつた。その後、昭和三四年法律第八〇号に
よる旧法人税法の改正の際に、同法二五条九項の後段に「この場合において、前項
の規定による承認の取消の通知をするときは、当該通知の書面にその取消の基因と
なつた事実が同項各号のいずれに該当するかを付記しなければならない」旨の規定
が議員修正により設けられるに至り、これが現行法一二七条二項に引き継がれたの
である。
ところで、右昭和三四年法律第八〇号による旧法人税法の改正の際に、修正案を提
出したP9衆議院議員は、昭和三四年三月四日の衆議院大蔵委員会において修正案
の提案の趣旨として「現行法におきましては、税務署または国税局が青色申告の承
認取り消しをする場合は、ただ取り消しの通知をすればいいということになつてお
りますが、それでは善良な青色申告の納税者にとりまして非常に勝手が悪い。どう
いう理由で青色申告の承認を取り消すか、その理由を付記してもらいたい、こうい
う要望が強いので、本委員会としては、これは納税者の要望は当然である、この理
由付記を法律に明記しなければ、この青色申告の承認取り消しの政府の処分に対し
て納税者が異議申し立てをする場合に、現行法ではその異議の理由付記に非常に差
しつかえがある、政府が取り消しの理由を書いてさえくれれば、納税者の異議申し
立てに対する理由の付記が納税者にとつて非常にやりやすい、こういう意味におい
て修正案を提案した。かようなわけであります。そこで、もう一つ広範な理由から
申し上げますと、現在の青色申告に対する政府の更正決定のやり方の実態を見てみ
なければならぬ、こういうことで、先般来税の小委員会で青色申告に対する更正決
定のやり方の実体調査をしてみますと、実は、残念ながら、われわれとしては、現
在の税務行政がこの問題についてはかなりおざなりで紊乱しておる。その証拠に
は、納税者から訴訟を起され、裁判所において、政府のやつた青色申告に対する更
正決定は違法である、無効であるという判決を昨年来しばしば受けておる。これ一
つ見てもわかります。従つて、政府は、青色申告に対する更正決定についてはもつ
と法律通り明確な理由をつけなければならぬ。ところが、政府は実はつけられな
い。つけられない理由としては、青色申告の帳簿そのものが実は政府としては十分
信頼が置けない。従つて政府はある程度推定で更正決定なせざるを得ない、こうい
うわけです。推定で更正決定をする、つまり青色申告の帳簿そのものが認められな
いというならば、まず法律に定められた通り、政府は青色申告の承認をまず取り消
してかからなければならぬ。そういう順序を経た措置がなされておらぬから、裁判
所で政府は負けておる。この点は、もう少し法律通りに、政府が順序を運ばれるの
が当然と思う。政府としては、それは青色申告をなるべく奨励しようという親心か
ら納税者の間違いをとがめぬのだ、こうおつしやるのも、なるほど理由はありま
す。が、しかし、裁判所において政府は違法であるとしかられるところまで、これ
は強情に押すべきではない、こういう意味において、もつと堂々とやらなければな
らぬ。その場合の処置としては、めつたやたらと青色申告を取り消されては困りま
すから、今度は取り消しに対して政府は理由付記をしなければならぬ。こういうよ
うに、当委員会としては、政府当局と納税者との中間にあつて、最も公平な結論を
出したい。それが当委員会の修正案の趣旨であります。」と説明している(昭和三
四年三月四日衆議院大蔵委員会議録第一六号一〇頁)。
右に述べた立法の経過に照らして考えるに、従来青色承認取消処分には理由の付記
が要求されていなかつたのに昭和三四年法律第八〇号による旧法人税法の改正の際
議員からの修正案の提出により理由の付記が要求されるに至つたものであるが、こ
のことから当然にその理由付記の程度としては該当条項号の付記で足りると解する
ことは困難であり、また、修正案の提案趣旨の説明からも理由付記を要求する趣旨
が処分の相手方に対し処分の理由を知らせて不服申立てに便宜を与えるとともに、
処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制することにあつたことは明
白に読み取ることができるが、理由付記の程度は該当条項号のみの付記で足りると
提案者が考えていたかどうかは必ずしも明らかでないといわなければならない。
これを要するに、立法の経過に照らしても青色承認取消処分における理由付記の程
度は明らかではなく、結局、右理由付記の程度は青色承認取消処分の性質と理由付
記を要求する制度の趣旨に照らして合理的に解釈するほかないといわなければなら
ない。
(三) 青色承認取消処分の性質
申告納税制度は、自己の所得金額および税額を自ら正確に計算し、申告納税する制
度であり、納税者が帳簿書類を備え付け、取引を正確に記帳することがその基盤を
なしており、青色申告制度はこれを推進するために設けられたものである。すなわ
ち、青色申告書提出の承認を受けた者は、所定の帳簿を備え付け、これに取引を正
確に記帳することが義務づけられる反面、課税標準の計算に関し、各種の準備金や
引当金を法定額の限度で計上することができたり、固定資産の耐用年数の短縮や減
価償却額の割増計上や減価償却不足額の前五事業年度以内の加算などの特例の適用
を受けることができ、前五事業年度以内の繰越欠損金額の控除の特例を受けること
ができるなどの実体上の特典とともに、更正処分をするにあたつては帳簿書類の調
査にもとづいてこれを行ない、推計課税は禁止され、更正通知書には更正の理由付
記が要求されるなど手続上の特典が与えられているのである。これらの実体上の特
典は青色申告書により確定申告をするにつき享受しうるものであり、また、手続上
の特典は更正処分がなされる場合につき享受しうるものである。
ところで、青色承認取消処分は、青色申告書提出承認を受けた者に認められる右の
ような実体上および手続上の特典を剥奪するものであつて、不利益処分的な性質を
有するものといわなければならない。そして、ひとたび青色承認取消処分がなされ
ると、新たに承認を受けるまでは、右のような実体上および手続上の特典を享受で
きないのであるから、これらの特典は享受しつつ所得金額および税額の更正を受け
るにすぎない青色更正処分よりも、青色承認取消処分の方が納税者にとつてより大
きな不利益処分性を有するものというべきである。
(四) 理由付記を要求する趣旨
法人税法一二七条二項後段において青色承認取消処分に理由付記を要求する趣旨
は、前記のとおり昭和三四年法律第八〇号による旧法人税法の改正の際の修正案の
提案趣旨の説明からも明らかなように、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してそ
の恣意を抑制するとともに、処分の相手方に対し処分の理由を知らせて不服申立て
に便宜を与えることにあるものと解すべきである。
そこで、法人税法一二七条一項三号にもとづく青色承認取消処分の場合につき、右
に述べた理由付記を要求する趣旨の観点から、理由付記の程度として該当条項号の
みを記載した場合と具体的事実をも記載した場合とを比較検討する。法人税法一二
七条一項三号は「その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又
は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる
相当の理由があること」と規定している。そして、該当条項号のみを記載する場合
よりもこれに該当する具体的事実をも記載する場合の方が、一般的には右一二七条
一項三号の要件に該当するかどうかの判断においてより慎重になり、処分庁の恣意
を抑制するうえにおいて優れているといわなければならない。次に、不服申立ての
便宜の点から考えるに、法人税法一二七条一項三号に該当するとだけ記載しても、
一事業年度内においては数多くの取引先と数多くの取引をするのが通常の法人にみ
られるところであるから、税務署長がいかなる取引をとらえて隠ぺいまたは仮装と
判断したのか、あるいはいかなる事実をとらえて帳簿書類の記載事項の全体につい
てその真実性を疑うに足りるものと判断したのかが皆目分からず、青色承認取消処
分を受けた者としてはこれに対し不服申立てをすべきかどうか、不服申立てをする
としていかなる点を具体的な不服の事由としたらよいのかの判断に困るといわなけ
ればならない。これに対し、具体的事実をも記載してある場合には右の困惑は解消
されるのである。したがつて、理由付記を要求する趣旨の観点からは、処分庁の恣
意を抑制するという点からいつても、また、処分の相手方の不服申立てに便宜を与
えるという点からいつても、該当条項号のみの記載では不十分であり、具体的事実
を記載してはじめて右の趣旨にかなうということになるのである。
(五) 青色更正処分の理由付記との対比
青色更正処分の理由付記の程度については、帳簿書類の記載以上に信ぴよう力のあ
る資料を摘示して処分の具体的根拠を明らかにしなければならないとするのがいわ
ば確定した判例理論といえる。青色更正処分と青色承認取消処分とは処分の性質・
内容を異にし、前者においては個々の勘定科目における具体的金額が直接問題とな
るのに対し、後者においては具体的金額は隠ぺいまたは仮装にかかる取引を特定す
る一要素にすぎないのであるから、両者の理由付記の内容が異なることはいうまで
もないが、前記のとおり青色承認取消処分の方が青色更正処分よりも納税者にとつ
て不利益処分性が大きいことから考えれば、青色承認取消処分の理由付記の程度が
青色更正処分のそれよりも簡単でよいとすることは合理性を欠くといわなければな
らない。なお、前記のとおり、青色承認取消処分の場合には取消事由が類型化され
ており、理由付記に関する条文の文言も青色更正処分の場合とは異つた表現を用い
ているのであるが、それは青色承認取消処分の場合には取消事由を限定し、法定の
事由以外には取消しを禁止したものであること、青色更正処分については具体的金
額が直接問題となるものだけに更正事由を類型化することは無意味かつ困難である
ことによるものと解すべきであり、理由付記の程度が簡単でよいことを正当化する
ものではないと解するのが相当である。
(六) 以上(一)ないし(五)に述べたところを総合して考えれば、青色承認取
消処分の通知書に記載すべき理由付記の程度としては、処分の性質や理由付記を要
求する趣旨に照らし、該当条項号の記載のみでは足りず、これとともにこれに該当
する具体的事実につきこれを特定しうる程度にその要点を記載することをも要する
と解するのが相当である。なお、このように解しても、青色承認取消処分をするに
あたつては所轄税務署長は取消事由の存否につき十分な調査をしているはずである
から、税務事務処理上それほど煩瑣、過重を強いるものとは思われない。
してみれば、本件昭和三八事業年度の取消処分は、その余の点を判断するまでもな
く、理由付記の点において違法であり、取消しを免れない。
第二 本件各(再)更正処分等の取消請求について
一 請求原因(二)の事実は当事者間に争いがない。
二 昭和三八事業年度の再更正処分について
本件昭和三八事業年度の取消処分が違法として取り消されるべきであることは前記
のとおりであるから、原告は昭和三八事業年度においては青色申告書を提出するこ
とができたわけであり、昭和三八事業年度の再更正処分は青色申告書に係る再更正
処分ということになる。ところで、青色申告書に係る再更正処分の通知書には理由
付記が要求されるところ、本件昭和三八事業年度の再更正処分の通知書に理由が付
記されていないことについては、被告において明らかに争わないのでこれを自白し
たものとみなす。してみれば、本件昭和三八事業年度の再更正処分は、その余の点
を判断するまでもなく、違法であり取消しを免れない。
三 昭和三九事業年度の再更正処分について
(一) 売上計上もれについて
(1) 被告主張の売上計上もれのうち、警察学校への五、〇四六円および多摩身
体への二五、二五八円の合計三〇、三〇四円の売上を原告が繰延計上していたた
め、同金額が昭和三九事業年度において売上計上もれとなることは、当事者間に争
いがない。
(2) 次に、被告は別表五記載の各預金への各入金は原告の売上代金を入金した
ものであつていずれも原告の帳簿書類に計上されていないもの、すなわち売上計上
もれにあたると主張する。別表五記載のとおりの各入金があつたことは原告もこれ
を争わないところである(ただし、番号8の荒井建設の分は除く。)。そこで、右
各入金が原告の売上代金を入金したものかどうかをまず検討し、売上代金と認定で
きるものについては計上もれであるかどうかを検討する。
別表五記載の各入金中、番号1と8のうち(有)荒井建設の一三四、八〇〇円なら
びに13のうちRの一、四〇〇円およびP7の一六、二二〇円が売上代金の入金で
あることは当事者間に争いがない。
証人Aの証言および原告代表者尋問の結果により成立が認められる甲第一二号証の
二によれば、Sは、昭和四四年九月二六日付でCに対し証明書を発行しているが、
そのなかに昭和三九年一二月一日期日の小切手(金額一四万円)は当社が同年九月
一七日に納品した品川煉炭高四号六〇袋の代金につき原告に代つてC個人より支払
を受けていたところ、その後同年一一月三〇日に原告と代金の精算をするにあたり
Cに立替金の返還として交付したものであつて、原告に関係ないものと思う旨の記
載がなされていることが認められ、また、証人Aの証言および弁論の全趣旨により
成立が認められる甲第八号証によれば、原告の仕入台帳中鈴木石炭に関する部分の
昭和三九年九月月一七日の欄に品川高四号五六〇俵を一四万円に仕入れた旨および
同年一一月三〇日の欄に三八七、三九〇円を小切手で支払つた旨の記載があること
が認められ、これらの認定に反する証拠はない。右認定の事実にもとづいて考えれ
ば、別表五の番号11の一四万円の入金は、原告の売上代金にはあたらないと考え
るほかはない(もつとも、Cが立替払いに用いた一四万円の出所を明らかにするに
足りる証拠はないが、それが同人の個人資金を用いたものであれば原告の売上とは
もとより関係がないし、また、原告の資金を用いたとしても、それがたとえば原告
の現金売上を帳簿書類に計上せず、それを隠ぺいしたうえ立替払いの資金に用いた
というような事情が認められる場合は格別、そうでない場合には原告の資金をCが
一時借用したのちこれを返還したのと同じく原告の損益とは関係がなく、結局、原
告の売上とはいえないのである。)。
証人Aの証言および原告代表者尋問の結果により成立が認められる甲第一二号証の
三によれば、Tは、昭和四四年九月二六日付で、昭和三八年ないし昭和三九年以降
の日東製作所および太陽電工舎発行の約束手形および小切手はTが銀行取引がない
ためCに頼んで現金に替えてもらつたことを証明する旨を記載した証明書を発行し
ていることが認められ、これに反する証拠はない。そして、(有)日東製作所や
(株)太陽電工舎が原告と取引があつたかどうかを明らかにしうる証拠はないの
で、結局、別表五の番号2、4、5と番号8のうち(有)日東製作所の分と番号
9、10、12、17、19の各入金は、原告の売上代金とは関係がないものであ
り、Tの持参した小切手等を現金と交換してやつたものであると考えるほかはない
(もつとも、交換した現金の出所が明らかでないが、番号11に関し述べたところ
と同じく、いずれにしても原告の売上とはいえないのである。)。
証人Aの証言および原告代表者尋問の結果により成立が認められる甲第一二号証の
五によれば、Uは、昭和四四年九月二六日付で、昭和三九年八月一五日期日の栄工
業(株)振出の小切手(金額三〇万円)は銀行取引がないためCに頼んで現金に替
えたものであることを証明する旨の証明書を発行していることが認められ、また、
証人Aの証言および原告代表者尋問の結果により成立が認められる甲第一二号証の
六によれば、栄工業(株)は、昭和四四年九月二四日付で、昭和三九年八月一五日
振出の小切手(金額三〇万円)は当社が下請業者中村組へ支払つた代金で原告とは
何らの関係がないことを証明する旨の証明書を発行していることが認められ、これ
らの認定に反する証拠はない。右認定の事実によれば、別表五の番号6の入金は、
原告の売上代金とは関係がないものであり、Uの持参した小切手を現金と交換して
やつたものであると考えるほかはない(もつとも、交換した現金の出所が明らかで
ないが、番号11に関し述べたところと同じく、いずれにしても原告の売上とはい
えない。)。
前記甲第一二号証の五によれば、Uの昭和四四年九月二六日付の証明書には(有)
小山工業所提出の小切手(金額七八、〇〇〇円)は銀行取引がないためCに頼んで
現金に替えてもらつたものであることを証明する旨をも記載されていることが認め
られ、これに反する証拠はない。右認定の事実によれば、別表五の番号7の入金
も、原告の売上代金とは関係がないものであり、Uの持参した小切手を現金と交換
してやつたものであると考えるほかはない(もつとも、交換した現金の出所が明ら
かでないが、番号11に関し述べたところと同じく、いずれにしても原告の売上と
はいえない。)。証人Aの証言および原告代表者尋問の結果により成立が認められ
る甲第一二号証の四によれば、橋爪建設(株)は、昭和四四年九月二五日付で、昭
和三九年三月三〇日付で支払つた二八万円は小平市<以下略>V氏のアパートのガ
ス施設工事の代金として山田ガス工業へ支払つたもので原告には何の関係もないこ
とを証明する旨の証明書を発行していることが認められ、これに反する証拠はな
い。証人Aの証言中には、別表五の番号3の有価証券は現金と交換してやつたもの
であるとの部分があるが、他方、原告代表者尋問の結果中には、山田ガス工業とは
取引はないんですかという質問に対し、取引は前にきつとあつたと思いますと供述
している部分があり、また、証人Wの証言中に、Xさんのところの調査の結果は分
りましたかという質問に対し、報告を受けたところでは要するにA(Xの間違い
か?)さんというのは原告のガス工事等を担当してやつているんだけれども、その
工事をやる際に五%の手数料をあげていたというようなことを言つてますよという
報告を受けましたという部分がある。そして、右原告代表者尋問の結果や証人Wの
証言に対比して、証人Aの証言を特に信用すべき理由も見あたらないので、右Aの
証言中別表五の番号3の有価証券は現金と交換してやつたものであるとの部分はた
やすく信用できないといわなければならない。結局、右番号3の有価証券は橋爪建
設(株)が山田ガス工業へガス施設工事代金として交付したものであるが、山田ガ
ス工業からいかなる経緯や理由で番号3の預金へ入金されるに至つたのかは明らか
ではないというべきである。
証人Aの証言および原告代表者尋問の結果により成立が認められる甲第一二号証の
七によれば、Yは、昭和四四年九月二六日付で、昭和三九年九月二九日の約束手形
(金額八〇万円)は私邸の建築工事代金として請負人樋口工務店へ支払つたもので
あることを証明する旨の証明書を発行していることが認められ、、これに反する証
拠はない。右認定の事実によれば、別表五の番号18の約束手形はYが樋口工務店
へ建築工事代金支払のために振り出したものというべきであるが、樋口工務店から
いかなる経緯や理由によつて番号18の預金へ入金されるに至つたのかを明らかに
するに足りる証拠はない。
別表五の番号8のうちその他の一〇、〇〇〇円、番号13のうちZの八、七〇〇円
とSの一二、六五〇円、番号14ないし16については、いかなる経緯や理由で各
番号の預金へ入金されるに至つたのかを明らかにするに足りる証拠はない。
そこで、このように入金の経緯や理由が明らかでないものを原告の売上と認めるこ
とができるかどうかについて考えるに、この問題は別表五記載の各預金の性質を明
らかにし、それとの関連において考えるのが相当である。
(ア) 原告代表者尋問の結果によれば、Cは昭和二七年一一月一九日に燃料販売
業を開始し、昭和三〇年一〇月一日に有限会社佐野商店を設立し、昭和三七年一〇
月一日に株式会社佐野商店(原告)に組織変更をしたこと、代表取締役はCであ
り、同人の妻Aは取締役をしながら原告の経理を担当していることが認められ、こ
の認定に反する証拠はない。
(イ) 東京相互銀行立川支店にはCおよびP各名義の普通預金口座ならびにP
1、P2、P3、P4およびP5各名義の定期預金口座が設定されていたこと、埼
玉銀行小平支店にはCおよびD各名義の普通預金口座ならびにC名義の定期預金口
座が設定されていたこと、多摩中央信用金庫小平支店にはC名義の普通預金口座が
設定されていたことはいずれも当事者間に争いがなく、東京相互銀行立川支店にQ
名義の普通預金口座ならびにAおよびN各名義の当座預金口座が設定されていたこ
と、埼玉銀行小平支店においてP6名義の普通預金口座およびC名義の定期預金口
座が設定されていたことについては原告において明らかに争わないので自白したも
のとみなす。
右各預金のうち、P、P1、P2、P3、P4、P5およびD各名義の預金がいず
れも架空名義の預金であることは原告もこれを認めるところであり、また、Qおよ
びP6各名義の預金が架空名義の預金であることについては原告において明らかに
争わないのでこれを自白したものとみなす。
原本の存在および成立に争いがない乙第三ないし第五号証によれば、東京相互銀行
立川支店におけるC名義の普通預金口座を昭和三九年二月一七日解約し、その解約
金合計一、一一七、八三三円をもつて同日同支店においてP名義(前記のとおり架
空名義である。)の普通預金口座を新規設定し、さらに、同口座を伺年一一月一四
日解約したうえ、同日その解約金合計二八五、三一〇円を同支店においてその前日
新規設定されていたQ名義(これも前記のとおり架空名義である。)の普通預金口
座に入金していることが認められ「これに反する証拠はない。
原告が仕入先より商品を仕入れた際手持ちの資金がない場合には一時CやAの手持
ち資金(現金、普通預金、当座預金)より立替えて仕入先へ支払つておき、原告に
資金ができた時に右立替者へ小切手等で支払つたことがあること、その場合の帳簿
上の処理は正規の記帳を省略し、(仕入-現金または当座))とし、仕入台帳上は
立替者へ支払つた時に仕入代金を支払つたという形で記帳していたものであること
は原告自ら主張するところであり、原本の存在および成立に争いがない乙第六、第
九ないし第一一、第一四号証に証人Aの証言および原告代表者尋問の結果ならびに
弁論の全趣旨を総合すれば、東京相互銀行立川支店のA名義の当座預金口座からは
原告の仕入先が取り立てた多くの小切手が交換払いされており、埼玉銀行小平支店
のC、DおよびP6各名義の普通預金口座等へは原告の帳簿書類上その仕入先へあ
てて振り出したとされている多くの小切手が振込入金されていること、Aに大岩商
店と久保田材木店に対する支払は原告に資金がある場合でもA名義の当座預金口座
等を利用して支払がなされていること、それにもかかわらず、立替払とこれに対す
る清算に関する記録が一切なく、しかも一回の立替金を数回にわけて清算したり、
あるいはその逆であつたりしていることが認められ、これに反する証拠はない。
さらに、原本の存在および成立に争いがない乙第一ないし第六号証、同第九ないし
第一二号証によれば、東京相互銀行立川支店のC、PおよびQ各名義の普通預金口
座ならびにA名義の当座預金口座、多摩中央信用金庫小平支店のC名義の普通預金
口座、埼玉銀行小平支店のC、DおよびP6各名義の普通預金口座には、いずれも
個人のものとは考えられないような多額の金額の出し入れが数多く見られること、
たとえば、昭和三九事業年度において、東京相互銀行立川支店のPおよびQ各名義
の普通預金口座(前者が解約され、その解約金がその解約直前に設定された後者へ
入金されたものであることは前記のとおりである。)における出し入れの状況は、
預金回数五一回、預金合計八、六五四、二七六円、払戻回数四〇回、払戻金合計
九、九四〇、三一〇円であり、埼玉銀行小平支店のC、DおよびP6各名義の普通
預金口座における出し入れの状況は、預金回数三四回、預金合計六、三六四、三一
〇円、払戻回数二二回、払戻金合計六、一七四、三二六円であることが認められ、
これに反する証拠はない。原告代表者尋問の結果によれば、Cは昭和三九事業年度
当時小平市商工会の副会長等をしていたことが認められるが、同人が右のような立
場にあつたことを考慮しても、右に述べた預金口座の出し入れは個人のものとは思
えないような多額の金額の出し入れといわざるをえない。
(ウ) 昭和三八および昭和三九事業年度におけるCおよびその家族名義ならびに
架空名義の資産の増加状況が別表九記載のとおりであることは原告において明らか
に争わないのでこれを自白したものとみなす。同表によれば、昭和三八事業年度に
おける資産の増加高は六、五一〇、三八九円、昭和三九事業年度におけるそれは
四、二三九、四三一円であり、右両事業年度における増加額の合計は一〇、七四
九、八二〇円である。ところで、成立に争いがない甲第七号証の一ないし三、証人
Aの証言に弁論の全趣旨を総合すれば、C夫妻の当時の収入は、被告に対し申告し
たところによれば昭和三八年分が合計一、九〇〇、〇〇〇円弱、昭和三九年分が合
計一、七〇〇、〇〇〇円弱であつたことが認められる。右申告にかかる収入金額か
らはC一家の生活費が支出されているはずであるから、その貯蓄にまわすことので
きる金額は右収入金額より低いはずであり、したがつて、前記昭和三八および昭和
三九事業年度における資産の増加額合計一〇、七四九、八二〇円はC夫妻の貯蓄可
能金額をはるかにこえているということになる。この点に関し、原告はC夫妻の貯
蓄可能金額は右二事業年度において七、九〇〇、〇〇〇円をこえるとして、その根
拠を種々主張する。まず、CがBより謝礼(危険料を含む。)として一、五〇〇、
〇〇〇円を受領したとの点については、Bが一、五〇〇、〇〇〇円を支払つたこと
は当事者間に争いがなく、原告代表者尋問の結果中には右一、五〇〇、〇〇〇円は
C個人が受領したものであるとの部分があり、成立に争いがない甲第一七号証によ
ればBが国民金融公庫立川支店や多摩中央信用金庫小平支店から融資を受けるにあ
たりCが保証人となうていたことが認められるが、他方、成立に争いがない乙第二
三号証および証人Bの証言によれば、Bは当時原告から店舗を賃借してマーケツト
を経営していたが経営状態が思わしくなかつたので、営業権や商品等一切を株式会
社サンエーに対し一三、〇〇〇、〇〇〇円位で売り渡したこと、Cに保証してもら
つていた債務はすべてB自身で返済したことが認められるとともに、同証人は右
一、五〇〇、〇〇〇円は賃借人を株式会社サンエーに変更することに関する名義書
換料として支払つたものである旨証言している。CがBの債務をいかに保証してい
たとはいえ、保証債務を履行してもいないのに一、五〇〇、〇〇〇円もの大金を預
り金としてではなく謝礼としてもらうということは不自然であること、これに対し
店舗の賃借権の譲渡を承諾してもらうための対価として一、五〇〇、〇〇〇円を支
払うということは自然であり合理性があることから考えれば、証人Bの証言を信用
するのが相当であり、原告代表者尋問の結果は信用できないというべきである。な
お、成立に争いがない甲第七号証の一ないし三によれば、Cは昭和四一年一月一八
日に昭和三七年分および昭和三八年分の所得税の修正申告をし、そのなかで雑所得
としてそれぞれ五五〇、〇〇〇円ずつを申告していることが認められるが、右雑所
得がBから受領した一、五〇〇、〇〇〇円の一部であるかどうか修正申告書自体か
らは明らかでないばかりか、昭和三七年中に謝礼として一、五〇〇、〇〇〇円を受
領したものであるとすれば、何故に昭和三七年と昭和三八年にそれぞれ五五〇、〇
〇〇円ずつの所得となるのか理解に苦しまざるをえない。結局、右修正申告の事実
によつても、Bから一、五〇〇、〇〇〇円を受領したのは原告であるとの前記認定
を覆えすに足りない。次に、原告は、Nの給料、退職金等合計一、六〇〇、〇〇〇
円について主脹するが、成立に争いがない甲第一三号証の一および証人Aの証言に
よれば、Nは遅くとも昭和三九年一一月には埼玉県入間郡へ転居し、独立して材木
商を始めており、その際従来C夫妻が預つていたNの給料等は同人へ渡したことが
認められるので、右認定に従えば別表九記載の昭和四〇年二月二八日現在額の中に
はNの給料等の預り金は含まれていないことになるはずである。次に、原告は、C
夫妻の二年間の収入金のうち二、六〇〇、〇〇〇円を貯蓄した旨主張するが、前記
申告にかかるC夫妻の収入金額と対比すれば、右二、六〇〇、〇〇〇円は不自然に
多すぎるといわなければならない。さらに、原告は、C夫妻は結婚の媒酌等をして
謝礼等を受領しており、これも貯蓄可能金額に含まれると主張する。前記のとおり
Cは小平市商工会の副会長をしており、また、かつては町会議員もしていたという
のである(原告代表者尋問の結果により認めることができる。)から、媒酌などに
よる謝礼等を受領したであろうことは容易に推察しうるが、しかし、その反面、そ
れ相応の交際費を支出したであろうことも容易に推察しうるところであり、はたし
て収入の方が多かつたかどうか、どの程度多かつたかは認定が困難である。以上の
とおり、原告が貯蓄可能金額として主張するもののうちいくつかは失当といわざる
をえないが、さらに、原告の確定申告によれば、原告でさえ昭和三八事業年度の所
得金額は三、〇二六、五四〇円、昭和三九事業年度の所得金額は八八五、九二一円
にすぎないというのに、C夫妻が個人で一〇、七四九、八二〇円もの資産を右両事
業年度間に増加させうると考えることはいかにも不合理である。結局、右一〇、七
四九、八二〇円は、C夫妻の個人的な貯蓄可能金額をはるかに上回つていると考え
るのが相当である。
(エ) 右(ア)ないし(ウ)において述べたところから考えるに、原告はC夫妻
が中心となつて経営しているいわば同族的な会社であること、多数の架空名義預金
をもち、しかも、解約ー新規設定を繰り返し行なつていること、原告の取引にC夫
妻名義や架空名義の預金口座を利用し、しかもその利用方法は複雑であること(た
とえば、仕入先への立替払に利用する預金口座とその立替金の清算のため原告振出
の小切手を入金する預金口座を別にするなど)、原告主張の立替払とその清算に関
する記録が一切なされていないこと、C夫妻名義および架空名義の資産が個人の蓄
積可能と思われる程度をはるかにこえて増加していることなどからみて、原告はC
夫妻名義や架空名義の預金口座を操作することによりいわゆる簿外資産として所得
を隠ぺいしていたものとみるのが相当である。したがつて、右預金口座はその名義
いかんにかかわらず、原告の実質的な管理下にあつたものというべきである。
してみれば、前記入金の経緯や理由が明らかでないものは、別表五記載の各預金口
座の性質に照らし、原告の売上代金の入金であると推定するのが相当である。
(3) そこで、次に、右(2)において原告の売上に関するものと認定した各入
金(すなわち、別表五の番号1、3、8((有)荒井建設とその他)、13ないし
16、18)について、それが計上もれであるかどうかを検討する。
証人Aの証言により成立が認められる甲第一〇号証の八によれば、原告の日掛帳の
昭和三九年二月二八日の欄に売上脇田(近藤設備振出廻し小切手)として二五〇、
〇〇〇円の収入があつた旨の記載がなされていることが認められる。右記載のうち
括弧内の部分も当初より記載されていたかどうかは、右日掛帳のその余の売上に関
する記載と対比して疑問がないわけではないが、仮に右括弧内の部分が後日記載さ
れたものであるとしても、右二五〇、〇〇〇円の収入に関する記載は、月日や金額
の点からみて、別表五の番号1の入金に関するものと考えるのが相当である。
証人Aの証言により成立が認められる甲第一〇号証の六によれば、原告の日掛帳の
昭和三九年九月三〇日の欄に売上荒井建設として一三四、二〇〇円の収入があつた
旨の記載がなされていることが認められる。右記載は、月日や金額の点からみて、
別表五の番号8のうち(有)荒井建設一三四、八〇〇円に関するものではないかと
一応考えられるが、原本の存在および成立に争いがない乙第四号証によれば、東京
相互銀行立川支店のP名義の普通預金口座には昭和三九年一〇月一日小切手(他店
券)で一九九、八〇〇円の入金がなされていることが認められ、右一九九、八〇〇
円から(有)日東製作所の五五、〇〇〇円とその他の一〇、〇〇〇円をひけば一三
四、八〇〇円となり、この一三四、八〇〇円が原告主張のように一三四、二〇〇円
の誤りであることを認めるに足りる証拠はないので、結局、前記日掛帳の一三四、
二〇〇円の記載は別表五の番号8の(有)荒井建設に関するものではないと考える
ほかはない。
証人Aの証言により成立が認められる甲第九号証の五および同第一〇号証の九によ
れば、原告の昭和三九年一二月三一日のレジシートの裏側に同日の売上の金種別金
額が記載されているが、そのなかに「小 R 一、四〇〇、小 P7 六、二二
〇」と記載されていることおよびその日の売上合計五四八、四四五円が原告の日掛
帳の同日の欄にそのまま売上として記帳されていることが認められる。してみれ
ば、別表五の番号13のうちRの一、四〇〇円とP7の六、二二〇円は原告の帳簿
に売上として計上されているというべきである。
別表五の番号3と番号8のうちその他一〇、〇〇〇円、番号13のうちZの八、七
〇〇円、Sの一二、六五〇円と番号14ないし16、18については、これらが原
告の帳簿書類上計上されていることを認めるに足りる証拠はない。
(4) 別表五の番号20のA名義の日掛積金三六五、〇〇〇円が原告の売上計上
もれであるかどうかについて検討する。
原本の存在および成立に争いがない乙第一三ないし第一五号証によれば、Cは昭和
三九事業年度において埼玉銀行小平支店に毎月四〇、〇〇〇円ずつの定期積金をし
ており、さらに、昭和三九年九月以降は同支店に別枠で毎月一〇、〇〇〇円ずつ
(したがつて、同月以降は毎月合計五〇、〇〇〇円ずつ)の定期積金をしているこ
とが認められ、原本の存在および成立に争いがない乙第一七号証の二によれば、C
は大生相互銀行所沢支店に昭和三九年三月から同年七月まで毎月二〇、〇〇〇円ず
つの相互掛金をしていたことが認められる。すなわち、昭和三九事業年度における
Cの定期積金および相互掛金の合計は六四〇、〇〇〇円である。ところで、申告に
かかるC夫妻の昭和三九年分の収入は合計一、七〇〇、〇〇〇円弱であることは前
記認定のとおりであるから、Cの社会的地位に相応した生活費を考えると、右収入
から合計六四〇、〇〇〇円の貯蓄をしたうえ、さらに日掛積金合計三六五、〇〇〇
円をなしうるかどうかについては疑問があるといわざるをえない。
原本の存在および成立に争いがない乙第四、五、七および八号証によれば、東京相
互銀行立川支店において、昭和三九年四月二五日に満期となつたA名義の日掛積金
合計三六六、〇〇〇円は同日P名義の普通預金口座(架空名義預金であり、原告の
管理下にあつたことは前記認定のとおりである。)へ入金され、また、昭和四〇年
四月二五日に満期となつたA名義の日掛積金合計三六六、〇一九円は同日Q名義の
普通預金口座(架空名義預金であり、原告の管理下にあつたことは前記認定のとお
りである。)へ入金されていることが認められる。すなわち、A名義の日掛積金は
満期となるたびに原告の管理下にある架空名義の普通預金口座へ入金されているの
である。
証人Aの証言により成立が認められる甲第九号証の一ないし五、同第一〇号証の一
ないし九、同第一一号訃の一、二に同証言を総合すれば、原告においては毎日現金
による売上があるとともに売掛代金の回収もひんぱんに行なわれていたことが認め
られる。
右の各事実に、前記認定のとおり原告が預金を操作することにより簿外資産を作り
出していた事実を合わせ考えれば、別表五の番号20のA名義の日掛積金合計三六
五、〇〇〇円は原告の現金売上のなかから積金にしたものと考えるのが相当であ
る。
(5) 右(1)ないし(4)に述べたところによれば、昭和三九事業年度におけ
る売上計上もれは、結局、警察学校への五、〇四六円、多摩身体への二五、二五八
円、別表五の番号3の二八〇、〇〇〇円、同8の荒井建設一三四、八〇〇円とその
他一〇、〇〇〇円、同13のZ八、七〇〇円とS一二、六五〇円、同14の四〇、
〇〇〇円、同15の三一、五〇〇円、同16の二四、二六〇円、同18の八〇〇、
〇〇〇円および同20の三六五、〇〇〇円、以上合計一、七三七、二一四円という
ことになる。
(二) 減価償却超過額およびたな卸計上もれについて
ボンベの減価償却が四九、七五五円超過していたことおよびプロパンガスの期末た
な卸の計上もれが七、八九六円あつたことは当事者間に争いがない。
(三) 雑収入計上もれについて
昭和三九年三月分の株式会社サンエーからの受取家賃のうち二五、〇〇〇円が計上
もれであることは当事者間に争いがない。
そこで、別表六記載の受取利息計上もれの有無について検討するに、同表記載の各
預金のうちC名義以外のものが架空名義であることは当事者間に争いがない。とこ
ろで、原本の存在および成立に争いがない乙第一八号証の一ないし三および五によ
れば、別表六記載の定期預金中、P1名義のものは昭和三七年九月一九日に、P2
名義のものは同年四月二五日に(当初五〇〇、〇〇〇円、その後昭和三八年四月二
六日に一、〇〇〇、〇〇〇円に増額している。)、P3名義のものは昭和三七年一
〇月二九日に、P5名義のものは同年九月一九日にそれぞれ設定されでいることが
認められるところ、前記認定のとおり原告が設立されたのは昭和三七年一〇月一日
であるから、右各定期預金はその直前あるいは直後(もつとも、P2名義のもの
は、当初の五〇〇、〇〇〇円は原告設立の約五か月前に、増額して五〇〇、〇〇〇
円は設立後約七か月たつて設定されている。)に設定されていることになる。そし
て、このように原告の設立の直前あるいは直後に設定された定期預金については、
それらが架空名義であるとの一事をもつて原告の簿外資産をなすと考えるのは相当
でなく、結局、原告の簿外資産をなすものかどうかは不明であつて、その利息は原
告の雑収入となるものではないと考えるほかはない(前記のとおり、P2名義のも
ののうち増額した五〇〇、〇〇〇円は、原告設立後約七か月たつて設定されている
が、これについても原告の簿外資産であると認めるに足りる証拠はない。)。別表
六記載のうち、P4名義の定期預金についてはその設定年月日や金額等を明らかに
しうる証拠はなく、それが原告の簿外資産であると認めるに足りる証拠もない。別
表六記載のPおよびD各名義の普通預金口座は、原告の実質的な管理下にあつてそ
の取引に使用され、簿外資産を作り出すのに利用されていたものであることは前記
認定のとおりである。してみれば、その利息は原告の雑収入をなすものと考えるの
が相当である。もつとも、右各普通預金口座には、前記認定のとおり、原告の売上
とは認められず現金と交換してやつたと考えるほかない小切手が入金されているわ
けであるが(別表五の番号2、4ないし7と番号8のうち(有)日東製作所五五、
〇〇〇円、番号9ないし12、17、19)、右交換に用いた現金の出所、すなわ
ちCの個人資金を用いたのかそれとも原告の資金を用いたのかを明らかにするに足
りる証拠がないところ、右各普通預金口座は原告が実質的に管理し、これを操作す
ることによつて原告の簿外資産を作り出していたものと考えられること、前記認定
のとおりC夫妻の昭和三九年分の申告にかかる収入は合計一、七〇〇、〇〇〇円弱
であり、このうちから合計六四〇、〇〇〇円の定期積金や相互掛金をCにおいてし
ているのに、右小切手との交換に用いた現金がCの個人資金であつたとすれば合計
九六八、二一五円の現金を所持していたことになり、右収入に照らしてCの個人資
産が不自然に多すぎることから考えて、右小切手との交換に用いた現金は原告の資
金を利用したものと一応推定するのが相当である。次に、原本の存在および成立に
争いがない乙第九、一〇号証および同第一六号証の二によれば、埼玉銀行小平支店
において、昭和三八年一月一一日にC名義の普通預金口座が設定されたが、昭和三
九年二月一二日に解約され、同日右解約金六六二、五〇五円をもつてD名義の普通
預金口座が設定されていること、昭和三八年七月二二日に右C名義の普通預金口座
から一、〇〇〇、〇〇〇円を払い出して、これをC名義の定期預金にしていること
が認められ、これに反する証拠はない。右C名義の普通預金口座が原告の実質的な
管理下にあり、その取引に使用されて簿外資産を作り出すのに利用されていたこ
と、C夫妻の昭和三八年分の申告にかかる収入は合計一、九〇〇、〇〇〇円弱であ
ることはいずれも前記認定のとおりであり、原本の存在および成立に争いがない乙
第一三号証および同第一七号証の二によれば、昭和三八年五月から昭和三九年二月
までCは埼玉銀行小平支店において毎月四〇、〇〇〇円ずつの定期預金をするとと
もに、大生相互銀行所沢支店においても昭和三八年三月から昭和三九年二月まで毎
月二〇、〇〇〇円ずつの相互掛金をしていたことが認められるので、昭和三八事業
年度においてCは少なくとも右の合計六四〇、〇〇〇円の貯蓄をしたことになる。
してみれば、別表六記載の埼玉銀行小平支店におけるC名義の定期預金は、その設
定の経緯やその資金源がC夫妻のものとは思えないことなどからみて、原告の簿外
預金であると考えるのが相当である。したがつて、その利息は原告の雑収入にあた
ると解すべきである。ところで、原本の存在および成立に争いがない乙第四号証、
同第一〇号証および同第一六号証の二によれば、別表六記載のPおよびD各名義の
普通預金およびC名義の定期預金について、それぞれ同表記載の計算年月日に同表
記載の利息がそれぞれの元帳に記載されたことが認められ、これに反する証拠はな
い。右利息計算の基礎とされた預け入れ期間自体は必ずしも昭和三九事業年度と対
応するものではないが(たとえば、P名義の普通預金口座において昭和三九年三月
九日に計算され元帳に記載された利息一、六一四円は、右乙第四号証によれば、昭
和三八年下期の利息とされている。)、右利息計算がなされて元帳に記載された時
点が昭和三九事業年度内であるかぎり、これをすべて同事業年度における雑収入と
考えてさしつかえないものと解するのが相当である。なるほど、普通預金の利息は
日々発生するものと考えるべきであろうが、これが計算されて元帳に記載されない
以上、その利息金額を把握することは困難であり、経理に関する帳簿書類にこれを
計上することも困難であるからである。してみれば、結局、昭和三九事業年度にお
いて、原告には合計(別表六の番号6ないし12)一〇五、四九四円の受取利息が
あつたものというべきところ、これが原告の帳簿書類に計上されたことを認めるに
足りる証拠はないので、計上もれと考えるべきである。
以上のとおりであるから、昭和三九事業年度における原告の雑収入の計上もれは、
受取家賃に関する二五、〇〇〇円と受取利息に関する一〇五、四九四円の合計一三
〇、四九四円ということになる。
(四) 架空仕入と仕入計上もれについて
被告は、前記認定のとおり原告が仕入に関し複雑な帳簿処理と預金操作をしている
ところから、原告の帳簿書類上その仕入先に対し仕入代金の支払のために振り出し
たとされている小切手が仕入先へ入金されずC名義あるいは架空名義の預金口座へ
振込入金されているもの(別表七記載のもの)についてこれを架空仕入として否認
するとともに、A名義の当座預金口座から交換払いされている小切手の取立人が原
告の仕入先であるものについては(別表八記載のもの)これを仕入計上もれとして
認め、いわゆる両建計算を主張するのに対し、原告は、架空仕入も仕入計上もれも
ともになく、Aによる仕入代金の立替払いとこれに対する原告の清算がなされたに
すぎない旨主張する。
原告の帳簿処理が複雑であり、原告主張にかかる立替払いとその清算に関する記録
が一切なされていないこと、原告の主張によるも昭和三八事業年度と昭和三九事業
年度における各仕入先ごとのいわゆる架空仕入といわゆる仕入計上もれの各合計金
額は一致していないこと、前記認定のとおり、原告は預金を操作することにより簿
外資産を作り出したものと思われることなどから考えれば、被告主張の両建計算は
やむをえないものとして是認すべきである。
のみなちず、昭和三九事業年度において、架空仕入として被告の主張する金額は別
表七記載のとおり合計一、九〇八、三七五円であるのに対し、仕入計上もれとして
被告の主張する金額は別表八記載のとおり合計二、二一三、三一五円であるから、
結局、架空仕入として被告の否認する金額よりも仕入計上もれとして被告の認める
金額の方が三〇四、九四〇円多いことになり、結果的には原告にとつて利益になる
というべきであるから、被告主張にかかる両建計算を原告が非難するのはあたらな
い。
したがつて、昭和三九事業年度において、原告には架空仕入が一、九〇八、三七五
円、仕入計上もれが二、二一三、三一五円あつたと考えるのが相当である。
(五) 貸倒準備金勘定繰入否認額について
昭和三九事業年度において原告が一〇〇、〇〇〇円を貸倒準備金勘定へ繰り入れて
いたことについて、原告は明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。と
ころで、同事業年度以降の原告の青色申告書提出承認が取り消され、その取消しを
求める訴えが不適法として却下されるべきであることは前記のとおりであるから、
青色申告法人にのみ認められる貸倒準備金勘定への繰入額の損金処理は否認される
べきである。
(六) 未払事業税認定損について
本件昭和三八事業年度の再更正処分が違法として取り消されるべきであることは前
記のとおりであるから、同処分にともない計算される同事業年度の事業税を認定損
として所得金額より減算することは許されない。
(七) 貸倒準備金勘定戻入認容額について
本件昭和三八事業年度の取消処分が違法として取り消されるべきことは前記のとお
りであるから、原告は同事業年度においてはなお青色申告法人であつたというべき
であり、貸倒準備金勘定繰入額の損金処理も認められ、したがつて、昭和三九事業
年度において右勘定の残額を益金に戻し入れした原告の会計処理に誤りはなく、右
戻入額の益金算入処理を否認することは許されない。
四 以上(一)ないし(七)において述べたところにもとづいて、昭和三九事業年
度における原告の申告所得金額に加算、減算すべき項目とその金額を整理すれば、
次のとおりである。
(加算)
(1) 売上計上もれ       一、七三七、二一四円
(2) 減価償却の償却超過額      四九、七五五円
(3) たな卸計上もれ          七、八九六円
(4) 雑収入計上もれ        一三〇、四九四円
(5) 架空仕入         一、九〇八、三七五円
(6) 貸倒準備金勘定繰入否認額   一〇〇、〇〇〇円
合 計          三、九三一二、七三四円
(減算)
(7) 仕入計上もれ       二、二一三、三一五円
(差引増加所得)         一、七二〇、四一九円
(九) ところで、原告は、本件各(再)更正処分は違法な調査にもとづくもので
あるから違法である旨主張する。
一般に、更正処分の適否は客観的な課税要件の存否によつて決まるのであり、仮に
違法な調査手続が行なわれ、それによつて収集した資料によつて更正処分がなされ
た場合でも更正処分の取消事由にはならないと解されている。しかしながら、右調
査手続の違法性の程度がたとえば刑罰法令に触れたりあるいは社会正義に反するな
ど公序良俗に反する程度にまで至つた場合にも、右一般的見解に従いその違法は更
正処分の取消事由にあたらないといいきれるかどうかは、憲法における適法手続保
障の精神との関係で問題があるといわなければならない。もつとも、本件において
原告が違法な調査であるとして指摘する点は、第一に被告は昭和四〇年九月四日身
分証明書を所持しない署員を差し向け、金庫の検査をするなど違法な調査をしたと
いうことであり、第二にその後の長期間にわたる調査方法が原告やその取引先の各
帳薄書類の調査により原告の取引内容を把握するという方法をとらず、当初より原
告の代表者やその家族個人の預金調査を行なうという方法をとつたということであ
る。原告の指摘する第一の点は、なるほど身分証明書を所持していなかつたという
ことは法人税法一五七条に違反するものではあるが、同条はもともと質問検査にあ
たる税務署職員等の身分を明らかにさせて税務調査の円滑に資することを目的とし
ているものと解するのが相当であるから、同条違反がただちに公序良俗に反すると
はいえないというべきである。また、原告の指摘する第二の点は、税務調査の方法
として何ら違法というべきものではない。Aに、納税者が税務調査に非協力であつ
たり、あるいは虚偽の帳簿書類を作成したりしている場合には、いわゆる簿外預金
の発見に努めることは有効な調査方法とさえいえるのであつて、税務調査の方法と
していかなる方法を採るかは広く税務署長の裁量に委ねられているものと解すべき
である。したがつて、仮に調査手続の違法が更正処分の取消事由になる場合がある
としても、本件において原告が主張する程度では右取消事由にはならないと解する
ほかはない。
(一〇) してみれば、本件昭和三九事業年度の再更正処分は、その所得金額が申
告にかかる所得金額八八五、九二一円に右(八)に掲記の差引増加所得一、七二
〇、四一九円を加えた二、六〇六、三四〇円の範囲内においては適法というべきで
あるが、これをこえる部分については違法であり、取消しを免れない。
四 昭和四〇事業年度の更正処分について
(一) 雑収入計上もれについて
被告は、原告の簿外預金からの昭和四〇事業年度における受取利息の合計二七一、
五六五円が計上もれであると主張するが、いかなる預金からいくらの利息が発生し
たかの明細を主張しない。架空名義の預金についても原告の簿外預金とみることの
できるものとそうでないものがあることは、昭和三九事業年度の再更正処分に関し
述べたとおりであるから、被告において右明細を明らかにしない以上、はたして原
告の簿外預金からの利息があるかどうかの判断が困難であるといわざるをえない。
結局、受取利息の計上もれに関する被告の主張は不十分であるといわなければなら
ない。
(二) 被告の主張する昭和四〇事業年度におけるその余の加算および減算項目と
その金額(第二の三(1)(1)(ウ)(b)ないし(g))について、原告は明
らかに争わないのでこれを自白したのとみなす。
したがつて、原告の申告所得金額に加算および減算すべぎ項目とその金額は次のと
おりとなる。
(加算)
(1) 受取配当のうち益金算入額          一、〇〇〇円
(2) 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額 五、三四五円
合 計                 六、三四五円
(減算)
(3) 減価償却超過額の当期認容額     一五、八七一円
(4) 前期否認たな卸計上もれの当期認容額 七、八九六円
(5) 前期否認売上繰延計上額の当期認容額 三〇、三〇〇円
(6) 貸倒引当金戻入認容額       一〇〇、〇〇〇円
合 計              一五四、〇六七円
(差引減少所得)           一四七、七二二円
(三) してみれば、本件昭和四〇事業年度の更正処分は、原告の申告所得金額に
加算すべき所得がないのになされた違法なものであるから、取消しを免れない。
五 昭和四一事業年度の更正処分について
(一) 雑収入計上もれとして、被告は、原告の簿外預金からの昭和四一事業年度
における受取利息の合計一一三、六〇八円を主張するが、その主張が不十分である
ことは昭和四〇事業年度に関して述べたとおりである。
(二) 被告の主張する昭和四一事業年度におけるその余の加算および減算項目と
その金額(第二の三(三)(1)(エ)(b)ないし(h))について、原告は明
らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。
したがつて、原告の申告所得金額に加算および減算すべき項目とその金額は次のと
おりとなる(なお、昭和四〇事業年度の更正処分が取り消されるべきものであるこ
とは前記のとおりであるから、未払事業税認定損は減算項目から除くべきことにな
る。)。
(加算)
(1) 受取配当のうち益金算入額            九〇〇円
(2) 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額 八、〇〇五円
(3) 価格変動準備金勘定繰入否認額       六六、五二九円
(4) 貸倒引当金勘定繰入否認額         四九、四〇〇円
(5) 賞与引当金勘定繰入否認額        一五八、五三二円
(6) 支払都民税の損金否認額          一八、五七〇円
(7) 支払事業税延滞金の損金否認額       二六、〇七〇円
合 計                三二八、〇〇六円
(減算)
(8) 減価償却超過額の当期認容額        一〇、八〇八円
(9) 納税引当金から支出した事業税額      八三、七〇四円
合計                九四、五一二円
(差引増加所得)               二三三、四九四円
(三) 調査が違法であるから本件各(再)更正処分も違法である旨の原告の主張
が理由がないことは、昭和三九事業年度の再更正処分に関し述べたとおりである。
(四) 以上のとおりであるから、本件昭和四一事業年度の更正処分は、その所得
金額が原告の申告所得金額二、三四六、二三五円に右(二)の差引増加所得二三
三、四九四円を加えた二、五七九、七二九円の範囲内においては適法であるが、こ
れをこえる部分は違法であり、取消しを免れない。
六 昭和四二事業年度の更正処分について
(一) 雑収入計上もれとして、被告は、原告の簿外預金からの昭和四二事業年度
における受取利息合計一二二、一五七円を主張するが、その主張が不十分であるこ
とは昭和四〇事業年度に関し述べたとおりである。
(二) 被告の主張する昭和四二事業年度におけるその余の加算および減算項目と
その金額(第三の三(三)(1)(オ)(a)(c)ないし(h))について、原
告は明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。
してみれば、原告の申告所得金額に加算および減算すべき項目とその金額は次のと
おりとなる(なお、昭和四一事業年度の更正処分が一部取り消されるべきものであ
ることは前記のとおりであるから、未払事業税認定損の金額は、右一部取消しにと
もない地方税法にもとづき計算しなおした右事業年度にかかる事業税の額というこ
とになる。)。
(加算)
(1) 売上計上もれ         一四九、八四〇円
(2) 受取配当のうち益金算入額       九〇〇円
(3) 価格変動準備金勘定繰入否認額  一〇、八六三円
(4) 貸倒引当金勘定繰入否認額    六四、〇五二円
(5) 賞与引当金勘定繰入否認額  一八四、一五一円
合 計            四〇九、八〇六円
(減算)
(6) 減価償却超過額の当期認容額    七、三六〇円
(7) 価格変動準備金戻入認容額   六六、五二九円
(8) 貸倒引当金戻入認容額      四九、四〇〇円
(9) 賞与引当金戻入認容額     一五八、五三二円
(10) 未払事業税認定損   (昭和四一事業年度の更正処分の一部取消しに
ともない、地方税法にもとづき計算しなおした同事業年度にかかる地方税の額)
合 計    二三一、八二一円および右(10)の金額
(差引増加所得)   一七七、九八五円から右(10)の金額を差し引いた金額
(三) 調査が違法であるから本件各(再)更正処分も違法である旨の原告の主張
が理由がないことは、昭和三九事業年度の再更正処分に関し述べたとおりである。
(四) 以上のとおりであるから、本件昭和四二事業年度の更正処分は、その所得
金額が原告の申告所得金額三五六、〇一〇円に右(二)の差引増加所得「一七七、
九八五円から右(二)の(10)の金額を差し引いた金額」を加えた「五三三、九
九五円から右(二)の(10)の金額を差し引いた金額」の範囲内においては適法
であるが、これをこえる部分は違法であり、取消しを免れない。
七 本件各重加算税の賦課決定処分について
本件昭和三八事業年度の再更正処分および昭和四〇事業年度の更正処分が取り消さ
れるべきものであることは前記のとおりであるから、これに付随してなされた右両
事業年度の各重加算税賦課決定処分も取消しを免れない。本件昭和三九事業年度の
更正処分のうち所得金額二、六〇六、一二四〇円をこえる部分が取消しを免れない
ものであることは前記のとおりであるから、これに付随してなされた同事業年度の
重加算税賦課決定処分も右に対応する部分につき取消しを免れないが、その余の部
分については、原告が複雑な帳簿処理を行ない預金を操作して簿外資産を作り出し
たものであること前記のとおりであり、ことに売上計上もれや雑収入計上もれは所
得の一部を隠ぺいしたものとみるのが相当であるから、適法というべきである。
昭和四一事業年度および昭和四二事業年度において、被告の主張する雑収入計上も
れが認められないことは前記のとおりであり、昭和四二事業年度における売上計上
もれ一四九、八四〇円は売上額の繰延計上額であるというのであるから、それのみ
で所得の仮装または隠ぺいにあたると解するのは困難であり、その他、右両事業年
度において原告が所得金額等の計算の基礎となるべき事実を仮装しまたは隠ぺいし
たことを認めるに足りる証拠はない。してみれば、右両事業年度の各重加算税賦課
決定処分は違法であり、取消しを免れない。
第三 むすび
以上のとおりであるから、本件昭和三九事業年度以降の取消処分の取消しを求める
訴えを却下し、本件昭和三八事業年度の取消処分、本件昭和三八事業年度の再更正
処分、本件昭和四〇事業年度の更正処分ならびに本件昭和三八事業年度および昭和
四〇事業年度ないし昭和四二事業年度の各重加算税賦課決定処分をいずれも取り消
し、本件昭和三九事業年度の再更正処分および重加算税賦課決定処分のうち所得金
額二、六〇六、三四〇円をこえる部分、本件昭和四一事業年度の更正処分のうち所
得金額二、五七九、七二九円をこえる部分、本件昭和四二事業年度の更正処分のう
ち所得金額「五三三、九九五円から昭和四一事業年度の更正処分の一部取消しにと
もない地方税法にもとづき計算しなおした同事業年度にかかる事業税の額を差し引
いた金額」をこえる部分をいずれも取り消し、その余の原告の請求は理由がないの
でこれを棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、九二条を適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 高津 環 牧山市治 上田豊三)
(別表一~九、省略)

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